特集 2025年1月17日

地元にずっとあるけど入ったことのない焼肉屋さんへ行ってみる~大泉学園「炭火焼肉 だい苑」

地元にかなり昔からあることは知っていたものの、一度も入ったことがなかった焼肉店。思いきって入ってみたら、なんでもっと早く来なかったんだと後悔するほどの名店でした。という、レポート。

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:リトアニア産の「そばの実フレーク」がひき肉っぽくて楽しい


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地元にずっとある焼肉店

僕が生まれ育った街、西武池袋線の大泉学園駅の南口目の前に、老舗の焼肉屋さんがあります。はっきりとした創業年数はわかりませんが、もうずっとそこにあることだけは確か。

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「炭火焼肉 だい苑」

店名は「炭火焼肉 だい苑」。同じ建物に居酒屋の「酒蔵 あっけし」町中華の「たつみ本店」も入っていて、ビル全体が3色のひさしとたくさんの看板でかなり賑やかなことになっており、なかなか味のある風景ですよね。

で、僕は現在、西武線でお隣の石神井公園に住んでいて、そう距離が遠くないこともあり、あっけしとたつみにはよく行くのですが、だい苑にだけは一度も行ったことがないんです。理由としては、大衆酒場が好きで、焼鳥ややきとんにあまりにも慣れ親しみすぎてしまっているがゆえ、そもそもあまり焼肉屋さんに行くことがない、というくらいなんですけれども。

が、「街で長年営業を続けている個人経営の老舗はほぼ間違いなくいい店」という説があります(勝手に言ってるけど真実だと思う)。こんなに長年前を通りすぎていて、一度も入ったことがないのはどうなんだ。ふとそう思い、意を決して行ってみたら、結論としてものすごくいいお店だった、という記事を、今から書いていこうと思うわけですが。

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「だい苑」に行ってみよう

ところでひとつ、お店に関して事前に気になったトピックがありました。今回だい苑に行ってみるにあたり、予約をしようとWEBで店名を検索してみたところ、とあるグルメサイトの口コミにこんな情報があったんです。

それは、焼肉マニアと思われる方の投稿で、今やすっかり人気の外食スタイルである“焼肉”ですが、その元祖は、新宿の「明月館」および大阪の「食道園」という、それぞれ1946年に創業したお店と言われているということ(当然、諸説はありまくるはず)。そして、その方のだい苑のレポートによれば、ひさしに「1943」という数字が書かれており(写真でも確かに確認できます)、もしかしたらその定説を覆す可能性があるお店であるかもしれない。詳細はわからないものの、そんな想像をしながら食べるのも楽しいと。

えー、地元にずっとあったことは知っていたけど、だい苑って、そんな希少性があるかもしれないお店だったんだ。これはよけいに楽しみだぞー、と、お店に向かったわけですが。

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1943の文字
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どこにもなし

まだぴかぴかにきれいなので近年リニューアルされたと思われるひさしに、1943の文字はありませんでした。その他の看板や外観を眺めつくすも同様。うーん、とにかくまぁ、まずはお店を楽しんでみることにしましょう。

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おすすめセットがすごすぎた

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小上がりの座敷席
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テーブル席

生まれて初めて入ったその空間は、そんなに大規模ではないものの、いくつかの座敷席とテーブル席があり、ゆったりとリラックスできる空間。

女将さんと、若い女性店員さんふたりがフロアを担当されており、みなさんものすごく感じが良くて、席に案内してもらった時点でここが良い店だと確信できます。

そして今回は、近年めっきり食の細くなった僕だけでは焼肉の醍醐味を味わいつくせないであろうことと、地元のお店であることから、妻子に応援を頼むことにしました。言わば単なる家族での外食とも言えますが、最終的に全員大満足の、良い思い出を作らせてもらうことができて本当に感謝しています。マジ感謝。

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メニューの一部

メニューは街の焼肉屋さんとしてはオーソドックスかな。僕がよく行く大衆酒場ほど安くはないけれど、高級焼肉店からしたらずっとリーズナブル。肉の他、野菜焼きや、一部刺し系、サラダ、スープ、ビビンバやクッパや冷麺などの主食系も充実しています。お酒類も幅広くあり。

ではでは、まずは当然「生ビール(中)」(税込670円)で始めさせてもらいますねー。

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お先に失礼します!

さて肝心のお肉。いろいろと気になるものはあるけど、初めてなのでここは奮発し、「おすすめ上セット」(5,580円)をいっちゃおうかと思います。店員さんに聞いてみたところ、そのものずばり、一部日替わりではあるものの、おすすめ肉の3枚ずつ5種類の盛り合わせだそうで。それと、店名が冠された「だい苑サラダ」(660円)もお願いします。

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サラダ到着
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炭火七輪到着

まずやってきたサラダが具だくさんで、いわゆるチョレギサラダ風のドレッシングながら、オリジナルなのかほのかに甘く癒される味わいで最高です。

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「おすすめ上セット」

そしておすすめセットが到着。いや〜びっくり。想像していたのは、カルビやロースやハラミ、なんならトントロなんかも入った盛り合わせだったんですが(スーパーの影響大)、全肉、芸術的なまでに脂がのりまくり。どうやら、お店で“希少部位”として提供しているお肉のみの1皿だそうです。

うち、今回の内容は、手前側から時計回りに、トモサンカク、ミスジ、ザブトン、シンシン、ササミだそう。

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どこを見ても
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すごい……

ちなみに、だい苑における希少部位が以下の10種類。

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希少部位リスト

食べる前からわかる。この内容でこの金額は、どう考えてもお得……。

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いい肉焼きまくり

いよいよ肉を焼いていきましょう。炭火の勢いと、肉の脂がたっぷりなおかげで、網にのせたそばからがんがんに火が通っていきます。やっぱり焼肉屋さんの焼肉って、家焼肉とはまったくの別ものだよな〜。

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トモサンカク
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じゅわー

ところで僕は酒飲みゆえ、特に夜の外食で主食を頼むということがそう多くありません。が! 焼肉だけは別! 別別別! 焼きたてのたれにつけた肉、絶対に白メシと一緒に味わいたいじゃないですか。なので必ず頼む小ライス。

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「ライス(半)」(170円)

ここに、焼けた肉にたれをたっぷりとまとわせた肉を、

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オン

で、遠慮なくかっこむと、あーもう! なんでこんなに完璧な味のハーモニーがこの世に存在するんだろうか! 食事としてシンフォニックすぎる!

どんどんいきましょう。

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シンシン
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じゅわー
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ミスジ
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じゅわー
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ザブトン
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じゅわー

それぞれが上質な脂の甘みと肉の旨味にあふれまくっていて、口に入れるたびに衝撃的を受けるのはもちろんなんですが、とろりと溶けてしまったり、意外にあっさりしていたりと個性もあって、それをおかずに白メシばくばく、ビールごくごく……。とにかく幸せであるとしか言いようがありません。

この記事にの冒頭で、僕は個人的にそんなに焼肉屋さんに行く機会は多くないと言いました。が、別に行ったことがまったくないわけではなく、特に、知人に誘ってもらって評判のお店に行った機会などはそれなりにあるんです。けれども地元にあってずっとスルーしていた、だい苑は、そのどこにも負けてないっていうか、むしろ感動度合としてはトップクラスかもしれない。いやー、もっと早く来ておかないのが、うかつすぎました。

⏩ 希少部位以外もとんでもねえ

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