住所の話がしたい
弊サイトでは、再三住所の記事を掲載してきた。主に私(筆者の西村)がですが。
住所といえばデイリーポータルZ……ということで、弊サイトが責任を持って、著者の河合さんにインタビューすることと相成りました。
河合さんは現在アメリカ在住のため、オンラインで話を伺います。
Kindle版です。紙の本はリンク先で「新書」を押してください。
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Appleの地図をディスってたらなぜか作ることに……
西村:河合さんって、もともと地図会社で地図を作ってたんですよね。その頃から住所との関わりがあったんですか?
河合:もともと名古屋の地図会社にいて、そのあとYahooに行ったんですけど、その時点でもう地図や住所を扱うようなことはあまりやってなかったんです。でも、Appleが当時出した変な地図※を面白半分にディスってたら、逆に「Appleが地図やるので参画しないか」っていう話がきて「あ、もうバリバリ地図の仕事やってますよ」って言って入ったんですけど、実はそんなにはやってなかった(笑)
※2012年、AppleがGoogleマップの使用をやめて独自の地図を導入した。パチンコガンダム駅などふざけているとしか思えない完成度でネットでさんざんイジられた
西村:面接でよく聞くやつだ(笑)
河合:実際、住所関係もAppleに来てから学んだ部分の方が多いぐらいですね。
西村:なんというか、その、みなさん住所を軽々しく考えすぎなんですよね⋯⋯。
石川:西村さん、そっちがわ視点なんですね(笑)
林:ここにいるみんな、薄々「住所ってどうもちゃんと体系立ってないな」っていう、なんとなくの思いはありますよね。住所って天気ぐらい身近だけどよくわかんないものひとつだなって思って。だから深堀りできるといいですよね。住所は自分と接点ありすぎますもんね。
河合:基本、みんなが持っているものですからね。
三年前に住所がちょっとした騒動になった
西村:今回の本は、noteの投稿がきっかけだということですけど、そのあたりをちょっと伺ってもいいですか?
河合:三年前、マイナンバーと保険証の住所の名寄せが大変だという話に河野大臣が、「将来的にはAIを使ってなんとかするって手もあるかな」みたいな話をしたんです。
そしたら「住所なんて、AIなんか使うまでもなく、エクセル使えばすぐ処理できるでしょ?」みたいなこと言った人たちがいて、そこにカウンターのように住所界隈が噛みついたという⋯⋯。
石川:住所界隈が顕在化した。
河合:住所界隈はずっと日陰者というか、下支えであり、表に出るものではなかったんですね。住所なんて当然、検索したらパッとその場所が出てくるのが当たり前であるみたいなところがずっとあった。
でも、実はそうするためには、めちゃくちゃ複雑な住所をいろいろ工夫してなんとか処理してる。とてもエクセルの検索置換でなんとかなるようなものじゃないんだ、ということを広く知ってもらえるきっかけにはなったかなと。
エンジニアを絶望させるヤバい住所
林:一番面白かったのはやっぱり、長野のやつですね。
河合:長野県長野市南長野県町ですね。
長野県の長野市にある、南長野の中にある字、県町(あがたまち)の住所。「長野」が県、市、大字名に出てくるというややこしい住所だ。ややこしいだけでなく、小字名の県(あがた)が、大字名の南長野にくっついて、見た目上一番最後にも長野県が出現しているようにもみえる……というものだ。
この住所の何がヤバいのか。もし、機械が都道府県の要素を「◯◯県となる文字列」という条件で取り出そうとした場合、この住所では必ず最後の南長野県町のところで長野県を拾ってしまい、エラーが出る。
もちろん、これに対する対策はいろいろある。例えば「県は最初に出現した◯◯県に限って取り出す」とかでもいいかもしれない。でもその場合、県名を省いて書いたときや「長野市南長野県町,長野県」みたいに最後に県名を付け足して書いた住所があったとき、正しく長野県を取り出すことができなくなる。
こういった「例外」が、住所には膨大な数あり、それを機械で処理するのはめちゃくちゃ大変……なのだ。
河合:これは、南長野が大字になるのかな。字が県町。あの、本当に、都道府県みたいな単語は字名に使うなっていいたくなるんですよね(笑)
西村:県町、ここおもしろいですよね。ぼく、あそこに看板立てて欲しいと思ってるんです。「ここは長野県長野市南長野県町です」って。そしたら、ぼくみたいなひねくれた地名好きがみんな写真撮りに行きますから。志布志町も看板あるから※みんな写真撮りに行くんですよ、志布志まで。
※鹿児島県の志布志市には、市内に志布志町志布志という住所が存在し、志布志市役所が志布志市志布志町志布志二丁目にある。志がありすぎて目が上滑りするような住所で有名な場所。もちろん、弊サイトでもすでに紹介済みです!
河合:志布志町は、ネタとしてはおもしろいんですけど、コンピュータで処理する場合はそんなに難しくないんですよね。
林:やっぱり河合さんは、地名をみて、まずパース(文字列を解析すること)を考えるんですね。東京の市ヶ谷にも本村町とかあって、市や村みたいな、行政区画を分類する文字入ってますけど。これも大変ですよね。
河合:詳しくない人はとりあえず、県、市、町、村などの文字で都道府県や市町村名を分けようとするわけですけど、市川市とか町田市でまずつまずくんですよ。
林:エンジニア視点だと、市や町みたいな分類に使ってる文字使うなって思いますよね。
河合:そう、使うなよって思うけど、地名は容赦なく使ってくる。
林:まさか未来になると機械が住所を処理するようになるとは思わないですもんね⋯⋯。



