最後は一人寸劇になってしまった。他の人に食べさせて様子を伺うこともしたかったような気もするが、全文出現したあとの場の空気を想像して戦慄した。でもコテでアイスの棒に字を書くのは楽しかったので、またやってみた現代の木簡感覚である。次はやっぱり般若心経あたりだろうか。
あの小さな木片にこんなに手こずるなんて
「警鐘を鳴らす」などと力んでみたが、具体的に何をするかというと、「アイスの棒にさまざまな“警鐘焼印”を入れる」というだけである。どんな警鐘かは、最後のページで明かされる予定だ。
焼印を入れる「だけ」?果たして、そうだろうか。あの「アタリ」という焼き印、どう素人が入れられるというのか。
まずは、テスト用の棒を用意したい。あ、それには一本食べないとですね、調達できないわけですよ。もぐもぐ。
うまかった。さあ、で、どうする。
焼印用の金属ゴテなんか作れるわけないから、代わりの方法を試してみたい。アルミテープを貼って、バーナーで焼いてみるのはどうか。うまく行きそうじゃないか?
テープにすることで、文字を切り抜いたときにもアルミが棒からはがれなくて済む!頭イイ!なんて思っていたのだが。
何なんだ。全部焼けてるじゃないか。
準備しているときから薄々感じてはいたが、アルミを通して熱が全体に伝導してしまい、このように焼かれてしまうのだった。何とかなるかなーと思っていたけど、何とかならないもんだな、あはは。
もしかしてバーナーでは火力が強すぎる、とか?ではおなじみのチャッカマン氏ではどうだろう。
このねばねばは、テープに塗られた接着剤が溶けたものだろう。お湯で洗ってもとれない。しかも文字も結局はすすみたいなもんだから、薄くなってきやがった。
接着剤、これは痛い。もっとこう、ペリッと取れたりするのを軽く想像していたから、予想外の障害だ。これ、最終的にはアイスに突っ込んで食べてみる、という企画だから、こういうデンジャラスなものがくっ付いていてはならないのだ。
テープは止めだ。600円以上したけど、止めだ止めだ。
なんとまだ続く
では接着剤を使わない方法で行おう。すなわち、ただのアルミホイルで覆うのだ。だがそれをまたバーナーなどであぶると進歩がない。電化してみよう。
180度で10分、それでも足りず220度で10分、もう一回10分、など恐る恐る焼いていた。アイスの棒なんかで火を出したくないからさ。
もう仕方がない、ふだん電子工作などに使っているハンダゴテを使おう。自分の力の入れ加減で焼け具合が変わってしまうかもしれないので、遠ざけていたのだ。
そしてもうひとつ。普段はこの先っちょでハンダを溶かしたりしている。そんなもんでアイスの棒を焼くなんて、デンジャラスもいいとこではないか。しかし今までの失敗から、こういうことが言える。
かくして、ついにアルミホイルも脱ぎ捨てるということに相成った。まわりまわって、結局は自分の腕一本で勝負である。
なんとまだ焼いてる
やっと本番の棒に焼き付ける段階となった。が、ここにも不確定要素がある。
最終的に、また元のアイスに棒を戻して、用例を寸劇で見せたい。そのためには、なるべくアイスは無傷のまま棒を取り出したい、しかしうまくアイスから棒を引っこ抜けるのかどうか。アイス居合抜きである。居アイス抜きとでも言おうか。いやどっちでもいいが、アイスの棒の世界には未知の部分がまだまだあるのだ。
魚をさばくように、アイスを。ガリガリ君を。3枚に下ろす。
ここで崩れたとしても、押し固めて復元すればいいか、なんて思っていたが、ふと思い立って力ずくで引っこ抜いてみた。崩すのが怖くてやらなかった方法だ。
まず棒を少しづつキュキュキュキュねじり、だましだましゆっくりやってみたら、簡単に抜けた。そのうち、えいっとまっすぐ引くことでもっと簡単に抜けるように。アイス居合抜き、いや居アイス抜きの免許皆伝である。今、アイスの棒を抜かんと欲すれば乙幡より他に頼む者はあらず。
そうやって確保した棒たちを乾かし、やっと本番の焼付けへと進むのだった。
こうして、「アタ」と見るや諸兄においてはうっかり「当たり」を確信しがちな昨今であるが、次のようなケースもないことはないと思わずにはいられないので、よく覚えて帰って欲しい。
○○拳、もしくはどっかに足の小指ぶつけた感じ
江戸っ子アイス
受験用の知識でしかないのだが
ロックなアイス
朗々と読み上げたい
むしろ貴重
見なくなって久しい
このように、少しくらい焼印が見えたからといって、油断してはならないのだ。すっかり頭の温まってしまったこの季節、くじ付きアイスにはことさらに注意深く臨んで欲しい。