特集 2023年3月3日

気球を揚げるところを見たい!―つくば高層気象台見学

いよいよ気球を飛ばすぞ 

準備が整ったので、いよいよ気球を飛ばす。

高層気象台には、この気球を飛ばす準備をするための建屋が設置されている。

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気球を膨らませて準備するための建屋

建屋の横には気球に充填するための水素ガスが並んでいる。

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たち並ぶ水素ガス
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気球に水素ガスを充填する

ヘリウムガスではなく、水素ガスを使うのは、ひとえに価格の問題らしい。

気球は、直径2mほどの大きさに膨れるのだが、これが上空に登ると、さらに8mぐらいに膨らむらしい。

先日、アメリカで撃墜された中国のものといわれる気球は、上空でその大きさが約60メートルあったといわれているので、気象用のラジオゾンデとは、大きさがウサギと象ぐらいの差があることがわかる。

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これの4倍ぐらいの大きさになる。おそらく建屋の空間いっぱいぐらいにはなる

 さて、気球を飛揚させる時刻が刻一刻と近づいてくる。

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建屋の横にある風速と時刻が表示されるごつい時計、時刻は8時29分

8時29分、気球を手に、建屋の外に出る。

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めちゃくちゃ風がつよい

このときの地上の風の強さは風速10メートル近くあった。台風などと比べたらまだまだだが、大きな気球を片手にあるくのはかなり困難な感じだ。

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時間ピッタリに放球しなければいけないので、風で暴れまくる気球に翻弄されつつもしっかりと手に持つ
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本当に大丈夫なのか! と心配になったその瞬間……。

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気球が手を離れた!
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気球飛んだ!
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みるみる小さくなる気球

ラジオゾンデをつけたクリーム色の気球は、みるみる小さくなり、そのまま太陽に吸い込まれるように大空の中に消えていった。わずか数十秒でもう見えなくなるぐらい高くまで飛んでいった。

写真で伝わらなかった気球の暴れ具合をぜひ動画でもみてほしい。 

マジで風が強かった様子がよくわかるとおもう。高層気象台ではたまに(年に数回)しかないほど風が強い日だったが、風が強い南鳥島や南極昭和基地ではこのくらいの風はよくあるという。さすが、極地の環境は厳しい。

当時の館野の気象記録をみてみると、北西の風で風速が6.1メートルとなっている。たしかに、気球は太陽の方向、南東に向かって飛んでいったので、記録と合っている。
事務所に戻り、気球がどのあたりに向かっているのか確認してもらったところ、つくばからみると南東の方角にある銚子の方に飛んでいっているということであった。
気象記録が、実際の体験と一致するという、当たり前のことに、ちょっと感動してしまった。


ラジオゾンデと気球におもいを馳せる

天気予報をみていると、アメダスとか気象衛星ひまわりというのは頻繁に聞くけれども「ラジオゾンデの観測によると」というのは聞いたことがない。

まして、毎日2回、日本だけでも全国16ヶ所で気球をあげているというのも知らない人が多いのではないか?

天気予報で「上空の冷たい空気が……」みたいな言葉を聞いたら、それはラジオゾンデによる気象観測の成果だと思って、クリーム色の気球におもいを馳せたい。

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