眠ったままのシーサー
数ヶ月前、Xで気になる投稿を見つけた。
“シーサーは覚醒させないと意味がないらしい”
情報のもとをたどっていくと、『沖縄 暮らしのしきたり読本』という1冊の本にたどり着いた。
その本によると、シーサーには覚醒の儀式が必要とのこと。覚醒の儀式を行わず買ってきたシーサーを置いておくだけでは実はシーサーは眠ったままで、魔除けの役割を果たせないそうだ。
我が家には10セットを超えるシーサーがいる。
沖縄が好きで、旅行で訪れた時やアンテナショップで気になるシーサーを見つけた時はつい買ってしまい、気づけばたくさんのシーサーに囲まれていた。
しかしあろうことかこれらのシーサーは覚醒の儀式を行っていないため、我が家にやってきて以来ずっと眠ったままだというのだ。
たくさんのシーサーが家や家族を守ってくれていると思い込んでいたが、どうやら自力で過ごしてきたようだ。
儀式の存在を知ってしまった今、このまま見過ごすわけにはいかない。
沖縄の人は知っているのか
シーサーに覚醒の儀式が必要だということは、そもそも沖縄の人は知っているのだろうか。
沖縄県外在住のわたしが知らないで騒いでいるだけで、沖縄県民にとってはシーサーを買ってくる→覚醒の儀式を行う→置いて魔除けにするというフローはごく当たり前のことかもしれない。
まずは沖縄出身者に聞いてみよう。
―――Mちゃん、シーサーは覚醒の儀式をしないと眠ったままだって知ってる?
「初耳なんだがwwww」
知らなかった。Mちゃんはご両親やおじいちゃんおばあちゃんも沖縄出身の生粋の沖縄人だが、覚醒の儀式については初めて聞いたとのこと。
Mちゃんの家にもシーサーが置いてあるが、絶賛冬眠中のようだ。
次に聞いたのは、デイリーポータルZで沖縄といったらこの方、與座ひかるさんである。
―――與座さん、シーサーは覚醒の儀式をしないと眠ったままだってご存知でしたか?
「シーサー洗うんですか!?初耳でした…!」
與座さんも初耳だった。
與座さんは那覇市の壺屋という地域の出身だ。壺屋といえば焼きものが有名で、やちむん(=焼きもの)通りという陶器店が立ち並ぶ通りまである。
わたしも一度訪れたことがあるが、さまざまな器のほかシーサーも数多く見かけた。いわば沖縄の中でもシーサーが集中している地域だ。
そんな地域性もあってか小学校でシーサーを作る授業もあったそうだが、覚醒の儀式については授業でも触れられなかったそうだ。
與座さんいわく、那覇あたりの文化ではないのかもとのこと。果たして真相は…
もう少し沖縄に関連する人に話を聞いてみよう。
次にコンタクトを取ったのは、沖縄でコーヒー屋さんを営んでいたこともある安藤昌教さん。
―――安藤さん、シーサーは覚醒の儀式をしないと眠ったままだってご存知でしたか?
「え!聞いたことないなそんなの…」
安藤さんも知らなかった。初耳の3連チャン!
知らないという人ばかり増えてくると、こちらもだんだん不安になってくる。大丈夫かこの企画。
最後に、沖縄について知り尽くしているであろうDEEokinawaのやんばるたろうさんに望みをかける。
―――やんばるたろうさん、シーサーは覚醒の儀式をしないと眠ったままだってご存知でしたか?
「僕もXのポストを見て初めて知りました!」
ついに知っている人を見つけた!が、やんばるたろうさんもわたしと同じくXのポストを見て知ったそうだ。
やんばるたろうさんは大学で6年間沖縄の儀式的なものを学ぶ民俗学を専攻していたが、そこでもシーサーに覚醒の儀式が必要だという話は聞かなかったという。きっと大学7年目の境地に達した選ばれし学生しか得られない情報だったのだろう。
沖縄に縁がある4人に聞いてみたが、初耳だったりXのポストきっかけで知っていたりという意外な結果に。どうやら沖縄県民のあいだでも覚醒の儀式は当たり前ではないようだ。本当に必要なものかどうかは「諸説ある」といった状況なのかもしれない。
若干の不安を残しつつも、逆に「ならばわたしがやってみなければ」と謎の使命感にかられた。

