特集 2022年6月6日

渋トミカの経年劣化を愛でる

タカラトミーが販売するミニカーブランド「トミカ」。1970年の発売から50周年を超える、大人気シリーズです。

ゆえにラインナップも膨大で、なかにはとてもお子さんが喜ぶタイプとは思えない、つまり僕好みの渋〜い車種も存在します。

最近そんな渋トミカが突然気になりだし、しかも「経年劣化」による味わいの加わった個体、そしてその個体差にものすごく惹かれてしまったんですよね。
 

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:「ぬかチューブ」がずぼらな自分にちょうどいい


きっかけは子供のトミカ

まず初めにお断りしておきたいのが、トミカはさまざまな視点観点のマニアやコレクターが多数存在する世界。対して僕はまったくの初心者。今回の記事の内容に関しても「そんなこととっくに知ってるよ!」「情報古いよ!」という意見を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。なので、あくまで僕が個人的に、最近になってトミカに興味を持った記録としてお読みいただければ幸いです。

さて、僕がトミカに興味を持ったきっかけがこいつでした。

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すみっコぐらしモチーフのトミカ

妻が見つけて買い、最近「すみっコぐらし」にものすごくハマっている5歳の娘にプレゼントしたもの。

「すみっコぐらし ぺんぎん?のアイスクリーム屋さん」という商品で、

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サイドが開閉するギミックつき

これを眺めていたら、「今まで興味持ったことなかったけど、トミカってなんかいいなぁ」と思ったんですよね。

加えて、「こういうデザインのものがあるならば、たとえば飲食系の移動販売車、なんなら『立ち飲み屋台トラック』なんてのも……あるわけないか(笑)」なんて気持ちで、冗談半分にオークションサイトを検索してみたんです。

そしたらなんとですよ。

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あった!

立石の名店「宇ち多゛」を思わせる屋号の、移動式立ち飲み屋台トラック。

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もちろん開閉ギミックも!

しかもそのギミックがさっきのすみっコのよりもさらに凝っていて、ご覧のように跳ね上げ式の屋根に赤ちょうちんとのれんを内蔵。さらに下側のカウンターも飛び出すようになっていて、見ていると、「あぁ、ここに生ビール置いて飲みて〜!」と悶絶してしまいます。

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しかもしかも! 店内には超細かい文字のメニューまで!

こりゃ相当お好きな人が開発したに違いないですよ。いや〜おもしろいな、トミカの世界!

そして出会った運命の渋トミカ

そんなわけで、ひとつ数百円以下のものを中心に、ちょこちょことオークションサイトで「渋トミカ」を探すようになったのですが、そこで見つけて骨抜きにされたのがこいつ!

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「ラーメン屋台」

ね? もう、どう見たっていいでしょう。

僕の住む東京ではほぼ絶滅しつつある、ラーメン屋台のトラック。それがかわいいかわいい手のひらサイズのミニチュアになっている。

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背面
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調理器具類も細かく再現されています

で、ですよ。ここからがいったんハマると歯止めが効かなくなる僕の悪い クセ。初めてこいつを見つけたその日にですね、

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思わず同じの5個買っちゃった

バカでしょう。自分でもわかっています。ただね、それにはちゃんと理由があって。

というのも、オークションサイトに各出品者が載せている写真をよく見ていくと、経年劣化によってそれぞれ表情に違いがあることに気がついたんです。

僕はそもそも、本物の屋台や大衆酒場に対しても、長く経営を続けてきたことでしか出せない渋い味わいを感じる店が異常に大好き。

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どうです? 奥にいけばいくほど愛おしいでしょう?

これぞまさに天然の「エイジング」。いや、エイジングは新しいものを古く見せる技術だから、それも違うな。つまり、歴史の堆積だけが生んだ、正真正銘の古い味わいだ。

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劣化すればするほど本物に近づく

しかもですよ。このラーメン屋台のトミカに関しては、そもそもレアなものではないんでしょう。出品者さんによる「長く遊んだもので傷多数です。ご理解ください」なんてコメントとともに、劣化していればしているほど安く売られている傾向がある。そして僕は、そうであればあるほど欲しい。

これぞまさに、Win-Win!

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裏面の記載

手元にある5つすべてに「tomica MADE IN CHINA No.31 SUZUKI CARRY」とあり、つまり間違いなくもとは同じトミカだったということ。

あらためて、それぞれの違いがたまらないな〜。

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現在所有中の2〜5号車までをご紹介

さっき写真を載せたほぼ傷がないのが最初に買ったもの。せっかくなので、それ以降の2〜5号車までも、ぜひ見てやってください。

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2号車

ところどころに傷はありますが、まだまだきれい。営業を始めて10年、といった趣でしょうか。

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3号車

ぐっといいですね〜。30年経ちましたね〜。特にのれんの文字のすり減りがたまらない!

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後ろ姿の哀愁もぐっとアップ
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4号車

4号車ともなるともう、すっかりこの貫禄。ちょうちんの「ラーメン」の文字も消えちゃってるし、本物の屋台みたいだ。ミニカーなのに存在感がすごい。

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柱が1本折れてもまだまだ走り続ける!
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そして5号車

ついにのれんがぼろぼろに。

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どの角度から見ても愛おしい
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夜営業中の屋台を再現しよう

さて最後に、せっかくだからこれらの渋トミカ、もっとそれらしく撮影してみたいな〜と思い、

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こんなものを買ってみました

Nゲージのジオラマ用の小物「昭和のドライブイン」。

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ドライブインのなかが「オートスナックコーナー」になっているので

この前に屋台トラックを配置すると、完全にドライブインに対する営業妨害になっちゃうけど……まぁ、探したなかでいちばん雰囲気がちょうどよかったのと、背景にちらりと写るくらいの想定なのでいいか。

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開けてみると、パーツが細かい!
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豆つぶみたいな自販機たち

僕はNゲージどころか、子供時代にプラモすらまともに作らないできてしまった人間なので、とっても新鮮、かつ、組み立てが難しい!

が、なんとかボンドを使って作業を進めていきます。ちなみに、ドライブインの横のトタン小屋のなかは、

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懐かしのピンク系本自販機

なんたるノスタルジー!

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しかもあえてそれを隠す

という芸の細かさ。

試しに黒いマットを敷いて、その前に屋台トラックを置いてみると、

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いい感じ!

続いて、100均で買ってきた、

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こんなケーブルライトも
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セットしてみます
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いい雰囲気! 超楽しい!

ちなみに、屋根を反対向きに置いてみたら、「オートスナックコーナー」の文字が見えなくなり、営業妨害問題も解決。ここは「なんらかの商店」ということにしておきましょう。

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トラックを配置し
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ケーブルライトをひとつ、屋台にも

なんだか変なチューブが背後から出ているようになってしまったけど、むしろ、水場かなんかの設備っぽいようにも見えるからいいか。

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眺めれば眺めるほどに、いい!

思わず写真を撮りまくってしまう

試しにここに、5台のトラックたちをぜんぶ並べてみましょうか。

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異様な光景
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謎の屋台密集地帯

けどいいな〜。こんな店でラーメン、食べたいな〜。

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中華だしの香りが漂ってくるようだ……
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いい!
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あ〜いい!
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向かいのビルの4階で働いているサラリーマンという設定の視点

「お、今日も屋台が並び出したな〜。それそろ仕事、しまいにすっか」なんつってね。ここでメンマとチャーシューつまみに一杯やって、最後にラーメン食って帰るのが日々の楽しみなんですよ。

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うっかりピンボケした写真が、涙でにじむロードサイドの景色にしか見えない
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深夜2時半、そろそろ店じまいの時間

以上、偶然に見つけた渋トミカの存在。そして経年劣化した渋トミカにハマってしまった記録でした。

すでに何個か追加で買ってしまってるんですが……収集がつかなくなるから、なるべく増やしすぎないように気をつけよっと。

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