高級炊飯器の世界はどこまでいくのか
ずっと頭の片隅で気になっていたことを今回改めて調べることが出来て大満足だ。
2006年に三菱が最初の高級炊飯器「NJ-WS」を発売してからまだ14年しか経っていない。
これから10年くらいしたら、とんでもないことになっているのではないか。
そのときのカタログが楽しみで仕方がない。
車や家のチラシを見ていると、かっこいいキャッチコピーが書かれているのをよく目にする。
値が張るものを売るには、おっと思わせたり良いイメージを印象づけるのが効果的なのだろう。マンションポエムなどはその代表例ではないだろうか。
家や車ほど値段が高くなくても、最近特にかっこいいキャッチコピーが付いているなと感じる商品がある。
それが、炊飯器だ。
各メーカーがフラッグシップとして売り出している高級炊飯器は、特にその傾向がある。
薄々感づいていたのだけれど、改めて調べてみると予想以上にかっこいいことが分かったので共有したい。
まずは我が家の炊飯器を見てほしい。
一人暮らし用の小さく安い炊飯器から、少しいいものにしたいなと思って2万円ちょっとで買ったものだ。
値段的には一番多い価格帯だろうか。ご飯がおいしく炊けるようになってとても良い買い物をした。
ところで前面に貼ってあるシールを見てほしい。
豪熱である。ものすごく熱そうではないか。
ただのIHではないのだ。
炊飯器につけるキャッチコピーとは思えないかっこよさだ。
これを初めて見た時から、他の炊飯器はどうなっているんだ…?と気になっていた。
そう思い、カタログを集めてきた。
ひとつひとつ調べてみたら、かっこよさがすごいことになっていたのだ。
早速見てみよう。
まずは僕も使っている象印からいこう。
はっきり言ってしまうけど、これがもう最高にかっこいいのが出てきます。
最初から1位が出てくるので、心して見て欲しい。
いや、昇り龍ではなく炊飯器のカタログである。
象印のキャッチコピーは「炎舞炊き」である。さらに「舞え、炎。舞え、お米。」である。
なんなんだこのかっこよさは。本当に炊飯器について書かれたものなのだろうか。
もはやドラゴンボールを7個集めたようになっていないか。
「かまどで炊いたご飯はおいしい、その秘密は炎のゆらぎにある」というのが象印の主張である。
それを実現するのが「炎舞炊き」なのだ。
釜の中が地獄の業火のようになっているが、米をおいしく炊いている様子である。
そうそう、この釜もかっこいいことになっている。
鉄を「くろがね」と読んでいる。さらに「豪炎」である。
もうどうかしているかっこよさではないか。
象印の炊飯器への情熱はたしかにすごかった。
では、同じく調理家電を多く扱うタイガーはどうか。
僕の中ではタイガーの炊飯器にかっこいいというイメージはなかった。
炊飯器の商品名は「炊きたて」と素朴な名前がついていて、「タイガー炊飯ジャー、た・き・たて♪」というCMソングはかわいい。
だが、実は今年でタイガーの炊飯器「炊きたて」は50周年を迎えるのだという。
そんなアニバーサリー・イヤーにタイガーが本気を出していたのだ。
こちらのカタログをご覧いただこう。
虎が出た。
かわいいCMソングを口ずさむ余地がないほどの立派な虎である。
表紙からもうタイガーの気合を感じずにはいられない。
そして、ページをめくると驚愕のキャッチコピーが待っていたのだ。
泡と火で「ごほうび」感が得られる日が来るとは思わなかった。
字体の力強さにも自信が伝わってくるし、釜が燃え盛っている。
「かまどで炊いたご飯はおいしい、その秘密はふきこぼれるほどの高火力の維持にある」というのがタイガーの主張だ。
象印と同様にかまどで炊いたご飯を意識しているのにアプローチが異なるのが面白い。
そしてこの高火力の実現に一役買っているのが、
土鍋にプレミアムが付いた。高級感のある命名に出し惜しみがないのだ。
そして、そんな5.5合炊きの炊飯器で1合の米を炊くという要望に応えるためにタイガーが用意したのが、
もはや料亭が出陣してくるレベルだ。
「一合を極める」というキャッチコピーも、初めて見る極め方でかっこいい。
ここまでは調理家電を主に扱う2社を紹介してきた。
様々な家電を扱う総合家電メーカーはどうか。
まずはパナソニックの炊飯器が推す炊き方はこれだ。
「大火力おどり炊き」「可変圧力おどり炊き」の2つが組み合わさったのが、この「Wおどり炊き」である。
ちなみに下位モデルになるとどちらかしか搭載されないのだが、高級モデルなので両方使えるのだ。
レベルが上がってそれまでの必殺技を通常技のようにボンボン放つ、パワーインフレ少年漫画のような炊飯器だ。
そしてパナソニックはイメージ図がかっこいい。「Wおどり炊き」のイメージ図は躍動感がすごい。
また、220度の高温スチームのイメージ図も良かった。
ところで高級炊飯器といえば三菱を忘れてはいけない。
なんといっても2006年に発売した三菱の炊飯器を皮切りに、今の高級炊飯器市場が誕生したのだ。
初代から続く三菱の高級炊飯器の伝統といえば、炭から作った内釜である。
とうとうかまどがKAMADOになった。
これがすごいのは全部手作りというところだ。
エンジンを手で組み上げる、フェラーリみたいな世界だ。
この内釜もすごいが、意外なところのかっこよさを追求していることに気づいた。
それは、色の名前だ。
かっこいい。少量モデルでは「白和三盆」「黒銀蒔」という名前が付いている。
色の名前のバリエーションがすごい。
象印も「黒漆」「雪白」などの色の名前を採用していて、それはそれで象印のかっこよさへの抜かりなさを表しているのだが、ここまでのバリエーションを有するメーカーはいない。
思わぬところで個性が現れた。
一方で物足りないのは東芝と日立だ。
これまでの派手なネーミングに見慣れてしまうと、もう一歩踏み込んだ名前が欲しいとまで思ってしまった。
燃え盛る炎も欲しいところである。完全に麻痺していないか。
京都で8代続く老舗米屋が認めた、とあるのは美味しそうだ。
が、より必殺技らしさが欲しくなってしまった。もう僕は戻れないところに来てしまったのかもしれない。
実は日立は前のモデルの内釜がかっこよかったのだ。
この釜を作るための「超音速打込製法」がかっこいいのだ。日立のサイトから説明を引用しよう。
アルミ合金の釜に鉄の粒子をマッハ2で打ち込む。
炊飯器の製法にマッハが出てくるとは思わなかった。
あまりにロマンあふれる製法ではないか。
今の内釜の方が性能はいいのかはわからないが、かっこよさという一点においては前のモデルの方が上だ。
今一度かっこよさという観点から見直してもらえると幸いである。
ずっと頭の片隅で気になっていたことを今回改めて調べることが出来て大満足だ。
2006年に三菱が最初の高級炊飯器「NJ-WS」を発売してからまだ14年しか経っていない。
これから10年くらいしたら、とんでもないことになっているのではないか。
そのときのカタログが楽しみで仕方がない。
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