ニューヨークは、ヨークが語源
まず、現在のニューヨーク(New York)ですが、元々はニューアムステルダムと呼ばれていました。アムステルダム、ということはつまりオランダの領地だったわけです。
ニューアムステルダムは、1664年、イギリス人に占領されます。このとき、ヨーク公であったイングランド王、ジェームス二世にちなんでニューヨークと名付けられました。
ヨーク公というのはざっくりいうと「ヨークという地域を領地に持っている貴族」という意味で、徳川光圀のことを水戸光圀と呼ぶような感じと思っていただければわかりやすいかと思います。
つまり、ニューヨークの地名は、元々離れたところにある地名にちなんで、それに新をつけたものを地名とした……ということになるわけです。北海道の新十津川町(奈良県の十津川村から入植した人が作った町)みたいな感じですね。
もっともこの「ニューヨークの語源はイギリスのヨーク」という豆知識は、ぼくは中学校の時、歴史の先生が授業で話しているのを聞いて知ったぐらいなので、すでにご存知の方も多いかもしれません。
では、そのヨークそれ自体の語源はなんでしょうか?
ニューヨークの元になったヨーク(York)の町は、イングランド北部の都市です。
ローマ時代からの歴史がありますが、古い時代は、先住民族であったブリトン人に多い人名にちなみ、エブロス(Eburos)またはエボラーカム(Eboracum)と呼ばれていました。
このエブロスという人名は、イチイの木の名前(エイブEibe)が由来とも言われています。
エブロスは、アングロサクソン人が侵入して占領されると、エオボルビク(Ewoforwic)と呼ばれるようになります。ビク(wic)は村という意味らしいので、さしずめエブロス村といったところでしょうか。
9世紀、バイキングによってエオボルビク周辺が支配される時代になると、エオボルビクは、イオルビク(Iorvik)と訛ります。それがさらに、イオルク(Iork)と短くなります。
なんだか、だんだんヨークに近づいてきました。あともう少しといったところです。
イオルクは、再びアングロサクソン人に支配される時代になると、Iの部分がYに替えられ、イオルク(York)となり、つ・い・に、ヨーク(York)と呼ばれるようになったわけです。
分かりづらいので、図で見てみましょう。
エブロスがニューヨークになった件、以上ですが、ニューヨークの語源は、元々の発音からは想像もつかない変化を遂げています。
ニューヨークという地名は、様々な民族のさまざまな言語が混ざり合い、完成したといえます。まさにニューヨークという町の性格をそのまま表したかのような語源と言えます。
参考資料
牧英夫『世界地名ルーツ辞典』創択社
蟻川明男『世界地名語源辞典』古今書院
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