かけ算九九の奥深さ
なぜ7の段は難しいのか。
それは7が、10と互いの素であり、答えの1の位に、1〜9までの数字がランダムに出現し(ているように見え)、かつ数が大きい……といった複数の要因が全部重なっている。7の段は難しくなるべくして難しくなっている。
7の段が難しいのは、そもそも十進法の世界にいるものの宿命でもあるのだ。我々の手の指が十本である限り、7の段は、難しいままである。
九九の深淵をのぞいた気がする。
算数が苦手だった。
だった。と書くと、今は得意みたいな感じにみえるが、そんなわけもなく、今も苦手だ。いまだに、掛け算九九があやしい。とくに7の段。
ただしこれは、ぼくに限ったことではないらしい。インターネットを検索すると、同じように7の段が難しいと感じるといった意見が多数みられた。
いったいなぜどうして、7の段は難しいのか、算数が苦手なぼくなりに考えてみた。
なぜ九九が、とくに7の段が難しいのか。
その思いを聞いてもらうために、数学が分かる人、得意な人に集まってもらった。
デイリーポータルZ編集部の古賀さんと、私ライター西村は、数学というより、算数の時点からやばい感じである。
ライターの三土さんは、プログラミングをするほどなので、数学のことはだいたいわかっている。ただし、無人島に持っていきたい本として『ベーシック圏論』を買ってみたが、それは難しくて少ししか読んでない、とのこと。
そして、数学に詳しい人として「ロマンティック数学ナイト」などのイベントでも度々登壇し、『笑う数学』の著書もある鯵坂もっちょさんをお呼びした。(以降敬称略)
西村:ぼくは、算数がまったくわからず……小2のときの九九でつまづいています。
古賀:わたしもです。つまづいたまま、起きあがることなく、寝たまま大人になった感じです。
西村:子供に九九を教えるときとかに、そういえばおれ、九九ちゃんと言えないなって認識したんです。
古賀:「はちろく」が難しくないですか?
西村:はい、今ね、答えがわからないですもん。
鯵坂:そうやって、ひとつだけ取り出してパッと言われると、なんか自信なくなってきちゃうな。
三土:たしかに、順番だからわかるっていうのありますよね。
西村:はちろく……はち……はちろく……しじゅう……。
古賀:はち? 合ってる?
鯵坂:はちろくしじゅうはち……あってますよ、あってます。
8×6の計算でこのありさまだ。九九のあやしいひとの不安さが、周りにも伝播してしまっている。
九九の苦手な理由のひとつとして「はちろくしじゅうはち」というフレーズは頭に浮かんでいたとしても、それが合っているのか不安になってしまう。というのがある。
古賀:「比例反比例」も難しかったです。比例反比例のときのテストで30点ぐらいとっちゃって、私は算数ダメなんだなって悟ったんです。
西村:ぼくも、中学校の数学のテストだいたい10点ぐらいでしたもん。
古賀:私もです! 数学の時間、先生がじゃあ次の問題解いてみてくださいって、みんなが問題解いてるとき、鉛筆の音カタカタ鳴るじゃないですか、私、鉛筆で机コツコツ叩いてましたもん。
西村:見栄だけはね、武士は食わねど高楊枝。大事ですから。
古賀:もう、何やってるのか全然わかってなかったんですよ。
鯵坂:私も色んな所で公言してますけど、学生時代は数学苦手だったんです。赤点もとったことありますから、気持ちはわかります。
古賀:え! そうなんですか。大人になってから開眼した?
鯵坂:そうなんです、苦手ではあったけど、好きだったので。
西村:数学とかって、全然わからないんですけど、傍から見てて楽しそうだなーっていうのはすごく感じるんですよ。
古賀:そうそう、好きな人の楽しそうさ……「素数」みたいなのは、いいなーっておもってみてるんです。
西村:変なトラウマがあるんですよね。
鯵坂:数学がトラウマになっているという話ですけど、体育と同じじゃないかと思ってるんです。
西村:たしかに。ただ、体育の授業でやることって、全てがそのまま「辱め」に直結してるんですよ。数学は前に出されて、わからない問題を解答させられる……とかあるにせよ、それがメインじゃないですし、10点のテストを見せびらかしたりしなければそんなでもないから、体育に対する恨みほど歪んでないんですよ……。数学の面白い話聞くとすごく面白いって思えますけど、体育は大人になってスポーツ見ても素直に楽しめないんですよね……。
三土:いまだに跳び箱みるとキュンとしたりしますね。
西村:跳び箱、鉄棒、サッカーゴール、バスケットゴール。ぜんぶ胸が締め付けられますよ……。
いかん、このままでは体育教育に対する不満の話になってしまう。7の段に話を戻したい。体育が苦手な話は、また別の機会にしよう。
西村:7の段に話を戻しますが、7の段がなぜ難しいのかを素人なりに考えたスライドを作ったんです。
鯵坂:スライド、みたいです!
西村:七の段、さすがに7×1はわかるんです。わかるんですけど、それ以外全部覚えづらいのはなぜなのか。どないなっとんねんと。
西村:いきなり、数学的な話ではなく、言語としての問題点で申し訳ないのですが。これがけっこうあるような気がするんです。
鯵坂:はい。
西村:「しち」って、江戸っ子とかは言えないわけですよ「ひち」になるのかな。答えで迷う前に、発音の仕方で迷ってしまう。発音したときの安心感がないんです。
西村:7の段は「し」と「ち」がやたら多いんです。混乱する。そこで、7の段を全レビューしてみることにしました。
古賀:全レビュー。
西村:まずは、しちいちがしち。もうすでに言いづらいですけど、答えが7ですから、まあこれは安心できる。難易度はゼロ。これはいいんです。
西村:しちにです。これはまあ、いいんですけど、最後に「し」を重ねてきた。ずりいわけですよ。じゅうよん、といえばわかるのに。じゅうしは言いづらい。そもそもふつう14のこと「じゅうし」って言わないでしょう? (注:言う機会が少ないという意味です)
西村:つぎ、しちだけじゃなく、いちが最後に出てくるうえ、にじゅういちが急に長い! さらに、答えが2で割れないのも腹たつんです。
鯵坂:2で割れないって、それ言い出したら7の段は半分はそうですよね。
西村:そうなんですけども。
三土:奇数が許せないんだ。
西村:しちしは、とにかくむずい。でも、唯一の救いは2で割れる。
古賀:偶数が好きなんだ。
西村:しちご、急に答えがあっさりするんです。さんじゅうって。合ってんのかなこれ? って。
古賀:35じゃないかな〜。
鯵坂:あのー、西村さん、ちょっといいですか……。
西村:はい。
鯵坂:正しくは35ですね。
西村:は! やっちまった~。これですわ。このレベルなんですわ!
古賀:そうだよね、よかったー(私の指摘は)合ってた。
西村:はっずー。
西村:これもかなりムズい。しじゅうに。しとかじがなんども出てくるうえに長いんですよ。
鯵坂:なるほど(母音が)「い」の言葉がやたら多いですね。
三土:もはや国語の問題になってるね。
西村:しちしちって、どう考えてもふざけてるんですよ。でも「しじゅうく」と2で割れない数が答えになってる。サイコパスですよ。7×7で、49。なんかこわい。
鯵坂:こわい。
西村:ただし動きは変だけど、特徴的だから覚えづらいことはない。弱いんです。
西村:次、しちは、短いからいいんですが、ごじゅうろくが長い。でも、7の段よりも、これは8の段の方が言いにくいかもしれない。ひっくり返すと、隠れていた「ち」が出てくるんですね。倒したはずの中ボスがパワーアップして再登場みたいな。そういう感じです。というか、56で合ってます?
鯵坂:合ってます!
西村:最後、答えが63。63が七の倍数に見えない。
古賀:1の位が3とかありえないんですよ。
鯵坂:なんともいえんな〜同意するわけにもいかんな〜(笑)
西村:でも、よく見てみると、70から7を引いた数ではあるんですよね。それを考えると納得感はある……。以上ですね。
西村:さらに続けます。
西村:7の段、1の位が全部違う問題。これ、あると思うんです。
鯵坂:わかります! これは、すばらしい発見ですね。
西村:ありがとうございます。5の段は、1の位が「5、0」の繰り返しなのでわかりやすいんですね。
西村:いっぽう、7の段をみてください。
西村:1の位が、7、4、1、8、5、2、9、6、3。しかも、数字の出現パターンがデタラメなんです。ほかの段は多分繰り返しのパターンが出てると思うんです。6の段は6、2、8、4、0。8の段は8、6、4、2、0……。
鯵坂:ひとつ言うと、3の段も1の位に出てくる数字がバラバラで全部違いますね。
西村:あ、ほんとだ。
鯵坂:でも、3は最初の方で、数字が小さいから気にならないですね。
西村:で、ここで考えたんです、5の段の1の位が、5、0の繰り返しでわかりやすいのは、十進法で数を数えているから。……ということは、世の中の数の数え方が、十四進法になれば、7の段の1の位が7、0の繰り返しになって簡単になるのではと考えました。
鯵坂:なるほど、そのとおりです。
西村:というわけで、十四進法の世界の7の段はこちらです。
西村:見てくださいこれ、7、10、17、20、27、30、37、40、47でわかりやすい。
鯵坂:あー、楽だわー。
三土:わかりやすい。
古賀:なにが起こってるのかよくわからない……7で折り返すってことですか?
西村:いや、13まで数えるんです。9より上はA、B、C、Dってなるんです。
古賀:???
鯵坂:ふつう、人類って0から9までの10個の数字で数を表現しているじゃないですか。そこはいいですよね。
古賀:はい。
鯵坂:でもそれって10個である必要って実は無いんですよ。いま偶然手の指が10本あるから10個の文字を使って数を数えているけれど、ローマ数字だとか古代バビロニアとかだと独自の数字を使って数を書き表していたから、別に14個の記号を使って数を表現してもいいじゃないか、という人がいてもおかしくはないと。
古賀:ほう。
鯵坂:だから今、A、B、Cと言ったのは、0から9までに加えて、なにか別の記号として、便宜的にA、B、C、Dを使ったわけですね。
古賀:はい。
鯵坂:我々の世界(十進法)では、9まで行くと、ひとつ繰り上がって二桁になって10になるわけですけど、十四進法の世界だと、9の次がA、B、C、Dとなって、14でひとつ繰り上がって10になるわけです。
古賀:なるほど、わかりました。
西村:ちなみに、十四進法の世界の5の段はこちらです。
西村:わかりづらー。
古賀:サイテー。
西村:ごにえー(5×2=A)
三土:いいですね、言いやすい。
西村:ごはにしー(5×8=2C)、ごごいちびー(5×5=1B)。
鯵坂:なにを言ってるんだと。
古賀:クラスみたいになっちゃった。
西村:そもそも「A」を見て、10の数を想像するのが難しいんです。でもそれを言い出すと、十四進法の7の段も同じで、10や30をみて、14や42を想像するのは辛いわけです。
西村:我々は、十進法の世界に慣れきってしまっているから。
古賀:ズブズブなんですね。
西村:そうです、十進法とズブズブなんですよ、人類の手の指が7本づつあれば良かったんです。
古賀:もともとそういう生物であれば良かったと。
西村:で、もうちょっと現実的な方法で7の段を簡単にする方法を考えました。これは、知ってる人も多いと思いますけど、九九って、1×1と9×9の対角線を挟んで、上と下は答えが同じなんですよね。
鯵坂:はい。
西村:だから、1から6までの段が言えれば、7の段って本当は7×7、7×8、7×9の3つだけ覚えればいいんですよ。7×4(しちし)が出てきたら、4×7(ししち)で答えを出せばいい。
三土:徹底して省エネで、半分しか覚えてないひともいるかもしれないですね。
西村:でも、学校はなぜか全部覚えさすじゃないですか。覚えさすのはいいんですけど、半分完璧に覚えていれば、なんとかなるぞというのも教えてほしいです。暗記が苦手な子が諦めないように。
鯵坂:そうですね、そこはかえてもいいところだと思ってます。
鯵坂:言おうと思って準備してたことあるんですけど、スライドでほとんで触れられてたので、カブってしまうかもしれませんけど。
西村:カブってもかまわないので、ぜひ、ご意見お聞かせください。
鯵坂:身もふたもない言い方になるかもしれないですけど、7の段が難しいのは、単純に九九の後半部分にあるから。というのがまずあると思うんです。歴史でもアウストラロピテクスはみんなよく覚えてるけど、近現代のことは覚えづらい。小2の子供が、1の段から始めて7の段ぐらいになるともう集中力が切れちゃうんじゃないかと。
西村:後半部分の九九は、大きい数をイメージしづらいんですよね、3の段は、3が3つで9個。みたいになんとなくわかるんですけど、7が3つでって考えると、パッとはイメージがわかないんです。
古賀:3が3つってまだ麻雀牌にかけるんですよ。竹のやつとか9個かいてありますから。7が3つなんてかけないもん、竹が。
鯵坂:パッと見で認識できるいちばん大きな数字が6だって話もありますからね。リンゴ7個と8個ってパッと見区別つけづらいと思うんですよ。5個と6個だったら見分けがつくけれど。
西村:なるほど。
三土:さっき、おもしろいなと思ったのが、古賀さんが1の位に3はありえないって言ってたんですけど、九九の表見てみると、1の位に3って4回しか出てこないんですよね。
西村:あ、ほんとだ。
三土:他の数、2とかはいっぱいあるじゃないですか。
鯵坂:偶数はいっぱいありますけど、7も少ないですね。
古賀:西村さんの言った通り、偶数は気持ちが落ち着くみたいなところはあるかもしれないですね。
三土:それはおもしろい感覚だなと思ったんです。奇数に腹を立てるとか。
西村:数学やっている人にとって、偶数か奇数かってのはそんなに問題ではない?
鯵坂:いや、大問題です。難しい数を使った問題で、奇数と仮定するとおかしくなるから、偶数なんだね。とか、奇数と仮定しても偶数と仮定しても成り立たないから、前提がおかしいよとか、偶数奇数のこと偶奇っていいますけど、偶奇の問題ってのは大事な道具として使いますね。
三土:でも、鯵坂さんにとって、奇数に腹を立てるとかはありますか?
鯵坂:腹は立てない(笑)
西村:腹を立てるのはぼくとか古賀さんですから。苦手意識があると、すぐ感情に結びつけがちなんですよ。
古賀:別に、偶数奇数は悪気があってそうなってるわけじゃないですよね。
鯵坂:個人的な感覚なんですけど、偶数より奇数の方がおもしろいというか、尖ってる感じはありませんか。
西村:素直じゃないんですよ。
鯵坂:素直じゃないです、偶数はめっちゃ普通。中二病だったら絶対奇数のほうが好きだろって感じがしませんか。
古賀:奇数の中でも、5はまあいい子じゃないですか。5はわかる。でも3と7がめっちゃこわいんですよ……。
鯵坂:なぜ5はいい子なのか。それはまさにさきほどでた十進法だからこそなんですね。10は2と5で割れるから、5を2回足したら10だし、当然のこと言ってますけど。
西村:当然のことですけど、前提として大事ですから。
鯵坂:十進法の世界の九九で、偶数の段は、答えの1の位がかならず0、2、4、6、8の数字しか出てこなくて、その数の繰り返しなんです。
西村:ほんとだ。
鯵坂:で、偶数と5以外の数、1、3、7、9について考えてみますけど、この4つの数字は、ちょっと専門用語で言うと10と「互いに素」っていう考え方なんですよ。
古賀:互いに素……。
三土:中学校で習うのかな?
西村:今はじめて聞いたぐらいの気持ちでいましたけど……。
鯵坂:いや、こんなの誰も覚えてないですから、大丈夫です。互いに素っていうのは、2つ以上の数の関係性を表す言葉で、同じ数で割り切れない組み合わせのことを「互いに素である」というわけです。
鯵坂:例えば「21と27は互いに素ですか」って聞かれた場合、どっちも3で割れるから「互いに素ではありません」となるんですが「10と7は互いに素ですか」となった場合、これはどっちも割り切れる数がないので「互いに素です」ということになるんですね。
鯵坂:今、われわれが使っている十進法の10と互いに素な数の段(1、3、7、9)の1の位には、全部の数が出てくるんです。
古賀:9の段は、9から逆順に1まで出てるってことですか。
鯵坂:そうです。さっき西村さん7の段の1の位には全部の数が出てくるって言ってましたけど、実は1も3も9も、1の位に全部の数字が出てきてるんです。
西村:あーっ、ほんとだ!
鯵坂:中でも、1と9の段は、全部出てきても、並びが規則的なんです。だから気にならない。
古賀:はいはい。
鯵坂:で、規則的に見えないやつがふたりいて、それが3と7なわけですよね。で、その中でも3は数が小さいから、そんなに難しくないんですけど、7は数が大きいから、イメージしづらいわけです。
西村:ほほー。
鯵坂:つまり、7の段は、そもそも数が大きいのと、10と互いに素で、1の位に数字が全部出てきてしまう。という、複数の要因が重なって、難しくなってしまっている……ということなんですね。
西村:うわー。答え出ちゃった!
古賀:7の段が難しいわけがちゃんとあったんだ。
鯵坂:あります。あと付け加えるならば、さっきスライドでも出てましたけど、半分覚えれば事足りるという点ですね、かけ算の可換性っていうんですけど、7の段の最初の方を、他の段で代用していると、だんだん使わなくなって、忘れてしまう。というのもあるかもしれません。
西村:七の段はあわせ技で難しくなっているのか。 言葉が難しいというのもあるんでしょうか。
鯵坂:それは、どうかなーと思っていて、例えば3みたいな最初に出てくる数の読み方が「しち」だったら果たして難しいだろうかと思うんですよ。
西村:3×2=6が「しちにがろく」だったら、はたして難しかっただろうかってことですよね。うーん。わからないな……。
鯵坂:かけ算を説明するために、図を作ってきたんですよ。これを見てください。
鯵坂:これは、かけ算の1の位の数字がどんな順番で現れるか、図にかいてみたものです。今みてもらってるのが2の段。1の位が、2、4、6、8でぐるっと一周してますよね。
古賀:萌え〜。めちゃめちゃいいなこれ。
鯵坂:4の段にしてみます。
西村:お星さま!
鯵坂:4×1で4、4×2で8、4×3で12、4×4で16でたどっていくと、こういう星型をだいたい2周ぐらいするわけですね。
鯵坂:で、5の段が良くて、というか、お察しだとは思うんですが、こちらです。
西村:6時だ!
鯵坂:5、0、5、0でこうなるわけですね。
三土:往復してるだけなんだ。
鯵坂:そしてこれが8の段ですね。
鯵坂:8の段は、2の段の逆回転です。普段あんまり意識してないかもしれないけれど、8の段の答えの1の位は、2の段の答えの1の位の逆回転なんです。
西村:えー知らなかった!
古賀:そんなこと思ったこともなかった……。
鯵坂:で、問題は3と7の段ですよ。
西村:でたー。
鯵坂:見てもらったらわかると思うんですけど、7から始めて3の段の逆順で、2個飛ばしで全部の数字に渡るんですよ。
古賀:うわー、ややこしいー。
鯵坂:これを、ややこしいと見るか、きれいと見るかは人それぞれだと思いますが、複雑ではある。
西村:路線図と一緒だ! 路線図もこみいった細かいのになると、逆にきれいなんですよ。ただ、実際に使う場合はややこしいんですけど……。
鯵坂:このかけ算の図、かけ算を習うときに、最近はけっこう使うこともあるみたいで、そのときは板に打ち付けた釘にヒモを渡す感じでやるみたいです。
西村:糸掛けアートみたいなのありますよね。
鯵坂:せっかくなので、14進法の場合もこの図で考えてみましょうか。14と互いに素の数ってなんだと思います?
西村:え、……9とか?
鯵坂:そう、9です。14進法の場合の9の段がこれです。
鯵坂:互いに素の場合、何が起きるかといったら、全部の数をわたるんですよね。だから複雑になってしまう。
古賀:竹かごみたいになってますね。
西村:竹かごは「互いに素」なのか……。
なぜ7の段は難しいのか。
それは7が、10と互いの素であり、答えの1の位に、1〜9までの数字がランダムに出現し(ているように見え)、かつ数が大きい……といった複数の要因が全部重なっている。7の段は難しくなるべくして難しくなっている。
7の段が難しいのは、そもそも十進法の世界にいるものの宿命でもあるのだ。我々の手の指が十本である限り、7の段は、難しいままである。
九九の深淵をのぞいた気がする。
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