特集 2021年6月3日

工事現場のメッセージをつい読んでしまう

工事現場に書かれた標語や対外的なメッセージをつい読んでしまう。

「指差し確認」のような標語は関係者向けなのは分かっているのだが、独特な言葉遣いについ目を惹かれる。一方で通行人向けのメッセージも工夫を凝らしたものが増えているようだ。いくつか集めてみました。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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工事現場のメッセージは内部と外部向けがある

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こういう標語あるよね

工事現場にはよくこういう標語が掲げられている。関係者向けに、主に安全を確保するために守るべきことが書かれている。

完全に内部向けなのは分かっているのだが、外から見える上に内容が興味深いのでついつい読んでしまう。その気持ちわかってもらえるだろうか。

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クレーン作業の3・3・3運動

なるほどクレーンには3・3・3運動というのがあるのか、吊り荷からは3メートル離れるのか、フムフムと思いながら読む。

真ん中のは「地切り」と書かれている。調べてみると、吊り荷を地面から切り離すことだそうだ。本格的に高いところまで持っていく前に、ちゃんと吊れているかを低いところでいったん確認するらしい。なるほどねー。

工事現場の標語にはこんなふうに、本来であれば知り得ない専門用語に遭遇する面白さがある。一方で、外部向けのメッセージにも面白さがあるのだが、それは後半で紹介したい。

標語を見ていく

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それでは一つずつ見ていきたい。まず左下にある緑の旗は安全旗というらしい。これはどの現場にも共通で同じものがある。

右下は鹿島という会社の旗だ。赤地に白でカと書いてある。

その上に大きくあるのが現場に掲げられた標語だ。スローガンともいうそうだ。「決心せよ!」という強い調子がふだんの生活にはなかなかないのではっとする。しかし安全のためにはそれくらいの調子が必要なのだろう。

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無事故の歳末 明るい正月

「無事故の歳末」という表現が逆に事故を想像させてちょっと怖い。

建設業労働災害防止協会というところの定めた年末年始のスローガンだそうだ。おそらく同じ標語が別の現場にもあったに違いない。

スローガンは毎年変わり、今年は「持続可能な安全管理 未来へつなぐ安全職場」らしい。無難だ。「無事故の歳末」が怖すぎたか。

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あげた手に 笑顔でこたえる 思いやり やさしさ運ぶ 建設車両

これはなんだろうか。急に車両の話になった。

日本建設業連合会の交通対策部会というところが定める「交通安全懸垂幕最優秀標語」なのだそうだ。

つまり工事現場内のことを言っているのではなく、外で一般の人が手を上げて渡ろうとしていたら建設車両もちゃんと止まろうねということだろう。

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「はさまれない位置で作業していますか?」

これはもう本気の注意喚起である。何に挟まれるのかは分からないが、とにかくやばいことになるのだろう。

それに比べて右側の「技術と絆を世界へ発信」はだいぶ抽象的である。絆ってなによと思うが、たぶんこういう意識の高さも必要なんだろう。意識は高く、目線は足元にというか。

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もう一つ具体的なやつ。「つり荷の下に入るな!!」である。

これはクレーンのブームというところにいつも書いてある。本当に重要なことなんだろう。つり荷の下に入ってしまうと何が起こるのか・・。それはさすがにぼくでも想像できる。ぺちゃんこになりたくはない。

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自粛から自衛へ!

これは時代を反映したやつだ。時期としては2020年7月で、ウィルスの影響で工事を自粛していたが、とはいえ再開させねばならない、というような文脈だろうか。

それにしても工事とはリモートワーク不可な仕事に違いない。大変なことだと思う。

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いろいろ書いてある

「するな近道 省くな手順 怖いの気持ちを大切に」
「健康づくりは 人づくり みんなでつくる健康職場」

ここらへんは工事現場かどうかにかかわらず、仕事では大切なことだろう。必要な手順を省いてはいけないのは身に染みてわかる。

つり荷の下に入るな!!のような強い調子にくらべて「健康づくり」は少しほっとする。工事現場でなくても健康は大事だ。

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画質が悪くて申し訳ない。『「ゆびさし」「こえかけ」みんなで実践 安全 快適 Core Value!』と書かれている。

基本的に七五調なのは標語あるあるだ。覚えやすいことは大事。ゆびさし、こえかけ、というのはよく見る「ヨシ!」というやつだろう。上のクレーンの3・3・3運動でも吊り荷を指差して「ヨシ!」とやっていた。

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体感KY

工事現場のバリケードにはよく「安全第一」と書かれているが、ここに独自のメッセージを書くこともあるようだ。

ここでは「体感KY」と書かれている。KY は危険予知のことだと思われるので、危険を体で感じて予知しよう、という意味だろうか。

労働災害の事例を見ても、事故を避けるために危険を予知することがいかに大切か、そして難しいかがわかる(クイズ形式で紹介されたりする)。自分も事例と同じような状況で同じことをやっちゃうだろうな・・という気がする。

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通行絶対禁止

バリケードのメッセージとしてはこういうのもある。「絶対」とはなんだろうか。そしてふつうの「通行禁止」との違いはなんだろうか。そっちはちょっとならいいのか。

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左折絶対禁止

こういうのもある。右折と直進はOKだが、左折だけは絶対に禁止なのだ。なにか恐ろしいことが起きるのだろう。

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対外的なメッセージたち

一方で、工事現場には一般の人に向けたメッセージも掲げられていることがある。中には少しユニークなのもあるようだ。

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社長みずから謝るタイプ

まずはこちら。工事でご迷惑をおかけします、といって作業員のイラストがお辞儀をしているが、よくみると社長である。好感度急上昇。

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「絆」

さっきも出てきたが、絆である。

工事区画を立ち入り禁止にするためのバリケードの足だ。何と何の絆なのだろうか。人間と大地との失われし絆だろうか。もうちょっとなにか書いてほしい。

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覚悟。

絆の次は覚悟である。この工事、ひいては再開発事業を絶対に成功させるという覚悟なのだろう。どの事業もそれなりに覚悟を持って進めているものだとは思うが、こうやって文字で書かれると後には引けない感じが伝わってくる。

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星座だ

右上にあるのは、工事中の騒音と振動を表示するパネルだ。その横が星座の表になっていた。

白い仮囲いのままだと殺風景だということで、ここに無難なイラストを描くことはよくある。その応用ということだろうか。工事期間が長くなるので、いま太陽が黄道のどこにいるかを想像しながら気長に待ってねということかもしれない。

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自己紹介

工事の進捗をお知らせするパターンはよくあるが、ここでは一歩進んで建設機械を写真入りで紹介している。これはいい。

フラットソーマシーンがコンクリートを切っているのか・・。じゃあうるさくてもしょうがないな、がんばれ! みたいにいきなりならないとしても、少なくとも親近感は湧く。

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本人の自己紹介(名前部分は伏せてあります)

上と同じ現場のもの。

機械だけでなく、担当者のプロフィールまでユニークに紹介している。サッカーの経験を生かし、現場でも司令塔を目指すとある。

こうなれば一気に親近感が湧く。担当者も機械も分かっている。こんな現場なかなかないでしょう。実際の工事を見てみたいくらいでもある。


標語も対外的なメッセージの意味があるかもしれない

工事現場の内部の標語は、関係者向けのメッセージだ。主に工事の安全を確保するためにある。そして外にかかれたメッセージは対外的なお知らせである。

ただ、内部向けの大きな標語が外から見える場合は、結果として外へのメッセージという意味もあるのかもしれない。吊り荷からは絶対に3メートル離れるような安全な工事をしていますよ、というような。

いずれにせよ、いまのような状況で関係者のみなさんの安全がいろいろな意味で保たれることを祈ります。

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