仕事終わりにふらりとやってきた
今回も企画趣旨に厳しくしたがうため、なんの情報も持たずに仕事がえりにふらりと北海道に行くことにした。
とはいえ北海道は広いので、最初の行き先だけは行く前に詳しい人に頼りたい。
詳しい人とは姉妹企画「投稿頼りの旅」を担当してくれているライターの地主くんである。彼はよく北海道に行っているからいい場所を知っているのではと思ったのだ。
一瞬の迷いもなく勧められた。
これほどまでにきっぱりと、しかも知らないお店を勧められると行きたくなるのが人の性である。最初の行き先は決まった。「大広民芸木彫朔峰の店」だ。呪文のように唱えながら向かった。
勧めてもらった大広民芸木彫朔峰の店は網走にあるらしいのだけれど、地主くんが言うにはどちらかというと北見駅の方が人が多い、ということだったのでこちらに宿をとった。
しかしすでに夜である。もちろん観光案内所は閉まっている。
北見駅前なら人がたくさんいるから頼れるはずです、と聞いてやってきたのだけれど、さすがは夜だ。振り返るとそこには有無を言わさぬ静寂だけが横たわっていた。
教えてもらった網走にあるお店には明日の朝一番に行くことにして、まずはホテルで近くに食事ができるところがないか聞いた。
なんでも北見は焼肉の町として知られているのだとか。いいこと聞いた!
通りに人がいないので夜中のように見えるがまだ20時すぎである。気温は0度付近だろうか。寒いけど耐えられないこともない。教えてもらった焼肉屋まで、背中をまるめて歩く。
四条ホルモン
ホテルから歩いて10分くらいのところにあるホルモン焼肉のお店にやってきた。フロントのお姉さんが「北見は焼肉が名物なんですが、個人的にはこのお店のホルモンが好きです」と笑顔で勧めてくれたのだ。
静かな通りとはうってかわって店内はたくさんの人でにぎわっていた。平日の夜なのに北海道の人は焼肉食べに来るのだ。そんなこといったら赤坂あたりの人も平日に焼肉食べてるかもしれないけれど。
お店の人におすすめを聞いて盛り合わせてもらった。牛サガリ、ホルモン、ジンギスカン肩ロース。これが北海道でいうところの黄金比らしい。
四条ホルモンは名前のとおりホルモンがふわふわしていて最高にイチオシなのだが、ホルモン以外もたまらない。特にジンギスカンは玉ねぎで挟んで特製のタレで食べると、これはもう、すみませんとしか言いようがない。
そうそう、このタレだが、ニンニクとネギ、その他いろいろを特別に配合してじっくり熟成させてから提供しているのだとか。なるほど納得の美味さである。
僕はこの週末にマラソン大会を控えていたのでお酒は飲むまいと思っていたのだけれど、お店の人に北見の地ビールを勧められてしまったので仕方がない。地元の人のおすすめには従う、そういう企画である。
食後にハッカ飴をもらい(北見らしさ!)すでに北海道を満喫した気分でお店を出ると、外は風が強くなり雪が混じっていた。予報によると明日は今日よりもぐっと寒くなるという。
近くのコンビニでカステーラを買って滑らないよう速足でホテルに戻った。
出張に前日入りすると、この前日の夜の過ごし方に苦慮するものだ。翌日のために酔いつぶれるわけにもいかないし、かといって興奮しているので寝るにも寝られない。しかも冬の北海道は日の入りが早いので夜がやけに長いのだ。
ホテルの部屋で返信し忘れていたメールの返事を書いたりしているうちに、寒くなってきたのでベッドにもぐりこんだらそのまま寝ていた。遠くからぼんやりと風の音が聴こえていた。