特集 2024年5月9日

詳しくない人の音声ガイドも楽しい

これは詳しくない人によるキリンの音声ガイドの一部

動物園や博物館にある音声ガイド。ただ見所を教えてくれるだけではなく、声優さんのいい声で世界観を演出してくれたり役になり切って楽しませてくれるものもある。

情報以外の側面も充実しているのだ。

敢えて情報を無くした音声ガイドってどうだろう。詳しくない人の音声ガイドだ。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

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3人の詳しくないナビゲーター

準備をして上野動物園にやって来た。

ゴールデンウィーク明けだが賑わっていた

今回の詳しくないナビゲーターはこちらの3人。 

安藤さん。剥かずに食べるのが得意。動物に詳しくない。写真はこの記事(2000人に「がんばって!」を言うと自分が何を言ってるのかわからなくなります )より
江ノ島さん。たくさん食べる。動物に詳しくない。写真はこの記事(外でリングフィットアドベンチャーをやると気持ちいい )より
窪田さん。坂口安吾が好き。動物に詳しくない。写真はこの記事(短くなった竹ぼうきを長くする)より

3人には、上野動物園にいる動物についてなんでもいいので語ってガイドしてくださいと頼んである。

みんな戸惑っていたが、動物1種類について2分ほどの音声を送ってくれた。詳しくないものについて2分話すって大変だっただろう。どんなガイドをされるのか楽しみである。 

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「なんて言うかなあ、灰色で」

ゾウのエリアに来た

イヤホンを付けて音声を再生する。ゾウを案内してくれるのは安藤さん。

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入ってまずゾウがいるじゃないですか。ゾウを見たいじゃないですか。大きいから。

で、えっとー、ゾウを見ると思うんですけど。ゾウってほら、あの、なんて言うかなあ。灰色で。
…!!

吹き出しそうになった。これが詳しくない人の音声ガイドだ。

しかししゃべりが軌道に乗るといいことも教えてくれる。

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鼻が長いし耳がでかいと思うんですけど、あれって鼻も耳も中に骨が入ってないんですよ。だからゾウが化石になって出てきた時、骨だけをもとに復元しようとするとあの形にならないらしいんですよ。
砂の上で寝るゾウ
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だから何万年か後の未来の人が骨を掘り起こしても、こんな動物がいたって想像ができないと思うんですよね。すごくないですか?

そう考えると、今見といたほうがいいですよ。パオーンって鳴くのも想像できないと思うし。

そうか、確かに

当たり前みたいにゾウの姿を受け入れていたけど、骨格から想像できない変わった形をしているのだ。

そうかそうか。いいことを聞いた。動物に特別詳しくなくてもこんな風に思いがけないおもしろい情報を聞けたりする。実物を見ながらなので、話に説得力が出るのも良かった。

ゾウはずっとゴロゴロしていた

 ガイドを聞きながらの見物はすごく心地よかった。耳と目がちょうどいい具合に集中できる。

こんな感じで詳しくないガイドを聞きながら動物園を楽しんだ。話の傾向別に紹介します。

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人の視点を聞ける

猿山に来た

ガイドは窪田さん。

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こちらは猿山です。仲間同士で触れ合うサルたちが多い中、一匹で暇そうにしているサルが、大抵見つかります。
触れ合うサル
暇そうなサル
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私たちは普段、動物を見て暇そうだという感想を抱くことはありません。

しかしサルは人間に近い動物だからこそ、暇そうという身近な感想を抱いてしまうのかもしれません。

 考えたことなかったが確かにそうだ。じっとしている牛とじっとしているサルがいたらサルの方が暇そうだ。

窪田さんは触れ合ってないサルを見て暇そうと思い、そう思う自分とサルとの距離感のことを考えていた。

感心してしまった。動物園で考えることって人によって全然違うのだな。

これも暇そうなサル
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サルの顔をじっと見ていると、私とあなたの違いはなんなんだろうと訴えかけたくなるような、あるいは訴えかけられてるような、そんな気分になります。

 とことん自分とサルの違いを考える窪田さん。

僕も訴えかけられてるような気持ちで眺めたが、答えらしいものは出なかった。同じかもな。落ち着いた声の窪田さんのガイドが頭の中にひたすら詰め込まれて残った。

この後ガイドはボノボのYouTubeの話になり、ウェブブラウザでパックマンが遊べる話になり、好きなナムコのゲームの話になって終わった
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もう一つ、人の視点

キリンのエリア

ガイドはまた窪田さん。

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こちらはキリンです。キリンというとついつい首の長さばかりに注目してしまいがちですが、実は他に注目してほしい部分があります。

それは太ももの筋肉。

太もも?
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はち切れんばかりの筋肉。艶かしさ。新幹線のフォルムのような筋肉の機能美的な魅力を、あなたはそこに見ることになるでしょう。

この前私が動物園に行った折、キリンの足のあまりのきれいさに気づき、じっと見つめていたところ、ついに私の方が照れで根負けして目をそらしてしまうということがありました。そういう類の恋愛ってありますよね。

恋愛?

見て照れる気持ちは分からないが、確かに大きな体を支える太ももは細いながらもがっしりしている。

注目したことなかったな。音声を聞きながら見ると太ももが艶めかしく見えてきた。音声ガイドの説得力。 

この後、キリンはツノがあって舌が青くて長いので悪魔的。加えて足が艶かしいので小悪魔だ、という論を展開していた

音声ガイドは「小悪魔系女子はお好きですか?」という問いかけで終わった。

キリンを見て小悪魔系女子のことを考えるとは思わなかった。 

後ろ足をクロスさせて草を食べていた。窪田さんが見たらなんて言うだろう

一方、安藤さんもキリンに触れてくれていた。

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キリンは骨を復元しても首が長いんだろうな。これはいいか、キリンはいいか。

でもキリンは見たいですね。顔がおかしいですよね。骨なのかツノなのかよく分かんないのがあって。

 本当に人によって見るところが違うのだ。窪田さんが太ももに照れて目をそらしている時、安藤さんは骨格のことばかり考えている。

人の視点で見る動物園、とんでもなくおもしろい。

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