入ってまずゾウがいるじゃないですか。ゾウを見たいじゃないですか。大きいから。
で、えっとー、ゾウを見ると思うんですけど。ゾウってほら、あの、なんて言うかなあ。灰色で。3人の詳しくないナビゲーター
準備をして上野動物園にやって来た。
今回の詳しくないナビゲーターはこちらの3人。
3人には、上野動物園にいる動物についてなんでもいいので語ってガイドしてくださいと頼んである。
みんな戸惑っていたが、動物1種類について2分ほどの音声を送ってくれた。詳しくないものについて2分話すって大変だっただろう。どんなガイドをされるのか楽しみである。
「なんて言うかなあ、灰色で」
イヤホンを付けて音声を再生する。ゾウを案内してくれるのは安藤さん。
吹き出しそうになった。これが詳しくない人の音声ガイドだ。
しかししゃべりが軌道に乗るといいことも教えてくれる。
だから何万年か後の未来の人が骨を掘り起こしても、こんな動物がいたって想像ができないと思うんですよね。すごくないですか?
そう考えると、今見といたほうがいいですよ。パオーンって鳴くのも想像できないと思うし。
当たり前みたいにゾウの姿を受け入れていたけど、骨格から想像できない変わった形をしているのだ。
そうかそうか。いいことを聞いた。動物に特別詳しくなくてもこんな風に思いがけないおもしろい情報を聞けたりする。実物を見ながらなので、話に説得力が出るのも良かった。
ガイドを聞きながらの見物はすごく心地よかった。耳と目がちょうどいい具合に集中できる。
こんな感じで詳しくないガイドを聞きながら動物園を楽しんだ。話の傾向別に紹介します。
人の視点を聞ける
ガイドは窪田さん。
私たちは普段、動物を見て暇そうだという感想を抱くことはありません。
しかしサルは人間に近い動物だからこそ、暇そうという身近な感想を抱いてしまうのかもしれません。
考えたことなかったが確かにそうだ。じっとしている牛とじっとしているサルがいたらサルの方が暇そうだ。
窪田さんは触れ合ってないサルを見て暇そうと思い、そう思う自分とサルとの距離感のことを考えていた。
感心してしまった。動物園で考えることって人によって全然違うのだな。
とことん自分とサルの違いを考える窪田さん。
僕も訴えかけられてるような気持ちで眺めたが、答えらしいものは出なかった。同じかもな。落ち着いた声の窪田さんのガイドが頭の中にひたすら詰め込まれて残った。
もう一つ、人の視点
ガイドはまた窪田さん。
こちらはキリンです。キリンというとついつい首の長さばかりに注目してしまいがちですが、実は他に注目してほしい部分があります。
それは太ももの筋肉。
はち切れんばかりの筋肉。艶かしさ。新幹線のフォルムのような筋肉の機能美的な魅力を、あなたはそこに見ることになるでしょう。
この前私が動物園に行った折、キリンの足のあまりのきれいさに気づき、じっと見つめていたところ、ついに私の方が照れで根負けして目をそらしてしまうということがありました。そういう類の恋愛ってありますよね。
見て照れる気持ちは分からないが、確かに大きな体を支える太ももは細いながらもがっしりしている。
注目したことなかったな。音声を聞きながら見ると太ももが艶めかしく見えてきた。音声ガイドの説得力。
音声ガイドは「小悪魔系女子はお好きですか?」という問いかけで終わった。
キリンを見て小悪魔系女子のことを考えるとは思わなかった。
一方、安藤さんもキリンに触れてくれていた。
キリンは骨を復元しても首が長いんだろうな。これはいいか、キリンはいいか。
でもキリンは見たいですね。顔がおかしいですよね。骨なのかツノなのかよく分かんないのがあって。
本当に人によって見るところが違うのだ。窪田さんが太ももに照れて目をそらしている時、安藤さんは骨格のことばかり考えている。
人の視点で見る動物園、とんでもなくおもしろい。