特集 2020年1月13日

台湾で知る魯肉飯の多様性

台湾で魯肉飯の多様性に溺れてきました。

昨年の秋、台湾を北から南へと縦断する旅行をした。主な目的はテナガエビの釣り歩きインスタント麺の源流巡りだったが、せっかくなのでもう一つやりたかったことを詰め込んだ。それは魯肉飯(ルーローハン)の食べ歩きである。

今さら台湾で魯肉飯を食べた話なんてベタ過ぎるだろと思うかもしれないが、これが店や地域によって、かなり違う食べ物だったのだ。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

前の記事:トリュフって本当にうまいのだろうか(デジタルリマスター版)

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私がイメージしている台湾の魯肉飯

この旅の3年前も台湾を旅行しているのだが、その時に食べた魯肉飯が、私の中ではスタンダードなものとして記憶されている。

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台湾南部の都市である高雄の、三牛牛肉麺という麺料理がメインの店で食べました。

それは高雄での遅い昼食として、日本におけるラーメン屋のチャーシュー丼みたいな感じで注文したものだ。

店の名物である牛肉麺をすすりつつ、青菜の炒め物などと一緒に食べた魯肉飯は最高だった。

正直に言えば3年も前の話なので、味はまったく覚えていないのだが、写真を見返す限り、こんなの最高に決まっている。うん、100点だ。

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白米をガシガシと食べさせるために生まれてきた、八角の香りがする甘じょっぱい肉と脂に悶絶。

台湾旅行の前にこの写真を見返して、もっといろんな魯肉飯を食べたいと思ったのは、そりゃ当然の話だろう。

台北の路地裏で夜中に食べた豚皮の魯肉飯

今回の旅で最初の魯肉飯は、米苔目という米粉と澱粉で作る麺が衝撃的だった(こちらの記事参照)、台北の高家荘で真夜中にいただいた。

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またこの店に来られるとは思わなかった。

メンバーは5人ほど。この店自体は明るい大通りに面しているのだが、店が混んでいたために、一本路地に入った二号店みたいなところに案内された。

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自分からはなかなか入っていけない路地裏の店へ。

店内では地元の方々が子連れでに賑やかに宴会をしている。物理的にも心理的にも、旅のメインストリートから一本外れた場所に導かれたんだなと胸が高鳴る。

ここで名物の米苔目などと一緒に、あまり過度の期待はせずに魯肉飯を注文したのだが、さすがは3年前に一杯の米苔目で私を感動させた店だけあって、こだわりの感じられる魯肉飯が出てきた。

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肉が二層になっているのがわかるだろうか。


私がこれまでに食べた魯肉飯は、赤身肉と脂の粗いミンチの煮込みという感じなのだが、ここの具はちょっと違う。

白い脂と茶色いゼラチン質がオセロのようにくっついた、サイコロ状の部位がメイン。そこに細かい肉がちょこっと混ざっているのだ。

これは豚バラ肉の皮部分だろうか。皮の下にある脂の層を程良く残した状態で切ることで、独特のトロみを生み出しているのではないか。

これは小さなラフテー(沖縄の皮つきバラ肉を使った煮込み)だ。とかいって、全然違う部位だったりして。

実際のところどうなのかは謎なのだが、お肌が必要とするコラーゲンをこの一杯で三日分は摂取できそうなトロットロの具が、サラサラの米と最高の相性だったのである。初日から100点でたね。

ずっと本場の鬍鬚張に来たかったんですよ

翌日の夕食にやってきたのは、憧れの鬍鬚張(ひげちょう)魯肉飯である。覚えている人も多いと思うが、この鬍鬚張チェーンはだいぶ前に日本にも店がたくさんあったのだが、現在は石川県金沢市の隣の野々市市(※2019/01/13 21:43修正)に2店があるのみ。鬍鬚張への憧れが募りすぎて、わざわざ食べに行ったことがある(こちら)。そしてさらに高まった本場への片想い。

前回の台湾旅行でこの店の前を通ったものの、台湾名物である夜市を優先したために入らず、そのことをずっと悔やんでいたのだ。

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本店に当たる美食文化館にやってきた。

今回は夜市を後回しにして、お腹の空いている万全の状態で鬍鬚張へと向かう。

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ようやくこの扉をくぐるときが来たのだとじっくり感動したいところだが、店の前が強烈な腐豆腐の匂いに包まれていたのであわてて入店した。
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仕事が落ち着いた頃なのか(1981年)、創業者である張炎泉さん(左側)の髭がない写真が飾られていた。剃っちゃうんだ。
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8名と大人数だったが、タイミングよく座ることができた。

鬍鬚張はファストフード的なイメージだったが、ここの店舗はかなり広く、内装も凝っている。

早速メニューを確認すると、シンプルな魯肉飯は端に追いやられて、いろんな具が追加された全部乗せ的なセットや、豊富なサイドメニューが用意されていた。

このメニューを見ながら酒が飲めそうだと嬉しくなったが、この店には酒がないという罠。

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1元は4円弱くらいで、魯肉飯(小)が39元。安い。
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あえて霜降牛丼やサバの一夜干しを食べて帰るという茨の道も選べる。選ばないけど。

鬍鬚張で魯肉飯さえ食べられれば私は幸せだと思っていたが、こうなるとメニューの端から端まで全部頼みたい。

さすがに全部は無理だけど、この人数ならかなり試せそうである。大人数で来て本当に良かった。ありがとう、付き合わされた同行者たちよ。

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簡易化された英語と日本語のメニューもあった。
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煮卵的なものがアヒルの卵だと今気づいた。食べればよかったなー。
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来てよかった、ありがとう鬍鬚張

こんなチャンスなんて、また3年は訪れないと思われるので、後悔しないようにバンバンと注文をする。さっきメニューを見直して、もっと頼めばよかったと後悔しているけど。

しばらくすると素敵なユニフォームを着た店員さんが、頼んだ料理を運んできてくれた。

ありがとうございます!

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どうにかして、そのTシャツを買えないだろうか。あとロゴの入った皿と箸も。

茶色い木目のテーブルにズラリと並んだ、一辺の緑のない、見事に茶色い料理達。

これだ、この景色が見たかったんだ!

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こうして写真を見返してもニヤけてしまう。
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個人的には台湾の味というよりは金沢名物となっていた鬍鬚張の魯肉飯。甘さは控えめで肉はホロホロ。程良く八角が効いた肉がパラパラの白米を優しく包み込む。付け合わせの漬物が甘くて驚いた。
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鬍鬚張がまだ日本にあったとき、職場の同僚だった本田君がよく食べていたあっさり味の雞肉飯。味の濃いサイドメニューを頼むならこれも有りだ。    
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鶏と豚が両方乗った夢のメニュー、雞魯飯。2種類の具を、左右に分けてではなく、上下に重ねて盛っているのがおもしろい。

さすがは鬍鬚張、味の完成度がどれも高い。個人的には魯肉飯に添えられた漬物が甘いことに驚いたが、台湾はたまに不意打ちでこういう味付けが出てくるね。僕は好きだ。

紅麹の甘さを生かした焼き豚、カリッカリに揚げられた香ばしい肉、しっかりと苦いニガウリと骨付き豚肉のスープ、優しい歯ごたえのタケノコの炒め物など、どれも異国情緒を感じさせてくれる新鮮な料理なのに、不思議と舌にマッチする。

どうしても私は鬍鬚張をファーストフードや牛丼屋のイメージでとらえてしまうが、鬍鬚張は鬍鬚張だ。日本風にローカライズされないこのままの店が、北千住か御徒町あたりにできてほしい。でもビールは置いてほしいかな。

鬍鬚張、やっぱり来てよかった。100点あげちゃう。

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二階はちょっとしたミュージアムになっていた。
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すごく気になったけど、全く読めないので買わなかった本。
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大食いタレントのもえあずさんが来店していたらしい。
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もしかしてこのサイズを食べたのかな。台湾で知るもえあずの凄さ。
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お弁当も売られていた。どうにかして日本まで届けてくれないか。

朝ごはんに食べる魯肉飯がまたうまい

翌日の朝、台北最後の食事として、今度は路地裏系の魯肉飯を食べに、金峰魯肉飯という店へやってきた。

この旅行は全部で15人くらい参加者がいて、なんとなくみんなで移動しつつ、個々の目的に応じて自由に行動するというスタイル。

昨日の鬍鬚張だけは私の強い要望だったが、それ以外の店は、同行者にくっついていった。そのため予備知識なしの行き当たりばったりで、各地の魯肉飯と出逢っていくこととになる。

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最高の構えを見せる店に連れてきてもらった。メニューに写真などないので、漢字の組み合わせから料理を予想していく。
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私の注文はもちろん魯肉飯。煮卵と当てずっぽうで頼んだスープをセットにした。
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高級ナヨウジコショウビン。

この店の魯肉飯は、なぜか吉野家の牛丼を思い出させる味付けで、八角は控えめで醤油の味が立っている。

肉はみじんではなく細切りで、かなり存在感が強め。このタイプもいいなあ。こりゃ100点の朝食だ。

魯肉飯の一番を決める必要がなくて、本当に良かったと心から思う。

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付け合わせは若いメロンの塩漬けだろうか。岡山かどこかで食べた漬物に似ている。

一緒に頼んだスープは、何を頼んだのかは忘れたけれど、スルメに貝柱に干し椎茸と、乾物の味がしっかりとした体の温まるスープだった。

出汁の構成要素が全く違うため、日本だとなかなか出会えないタイプの味である。舌に馴染む味も嬉しいし、舌が驚く味もまた嬉しい。

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この組み合わせが台湾で一般的なのかは謎。
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台中でガチョウの魯肉飯と出逢う

台北から台中へと移動して、ガチョウ料理の専門店である黃記鵝肉冬粉という店にみんなでやってきた。

誰もガチョウを食べたことがなく、台中の名物なのかすらもよくわからないという、とてもフワッとした状態だ。

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ガチョウってどんな鳥だったかな。
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入り口で注文をしてから入店するスタイルのようだ。お酒は売っていないので、買ってきて持ち込む。

この店にはさすがに魯肉飯はないだろうと思ったら、なんとガチョウの肉を使った魯肉飯があるようだ。

すごい、行く先々で魯肉飯が俺を待っているな。

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豚でも鶏でもなく、ガチョウの魯肉飯だ。
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学食みたいな二階席へと通された。なんだか部活の合宿っぽさがある。

注文した鵝魯肉飯は、ガチョウの肉や皮が椎茸と一緒にトロトロになるまで煮込まれたものが、ご飯にたっぷりと掛かっていた。

味つけはあっさりだけど意外とスパイシー。良質の地鶏を思わせるガチョウの旨味が頼もしい。

これもまた良し。新しいタイプの100点、汁掛け飯の最高峰というべき旨さだ。水炊きの最後に食べるおじやとかが好きな人(私)には堪らないだろう。

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この味とたまたま出逢えてよかった。

それにしてもガチョウがうまい

鵝魯肉飯もうまいのだが、ぶつ切りの肉やスープなど、シンプルな料理がどれを食べてもうまいのよ。

ガチョウの肉は歯ごたえが心地よく、野性味の名残りは感じるけど意外と癖は無い。ボリュームがあって噛みしめると優しい旨味がジュワっと染み出てくる。いいわー。

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ガチョウが想像よりも大きかったようで、ちょっと注文し過ぎてしまった。鶏よりもだいぶ大きいので気を付けよう。

特にうまいかったのが皮の部分。厚みがあってしっかりしているのに脂っこくないのだ。

ガチョウの特性なのか、料理人の腕なのか、全く胃が持たれない脂なのである。日本では馴染みのない食材だが、これでラーメンとか作ってみたい。

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骨付きの肉も分厚い皮もにじみ出るスープも最高。
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台中の魯肉飯は肉が塊だった

台中で朝を迎え、近くの市場へ朝ご飯を食べに行った。ここにも魯肉飯はあるだろうか。

うん、すごくたくさんあるね。

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魯肉飯屋さんが並ぶ一角を発見。

魯肉飯を看板に掲げる店がいくつもある中で、一番にぎわっていた山河魯肉飯という店に並ぶことにした。テーマカラーは赤だ。

これぞ市場の人気店という感じで、朝から気持ちが盛り上がる。

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オープンキッチンスタイル。
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開放感溢れるイートインスペース。最高じゃないですか、この雰囲気。

頼むものは魯肉飯と決めているのだが、一応メニューを確認すると、なにやら様子が違うようだ。

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あれ、俺の知っている魯肉飯と違うぞ。

魯肉飯の写真には豚の角煮がドーンと乗っていた。これまで食べたタイプの魯肉飯は、ここでは肉燥飯と呼ぶようだ。

困った、食べ歩き中の身としては、どっちを頼むべきだろうか。名前で選ぶか、形状で選ぶか。ちなみに魯肉飯は55元、肉燥飯は35元。

迷っているうちに注文の列は進み、私の目の前には煮込まれている最中の塊肉がドーンと現れた。

はい、こっちでお願いします。

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肉汁とゼラチンと脂が溶け込んだ最高の汁で煮込んだ豚バラ、そりゃ食べたいよね。串に刺して煮込むと崩れないようだ。

塊の肉が想像以上にでかく、そして柔らかい

こうして出てきた魯肉飯がこちらである。

肉がメニューの写真よりもでかい。嬉しい裏切り、もはや立方体である。よ、四角い肉!

なんだこの冗談みたいな食べ物は。マンガか。いいんですか、朝からこんな贅沢をして。

 

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皮つきのバラ肉なのが嬉しい。
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せっかくなので別角度から。肉の重さでご飯がつぶれちゃってるよ。

これで肉が硬かったらガッカリだが、これが箸であっさりとほぐれる柔らかさなんですよ。

しっかりと甘い味付けがされているが、見た目ほど肉に染みすぎているということもない。これぞ白米の上に乗る角煮の理想的な姿。100点以外の選択肢はない。

最初は味をつけずにじっくりと火を通し、仕上げに濃いタレを含ませているのかな。この店のレシピが欲しい。

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この柔らかさだからご飯と混ぜて食べられる。ちなみに漬物は久しぶりに甘いタイプだった。
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苦瓜と豚軟骨のスープが、肉と炭水化物を詰め込んだ胃をすっきりさせてくれる。

他の人が食べた魯肉飯も気になる

今回の旅で私が食べた魯肉飯は以上となるが、この後に訪れた台南で別行動だったグループから、濃いタレで煮込みまくったタイプの写真が送られてきたので最後に紹介したい。

さあ、一緒に悔しがろうではないか。

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この魯肉飯をおかずにご飯が食えるな。
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食べるとこんな表情になるそうです。文句なしの100点なんだろうな。

なんでも肉が香ばしくって、かなりおいしかったとか。それ、ものすごく気になる。

想像できそうできないよね、香ばしい魯肉飯なんて。もしかしたら一番これが好きなタイプかも。


台湾旅行で魯肉飯を食べるという行為は、日本から来た外国人がカツ丼を食べるみたいな感じだろうか。オーソドックスなスタイルがありつつ、地域によってウスターソース味だったり、ドミグラスソース味だったり。いや日本風カレーだろうか。あるいは意外とうどんが近いかな。

同じ料理を食べ歩いてみると、それなりに理解していると思っていた自分の知識が、あくまで概念のレベルでしかなかったことに気づかされる。続けて食べるから違いが判る。世の中は実に多様である。

でもせっかく旅に出て、ずっと同じものばかり食べるというのも、もったいない気がするんだよね。好奇心に対して胃袋と時間と財布は常に足りないのだが、だからこそ迷って選ぶ楽しみがあったりもする。

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3年前の旅行では、肉鬆という肉のでんぶが乗った魯肉飯も食べたよ。
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