特集 2014年8月12日

髭鬚張魯肉飯は石川県で食べられる!

今どきの若い人は「髭鬚張魯肉飯」って知らないですかね?
今どきの若い人は「髭鬚張魯肉飯」って知らないですかね?
確か15年くらい前だと思うが、「髭鬚張魯肉飯(ひげちょうるうろうはん)」という台湾版牛丼(実際は豚肉)みたいな、フルフルした細切れ肉をご飯に掛けた丼を出すチェーン店が流行った。

私はあの正体がよくわからない食べ物が好きでよく食べていたのだが、そこは競争の激しい日本の外食産業。気が付いたら撤退してしまい、本場台湾に行かなければ食べられない幻の食べ物になってしまった。

なんて思っていたら、なぜか石川県にだけ残っていたのだ。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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君は髭鬚張魯肉飯を知っているか

確か私が社会人になって数年目、華々しく日本デビューした髭鬚張魯肉飯(以下ヒゲチョウ)は、渋谷の道玄坂や六本木ヒルズに店舗を構えていたが、惜しまれつつも日本から撤退(したと思っていた)。

確かヒゲ面のチョウさんが作ったからヒゲチョウだった気がする。

日本で営業していたのは、たぶん10年前後の短い時期だったので、知っているのはアラフォーより上の世代に限られる食べ物なのだが、ヒゲ面の人を見ると、相手が知らなくてもついつい「ヒゲチョウに似ているね!」と言って惑わせてしまいがち。
ヒゲチョウを知らない若者を捕まえて、ヒゲチョウのモノマネをさせるパワハラ。
ヒゲチョウを知らない若者を捕まえて、ヒゲチョウのモノマネをさせるパワハラ。
そんなヒゲチョウが今でも食べられる店があると知り、8月2日にやってきたのは石川県金沢市の隣にある野々市市(ののいちし)。「野々市じょんがらまつり」の会場だ。

このお祭りにヒゲチョウの出店が来るらしいのである。
野々市市っていい名前ですね。
野々市市っていい名前ですね。
ちょっと話がややこしいのだが、石川のヒゲチョウは普通に店舗を構えて営業している。しかし、事前に問い合わせをしたところ、たまたま取材日がお祭りに出店するための臨時休業と重なったのだ。

久しぶりに食べるヒゲチョウが屋台というのも、なんだか感慨深いような気もする。
あ、ヒゲのチョウさんだ!
あ、ヒゲのチョウさんだ!
ヒゲのチョウさんが描かれた黄色いノボリを見つけて、あの頃の記憶が断片的によみがえってきた。

私が当時通っていたヒゲチョウは、勤め先があった五反田駅の怪しい側の店。牛丼とはちょっと違うフワフワした独特の肉が魅力的で、職場の同僚であるH田くんがホゲホゲいいながらやたらと食べていた覚えがある。
こんなラーメン屋みたいなコピーだったかな。
こんなラーメン屋みたいなコピーだったかな。

そこには懐かしの魯肉が煮込まれていた

当時はあまり深く考えないで食べていた魯肉飯を、今更ながらなんなのかを確認してみよう。

「魯肉」の文字に魚が入っているけれど、魚は使われていないはずだ。
こんなピーナッツ味噌みたいな食べ物だったっけ。もっとトロトロして色が薄かった気がする。
こんなピーナッツ味噌みたいな食べ物だったっけ。もっとトロトロして色が薄かった気がする。
豚のほほ肉が材料なのか。ほほー。爆発的な人気を呼んだそうだが、今では石川でしか食べられないというヒストリーを味わいたい。
豚のほほ肉が材料なのか。ほほー。爆発的な人気を呼んだそうだが、今では石川でしか食べられないというヒストリーを味わいたい。
屋台ということでメニューは肉のせ魯肉飯とドリンクのみ。肉に肉を乗せるのか。
屋台ということでメニューは肉のせ魯肉飯とドリンクのみ。肉に肉を乗せるのか。
屋台からちょっと距離を置いてポスターや看板をチェックしていたのだが、どうも私のイメージしているヒゲチョウとちょっと違うっぽい。

しかし、いざ注文しようと並んでみれば、そこにあったとろけた肉に膝を何度も叩いた。パシパシ。
あ、これだ!これこそ俺のヒゲチョウ!
あ、これだ!これこそ俺のヒゲチョウ!
そう、これこれこれ。このトロトロになった謎の肉(豚のほほ肉ですね)こそが、私のイメージしているヒゲチョウだ。パシパシと叩きすぎた膝が痛い。
あの黄色い紙パックが懐かしい!
あの黄色い紙パックが懐かしい!

なぜヒゲチョウが石川に残ったのか

せっかくここまできたので、なんで石川県にだけヒゲチョウが残っているのかという謎を店長さんに伺ったところ、なかなか意外な答えが返ってきた。

この店を経営しているのは、農園や飲食店などの経営もしている社会福祉法人の佛子園で、ヒゲチョウは障害を持った人と一緒に仕事をする事業の一環としてやっているそうだ。
この写真で台湾旅行にいってきたと言い張れそうだ。
この写真で台湾旅行にいってきたと言い張れそうだ。

そのきっかけは、理事長が六本木ヒルズのヒゲチョウを食べてうまかったからで、これを障害者達の仕事にしようと思い立ち、今年でめでたく10年目。

東京のチェーン店がすべて撤退した後も、台湾のヒゲチョウ本部(台湾には50店舗あるそうです)と直接フランチャイズ契約を結び、セントラルキッチン(料理を作る工場)も石川に新設したそうだ。
この黄色いシール、東急ハンズとかで売っていないかな。
この黄色いシール、東急ハンズとかで売っていないかな。

台湾本部とは、障害を持った人も働く事業所であるということを理解してもらった上でのフランチャイズ契約とのこと。

ちなみに東京のヒゲチョウでやっていた人が、現在はここのセントラルキッチンで商品開発をしているため、味のレベルは本場(私にとっては台湾ではなく10年前の東京)と変わっていないらしい。
こちらが店長のナカノさん。
こちらが店長のナカノさん。
そんな知られざる歴史を学んだところで、ずいぶん久しぶりとなる魯肉飯とのご対面である。
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これが懐かしの髭鬚張魯肉飯だ!

ここから先は、記事を書いている私もお腹がすいてきてしまったので、ダラダラした文章は無しで一気に紹介したいと思う(といいつつ長い)。
この黄色い紙の箱が懐かしい!
この黄色い紙の箱が懐かしい!
丼物が紙のパックに入っているのが斬新だったなあ。この箱だけでも売れるのではとヒゲチョウ好きは考える。
丼物が紙のパックに入っているのが斬新だったなあ。この箱だけでも売れるのではとヒゲチョウ好きは考える。
肉のせ魯肉飯というだけあって、魯肉飯の上に豚バラをフワフワに煮たものが乗っている。贅沢!
肉のせ魯肉飯というだけあって、魯肉飯の上に豚バラをフワフワに煮たものが乗っている。贅沢!
豚バラの下には、フルフルとした魯肉。これぞ肉のフルーチェ!
豚バラの下には、フルフルとした魯肉。これぞ肉のフルーチェ!
煮卵は流行りの半熟タイプではなく、ヒゲの男が作っただけあってハードボイルド(固ゆで)だぜ。
煮卵は流行りの半熟タイプではなく、ヒゲの男が作っただけあってハードボイルド(固ゆで)だぜ。
うわー、この味、すごく懐かしい。豚肉なのに鳥肌が立った。フワフワの豚バラ肉とフルフルの豚ホホ肉の競演が見事!

日本風に若干アレンジしてあるためか、八角の風味は抑え目で(台湾で食べたことないけど)、誰にでも愛される味付けとなっているようだ。

この口の中で溶けてしまう肉のフルーチェと白飯の組み合わせ、これが嫌いな人とは仲良くなれないかもしれない。
はるばる石川県まで来てよかった。
はるばる石川県まで来てよかった。
髭鬚張魯肉飯をほおばる私の目の前で、おばちゃんたちが炎天下でダンスを踊っていた。ここはどこの国なんだろう。
髭鬚張魯肉飯をほおばる私の目の前で、おばちゃんたちが炎天下でダンスを踊っていた。ここはどこの国なんだろう。
久しぶりのヒゲチョウ、やはりうまい。遠い記憶にあった味よりも、洗練されてうまくなっているかもしれない。

さて石川県にあるヒゲチョウは2店舗。1店はお祭りのため休業しているが、もう一店は営業しているそうなので、せっかくなのでハシゴしてみることにした。
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意外な場所にあるヒゲチョウ

2店目のヒゲチョウは、とても意外な場所で営業をしている。

なんと石川県野々市市のイオン御経塚のフードコートだ。現在日本に2店しか残っていないのに、厳選区であるイオンのフードコートでがんばっているのである。

大丈夫か、ヒゲチョウ!
でかすぎて全景が入りませんでした。
でかすぎて全景が入りませんでした。
土曜日の昼時、家族連れでにぎわうイオンのフードコートに、確かにヒゲチョウは存在していた。

マクドナルドを隣にして、何十店舗もありそうな店構えをしているが、実は2店舗という真実。
うちの近所のイオンにも入らないかなー。
うちの近所のイオンにも入らないかなー。
そういえばこんなメニュー構成だった気がする。鶏肉飯もあったあった!食べたことないけど!
そういえばこんなメニュー構成だった気がする。鶏肉飯もあったあった!食べたことないけど!
ラーメンとかタピオカドリンクは最近のメニューなのかな。ラーメンが魯肉麺でないのが惜しいな。
ラーメンとかタピオカドリンクは最近のメニューなのかな。ラーメンが魯肉麺でないのが惜しいな。
はなまる、ヒゲチョウ、マック、ミスドという並び。間違いさがしみたいだ。
はなまる、ヒゲチョウ、マック、ミスドという並び。間違いさがしみたいだ。
フードコートのシンボルともいえる呼び出し機に、まさかのヒゲチョウの文字である。
フードコートのシンボルともいえる呼び出し機に、まさかのヒゲチョウの文字である。

これがイオンのヒゲチョウだ!

この店舗ではベースとなる魯肉飯に、オプションで野菜と肉が選べるスタイルとなっていた。そういえば昔もそんなシステムだったかな。

当時はお金がなかったので(驚くことに今もない)、一番シンプルな魯肉飯ばかりを食べていたような覚えがある。

同行者が注文したトッピングなしの魯肉飯がこちら。小サイズ280円。
ザ・魯肉飯。
ザ・魯肉飯。
これこれこれこれ、まさにこれ。この具の量がご飯に対して物足りない感じこそ、私が知っている魯肉飯だ。

牛丼やカレー以上にご飯と具の配分が難しいのが魯肉飯。そういえば上司が「魯肉並盛り、ご飯小」とかいうややこしい注文をしていたような記憶があるな。

そして私が注文したのは、魯肉飯の並に豆苗とパーコーをトッピングした豪華版である。さらにタピオカ入りミルクティーもつけてしまった。
豪華!贅沢!750円!箸の下はラー油です。
豪華!贅沢!750円!箸の下はラー油です。
プラス50円でトッピングした豆苗がたっぷりでうれしい。台湾料理屋で頼んだらこれだけで250円くらいとられそうだ。

台湾版トンカツともいえるパーコーの下に、あのフルフルした魯肉飯。まさに肉オンリーのカツカレー状態である。
この丼、スタンプカードとかでもらえないだろうか。
この丼、スタンプカードとかでもらえないだろうか。
ご飯が見えない!魯肉も見えない!
ご飯が見えない!魯肉も見えない!
パーコーをよけて魯肉を確認!ちゃんとあった!
パーコーをよけて魯肉を確認!ちゃんとあった!
まずは魯肉飯として。石川県産の米との組み合わせは本場台湾を超えるのではないだろうか。
まずは魯肉飯として。石川県産の米との組み合わせは本場台湾を超えるのではないだろうか。
そして肉のせ魯肉飯!ひゃっほう!
そして肉のせ魯肉飯!ひゃっほう!
「肉ライス on 肉」というあらがえない力強さ、なんとなく台湾っぽい味付けの煮卵、シャクシャクとした歯触りが楽しい豆苗、そして箸休めとなる紅ショウガ(これは日本オリジナルかな)、パーフェクトな組み合わせである。

さっきのお祭りで店長に聞いたところ、このイオン店は帰省や出張などで石川にきた人が寄って、テイクアウトをたくさん買って行ったりするらしい。石川土産にヒゲチョウ、いいかもしれない。

それにしても、あのイオンにあのヒゲチョウである。何も知らないでイオンでヒゲチョウを発見したら、絶対にツイートした上にフェイスブックで浮かれた報告をするだろうなと思った。
ちょっとお高いけど魯肉の通販もやっているそうです。
ちょっとお高いけど魯肉の通販もやっているそうです。
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一応お休みの店舗にも来てみました

久しぶりのヒゲチョウをすっかり堪能したのだが、本日お休みしている金沢工大前店を、せっかくなので眺めてみることにした。

日本におけるヒゲチョウの聖地ともいえる場所である。たとえ営業をしていなくても、ぜひ見ておくべきだろう。
知っていたけれど、やっていない!
知っていたけれど、やっていない!
ファーストフードというよりも、台湾料理屋っぽいのかな。豚足とかずるい。
ファーストフードというよりも、台湾料理屋っぽいのかな。豚足とかずるい。
ヒゲチョウビール、いいなあ。
ヒゲチョウビール、いいなあ。
いつかは金沢工大前店のヒゲチョウで一杯。

これを合言葉にして、しばらく生きていきたいと思う。

石川県民にヒゲチョウについて聞いてみました

ところで石川県民はヒゲチョウのことをどれくらい知っているものなのか気になったので、この日の夜に金沢市でおこなわれた会合(金沢の一部にしかいない外来種と思われるスジアカクマゼミを捕まえて食べるというマニアックな会)に集まった人たちに聞いてみた。

皆さん、髭鬚張魯肉飯を知っていたら手を挙げてください!
はーい。
はーい。
だいたい半数くらいの知名度だろうか。石川に住んでいてなぜヒゲチョウを知らないんだと憤りたくなる半面、2店舗しかないのだから半分も知っていれば大健闘といえるのかもしれない。

ヒゲチョウを知っている、そして食べたことがあるという人も、昔は東京でも食べられたが今では石川でしか食べられないというサイドストーリーはあまり知られていないようだ。

そして新たな事実として、金沢大学の学生さんより、大学の生協でたまに売られているという情報を教えてもらった。また金沢工大前の店舗にもたまに食べに行くらしい。そんなことして金沢工大生と喧嘩にならないだろうか心配だ(ならない)。
ヒゲチョウ育ち(オーバーな表現)の金沢大学生。
ヒゲチョウ育ち(オーバーな表現)の金沢大学生。
また石川県立大の卒業生からも、在学中に購買部で買って食べていたという仰天エピソードをゲット。

金沢の大学生とヒゲチョウ、素晴らしい組み合わせだ。できればご飯だけでも大盛りにしてあげてほしい。

今度は台湾に行きたくなてきた

この記事を書くにあたってヒゲチョウについて調べていたら、本場台湾のヒゲチョウにはさらにうまそうなメニューが多数用意されていた(台湾のサイト)。

いつかは憧れの営業している金沢工大前店へ、そしていずれは栄光の台湾ヒゲチョウへ。夢は広がるばかりである。

髭鬚張魯肉飯(日本)
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