レゴブロック
もとより工作が好きで『できるかな』を愛視聴していたぼくは、箱庭世界を自由にくみたてることができるレゴブロックというおもちゃに、たちまち夢中になった。
その後、レゴが大好きになり、デパートに行くたびにあの手この手でレゴをねだった。一度などは、消防署のレゴがどうしても欲しくて、パープルタウン(※鳥取県倉吉市にあるショッピングセンター)のおもちゃ屋で号泣したのを覚えている。
そのときは、「レゴはだめだけど、花火を買ってやるから、泣くのはやめろ」という妥協案を提示されたが、消えてなくなる花火よりもレゴの方がいいとさらに号泣。その結果、ゲンコツをくらったうえに、何も買ってもらえず家に連れもどされた。
たしかにいま考えると、号泣というのは悪手であることにちがいない。しかし、ゲンコツはやりすぎだし、レゴの代替として花火はない。おもちゃとしてのベクトルが違う。
はっきりいってこの件では、まだ親を許していない。
世界最大規模のレゴショップ
レゴが欲しくて、パータン(※パープルタウンの略称)で号泣し、ゲンコツをくらってから三十数年後、ぼくは、イギリス・ロンドンにいた。
残念ながら、ビッグベンは工事中
ロンドンのレスター・スクエアという町は、ピカデリーサーカス、トラファルガー広場、コヴェントガーデンといったロンドンの名だたる観光地に囲まれた地域で、ロンドンのどまんなかといえる場所で、観光客が多い。
レスタースクエア周辺
レスタースクエアは、六本木から毒気を抜いて、銀座のエッセンスをプラスしたような町である。(個人的な印象です)
そんな場所に、世界最大のレゴ専門店「レゴショップレスター・スクエア店」はある。
レスター・スクエアのレゴショップ
レゴブロックの専門店なので、中はもちろんレゴだらけだ。
ロンドン名物とイギリスの偉人がお出迎え
近衛兵と、シェイクスピアだろうか。もちろん、どちらもレゴでできている。
ドット絵っぽさはんぱない
記念撮影しますよね
近衛兵とシェイクスピアが座っているのは地下鉄の車内だが、この地下鉄車両もちろんレゴ製。
ロンドンっ子、どんだけ地下鉄すきなんだ
レゴブロックの路線図
近づくとやっぱりレゴだ
横のツルツルした面を使わずに、長方形のポッチのある方を表にしているというなかなかシブい作り方だ。正直、欲しい。
階段踊り場の壁も全部レゴ
こんな感じで、レゴでできたロンドン名物がそこかしこにあるのだ。レゴであることを我慢すれば、ロンドンの観光名所めぐりをしなくてもいい。
実物は工事中だったビックベン。この細かな作りを見て欲しい。これぜんぶレゴなんだぜ。
うっかりレゴでできていることを忘れそうな作りだが、近づくとやっぱりレゴだ。
ホ に見えるけど、模様だ
この、なんともいえない熱量。感じ取ってほしい。もう、寿司までレゴなのだ。
寿司のレゴブロックってどういうこと?
ディスプレイだとおもうが、唐突にレゴで寿司だ。世界が歪んでいる。
お台場や名古屋のレゴランドは、まだ未訪なのだが、こんな感じなのだろうか?
生首量り売り
レゴショップでは、普通のレゴの商品の他に、パーツごとの量り売りなども行っている。が、面白かったのは、ミニフィグ(人形)のお好みセット売りがすさまじかった。
4.99ポンド(約750円)
自由にとって組み合わせていい
ミニフィグの頭、胴体、足、被り物、アイテムを、3体分自由に選んで750円というサービスだが、ビジュアルは、現世で犬の糞を片付けなかった人々が、首を切られてもなお生き続け、鬼に責め苛まれている地獄にしか見えない。
頭パーツ置き場
一緒に訪れたデイリーポータルZ・ウェブマスターの林さんが、セレクトしたミニフィグ
ロンドンのレゴショップにきた真の目的とは
さて、我々は、体育祭の仮装行列みたいなミニフィグをつくりにわざわざロンドンまで来たわけではない。
このロンドンのレゴショップには、自分の顔のレゴを作ってくれるフォトブースがあるのだ。
自分の顔の写真をレゴブロックでつくることができる「MOSAIC MAKER」
この機械「モザイクメーカー」は、レゴショップの店員の話によると、世界中でも、ロンドンと、もうひとつどこか(失念しました)のレゴショップにしかないという。
フォトブースの中で証明写真の要領で写真を撮ると、モノクロに変換して、レゴで再現できるように大きな写真がプリントアウトされ、それを組みたてるためのレゴブロックがセットで出てくるというものだ。
申込みで料金を支払うのだが、料金が99ポンドであった。日本円にして約1万5千円。
この、なんともいえない苛烈な値段設定。
悩んだ。出せない金額ではない。しかし、それだけあれば、現行のレゴシティの消防署とはしご車が買える。でも、そんなものアマゾンでどこでもいつでも買える。
わざわざロンドンまで来たのだから……と、ぼくが逡巡している間に、同行のデイリーポータルZ編集部の林さんは、さっさと自分のぶんを申し込んで作り始めていた。
早い
3パターンの中から好きなものを選ぶ
上から出てきている箱は、組みたて用のレゴが入った箱
たのしそう!
人のやつを見ていると、やっぱり自分もやらなければいけない気がしてきた。子供のころ、泣いてまで欲しがったレゴじゃないか(これではないけれど)。仕事をすれば、1万5千円ぐらいだせるぐらいのギャラはもらっているだろう。ここでやらないとたぶん後悔する。えぇい、ままよ。
撮るぞー
どうしても指名手配感がでてしまう
なるほどー、そういうことかー
途中、Windowsが再起動をはじめて、店員の兄ちゃんに「彼がブレイクしたぞ」などと軽口を叩かれつつ。無事プリントアウト終了。
できました
中には、黒、灰色、白、黄色の1ポッチのレゴブロックが入っており、この写真のとおりに組んでいけば、己の顔ができる……というわけだ。
やっぱり持て余す
というわけで、消防署のレゴが欲しいと号泣していた子供が、三十数年後ロンドンで自分の顔のレゴを作ったという話である。
レゴ好きとしては、本望だ。
しかし、日本に持ち帰り、組みたての機会をうかがっているうちに、もう数ヶ月経ってしまった。
完全に自分の顔を組みたてるタイミングを逸してしまった。
そういえば、父がなぜ、あのとき突然レゴを買ってきたのか、メールで聞いてみた。しかし、全く覚えていないようだった。
ついでに「組みたてるとぼくの顔ができるレゴブロック、いる?」と聞いてみた。やんわり断るんじゃないかと予想していたけれど「欲しい!頂戴!」と返事が返ってきた。
ほんとにいるのかな?