世田谷ボロ市でのこと
そもそもなぜ急に畳のヘリが気になり始めたのかというと、年末に行われた「世田谷ボロ市」でそれを見つけたからである。
世田谷ボロ市は年末年始の4日間だけひらかれる骨董市のこと。
世田谷ボロ市は年末年始の4日間だけひらかれる骨董市のこと。
普段は静かな町にボロ市がやってくる。
世田谷といえば泣く子も黙る高級住宅街である。僕なんて田舎者は世田谷と聞くだけで「ポルシェ!」「キャビア!!」「所ジョージ!!!」となる。
そんなセレブの闊歩する世田谷にボロ市とはなんとなく似つかわしくないな、そんな風に思っていた。
ボロ市に行くまでは。
そんなセレブの闊歩する世田谷にボロ市とはなんとなく似つかわしくないな、そんな風に思っていた。
ボロ市に行くまでは。
この辺でビニール袋持っている人はたいていボロ市帰りである。
この世田谷ボロ市、今年で438年もの歴史があるらしい。そもそも小田原城主がこのあたりで楽市を開いたことが始まりなのだとか。
「438」の部分を毎年更新しているのだろう。
さすがは世田谷である。僕が今住んでる神奈川県の海沿いなんて、きっとその頃まだ森だったぜ(今はいいところですよ)。どうだ、がぜん興味が沸いてきただろう。
行ってみるとさらにすごい。
行ってみるとさらにすごい。
歩けないくらいの人、人、人なのだ。
世田谷ボロ市は年末に2日、年始に2日、合計4日間だけ開催される。その期間になるとどこからともなくお店が集まってくるのだけれど、その数なんと700以上というからすごい。日本最大規模といわれる御殿場アウトレットのショップ数が225なので、それをはるかに凌駕する。まあ中には地べたに身の回りの物を並べただけのインドの路上みたいなスタイルのお店もあるのだが。
単品詰め放題天国
ボロ市ではあるジャンルに特化したお店が多い。タワシだったらタワシばかり売っているし、まな板だったら店中まな板だらけだ。さっきインドの路上と書いたが、我ながら言いえて妙である、そうだ、これインドだわ。
タワシ専門店の前に山積みにされたタワシ。見ているだけでゲシュタルト崩壊しそうな数。
こちらのお店はこけし一点突破。
まな板屋はボロ市の定番らしい。欲しかったが持って帰るのが重そうだったので諦めてしまった。今では後悔している。
インドのバナナ屋さん。
世田谷ボロ市の猫のポーチ。これだけ集まるといやがおうにも迫力が出る。
端材や石(本当に石だけ売っているお店とかある)、文具やお菓子など、ひとつだと額の小さいものには詰め放題というメニューが用意されていたりする。
ざっと見つけただけでも、靴下詰め放題、石詰め放題、ハンガー詰め放題、ボールペン詰め放題と、どれも普通は詰め放題しないものばかり。
専門店ばかりではない。売れるかどうかわかんないけど、とりあえず家にあるもの全部持ってきました!といった感じの男気あふれるお店もたくさんある。
古道具とタイヤのホイール屋さん。
売れてしまったのかもとからこのくらいだったのか、流れがまったくわからないお店。
ボロ市では商品に統一感とか世田谷ブランドなんてものは特に求めないのだ。売る人も買う人も、その辺の自由を楽しんでいるように見えた。
もともとは着物のお店が主流だったということで今でも着物のお店は多いです。
ボロ市名物代官餅
ところで世田谷ボロ市といえばはずせない名物がある。代官餅である。
なんでもつきたてのものすごいボリュームの餅が神社で売られているというのだ。評判を聞きつけ、これを買うためだけにボロ市にやってくる人もいるらしい。
それは食べないわけにはいかないだろう。
なんでもつきたてのものすごいボリュームの餅が神社で売られているというのだ。評判を聞きつけ、これを買うためだけにボロ市にやってくる人もいるらしい。
それは食べないわけにはいかないだろう。
代官餅はこちら。
僕が行ったのは年末開催の二日目の午後である。ボロ市は21時ごろまでやっているということなので、代官餅で腹ごしらえして夜まで掘り出し物さがすぞ!と息巻いてやってきたのだ。
そしたら売り切れだった。
聞くと代官餅は常に行列ができ、1時間待ちとか余裕らしい。どうなっているんだ世田谷。おかげで新年の目標ができた(代官餅買うこと)。
畳のヘリとの出会い
700以上あるといわれる骨董屋中、カーペットの切れ端なんかを専門に売っているお店でそれを見つけた。初めは着物の帯かと思った。
そう、これが
そう、これが
畳のヘリである。
これが畳のヘリである。一巻き約一畳分(7m)で400円というのは高いのか安いのかわからないけれど、1000円って言われたら高い気がするので安いんだと思う。
これ買って家で畳でも作ろうというのだろうか。使い方はわからないが、柄が和柄で洒落ていたので見るともなく見ていたところ、店主が帰ってきて店頭にぶら下げてあるバッグを指さした。
これ買って家で畳でも作ろうというのだろうか。使い方はわからないが、柄が和柄で洒落ていたので見るともなく見ていたところ、店主が帰ってきて店頭にぶら下げてあるバッグを指さした。
こ、これはまさか。
「編んで作るらしいんじゃ。」
店主はいう。
「畳のヘリを買った人は、カバンだとか帽子だとか、見事に作って持ってくるよ。作るのが楽しいみたいで、完成したらもう興味ないのかな。」
作る過程が楽しいのはガンプラみたいなものだろうか。僕もその創作意欲を感じたくて一巻購入した。
店主はいう。
「畳のヘリを買った人は、カバンだとか帽子だとか、見事に作って持ってくるよ。作るのが楽しいみたいで、完成したらもう興味ないのかな。」
作る過程が楽しいのはガンプラみたいなものだろうか。僕もその創作意欲を感じたくて一巻購入した。
なるべく柄の可愛いやつを選びました。
「あんたそれで何作るん?」
自分で売っておいてこの言い分である。こういうお店の人とのやりとりも世田谷ボロ市のおもしろささなのだろう。
さて何を作ろうか。
自分で売っておいてこの言い分である。こういうお店の人とのやりとりも世田谷ボロ市のおもしろささなのだろう。
さて何を作ろうか。
ボロ市の夜は長い。
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畳のヘリで、何をつくろう
一晩あけて、机の上に畳のヘリが置いてあるんだけど、さてどうしようか。
ネットで調べてみると、確かに畳のヘリでカバンを作っている人がたくさんいた。手芸の材料として売っているサイトもあるではないか。なるほど、これは来てるのかもな、畳のヘリブーム。
この波に乗っかって僕も何か作ってみようと思うのだが、一人では心細かったので美大を出ているライターに来てもらった。
ネットで調べてみると、確かに畳のヘリでカバンを作っている人がたくさんいた。手芸の材料として売っているサイトもあるではないか。なるほど、これは来てるのかもな、畳のヘリブーム。
この波に乗っかって僕も何か作ってみようと思うのだが、一人では心細かったので美大を出ているライターに来てもらった。
工作の腕に覚えのない二人。
しかし一方は美大卒。
地主さん、これ使って何か作れないですかね。
「………。」
「これは安藤さん、ほしいけど、いらないものですね。」
身もふたもないこと言ってくれる。そういうシラケたこと言っていてよく美大卒業できたものである(映像課)。
そう言わないで、なにかこう思いもよらない物、できないですかね。たとえばカバンとかさ。
身もふたもないこと言ってくれる。そういうシラケたこと言っていてよく美大卒業できたものである(映像課)。
そう言わないで、なにかこう思いもよらない物、できないですかね。たとえばカバンとかさ。
こうやって樹脂で固めるのどうですかね。
作品N0.1 樹脂で固めたオブジェ
というわけで最初に完成した作品がこちらである。
人選間違えたよね。
美大では使い道に迷ったら固めろ、とでも教えているのだろうか。いちど教授と話がしたい。
文句言うだけではいけないので僕も作ってみた。
文句言うだけではいけないので僕も作ってみた。
作品N0.2 しおり
しおり。
作品N0.3 メモ帳
中は普通に使える。
うーむ、どちらも地味である。
これを見るとやはり樹脂で固めるくらいしないと美大は卒業できないような気もしてきた。
僕が反省している隙に美大卒が新しい作品を作りはじめる。
これを見るとやはり樹脂で固めるくらいしないと美大は卒業できないような気もしてきた。
僕が反省している隙に美大卒が新しい作品を作りはじめる。
日も傾きドラマチックに。
そ、それは
作品N0.4 畳
なんですか、先生。
「畳のヘリだからキャンバスのヘリとして使ってみました。」
サイン入り。
理屈が通っているようでばっちり破たんしている。何を言っているんだろうか。
しかしいちおう形にはなった。そもそも僕たちに畳のヘリでカバンを作るような技術はなかったということである。
しかしいちおう形にはなった。そもそも僕たちに畳のヘリでカバンを作るような技術はなかったということである。
作品をオークションの中の人に鑑定してもらう
僕たちの作った作品、畳のヘリブームに乗って思わぬ高値になったりしないだろうか。
この連載では毎回目利きじゃない人に鑑定をお願いしているのだが、今回は最終回ということでモバオクの中の人に見てもらった。物が物だけに、どれだけ目利きが見ても意味わかんないだろう、と思ったのだ。
この連載では毎回目利きじゃない人に鑑定をお願いしているのだが、今回は最終回ということでモバオクの中の人に見てもらった。物が物だけに、どれだけ目利きが見ても意味わかんないだろう、と思ったのだ。
どうですかね、これ。
鑑定してくれるのはモバオクを運営するDeNAの土屋さん(左)と生田目さん(右)。お二人とはここ半年くらいちょくちょく顔を合わせているので、もう遠慮なく物が言えるくらいの仲にはなっている。
その関係が今回のこれで崩れなければいいと思う。
その関係が今回のこれで崩れなければいいと思う。
「これ、畳って字、あってます?」
書く前に携帯で調べていたのであっていると思います。
どうですかねこれ、ずばりいくらになりますか。
どうですかねこれ、ずばりいくらになりますか。
土屋「……。」 生田目「ちょっと似たようなものないか探してみます。」
半笑いの後、絶句。僕らの取材でよくあるパターンである。こういうときは少し話をずらすといいのだ、しかも先方寄りの話で振るのがコツである。
オークションのタイトルの付け方のコツ
オークションで出品物を少しでも高く売るため、タイトルの付け方にコツとかあるのか聞いてみた。
「あるといえばありますよ。ちゃんと説明してあるものがいいですね、やっぱり。」
生田目さんいわく、むやみにアオリ文句を入れるよりも、キーワードを押さえたタイトル付けがいいのだとか。たとえば
バカ売れ必至!いま、学校でもみんな持ってるし家にあると超絶便利間違いなし!!「畳のヘリ」
とかよりも
ユザワヤでも人気、ハンドメイド手芸の材料に「和柄畳のヘリ、7m(一畳分)」
の方が売れる可能性が高いのだとか。前者の方が売り手が見えて面白いと思うのだけれど、とにかくキーワード検索で上に上がってくるようなタイトルを付けることがコツらしい。なるほど。
さあ本題である。これいくらになりましょうか。
「あるといえばありますよ。ちゃんと説明してあるものがいいですね、やっぱり。」
生田目さんいわく、むやみにアオリ文句を入れるよりも、キーワードを押さえたタイトル付けがいいのだとか。たとえば
バカ売れ必至!いま、学校でもみんな持ってるし家にあると超絶便利間違いなし!!「畳のヘリ」
とかよりも
ユザワヤでも人気、ハンドメイド手芸の材料に「和柄畳のヘリ、7m(一畳分)」
の方が売れる可能性が高いのだとか。前者の方が売り手が見えて面白いと思うのだけれど、とにかくキーワード検索で上に上がってくるようなタイトルを付けることがコツらしい。なるほど。
さあ本題である。これいくらになりましょうか。
「2000円で。」
セットで2000円(予想)
案外高い!
でも考えてみると畳のヘリ400円を筆頭にメモ帳250円、レジン1000円、キャンバス500円など、材料の原価を足すとちょうどそのくらいになるのだ。さすがである。
でも考えてみると畳のヘリ400円を筆頭にメモ帳250円、レジン1000円、キャンバス500円など、材料の原価を足すとちょうどそのくらいになるのだ。さすがである。