特集 2015年2月27日

世界一長い高速道路トンネルを歩く

これは換気所内部。右の方はあまりのダイナミックさに感涙していると思われる。たぶん。
これは換気所内部。右の方はあまりのダイナミックさに感涙していると思われる。たぶん。
きたる2015年3月7日に開通する首都高中央環状線品川線。

これで、すでに開通している豊島区の高松入口から目黒区にある大橋ジャンクションまでと合わせて、ついに山手トンネル全線開通だ。

そしてこれは高速道路トンネルとしては世界一長いものとなる。その長さ18kmあまり。すごい。

で、なんと開通前のこのトンネルを見に来ないか、と首都高さんにお招きいただいた。もちろん二つ返事だ。

今回はその様子をご覧頂こう。すごいぜ、品川線。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

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徒党を組んで訪問

バスでトンネル内へ。高まる期待。
バスでトンネル内へ。高まる期待。
そして降りる。上がる歓声、取り出されるデジカメ。
そして降りる。上がる歓声、取り出されるデジカメ。
ゆくゆくは車がびゅんびゅん行き交う高速の真ん中に立つ! 不思議な感じ。
ゆくゆくは車がびゅんびゅん行き交う高速の真ん中に立つ! 不思議な感じ。
すごく静かなのも不思議な感じだった。
すごく静かなのも不思議な感じだった。
魅力的なS字! 上にぶら下がってるファンもすてきだ。
魅力的なS字! 上にぶら下がってるファンもすてきだ。
興奮して右往左往するぼく。
興奮して右往左往するぼく。
やおらしゃがみだす参加者一同。
やおらしゃがみだす参加者一同。
しゃがみ撮りスタイルの流行。
しゃがみ撮りスタイルの流行。
ご覧の通り、徒党を組んでの訪問だ。

せっかくなので同好の士とともにおうかがいしたい(というか、ひとりで行っちゃったら後々みんなに恨まれる)のだけれど、と申し上げたところ「15人までなら」とご返事いただいたので言葉に甘えて甘えまくってみんなで出かけた。甘党です。
この時点でかなり興奮していたとみえ、誤字がある。
この時点でかなり興奮していたとみえ、誤字がある。
このように募集したところあっというまに定員オーバー。有給を駆使した参加者が集った。

思えば同じ山手トンネルの大橋ジャンクション建設時にも「みんなで行きたいです!」と大挙して押しかけたのだった。ほんとうの「シェア」っていうのはこういうんだ。

いつもありがとうございます首都高さん。
かつて大橋ジャンクションの立坑をみんなでうっとりと眺めた。「みんなで建設中のジャンクション鑑賞」より。
かつて大橋ジャンクションの立坑をみんなでうっとりと眺めた。「みんなで建設中のジャンクション鑑賞」より。

別の道を歩んできたふたりが一緒になるのはたいへん

さて、見どころはたくさんあるのだが(たとえば大崎から大井までの区間は目黒川をトレースするようにその下を走っていて、つまりその道路の曲線は川の蛇行の転写なのだ! とか。これ話してると長くなるので泣く泣く割愛)、ぼくがもっともびっくりしたのが上の大橋ジャンクションそばの合流部だ。ここの説明をしよう。
みんなが思い思いに歩き回るこの部分は、大橋ジャンクションから入ってくる道路との合流地点。
みんなが思い思いに歩き回るこの部分は、大橋ジャンクションから入ってくる道路との合流地点。
それにしてもみんなのびのび思い思いしすぎではないか。
それにしてもみんなのびのび思い思いしすぎではないか。
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ここはどういう箇所かというと、こういう箇所だ↓下の「4」の場所。
図中「4」の部分。大橋ジャンクションからの道路と山手トンネルが合流するところ【「中央環状品川線大橋連結路工事 SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事」(首都高速株式会社/安藤ハザマ)パンフレットより・PDF】
図中「4」の部分。大橋ジャンクションからの道路と山手トンネルが合流するところ【「中央環状品川線大橋連結路工事 SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事」(首都高速株式会社/安藤ハザマ)パンフレットより・PDF】
トンネルで合流って考えるだけでたいへんそうだが、説明を聞いたら実際かなりたいへんそうだった。
【同じく「中央環状品川線大橋連結路工事 SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事」(首都高速株式会社/安藤ハザマ)パンフレットより・PDF】
【同じく「中央環状品川線大橋連結路工事 SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事」(首都高速株式会社/安藤ハザマ)パンフレットより・PDF】
上の図のように、シールドマシンで掘った別々のトンネルのセグメントを取り払って一体化するというトリッキーな方法だ。うまく表現できないけどこれすごいぞ。
こういうことです。【同じく「中央環状品川線大橋連結路工事 SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事」(首都高速株式会社/安藤ハザマ)パンフレットより・PDF】
こういうことです。【同じく「中央環状品川線大橋連結路工事 SJ14工区(1)EF連結路トンネル工事」(首都高速株式会社/安藤ハザマ)パンフレットより・PDF】
それがこの部分というわけ。左の道路が上から降りて合流していることが分かる。
それがこの部分というわけ。左の道路が上から降りて合流していることが分かる。
このすごさをどうたとえたらいいのか。別の道がひとつになるという意味では結婚生活に喩えられるだろうか。って、てきとうな比喩を自分で言って、なるほどそうか、と。それは一大事業にちがいない。まちがいない。たいへんだぞあれは。妙な喩えですまん。
合流部で記念撮影したら「この人40歳」みたいになった。たしかに小生が結婚したのは40歳のときでありました。そしてその矢印は結婚は一方通行であるということか。
合流部で記念撮影したら「この人40歳」みたいになった。たしかに小生が結婚したのは40歳のときでありました。そしてその矢印は結婚は一方通行であるということか。

興奮のあまりちゃんと説明してなかった

と、ここまでそもそも品川線がどういうものなのかの説明をしていなかった。というか、なんで結婚の話してんだ。

とりいそぎ下の図を見てもらいたい。
「C2」と呼ばれる首都高中央環状線がいよいよこれで完成なのです。【首都高速・東京SMOOTH「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)パンフレット」(PDF)より】
「C2」と呼ばれる首都高中央環状線がいよいよこれで完成なのです。【首都高速・東京SMOOTH「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)パンフレット」(PDF)より】
詳しくは「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)パンフレット」などをご覧頂きたいのだが、圏央道、外環道と合わせていわゆる「3環状」といわれる環状道路の一番内側が「C2」で、都心から半径約8kmをぐるりとまわっている。

これによって「C1」と呼ばれる都心環状線の交通量も減り、いろいろと便利になる。たとえば新宿から羽田空港に行くのがすごく楽になるのだ。その「C2」の西側・山手トンネルの最後のピースが品川線というわけ。

料金所を徒歩で通過

詳しく解説するときりがないし、ちゃんとした説明は首都高さんのウェブサイトはじめ至るところにあるので、そちらを見ていただくことにしよう。

説明もそこそこに、次は料金所が楽しかったという話をしよう。
料金所を歩いて通過するって、すごく不思議な感じ。
料金所を歩いて通過するって、すごく不思議な感じ。
首都高でトンネル内に料金所があるのはここだけだそうだ。へー。
首都高でトンネル内に料金所があるのはここだけだそうだ。へー。
おもしろい。料金所を歩いて通過って、なかなかできないぞ。

この料金所は五反田入り口のもの。地図で言うとここ↓
山手通りの目黒と五反田の間にあるトンネルへの入り口【首都高速・東京SMOOTH「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)パンフレット」(PDF)より】
山手通りの目黒と五反田の間にあるトンネルへの入り口【首都高速・東京SMOOTH「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)パンフレット」(PDF)より】
立面で見るとこう。料金所の位置はちょうど目黒線の下なんだな!【首都高速パンフレット「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)広報紙 しながわせん <10>」PDF・より】
立面で見るとこう。料金所の位置はちょうど目黒線の下なんだな!【首都高速パンフレット「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)広報紙 しながわせん <10>」(PDF)より】
料金所で働く方のための歩道橋。トンネルの中に歩道橋ってなんかふしぎ。目黒線の下にある歩道橋というわけだ。そして右の方が中を覗いているのは…
料金所で働く方のための歩道橋。トンネルの中に歩道橋ってなんかふしぎ。目黒線の下にある歩道橋というわけだ。そして右の方が中を覗いているのは…
キッチンが見えるから! もちろんトイレもある。そうだよねえ、こういう設備必要だよねえ。
キッチンが見えるから! もちろんトイレもある。そうだよねえ、こういう設備必要だよねえ。
と、料金所それ自体もおもしろかったが、ここで印象的だったのはこの五反田入り口がすごく急な下り坂だということだ。
料金所から再びトンネル内へ歩いて戻るところ。むこうが上り坂に見えるが、そうではなくて、今歩いている部分が急な下り坂で、その先は平らなのだ。
料金所から再びトンネル内へ歩いて戻るところ。むこうが上り坂に見えるが、そうではなくて、今歩いている部分が急な下り坂で、その先は平らなのだ。
こういう車で走っちゃうと分からない勾配を体感できるのも、歩きならでは。特にトンネル内は斜め具合が視覚的に分からないのですごくへんな感覚だ。楽しい。

さて、いよいよ冒頭写真の換気所に行ってみよう!
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換気ファンのファンになった

品川線には4つ換気所がある。中目黒換気所、五反田換気所、南品川換気所、大井北換気所だ。今回みんなで見たのは大井北換気所。これがすごかった。
「おおー!」って歓声が。
「おおー!」って歓声が。
このなんともかっこいい装置は換気ファン。
このなんともかっこいい装置は換気ファン。
そのファンが、ここ大井北換気所には3機置かれている。
そのファンが、ここ大井北換気所には3機置かれている。
このときは開通前でまだファンは動いていなかったので静かだったが、実際稼働すると大きな音が鳴るとのことで、壁には吸音パネルが貼ってあった。みんなむにむに手で押した。
このときは開通前でまだファンは動いていなかったので静かだったが、実際稼働すると大きな音が鳴るとのことで、壁には吸音パネルが貼ってあった。みんなむにむに手で押した。
換気ファンとはその名の通り換気するためのもので、トンネル内の排気ガスを外に出すいわばでかい換気扇だ。こんなにかっこいい換気扇はそうそうないぞ。家にほしい。

換気所の中にはこのほかに低濃度脱硝装置、SPM除去装置、消音装置などがあり、排ガスはきれいな空気になって上空へ出て行く。

考えてみれば地上の道路にはこんな装置はなくて排ガスはそのまま排出されるわけだから、もしかしたらこの品川線の換気所が働けば働くほど地上周辺の空気はきれいになるのではないか(個人の感想です)。
そういえば以前神山町換気所を見せてもらったこともあった。あのファンと消音装置もかっこよかった。(「工事中の山手トンネルを見てきた」より)
そういえば以前神山町換気所を見せてもらったこともあった。あのファンと消音装置もかっこよかった。(「工事中の山手トンネルを見てきた」より)

勝手に感無量

あと個人的に感無量だったのは、以前まだまだ工事中でこの換気所が立坑だった時にいちどおじゃましているからだ。
4年前にはこんなでした。
4年前にはこんなでした。
こんなでした。
こんなでした。
こんなでしたのよ!
こんなでしたのよ!
感無量。がんばったなあ…と。工事にたずさわったわけでもないのに。

縦並びから横並び、そして縦並びへと

さてそしてこの換気所は同時に避難通路でもある(残念ながら(?)ファンのある部屋は通らないけど)。なので、トンネルからこの換気所に移動するときは下のような扉を抜けていった。
トンネル道路脇にある非常口。
トンネル道路脇にある非常口。
こんな感じ。
こんな感じ。
この扉をくぐるとこんな魅力的な側道が!
この扉をくぐるとこんな魅力的な側道が!
で、おもしろいのは、この避難経路がトンネル内の場所によって異なるということ。

どういうことかというと、品川線は車線が別々のトンネルになっているのだが、それが横並びだったり縦並びだったりする。

たとえば五反田や目黒あたり、JRや京急の下あたりは横並びだが、この大井北換気所のあたりは縦並びだ。
縦並びなので避難通路として、上の写真にあるような側道を設ける必要があるが、横並びの区間は反対車線に逃げるようになっている。
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2つのトンネルの間はなんとわずか3m!

その「横並び」区間の避難口はこんなだ。
魅力的な狭い側道通路はなくて、反対側車線に出ちゃう。
魅力的な狭い側道通路はなくて、反対側車線に出ちゃう。
このように反対側の車線に避難する。

これにびっくりしたのだ。反対車線がすごく近くない? って。
こんな! 反対車線のトンネルとの距離はわずか3m!
こんな! 反対車線のトンネルとの距離はわずか3m!
反対車線が近いのは当たり前だと思うかもしれないが、これ別のシールドトンネルなのよ?。上の写真はその2つのシールドトンネルを横方向につなげている箇所。

つまり、シールドマシンが一度掘ったトンネルのわずか3m横を進んだということだ。これはすごい。だってちょっと間違っちゃったら薄皮突き破っちゃう。すごい!

なんだかすごさがあんまり伝わってない気もしますが、矢継ぎ早に次のびっくりにうつります。

そしてなんとこの横並びの車線は「右側通行」なのだ!
地上からの出入がスムーズになる。なるほどー!【首都高速・東京SMOOTH「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)パンフレット」(PDF)より】
地上からの出入がスムーズになる。なるほどー!【首都高速・東京SMOOTH「中央環状線 山手トンネル(湾岸線~渋谷線)パンフレット」(PDF)より】
なぜ右側通行にするのかというと、上の図のように、地上からの出入りの際に複雑な方向転換と立体交差が不要になるから。ちょっとパズルっぽいのでわかりづらいかもしれないけど、そうなんです。

どうせ反対車線は別のトンネルで、走行中は見えないのだから、右側通行の違和感は感じないので問題ないわけだ。なるほど。これ考えた人すごいと思う。

そしてジャンクション!

なんだかパンフレットの内容をなぞるだけの記事になりかけているが、最後の締めはちがうぞ。ジャンクションだ!
品川線の南の端、山手トンネルを出た大井ジャンクション。その上も歩かせてもらったのだ!
品川線の南の端、山手トンネルを出た大井ジャンクション。その上も歩かせてもらったのだ!
うおおーーー!ぼくは! いま! ジャンクションの! 上を! 歩いて! います! 大興奮!
うおおーーー!ぼくは! いま! ジャンクションの! 上を! 歩いて! います! 大興奮!
標識でかいなー!
標識でかいなー!
そしてむこうにはキリンの群れ! このジャンクションの開通により、あらたな湾岸ビューポイントができたわけだ。すばらしい!
そしてむこうにはキリンの群れ! このジャンクションの開通により、あらたな湾岸ビューポイントができたわけだ。すばらしい!
そしてさらに新幹線の車両基地もこんな角度から見えるようになるのだ!
そしてさらに新幹線の車両基地もこんな角度から見えるようになるのだ!
いやー、やっぱりかっこいいよね、ジャンクション。
いやー、やっぱりかっこいいよね、ジャンクション。

これにて完結

振り返れば2009年に工事中の大橋ジャンクションを見せてもらい800tクレーンによる架設を見て山手通りの立坑にもおじゃまし、と首都高さんにはいいものを見せてもらい続けてきた。

そしてついに全線開通。期せずしてデイリーポータルZは6年間にわたり山手トンネル工事をレポートし続けたことになる。けっこう貴重な記録なんじゃないだろうか。

まあ、毎回「かっこいい!」って言ってただけですけど。

品川線は途中水が出て工事大変だったと思います。ほんとうにお疲れさまでした。ありがとうございました。また呼んでください!
開通前の路面を痛めてはいけないと、トンネル内に駐車する車のタイヤの下には必ず板が敷いてあった。感動。
開通前の路面を痛めてはいけないと、トンネル内に駐車する車のタイヤの下には必ず板が敷いてあった。感動。

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デイリーポータルZでたびたびその魅力を訴求している「かわいいビル」。別に有名建築でもなんでもないんだけど、なんか愛らしいビルを愛でるイベントを大阪でやります。この世界の関西の雄・高岡伸一さんといっしょに。詳しくは→【こちら

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