特集 2012年3月2日

キリンを手のひらに乗せたい

かわいらしくできあがったので、かわいらしく表現してみた写真です。
かわいらしくできあがったので、かわいらしく表現してみた写真です。
むかしからティディベアが不思議だった。なんでクマ?実際のクマってそんなにかわいくないだろう。もっと定番になるべきかわいらしい動物がほかにたくさんあるように思う。

しかも、できあがったティディベアは解剖学的にまったくクマではない。

でもかわいいよね、ティディベア。

何が言いたいのかというと、一見かわいくないモチーフでも、そして出来上がりの姿形が多少違ってしまってもミニチュアにしてやわらかいとかわいくなるよね、ってことだ。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

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あのキリンを小さくやわらかくしたい

いつかぼくも作らねばなるまい、と思っていた。ドボクラフト(土木構造物のクラフト)を。
過日の萩原さんの記事、ダムの枕がすてきだった。→「ダム好きは重力式コンクリートの夢を見るか?」
過日の萩原さんの記事、ダムの枕がすてきだった。→「ダム好きは重力式コンクリートの夢を見るか?
先日、萩原さんがダム枕を作っていた。これはいい!と思った。

そういえば、田村さんも彼女が夢中の橋脚のミニチュアを作っていたっけ。
レジンとクッキーのミニチュア橋脚。これもすてきだった!→「高架橋脚をクッキーにして並べたい」
レジンとクッキーのミニチュア橋脚。これもすてきだった!→「高架橋脚をクッキーにして並べたい
デイリーポータルZのライター仲間の中でも特に自分と嗜好が近い(と思っている)このふたりがミニチュアを作っているのだ。ぼくもいつか作るだろう。

で、先日思いついた。ぼくはキリンを作ろう!と。ぼくはキリン好きなのだ。
キリンを見に行った記事を書いたこともあるぼくだ。→「千葉港キリンめぐり」
キリンを見に行った記事を書いたこともあるぼくだ。→「千葉港キリンめぐり
そう、ここで言う「キリン」とはガントリークレーンのことだ。その姿がまるでキリンのように見えることから広く通称「キリン」として知られている。とてもキュートなデカブツだ。巨大だけどかわいい。このふたつはちゃんと両立する。ちなみに生き物のキリンには全く興味がない。

ガントリークレーンとは、港のコンテナターミナルなどの岸壁に立って船に積まれた荷を陸に下ろしたり、その逆を行ったりする働き者。製鉄所など工場でも活躍している。「工場萌え」で鳴らしたぼく、これまでたくさんのキリンを見てきた。パソコンの中探したら写真がたくさん出てきた。
これがキリンだ。これは広島のコンテナターミナルにいる3匹。シマシマがかわいい。
これがキリンだ。これは広島のコンテナターミナルにいる3匹。シマシマがかわいい。
四日市の2匹。夫婦っぽい。すてき。
四日市の2匹。夫婦っぽい。すてき。
これはキリン好きすぎが高じて、なんとクレーンの真下に立たせてもらったときの写真!こうふんした!→「キリンの真下から見上げる!」
これはキリン好きすぎが高じて、なんとクレーンの真下に立たせてもらったときの写真!こうふんした!→「キリンの真下から見上げる!
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ほんとうは本物がほしいけどな

これは東京港の入り口。青海と大井の間。こうやって沖から眺めると、左右にキリンの群れが待ち構えている構図だ。大サバンナだ。
これは東京港の入り口。青海と大井の間。こうやって沖から眺めると、左右にキリンの群れが待ち構えている構図だ。大サバンナだ。
千葉港、製鉄所のキリン。奥と手前で種が異なる。
千葉港、製鉄所のキリン。奥と手前で種が異なる。
ややガニ股のキリンさん2匹。兄弟っぽい。
ややガニ股のキリンさん2匹。兄弟っぽい。
こちらは石炭など原料を揚げる一匹狼キリン。りりしい。
こちらは石炭など原料を揚げる一匹狼キリン。りりしい。
こちらは鹿島の製鉄所のキリン。鋼製品を船に積む働き者。こういうブルーの種もいるのだ。
こちらは鹿島の製鉄所のキリン。鋼製品を船に積む働き者。こういうブルーの種もいるのだ。
こういうグリーンもいる。これは川崎のキリン。
こういうグリーンもいる。これは川崎のキリン。
塩を荷下ろしするキリン。→岸壁にでっかい塩の山
塩を荷下ろしするキリン。→岸壁にでっかい塩の山
これはそのすてきな夜の姿。キリンは座って寝ると聞いたが。
これはそのすてきな夜の姿。キリンは座って寝ると聞いたが。
夕日に照らされると、さらにサバンナっぽい。
夕日に照らされると、さらにサバンナっぽい。
立て続けにキリン写真ばかり申し訳ない。いやでもこれでもかなり自制したんだぜ。すてきなキリンショットがたくさん出てきてさ。全部載せたかったんだけどさ。

で、このすてきなキリンのミニチュアを作ろうというわけだ。実物は、高さ40mなんてものもあるほど巨大なもの。それが手に乗ったらさぞかしかわいいだろうと思う。

やっぱり紅白シマシマがいいな

さて、これら写真で見るように、キリンと言ってもその形や大きさ・色はさまざま。どれをモデルにするか。

まあ、やっぱり紅白シマシマのやつだよね。
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まじまじみるとけっこうシュッとしてるのね。
まじまじみるとけっこうシュッとしてるのね。
スケッチしていくうちにだんだん部材を太くしていきたくなった。
スケッチしていくうちにだんだん部材を太くしていきたくなった。
で、いくつかのシマシマ種の写真から形をとろうとしたんだけど、こうやってあらためて見るとけっこうシュッとスレンダーなのな、キリンって。

スケッチしてみて分かったのだが、ぼくの頭の中にあるイマジナリーなキリンはもっと太っていた。こんなに脚細くない。

もっとずんぐり太っていた方がかわいいと思う。しかし一方で実物に忠実な比率で作りたいという思いもある。どうしたものか。この時点で悩むと思わなかった。
最終的な設計図。かなり太らせました。
最終的な設計図。かなり太らせました。
結局、かなり太らせた。かわいさ優先だ。きっとティディベアもこういう試行錯誤を経て最終的にクマとは似ても似つかぬものになったのだろうと思った。

それに、なんというか、ちゃんと作っちゃうと、それって鉄道模型みたいになっちゃうんじゃないかと思ったし、だいたい今回はやわらかいキリンにしたいのだ。つまり、材料が布的なものになる予定だ。それには太くしないと自立しない。

で、その材料を買いに行った。ユザワヤへ。

手芸の知識、ゼロ。

ユザワヤの勝手が分からない
ユザワヤの勝手が分からない
薄手のフェルトってとこかなー、と思っててきとうに購入(後に後悔する)
薄手のフェルトってとこかなー、と思っててきとうに購入(後に後悔する)
布といえばユザワヤだ。デイリーポータルZで頻繁に登場するこのお店、しかしぼくはほとんど利用したことがない。まったく勝手が分からず、かなりのへっぴり腰で買い物をした。

そうなのだ、ぼくは手芸的なことを全くしたことがない。道具もないし知識もないので、適当にフェルトを購入した。それで作ろうとしたのだが…
うまくいかない…
うまくいかない…
だいたいフェルトがうまく切れない…
だいたいフェルトがうまく切れない…
部品がただのフェルトくずになりつつある
部品がただのフェルトくずになりつつある
こんなはずでは…
こんなはずでは…
脚までできたところで断念。「手のり」を目指しすぎたために失敗。
脚までできたところで断念。「手のり」を目指しすぎたために失敗。
整頓下手もたたって、気がつくといろんなところに両面テープがくっついていたりする。
整頓下手もたたって、気がつくといろんなところに両面テープがくっついていたりする。
乙幡さんを尊敬する。手芸って難しいな!

というか、なんの下調べもなく「フェルトあたりでいいんじゃね?」って素材を適当に決め、かつ大きさも素材の特性・材料の厚みと工作性を無視して決めた結果がこのていたらくだ。

しかも、ぼくのものぐさな性格も手芸向きではないような気がする。両面テープとか接着剤とかが気がつくといろんなものにくっついていやがる。道具もすぐどこかに見えなくなる。切り出した材料と切れ端屑の区別がつかなくなる…

ふー、ふー。深呼吸だ。

ともあれ、もっと大きく作ろう。この大きさでは無理だ。
今度はうまくいきそう!
今度はうまくいきそう!
いいぞいいぞ!
いいぞいいぞ!
いいぞいいぞいいぞ!(笑みを浮かべているが、あいかわらず整理整頓はされていない)
いいぞいいぞいいぞ!(笑みを浮かべているが、あいかわらず整理整頓はされていない)
約2倍の大きさにしたら、うまくいきそうだ。

しかし、ぼく、接着剤と両面テープを駆使して作ったんだけど、これって「手芸」と呼べるんだろうか?いや、べつに呼べなくてもいいんだけどさ。

なんとなく、針と糸を使わずにくっつけちゃうのって、大工仕事で、ねじやヌキで接合すべきところを接着剤で済ませちゃうのと同じダメな感じがするんだけど。どうなんだろう。

まあしかし作業的には順調だ。なんせ手芸処女作。その道の方々には大目に見ていただきたい。
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こんなに時間がかかるものなのか!

今回、最終的に1体作るのに2日半かかった。実は数体作る予定だったのだが。

だってほら、こういうインダストリアルな装置はたくさん並んでいてなんぼじゃないですかー。連続と反復の快楽というか。

やっかいだったのは紅白のシマシマだ。清水港のキリンをモデルとしたら、白一色でもよかったのだが…(港の景観に合わせ、クレーンがシマシマでも赤くもなく純白なのです、清水港のものは)

残念なことに今回は1体で精一杯。前出の萩原さんと田村さんの記事読み返したら、同じようにすごく時間がかかって苦労したと書いてある。やっぱりそういうものなのかー。ふたりともがんばったな!こういうのって自分がやってみてはじめて分かるものだな。
前足と後ろ足が完成。シマシマにするのがやっかいだー。
前足と後ろ足が完成。シマシマにするのがやっかいだー。
これは胴体と首。って、完全に動物の部位で説明している自分。
これは胴体と首。って、完全に動物の部位で説明している自分。
首と胴体を脚に接合。それっぽくなってきて、一人静かに興奮した。
首と胴体を脚に接合。それっぽくなってきて、一人静かに興奮した。
最後に背中に箱を乗せて…
最後に背中に箱を乗せて…
できたー!
できたー!

なんとか完成!

こんな経緯でできた手のりキリン、ご覧ください!
なんとか乗ってます。
なんとか乗ってます。
クレーンのくせにふにゃふにゃな感じがぐっとくる。
クレーンのくせにふにゃふにゃな感じがぐっとくる。
かわいいなあー(自画自賛)
かわいいなあー(自画自賛)

量産を目指します!

いま原稿を書いているパソコンの上に載せています。にやにや。
いま原稿を書いているパソコンの上に載せています。にやにや。
で、テーブルはまだこのていたらく。
で、テーブルはまだこのていたらく。
プロポーションもでたらめ、細部の省略も甚だしいが、かわいいのですべて許されると思う。あとは、やっぱりたくさん作ることだよな!と思った。目標10体!がんばるぞ!
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