待つ才能
1年前に「
『待ちぼう犬』とバンコクののらいぬ」という記事を書いて以来、街で見かけるたびに待ちぼう犬観察をしている。
「待ちぼう犬」というすばらしいネーミングは
@meme758 さんよりいただいた。Twitterでも「
#待ちぼう犬 」のタグを用意して皆さんからの報告をお待ちしている(まとめは→
こちら) 。
季節が一巡して、かなりの数が集まったのでここでもまとめてみよう。報告してくださったみなさん、ありがとう!
愛らしい待ちぼう犬たちをまずはだーっとご覧ください。
いつもいくショッピングセンターで。目があった。
いっぽうこちらは不安そうな面持ち。すごく待ちぼう犬ぽい。
上半身(前半身というべきか?)は落ち着いているが、下半身が急いている。
いかがだろうか。これらの待ちっぷり、犬好きにはたまらないのではないだろうか。
ネットでは圧倒的に猫画像が猛威をふるっているが、こと待つ姿の愛らしさでいえば犬に軍配が上がる。というか、猫は人間など待ちやしねえ。
「待つ」という才能は犬特有だと思う。スマホもいじれないのによく待てるものだと感心する。
待ちぼう犬遭遇・ニッパチの法則
ところでこれらの待ちぼう犬たちは、
みなさんから報告があったものからご紹介しているわけだが、ご覧の通り、同じ報告者からのものが多い。とくに
@mowmowmocha さん、待ちぼう犬に遭遇しすぎじゃないか。なんでこんなに出会うんだ。
本原稿執筆現在、全報告者数は56名。140の待ちぼう犬報告があったわけだが、報告数上位4位までの方々で、全体の37%を占めている。1/3以上だ。
これはパレートの法則、いわゆるニッパチの法則だ。残りはロングテールだ。犬だけに。
世の中の待ちぼう犬遭遇は少数の待ちぼう犬エリート者に独占されているのだ。だからなんだ。
さて、改めてじっくり見ていくと、彼らの待ちっぷり・待たされっぷりに、いくつか興味深い点があった。それについて述べよう。まずはつながれているものについてだ。
つながれているもの
犬を飼ったことがなく「犬大好き!」というわけではないぼくにとって、どちらかというと犬よりもそのつながれ方などのほうに興味がある。
ぼくが面白いな、と思うのは犬自身はどういうものにつながれているか気にしていない点だ。あたりまえだけど。
これが人間だったら「おいおい、そんなところにオレをつなぐなよ」って思うだろうな、ってケースがときどきある。
@at_36さんより。ご本人も「ハブに繋がれてる??」とコメントされていたが、確かになぜハブに。LANケーブルか。
素人からすると(素人?)そんなんでだいじょうぶか、というものもあるが、待て、といわれればじっと待つという犬ならではのことなのかもしれない。やっぱり待つのは犬の才能だな、とつながれているものを見て思った。
なるほど、これはノボリだけじゃなくてこういう使い方もあるか、と気づかされた。 なんかこれいい。うまく言えないけど、バランスがいい。
@mecco3さんより
カゴの中の犬
さて、自転車やバイクに関して言うと、カゴの中という事例がけっこうある。
カゴの中で「待て」の姿勢。自転車のボディ色と犬の黒とのコントラストもいい。
@Maa_KOTOさんより
こうやって見ていくと、愛犬家にとって前のカゴと後ろのカゴには棲み分けがあるんだな、と分かる。
かなり小さい犬だと前のカゴで、やや大きくなると後ろなんだな、ということも見えてきた。
これって、きっと小型犬ばやり以降の待たせ方なんだろうな、と思った。高度経済成長期以降、家と庭が狭くなったこともあって、小型犬が流行し始めたそうだ。いわゆる「お座敷犬」という言葉が流行ったのもこのころらしい。
言われてみれば、昔の小説とか映画では犬は庭で飼われているものだった。あだち充のマンガや忍者ハットリ君に登場するのが大型犬なのは、作者の世代を表しているのかもしれない。たぶんいま犬小屋ってほとんどないんだろうなー。
Trace[トレース]というサイトの記述によれば、1968年から84年までの16年間は登録犬数の第1位をマルチーズが独占していたとのこと。ポメラニアン、ヨークシャーテリアを加えて「御三家」と呼ばれていたとか。この 「御三家」という言い方に時代を感じる。
ちなみにその後は「動物のお医者さん」の影響もあってシベリアンハスキーが台頭したそうだ。おもしろいな、飼い犬の歴史!
いまはマルチーズってそれほど見ない気がする。ミニチュアダックスとかチワワとかトイプードルが多いんじゃないだろうか。ともあれ、カゴの中で待つ形式は小型犬ブームならではのものだ。
さて、待ちぼう犬が我々の胸を打つのは、そのご主人を待つ姿にある。
犬好きの気持ちが少し分かった
このいまかいまかと待つ姿こそ犬の醍醐味だろうな、と思う。
リードの伸び具合と体の伸び具合に待ちっぷりが表れている。ダックスはその独特の胴体と足の比率から「待ち感」がすごい。
@youbonzさんより
我々人間は胸を打たれちゃうけど、犬にとってはどうってことないのかもなあ、とも思うが、子供の頃から遅刻ばかりしていて、待たれるのがきらいなぼくとしては(だったら遅刻するなよ、って話ですが。ほんとすみません)、なんかちょっと重いんだよなー。
あと、「あ、待ちぼう犬だ!」って写真撮ろうとしたら飼い主が戻って来ちゃった、というケースもよくある。
また、この「おかえりなさい!」って感じの見上げ方とかなー。犬ってほんとすごいなー。人間の心わしづかみだなー。
ご主人戻ってきたけど、とくに。さっきのリラックスしている方々もそうだったけど、この犬種(柴犬?)はなんか淡々としてていいな。
人間だったら先に帰ってる
本原稿執筆現在は冬のまっただ中。今の季節、待ちぼう犬はつらそうだ。
最初のページで、みなさんからの投稿を募って1年経った、と書いたが、今回改めて見てみると季節感があって興味深かった。
なんか、こうやってみるとあまりつらそうじゃない。おかしいな。冬に夏のつらさを思い出すってむずかしいな。
ちなみに冒頭のこれも真冬のケースで、だから屋内で待ってるんだけど、こうなるとなんか緊張感がない。もしかして気の毒に見えないように配慮した扮装か。
最後に上のものを代表とする、ほほえましいケースを見ていただこう。いや、上のはほほえましいっていうのとはちょっと違うか。どうだろう。
ほほえましい
いままで自分で犬を飼うとしたらどういうのがいいか、などと考えたことがなかったが、柴犬(?)がいい。この一連のすっとこどっこいな感じがとても気に入った。
また、犬はもちろん、飼い主側も気づいていない、つながれている場所とあいまってゆかいなことになっている例も。これこそ待ちぼう犬鑑賞の醍醐味かもしれない。
表情と相まってほんとに「空海」っていう名前っぽい。
例の白い犬の店頭で待ちぼう犬!これはライター仲間の
伊藤さんより。
ソフトバンク店頭は今後重点的に見ていきたいと思う。
引き続きみなさまからの報告お待ちしております
当初は「待っている犬かわいい」ぐらいの気持ちだったが、こうしてじっくり見てみた結果、小型犬の歴史に興味ができちゃったりして奥が深いと思った。今後も見ていこう。みなさまからの報告もお待ちしております。
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デイリーポータルZでたびたびその魅力を訴求している「
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関西の皆さんぜひー!