特集 2023年6月21日

岡山の泊まれる四つ手網小屋で、獲れた魚介を料理して食べたい

岡山県の瀬戸内海沿いのどこかに大きな四つ手網が備わった寝泊まりできる小屋があり、そこでは夕方から翌朝まで好きなだけ漁をしつつ、獲れたての魚を調理して食べることができるらしい。どう考えても私好みの最高なレクリエーションである。

とはいっても、小屋を借りるには4人以上が望ましいのが悩みどころ。かなりの遠方で人を集めるというハードルを前に、数年間ただただモヤモヤしていたのだが、なんと大阪在住で四つ網経験者のスズキナオさんが誘ってくれた。

憧れの四つ手網は、すごくすごく、楽しかった。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

動画を用意しました

当日の様子を動画にまとめたので、記事を読む前でも後でもどちらでもいいので、よろしければ観てください。

楽しかったんですよ。

四つ手網を上げるために岡山へ

私は埼玉在住なので、岡山の地はまあまあ遠い。せっかくだからと途中の大阪に数日滞在して、今回の幹事であるナオさんと一緒に取材やらイベントやらをこなしてから、旅の最終目的地として四つ手網へと向かった。

今回のメンバーは全部で7人らしいが、ナオさん以外はまったく存じ上げていない方々。事前に用意されたLINEグループで多少の情報共有はあったのだが、そこは5人だけだったし。

いろいろとふわっとしているが、不安よりも楽しみの方がずっと大きい。四つ手網の小屋とは一体どんな場所で、なにが網に入るのだろう。

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新大阪駅から新幹線で岡山駅へ、誘ってくれたスズキナオさんと向かう。
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岡山駅から二両編成の赤穂線で東に少し戻って西大寺駅へ。車内放送で聞いた「さいだいじ」のイントネーションが「最大時」と同じで、遠くに来たなと思いながら窓の外を眺めた。
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午後四時に西大寺駅集合。四つ手網が楽しみすぎるので、あえてどんなものなのか、あまり調べないようにしておいた。
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駅に張ってあった観光案内に四つ手網が載っていた。「九蟠(くばん)から升田にかけての海岸堤防で続けられてきた伝統漁法。最近はレジャーとして楽しむ人も多く、夕日に映える四つ手網が美しい」とのこと。遠回しに「あまり水揚げは期待はするな」と伝えているように読み取れる。

参加メンバーの一人は仕事の都合で遅れて合流するそうで、とりあえず6人が西大寺駅に集まった。事前に全員と会ったことがあるという人はおらず、友人の友人という関係性が強い集まりである。

この日は5月末の平日で、なんと明日も平日。お天気の話などをしつつ参加者の様子をうかがうと、みんな岡山で網を引き揚げるために仕事をどうにか休んで、大阪、神戸、名古屋などから集ったようだ。

お互いがお互いを「四つ手網のためにわざわざ?」と思っているに違いない。

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探り探り同士の距離感。

過度の期待はせずに食材をしっかり買う

四つ手網の経験があるナオさんによると、網に掛かった魚ですべてのおかずを賄うというのは現実的ではないので、事前に必要量の食料や酒類を購入すべきとのこと。あくまで四つ手網というアトラクション付きのキャンプ、お泊り会なのである。

みんなで食べる食材は割り勘、各自で飲むお酒は個人購入という、飲む人と飲まない人が平等なお会計が提案され、即採用された。気遣いのできる大人たちである。結果として全員がそこそこ飲むメンバーだったのだが。

今日の夕方から明日の朝までという期間で、我々はどれくらいの食材を食べて、どれくらいの酒を飲むのか。そこに四つ手網漁という不確定要素も加わるため、何をどれだけ買ったらよいのかが悩ましく、だからこそ楽しい。

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最寄りスーパーのコープ西大寺。埼玉あたりではまず見かけないローカル魚介類が売られていて興奮する。ナオさん曰く、「獲れた魚は揚げるか鍋にすればだいたいうまい」とのこと。
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有明海ではクツゾコ、欧米ではソールと呼ばれるシタビラメが、岡山ではゲタになるようだ。
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ベイカと書かれた謎の小さいイカ。これも地方名なのだろうか。
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細かく骨切りされたヒラという魚。これはどういう魚で、どうやって食べるんだろう。
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気になる魚介類がたくさんあったけど、もしかしたら獲れるかもという期待があるので、肉中心に買い物をした。
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これが岡山県児島湾の四つ手網小屋だ

西大寺駅から四つ手網のある場所まではかなり遠いので、いったん駅まで戻ってタクシーに分乗して向かう。

「田中さんの四つ手網はわかりますか?」と聞いてみたが、さすがにベテラン運転手さんでもそこまでピンポイントにわかる訳ない。後から分かったことだが、四つ手網の小屋はズラッと20基以上も並んでいるのだ。

一度行ったことのあるナオさんが、スマホのグーグルマップで大体の場所を伝えようとしたところ、そこには「四手網 田中」と表示されていた。めでたし、めでたし。

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やはり魚がたくさん獲れるというものではないらしく、二台とも運転手さんから「ちゃんと食材を買いましたか」と心配された。帰りもタクシーを使うことになるので、送迎用の電話番号を聞いておこう。
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西大寺から南へ2600円分くらい走ったところで、四つ手網のフレームらしきものが見えて全員が声を上げた。

きれいに護岸整備された岸壁に、海の上へと大胆にせり出した小屋がいくつも並び、その先には大きな四つ手網が構えられていた。我々はここで朝を迎えるのだ。

ナオさんが予約した青い屋根の田中さんの小屋は、気の利いたことにすでに網が降ろされている。

網の設置された場所の水深は50センチ程度だろうか。魚が集まるような場所とは思えないが、こんな場所でも獲れてしまうのが瀬戸内海なのだと信じよう。

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よく流されないな。地図を見るとよくわかるのだが、穏やかな瀬戸内海の、さらに奥まった児島湾という場所だから成り立つ漁なのだろう。
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このような小屋がいくつも並んでいる。料金は1棟1万円(何人でも同じ)からで、小屋の設備や広さによって料金が違う。複数の小屋を貸し切って団体戦をしてみたい。
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田中さんの小屋は一番リーズナブルな1万円。7人だと1人当たり1500円弱の激安レジャー。ただし交通費は一切考えないものとする。
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すぐに小屋へ入るのがもったいなくて、一旦横から撮影してみたりした。
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ボラらしき魚が元気に跳ねていたので、どうか網に入ってくださいと念を送る。児島湾は琵琶湖よりも穏やかかもしれない。

これは素敵な場所だ

小屋の扉を開けると、そこは子供の頃に夢描いた秘密基地そのものだった。いやそれ以上だ。

ガスこそカセットコンロだが、電気と水道はちゃんと使える。冷蔵庫と流しがあり、鍋や包丁もあるので料理し放題。

もし私が岡山に生まれていたならば、どうにかして小屋を一つ買い取って、ここでのんびり原稿を書いたり、日々の水揚げをツイートしていたかもしれない。

まだ一度も網を引き揚げていないのに、もうすでに興奮と妄想が止まらない。

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これが憧れの四つ手網小屋か。
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とりあえず乾杯。みんなのニヤニヤが止まらない。
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「ここに連れてきてくれてありがとう!」とみんなから言われて、ポリポリと頭をかくナオさん。
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大体のものは揃ったキッチンスペース。冷蔵庫には誰かが残していった調味料なども。賞味期限を確認しつつ活用しよう。

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