小出し記事 2022年2月24日

お酢のいろいろを語り尽くしたい ~むせてこそお酢、お酢ってそもそも何なのか

去年の春頃から先月までの1年近く、お酢に関わる仕事をしていた。しているうちに、すっかりお酢のことが大好きになってしまった。

使えば使うほど、使いたくなるのだ。気がついたら、10瓶近いお酢が自宅に常備されるようになっていた。でも足りない。まだまだ増やしたい。おそらくだが、お酢にはなんらかの中毒性がある。

急にお酢の魅力に目覚めたわたしの目線から、お酢のあれこれを語らせてください。

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

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よくわからない液体だと思っていた

……というわけで、小出し連載の第一回めは、そもそもお酢とは何ぞや?というところから始めたい。

お酢がどうやってできているのか。何でできているのか。多くの人はもうすでに、知っていることなのだろうか。

少なくともわたしは全くわかってなかった。去年の今くらいまでは。

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生まれてこのかた、お酢のことを漠然と「極度にすっぱくて、静かな狂気を持った謎の液体」だと思っていたのだ。

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これはある時急に旧居の近くに置かれていたお酢。誰かの忘れ物だろうか

たまに買う。たまに使う。だけど実態がよくわからない。

時々見かけるけど名前は知らない、何か秘めていそうな隣のクラスの同級生くらいの認識のまま、思考が止まっていたのである。

とはいえ、知っていることが多少増えた今でもなお、なんで?どうして?って不思議に思うことだらけだ。

まずにおい。独特だ。大量にこぼしたら、ほぼ間違いなく異臭騒ぎが起きるだろうと感じる。というか実際に起こしたことがある。

大学生のとき「何にかけてもうまい」と聞き、学食にかけようと思って中国黒酢(鎮江香醋)を購入。ロッカーに入れたまま忘れた。数ヶ月後、ロッカーから異臭がたちこめてきた時にはぞっとしたものだ。当時の同級生たち、ほんとうにごめんなさい。

味もはげしい。なにをどうやっても、原液のまま飲んではいけない味だ。そのままだと、胃が「お願いやめて!」と悲鳴をあげる感じのものが多い。この世のすっぱさというすっぱさを寄せ集めてぎゅっと凝縮したような味わい。そのはげしさは時に暴力的とすら感じる。

多少薄めても、荒々しい冬の日本海のように、幾度となく責め立ててくるので、耐えきれなくなって結構な頻度でむせる。ほんとうに体内に吸収される気あるのかな?って疑念を感じることすらある。

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だけどお酢は、ごく一般的な調味料として、たくさんの家庭に置かれ、いい感じに馴染んでいる。なんなら世界規模で愛されているし、ちゃんと使えばしっかりおいしい。煮物に加えればぐんと旨みが増す。お寿司だって、お酢あってこその食べ物だ。

お寿司食べたいな

あと、さっき「むせる」と書いたけど、お酢との戯れを繰り返しているうちに、むせることすら食体験の感動のひとつに成り代わったような気がしている。むせるのも含めてお酢。むしろ、むせてこそお酢。

今となってはもう、骨の髄まで手懐けられ、すっかりお酢の手の中で踊らされている。結果、日に日に家のなかに、お酢の瓶が増えていくばかりなんである。

集合してもらった。穀物酢、米酢、黒酢、りんご酢など、たくさん種類を置いておきたいだけで、メーカーには特段こだわってない。それでもずんずん増えていく。

お酢ってそもそも何からできているのか

……と、そうだった。うっかり話がそれそうになっているが、今回は、お酢とはそもそも何ぞ?という話がしたいんだった。

まずは原材料の話からはじめよう。たとえば穀物酢の原材料がこちらだ。ものすごく身近である。

小麦、米、コーン。知っている穀類たち。

初めて知ったとき、初めて知った感じがしなくて逆に戸惑った。ちなみにお酢の原材料の共通点は「糖質を含んでいる」ことである。

で、原材料からお酒を造り、そこに酢酸菌という菌を加えて発酵させるとお酢ができるというのが、基本的なお酢の造り方だ。

……けれど、大量生産するために、原材料からお酒を造る工程を省き、アルコールを添加していることも多い。上の写真のように、原材料名に「アルコール」と書かれている場合は後者だ。

その場合、お酒から造る場合よりも旨みが少ない。だが、お手頃価格で買えるし、個性が強くないぶん何にでも合わせやすいなどのメリットもある。なんだか洋服の選び方にも通じそうな話である。

お酢っていつからあるのか

歴史についても触れておこう。

お酢の歴史は古い。とんでもなく古い。諸説あるが、紀元前5000年前にバビロニア(メソポタミア南部)でつくられていたことについては、記録も残っているという。壮大だ。

日本でつくられ始めたのは4〜5世紀くらい。中国から伝わった。あの『万葉集』には、お酢料理への思いを詠んだ歌が綴られている。

つまり鎌倉幕府ができたころには、もうあったはずなのだ。とはいえ、広く浸透したのは江戸時代といわれている。NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観ながら、この人たちはお酢を知ってたのかな、知らなかったのかななんて思いをはせてしまう。

お酢を名乗っているけどお酢じゃない奴らもいる

ところで。製造工程を知ると、気がつくことがある。

お酢と名乗りながらもお酢じゃない。そんな液体がこの世界にはけっこうあるのだ。UMA(ネッシー)を名乗りながらも、1ミリもUMA(ネッシー)ではない自分的には、親近感でいっぱいだ。

まず梅酢。実態は、梅干しの製造工程で生まれる汁である。

原材料は梅と食塩。

そして、高知県を中心に親しまれているゆず酢もだ。お酢じゃない。

ゆず酢、以前高知の市場で買った記憶があるが写真が見当たらないので、かわりに友人宅になっていたゆずの写真を置いておきます。おいしかったです

原材料はなんとゆずの果汁100%。発酵は特にしておらず、ただシンプルに絞った、ゆずの汁なんである。

あとはもろみ酢。上の2つと比べると見分けがつきにくいのだけど、厳密にはお酢じゃない。泡盛の蒸留過程でできる、もろみ粕「かしじぇー」を搾ってつくられる「飲料」なのだという。

しっかりと「食酢ではありません」って書いてある

……というわけで。お酢じゃない者たちについてお知らせしたところで、次回は本物の「お酢の種類」について解説したい。

うっかり買い集めているうちに、あっさり10瓶超えそうになるくらいには、たっぷりとあるのである。

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