福井で新たな自分に!
妄想彼女は私の人生を変えるものだった。それが生まれたのは福井。福井がなければ今の私はいなかった。駅から徒歩25分築35年の今の家にも住めなかっただろう。全ては福井のおかげ。人も優しかったし、また行きたい。やはり福井は福の居るところなのだ。
福井県という場所がある。日本海に面しており、幸福度が高く、東尋坊があり、鯖江市ではメガネ産業が盛んだ。福井空港はあるけれど定期便はない。2023年には金沢-敦賀間の北陸新幹線が開業する予定だ。
コシヒカリが生まれた地であり、越前ガニが有名で、歴史的なエピソードも多い。魅力溢れる県なのだ。そこでみなさまからオススメの場所を聞いて、行ってみたいと思う。
※これまでいろいろな場所で取材をした記事を読めば誰もが知ったかぶりできるはず。「知ったかぶり47」は、デイリーポータルZと地元のしごとに詳しいイーアイデムとのコラボ企画です。
※前回の「投稿頼りの旅」は群馬県でした。
※姉妹企画「地元の人頼りの旅」もよろしく。
福井と言われて思い浮かぶのは「東尋坊」。そして、「恐竜」だ。フクイラプトルや、フクイサウルスなどが発掘され、2007年には日本初の恐竜の皮膚痕化石も発見された。非常に魅力溢れる県と言える。
今回はそんな福井県を、皆さんから投稿してもらったオススメを頼りに旅したい。まだあまり知られていない福井県に出会えるかもしらない。出会いたいじゃない、私は福井が大好きなのだ。
まずは福井駅にやってきた。2023年には新幹線も走り出す駅だ。とても綺麗。せっかくなので一冊の本を持ってきた。1957年に出版された「岩波写真文庫」の「福井県-新風土記」という本だ。ここに当時の福井駅の様子が載っている。
恐竜が現れた。壁にも恐竜が描かれ、フクイティタンやフクイノサウルスなどの動き鳴く模型が置いてある。当時は2階がデパートで3階がホテルだったらしい。さらに仮眠する場所もあった。今ではそれはないけれど、隣にハピリンという複合商業施設ができている。
次は「福井県庁」に向かう。オススメで県庁が挙がることは少ない気がするけれど、福井では挙がる理由がある。とても守られた県庁なのだ。対抗できるのは佐賀県庁くらいだけれど、佐賀県庁より守られている。360度囲まれているから。
福井城址に福井県庁は建っている。福井城は1606年に結城秀康により築城された。徳川家康が築城した駿府城との類似点もあり、天守は四層五階建てで、一説には30メートル以上の高さがあったと言われている。
県庁だけれど、散策できるようになっており、「福井」の呼び名の由来となったという説もある井戸も残っている。ちなみに実際は「福の居るところ」で「福居」だったのが、いろいろあって「福井」になったそうだ。
この企画はTwitterやメールなどで教えていただいたオススメの場所を巡るのだけれど、1個だけ誰もオススメしていない、私個人のオススメの場所というか、思い出の地を訪れたい。私の人生を変えたものがあるのだ。
私は一人なんだけれども、彼女と過ごしているみたいな写真を撮ることをライフワークにしている。これの一番最初は2012年に書いた「カップル撮りで写真は幸せになる」というも。偶然1体の銅像を見つけ写真を撮ったのがその始まり。
一人で福井に行って、寂しいなと思いつつ歩いている時に、銅像を見つけカップル撮りをした。これが妄想彼女の最初の一歩。一人なのに女性との楽しい写真が撮れて、光を感じたのだ。この銅像に出会わなければ、妄想彼女はなかったのだ。
これは1996年に作られた「ひな」という作品だ。駐車場である「リパーク福井順化1丁目」の前に立っている。7年ぶりの再会だ。ぜひあの時と同じように「ひな」と一緒に写真を撮りたい。カップル撮りをしたいのだ。私が福井を大好きな理由がこれなのだ。
福井県のおおい町という場所にある「土御門総社」を訪れた。神社がある名田庄納田終は「陰陽道と暦のふるさと」らしい。懐かしい風景が広がる。田植えが終わったばかりなのだろう、山の緑と空の青が田んぼに映っている。
安倍晴明に関係する神社だ。「泰山府君尊神」を祀っているそうだ。雰囲気がある神社だった。稲荷神社に行くとたくさんの鳥居があるけれど、それとは違う感じで鳥居がたくさんある。印象に残る感じでたくさんあるのだ。
四方を鳥居が囲んでいる。白い鳥居には「白虎神」、赤い鳥居には「朱雀神」、青い鳥居には「青龍神」、黒い鳥居には「玄武神」とそれぞれ書かれている。真ん中に立つと召喚されたような気がしてくる。式神気分だ。
境内には安倍晴明の母親と言われる「葛の葉」を祀る稲荷神社もあり、少し歩くと土御門家のお墓もある。ちなみに土御門とは安倍氏が天皇より与えられた称号だ。近くには加茂神社や茅葺の薬師堂などもあり、景観としても素晴らしかった。
敦賀にある「金崎宮」に行く。御祭神の尊良親王は、片思いの女性に1000通のラブレターを送り、成就させた。その女性は御匣殿で、その時すでに婚約者がいたのだけれど、なんやかんやで尊良親王と結ばれる。そのため金崎宮は恋の宮とも言われている。
ここに来たのは恋の宮が目当てではない。織田信長と朝倉義景の「金ヶ崎の戦い」の舞台がここ。その戦で織田信長の妹「お市の方」が信長に小豆の入った袋の両端を縛り陣中見舞いとして送り、信長の危機を伝えた。
その結果、信長は難を逃れる。2カ月後、信長は近江姉川にて浅井、朝倉軍を破る。そうしたことから難関突破のお守りがこの金崎宮にはあるのだ。これが非常にかわいいお守りだ。これを求めてやってきたのだ。
2020年の大河ドラマは「麒麟がくる」で明智光秀が主人公だ。件の金ヶ崎の戦いにも参加しているので、ゆかりの地。来年の大河ドラマなので、今くれば時代を先取りした場所なのだ。戦自体は1570年なので、時代を先取りしているか謎ではあるけれど、いい神社だった。
大野市にある「山伏岩」を訪れた。猫島と言われている島だ。島だけれど、周りを海に囲まれているわけではないし、猫がいるわけでもない。でも、猫島なのだ。猫そのものと言ってもいいかもしれない。だって、猫なんだもん。
猫だ。見た目が猫だ。これこそが山伏岩で経ヶ岳が噴火した時に飛んできた岩と言われている。山伏が厳しい修行をした岩で、下には宝物が埋められていると言われているけれど、祟りを恐れて誰も近づかなかったそうだ。
田んぼに囲まれ美しい。周りは静かで猫島なのに猫もいないので、ニャーンという声は聞こえてこない。これだけ猫なのにニャーンとは言わないのだ。それは岩であり島だから。だったら金ヶ崎の戦いで活躍した秀吉のように、鳴かぬなら鳴かせてみせようではないか。
福井県には九頭竜川が流れている。流域面積は福井県の70%もある、福井を代表する川と言える。ここにかかるのが「鳴鹿大堰」。洪水の疎通機能の確保と、水道水を確保するために作られたものだ。
堰長は300メートル以上あり、その上を歩くことができる。九頭竜川を真ん中から見ることのできるポイントでもあるし、堰自体も大きく、鹿をイメージしている。その昔は舟をつなげて橋にしていたそうだ。
鳴鹿大堰のゲートは大規模堰では日本初の油圧シリンダ直吊り長径間ローラーゲートを採用している。油圧シリンダ方式にすることで景観を損なわないようにしている、と九頭竜川資料館でもらえる鳴鹿大堰のダムカードに書いてあった。
この鳴鹿大堰の両脇には「魚道」がある。ここを鮎などが通るのだけれど、その様子を見ることができる。しかも、横から。アユやサクラマス、サケなどがその道を通るそうだ。ぜひ見たいではないか。しかも無料。見たいに決まっている。
見られるけど、見られなかった。何にも通っていなかった。魚が見たかった。特に「サクラマス」が見たかった。九頭竜川はサクラマスで全国的に有名で、川釣りをする人の憧れの地でもあるのだ。でも、サクラマスはもちろん何にも通っていなかった。
鳴鹿大堰から九頭竜川を下って、「内水面総合センター」を訪れた。こちらも九頭竜川に隣接する施設だ。しかも入場無料。嬉しい限りだ。アユの種苗生産業務や、淡水魚の研究業務をするところなのだけれど、生態も展示する資料館のようになっている。
何よりここでは「サクラマス」を見ることができるのだ。私は映像以外でサクラマスを見るのは初めてだ。興奮している。ここをオススメしてくれた方も同じ思いなのだろう。興奮するよね。しないはずがないよね。
輝いている。美しい。サクラマスって何? と思っている人もいるだろう。ヤマメのこと。ヤマメは渓流にいる魚だけれど、降海型が存在してそれがサクラマスと呼ばれる。もともとは川でヤマメとして生まれ、海に行き、サクラマスとして川に戻ってくるのだ。
川で生まれたヤマメは1年ほど経つと、川に残るものと、海に下るものにわかれる。海に下ったヤマメは日本海に出て、オホーツク海まで行く。そして、1年ほど海で生活してまた九頭竜川に戻り1年ほど生活して産卵する。ポイントは海に下ると体が大きくなることだ。
内水面総合センターでは、九頭竜川で釣られたサクラマスを飼育して、産卵孵化させて放流している。普通のヤマメを産卵孵化させるより、降海型のヤマメが生まれる可能性が高いからだ。福井ではアユとサクラマスに力を入れているそうだ。
秋になるとオスのサクラマスは顔がとんがりサケのような顔つきになるそうだ。今はメスとオスで同じような顔つきだけど、秋になると変わるのだ。見てみたい。秋にこの施設にくれば見ることができる。
サクラマスは期間が決まっているのだけれど、釣ることができる。九頭竜川はサクラマスの数が多く、釣り人からは聖地と言われている。私も釣りをするのでいつか釣ってみたい。ちなみにアマゴの降海型はサツキマスです。
九頭竜川をさらに下り「エッセル堤」にやってきた。明治15年にできたもので、堤長は511メートルで、船舶の入港を妨げる漂砂と波浪を防御し、川の流速を維持しつつ上流からの土砂を海に押し流す「防波堤」と「導流堤」の機能を備えている。
オランダ人技師のエッセルが改修計画を作成したのでエッセル堤と言われている。私が行った日は釣り人で賑わっていた。ここはちょうど九頭竜川の河口なので、サクラマスはここからオホーツクへと旅立ち、産卵のためにここから戻ってくるのだ。
エッセル堤から東尋坊が見えた。横から見る東尋坊もなかなかのもの。風が強くエッセル堤にも白波が発生している。これぞ日本海。私は日本海が好きなのだ。ヤマメが日本海を目指す理由がわかる。泳ぎたいのだ。この日は波が高かったので、泳がなかったけど。
鯖江にある「三六商店」に来た。一般的に今川焼と言えば、あんこ。あるいはクリームあたりを思い浮かべるけれど、三六商店では、「サラダ」なのだ。中に入っているものが、あんこでもクリームでもない。サラダなのだ。
中にはロースハム、カイワレ、マヨネーズが入っている。酸味にあるマヨネーズが非常に美味しい。これマジで美味しい。5個も一気に食べてしまった。ふわふわよりの生地にサラダ。この組み合わせを今まで知らなかったことを後悔した。
次は「金花堂はや川」の「羽二重くるみ」。羽二重餅は福井名物として有名だけれど、そこにくるみを混ぜ合わせ、さらにシュー生地でサンドしてある。これぞ和洋折衷と言える一品だ。
これ衝撃的に美味しいです。あまりに美味しくてお土産に買った。羽二重餅もシュークリームも食べたことがある。それを組み合わせることで、こんなにも品のある甘味で食感も素敵な食べ物ができるとは思わなかった。美味しくて走り回ってしまった。
最後は「ローヤルさわやか」だ。福井と言えばの飲み物だ。その証拠にスーパーに行くと必ず売っている。コーラー、カルピス、ローヤルさわやかなのだ。その名の通り爽やかな緑はスーパーでも目立つ。
ペットボトルと瓶のものがあったので両方買った。味は同じだ。飲んでみるとメロンソーダのような感じ。どこか懐かしい安心する美味しさだ。30年以上愛されている味だそうだ。確かにそう感じる。なんか愛しちゃう。実家に帰ったような安心感があった。
最後に訪れたのは「越前松島水族館」。ウミガメに餌をあげたり、イルカプールの前で写真を撮ったら写りに来てくれたりするらしい。ぜひやりたい。一緒に写真を撮りたいので、ワクワクで訪れた。
開館は1959年と歴史は古い。入り口を抜けると早速、イルカプールが目に入った。横から泳いでいるのが見える。写真を撮りに行ってみると、Twitterで教えてもらった通りのことが起きた。感動の瞬間です。
誰かが指示しているわけではない。カメラを向けたら自然とイルカが来てくれたのだ。めちぇくちゃ嬉しい。この写真大切にします。私はイルカが好きなのだ。のとじま水族館でイルカからバレンタインデーのチョコをもらったこともあるのだ。
越前松島水族館の素晴らしいところは、距離が近いことだ。触れるのだ。まずサメやエイに触れるコーナーに行った。めちゃくちゃ触ることができた。私は常に触りたい派なのだ。
ウミガメの餌やりコーナーもあった。人生で初だ。ウミガメに餌をあげるなんて。知り合いの飼っている小さなタナゴに餌をあげるのでも嬉しかったのに、ウミガメに餌をあげられる。ワクワクだった。
勢いがすごかった。カメは遅いイメージがあるけれど、速い。めちゃくちゃ速い。これはうさぎに勝つね、という速さだった。そして、楽しかった。カップルがはしゃいでいたけれど、わかる。これははしゃぐね。私も一人はしゃいだもの。
満足。これは満足。大きな水槽がある水族館などもあるけれど、距離が近いタイプの水族館は初めてで満足度が高かった。福井は幸福度が高いけれど、その理由がわかった。距離が近いのだ。触れるのだ。透ける水槽もあったし。
福井は大変素晴らしい。美味しいし、かわいいし、触れるし、サクラマスいるし、妄想彼女が生まれた場所だし。もともと福井は好きなのだけれど、さらに好きになった。それでみなさん、恒例のあれで終わりとしましょう。ふ・く・い、
妄想彼女は私の人生を変えるものだった。それが生まれたのは福井。福井がなければ今の私はいなかった。駅から徒歩25分築35年の今の家にも住めなかっただろう。全ては福井のおかげ。人も優しかったし、また行きたい。やはり福井は福の居るところなのだ。
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