今回で4回目
「世界のキーボード入力事情調査」として年1回のペースで実施されるこのシリーズは、今回で4回目を迎える。
簡単に過去の調査結果を振り返る。
三者三様だ。各言語で元の文字の性質は全く異なるのに、キーボードという世界共通の装置に対応している。その工夫の様子を見るのが面白い。
そして今回、タイ語である。
タイ語の主なあいさつを調べたところ、こう表記するらしい。
しかしこの情報だけでも考察しがいがある。性別で語尾が違うとか、声調のようなものがあるとか、同じ子音が同じ文字になってるとか。
調べたところ、やはりタイ文字は表音文字だそうだ。ひらがな、アルファベット、ハングルなどと同じ性質で、文字は音を表す。 漢字のような表意文字だと文字種が何千種類にもなるのでキーボード入力の仕組みが複雑になるが、表音文字だと話は簡単だ。人類が話せる/聞ける発音は高々数十種類なので、1文字1キーのシンプルなキーボードになる可能性が高い。
……というわけで、今回も次の手順で調査を行う。
調査手順
① タイ語の文字体系を見てキーボードのデザインを予想する
② タイ語のキーボードを見て答え合わせをする
③ タイ語のキーボードを使って実際に入力してみる
調査、スタート。
タイ語の文字体系を学ぶ
調べたところ、タイ文字には子音文字が44種類あるらしい。ただしそのうち2字は廃字であり、現在は使われていない。現役の子音文字は42種類だ。
子音文字の表を見てみる。
この表だけでもずっと見ていられる面白さがあるので、一つずつじっくり味わっていきたい。
「コー/クー」と発音する子音だけで「ข」「ค」「ฆ」の3文字もある。日本語より細かく発音を分けているなぁ。また、先ほどの「คは [k]を表す子音?」という予想が正しかったことがわかり、ちょっとうれしい。
タイ文字では「กはニワトリ(ไก่)」「ขは卵(ไข่)」のように、文字を代表する言葉がある。日本語の学習用のひらがな表の「あ」にアメのイラスト、「い」にイヌのイラストが描かれているような話だ。しかしタイ文字の表はひらがな表と異なり、文字を代表する言葉は常に決まっている。誰が作った表を見てもกはニワトリであり、ขは卵なのだ。出版社によるバリエーションはなく、すべて決まっている。
子供たちはそれを ゴー・ガイの歌 で覚えるらしい。
正直、現時点の学習レベルで歌を聞いても全然入ってこない。
表に出てくる言葉で「なんだこれは!」というものがいくつかある。
モントー夫人はタイでは超有名な物語「ラーマキエン」に出てくる、主人公の妻のことらしい。
ジャンク船が気になったのは、先ほどの表にはジャンク船とは別に「船」という言葉も出てくるからだ。情報の粒度がバラバラなのが面白い。
また、「少年僧」「台座」「供物台」といった宗教色の強い言葉がいくつかあるのも面白い。さすが上座部仏教の国だ。
以前の調査で、中国や台湾では「馬」を「ma」と読むことを知った。日本語でも「uma」に「m」が含まれている。そしてタイ文字でも
まさかと思い、韓国語における「馬」の発音を調べたところ
念のためモンゴル語の「馬」も調べておく。
これは偶然じゃないと思う。何百年も昔、人々は馬に乗り大陸を移動し、物資だけでなく言葉も運んできた。現地の人々に旅人は「これは馬だ」と教え、広まったのではないだろうか。つまり、同じルーツを持つので似た発音になっているのだろう。こういうのに自力で辿り着いた瞬間が気持ちいい。(調べたら記事がわんさか出てきた。記事①、記事②、記事③)
母音記号は添えるだけ
続いて、母音記号を学ぶ。タイ語の母音は32種類あるそうだ。表記の際には子音の周りに添えるような書き方が多い。
32種類の母音と聞くと「うわっ」となるが、表記上の母音記号としては19種類しかない。
さらに、タイ語には声調が5種類ある。
以上がタイ文字の文字系統である。ここまで来ると、表とにらめっこすればなんとなく発音が出来る状態だ。

