特集 2025年12月3日

世界のキーボード入力事情調査~タイ語編~

海外のキーボード入力事情ってどうなっているんだろう。韓国語、中国語(繁体字)、アラビア語と来て、今回は第4弾。見た目がキュートな文字を扱うタイ語の入力事情について調査する。

1992年三重生まれ、会社員。ゆるくまじめに過ごしています。ものすごく暇なときにへんな曲とへんなゲームを作ります。

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今回で4回目

「世界のキーボード入力事情調査」として年1回のペースで実施されるこのシリーズは、今回で4回目を迎える。

 簡単に過去の調査結果を振り返る。

韓国語のキーボードは文字を分解して見た目通りに打ち込む直感的な入力方式だった。
台湾などで使用されている繁体字は発音ベースの入力方式だった。ボポモフォという発音記号を子音・母音・声調の順に拾う。
アラビア語は繋いで書くのをどう表現するのか気になったが、独立形で入力すればパソコン側が自動的に繋いだ形で出力してくれることがわかった。

三者三様だ。各言語で元の文字の性質は全く異なるのに、キーボードという世界共通の装置に対応している。その工夫の様子を見るのが面白い。

そして今回、タイ語である。

タイ料理屋さんのメニューに書かれたタイ語。読める気がしない。

タイ語の主なあいさつを調べたところ、こう表記するらしい。 

読めないが、「文字がキュートだな」と思う。

しかしこの情報だけでも考察しがいがある。性別で語尾が違うとか、声調のようなものがあるとか、同じ子音が同じ文字になってるとか。

タイ文字は表音文字で、คは[k]を表す子音にみえる。たまたまかもしれないが。

調べたところ、やはりタイ文字は表音文字だそうだ。ひらがな、アルファベット、ハングルなどと同じ性質で、文字は音を表す。 漢字のような表意文字だと文字種が何千種類にもなるのでキーボード入力の仕組みが複雑になるが、表音文字だと話は簡単だ。人類が話せる/聞ける発音は高々数十種類なので、1文字1キーのシンプルなキーボードになる可能性が高い

……というわけで、今回も次の手順で調査を行う。

調査手順

① タイ語の文字体系を見てキーボードのデザインを予想する

② タイ語のキーボードを見て答え合わせをする

③ タイ語のキーボードを使って実際に入力してみる

 調査、スタート。

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タイ語の文字体系を学ぶ

調べたところ、タイ文字には子音文字が44種類あるらしい。ただしそのうち2字は廃字であり、現在は使われていない。現役の子音文字は42種類だ。

子音文字の表を見てみる。

様々な資料をもとに筆者が作成。十分に気をつけて書いたつもりだが、間違ってたらごめん。

この表だけでもずっと見ていられる面白さがあるので、一つずつじっくり味わっていきたい。

味わい①:子音が細かい

 「コー/クー」と発音する子音だけで「ข」「ค」「ฆ」の3文字もある。日本語より細かく発音を分けているなぁ。また、先ほどの「คは [k]を表す子音?」という予想が正しかったことがわかり、ちょっとうれしい。

味わい②:文字を代表する言葉がある

タイ文字では「กはニワトリ(ไก่)」「ขは卵(ไข่)」のように、文字を代表する言葉がある。日本語の学習用のひらがな表の「あ」にアメのイラスト、「い」にイヌのイラストが描かれているような話だ。しかしタイ文字の表はひらがな表と異なり、文字を代表する言葉は常に決まっている。誰が作った表を見てもกはニワトリであり、ขは卵なのだ。出版社によるバリエーションはなく、すべて決まっている。

子供たちはそれを ゴー・ガイの歌 で覚えるらしい。

 正直、現時点の学習レベルで歌を聞いても全然入ってこない。

味わい③:文字を代表する言葉に、知らない言葉がある

 表に出てくる言葉で「なんだこれは!」というものがいくつかある。

特に気になった言葉3選。唐突に「モントー」という固有名詞が出てきてびっくりする。

モントー夫人はタイでは超有名な物語「ラーマキエン」に出てくる、主人公の妻のことらしい。

ジャンク船が気になったのは、先ほどの表にはジャンク船とは別に「船」という言葉も出てくるからだ。情報の粒度がバラバラなのが面白い。

ジャンク船とは中国の木造帆船だ。

また、「少年僧」「台座」「供物台」といった宗教色の強い言葉がいくつかあるのも面白い。さすが上座部仏教の国だ。 

味わい④:やっぱり「馬」は「m」の子音

以前の調査で、中国や台湾では「馬」を「ma」と読むことを知った。日本語でも「uma」に「m」が含まれている。そしてタイ文字でも

馬(ม้า)の「ม」は「ム」、つまり子音は「m」だ。

まさかと思い、韓国語における「馬」の発音を調べたところ

韓国語の「馬」にも「m」が含まれている!

 念のためモンゴル語の「馬」も調べておく。

やっぱり「m」だ!

これは偶然じゃないと思う。何百年も昔、人々は馬に乗り大陸を移動し、物資だけでなく言葉も運んできた。現地の人々に旅人は「これは馬だ」と教え、広まったのではないだろうか。つまり、同じルーツを持つので似た発音になっているのだろう。こういうのに自力で辿り着いた瞬間が気持ちいい。(調べたら記事がわんさか出てきた。記事①記事②記事③)

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母音記号は添えるだけ

続いて、母音記号を学ぶ。タイ語の母音は32種類あるそうだ。表記の際には子音の周りに添えるような書き方が多い。

32種類中22種類の母音を書いてみた。3~5段目の「ウ」は微妙に発音が異なる。外国語を学ぶたびに日本語の母音の少なさが外国語習得のハードルになっていると感じる。

32種類の母音と聞くと「うわっ」となるが、表記上の母音記号としては19種類しかない。

さらに、タイ語には声調が5種類ある。

左端の無表記のものを除外すると4種類だ。

以上がタイ文字の文字系統である。ここまで来ると、表とにらめっこすればなんとなく発音が出来る状態だ。

読める……読めるぞ……!と言いたいところだが、勉強した通りに読むと「コーボクナカー」になってしまう。おしい。おそらく、「ボ」や「ナ」には母音が付かないため弱い発音となり、「プ」や「ン」と読むのだろう。

⏩ タイ語のキーボードを予想する

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