かるた以外で使えないか
ダイソーで売っている都道府県かるたはこちらだ。
絵札には、ひらがな、県の形、そして裏側に県の特徴と有名なものが3つ書いてある。
つくりがとても良いので、かるたとして遊ぶ以外にも、なにかこう、べつの遊びにもつかえないだろうか。
都道府県は、県境を介して、隣の県とつながっている。隣の県のカードをどんどん置いてつなげていき、最初にぜんぶ出し切った人が勝ち。つまり、七並べのようなゲームはできないだろうか。と、考えた。
ひとまず、ルールは以下の通りに決めてみた。
都道府県七並べルール
(プレイヤー人数)ゲームは、3人か4人で行う
1)県カードをよく切って、全員に均等に配る。
2)余った県カードを場に置く。
3)じゃんけんで勝った人から、場の県カードに隣接している県カードを置いていく。
4)パスは1回のみ。
5)県が置けなくなったら負け。手持ちの県カードを全部場にひらく。
6)最初に県カードが無くなった人が勝ち。
7)県の繋がりは以下の通り。
すなわち、七並べのように、隣接する場所だけにカードが置けるというルールを、都道府県の並びに適用したわけだ。
ゲームマスターがいればオンラインでできる
さて、この都道府県七並べ。
本来であれば、一組のカードをプレイヤーに分配し、どんなカードを持っているかわからない状態でやらなければ、ゲームとして成立しない。
しかし、リモートでもゲームマスターをひとり決めれば、実際に全員が集まらなくても、オンラインでもできるのでは? ということに気づいてしまった。
つまり、ゲームマスターが、県カードをそれぞれプレイヤーの人数分で分配し、それに沿った県カードリストを作り、各プレイヤーに個別にメッセンジャーで送る。受け取ったプレイヤーは、その県リストの中から一つずつ場に出す県を発表していく。
そして、場に出された県は、ゲームマスターが画面共有で白地図を共有し、色を入れていけばよい。
完璧だ。
しかし、計画の完璧さと、ゲームのおもしろさというのは別問題である。というわけで、この「都道府県七並べ」がどれほどおもしろいのか、じっさいにやってみた。
ひとまず第一回戦。古賀さんがよく混ぜて均等に分配した県カードを、リストに書き起こし、メッセンジャーで送ってくれた。
プレイヤーが黙々と県リストと手札のカードをそろえる時間が流れる……。
実際、ゲームを進める上では、プレイヤーにカードは必要なく、完全に気分を盛り上げるものだが、やはり気分は盛り上げるに越したことはないので、律儀にそろえた。
林「……ランダムにならんでいる県カードと、ランダムにならんでいるリストを突き合わせる作業が、プログラムの確認作業みたいですね」
西村「えーと、足りない県はどれだ……イバあぁあ〜、うっかり手札を言いそうになっちゃった」
古賀「あれ、いま言っちゃいました?」
ほり「これ、(自分の手札は)とんでもなく弱いですよ。手札のカードがめちゃくちゃ不利なんですけど」
第一回戦のスタート県は、山形、京都、岡山。ジャンケンで順番は、ほり>西村>藤原>林となった。
古賀「では、ほりさん、最初の札をお願いします」
ほり「秋田県」
西村「秋田ですねー」
ほり「たのしいです! これ!」
西村「え、もう? はやすぎでしょ!」
このゲームの攻略ポイントは?
さて、このゲーム、序盤はひたすら地図を埋めていく……という展開になりがちだ。
なぜなら、普通の七並べは、隣接しているカードが2つしかない。しかし、都道府県は違う。たいていの県は複数の隣接県をもっている。したがって「県カードが出せなくてパス」という局面はなかなかない。
そんなわけだから、県カードは順調に場にひらかれていく。そして2巡目の林さん。
林「それじゃあ、香川」
林「ほりさん、このゲーム性ってどんなところにあるんですか? とめるといいってこと?」
ほり「そうですね、山口とか、青森とか、必ずその県がないとその先に県が置けないところを止める(わざと出さない)んです」
古賀「鹿児島とか?」
ほり「そうですね」
林「じゃあ、おれがさっき堂々と四国に橋わたしちゃったのはまずかったんだ」
ほり「四国が解放された……」
西村「あ、でも、四国は岡山と香川だけじゃなくて、広島と愛媛が繋がってますし、兵庫と徳島もつながってるんで、そうでもないですよ」
林「あ、よかった」
古賀「では三巡目、西村さん」
西村「あ、どうしようかな……これ出しちゃうか……長野です」
古賀「ながの! 領土がでかい」
ほり「あ、いいですね、長野」
西村「長野県は日本でいちばん隣接県があるんです」
古賀「え、そうなんだ……なんで出しちゃったの?」
西村「……」
古賀「長野解放しちゃったらめっちゃ置けちゃうんじゃないですか」
西村「やっぱり、出さないほうがよかったですね……」
ゲーム考案者のくせに、攻略法がよくわかってないことが露呈した。長野みたいに隣接県が多い県は、いつでも置けるから、ヤバいというときまで温存しておいたほうがいいのだ。
古賀「では、林さん」
林「長野と愛知ってつながってんだ……では富山! ありがとう、長野」
最後の3、4枚で駆け引きが一気に来る
さて、何巡かするうち、カードが場に出されていき、本州の県はほぼ埋まってきた。
しかし、よく見ていただくと、九州がまるごと埋まっていないのがわかるとおもう。この時点で各プレイヤーの手札の数は3〜4個。山口、福岡がうまらないことには、九州に県を置くことができない。
そしてさらに、青森が埋まってないのも不穏である。北海道を持つプレイヤーは負けてしまう可能性が高い。
手札の読み合いが始まった。
まず最初に動いたのは、ほりさん。ほりさんは敢えて一回目のパスを使った。その後、西村が島根を埋めたあと、藤原くん、林さんがたて続けにパス。
パス権は一回だけなので、次の順番でほりさんは仕方なくここで山口を置く。山口を止めてたのはほりさんだったのか〜! ほりさんいわく「全員を道連れにしようとおもった」らしい。
ここで、各プレイヤーが持っている残りの手札をお見せしてしまおう。
ほり(パス権0):北海道・沖縄
西村(パス権1):熊本・長崎
藤原(パス権0):青森・大分・宮崎
林(パス権0):福岡・佐賀・鹿児島
そして、現在の場の様子はこちら。
西村「山口が出たとしても、安心はできないですよ! 福岡が出ないと、僕はパスです」
古賀「西村さんパス! 次、藤原くんどうでしょう」
藤原「青森県」
林「なんでパスすんの、さっき!」
藤原「山口が出ないことには先に置けなかったから、他の人に北海道出されるよりかはいいので」
あんなに和やかだった序盤とはうってかわってムードが緊迫しはじめた。
古賀「次、林さん!」
林「そうか、俺か。……福岡」
西村「(やっと)でたー」
古賀「次はほりさんです」
ほり「北海道!」
ほりさんが懸案の北海道をやっと場に出すことができた。残るは、九州の各県のみ。このあと、西村が熊本を埋め、いよいよ、だれがどんな順番でうめるのかで勝敗が決まる感じになってきた。
あらためて手札のカードをみてみよう。
ほり(パス権0):沖縄
西村(パス権0):長崎
藤原(パス権0):大分・宮崎
林(パス権0):佐賀・鹿児島
そして場の残りはこちら。
続いて藤原くんは大分を埋めた。そして、キーとなる県を2つ持っているのが林さんだ。佐賀も、鹿児島も、その先にある長崎や沖縄を置くためには必須の県なので、林さんがどちらを出すかで勝敗が決する。
林「……佐賀」
ほり「佐賀かぁー……」
古賀「ほりさん」
ほり「はい、無理です」
ここで、ほりさんが脱落。手札に北海道と沖縄の両方があったのはやはり厳しかった。ほりさんが最初に「手札が弱すぎる」と言っていたのはこのことだったのだ。
そして、佐賀が開いたことにより、助かったのは、長崎を持っていた西村で、一抜けとなった。
順位は、1位・西村、2位・藤原、3位・林、4位ほり、の順番であった。
ほり「ぼくが早く山口を開放していれば助かったのかもしれない……」
古賀「でも、そこは戦略で勝負かけたわけですから」
ほり「余計なことしなくてもよかったですねー」
古賀「物語の緩急をつけてくれたんです、ほりさんは」
古賀「やっぱりちょっとたのしいですね、地図が埋まって行く感じはたのしいですよ」
林「やっぱり、薩長なんですね、キーとなる県はなぜか」
新ルールを追加してみた
以上のような感じで、最後は意外と盛り上がった。
とはいえ、である。このゲームの序盤は、置ける県がわりと多いので、いささか作業っぽくなってしまうという難点がある。そこで、ちょっと複雑になってしまうが、追加ルールとして「縛りカード」ルールをつくってみた。
縛りカードルールは以下の通りである。
■縛りカードルール
0)縛りカードありの場合はパス権2回。
1)プレイヤーは、パス権を1回使って、縛りカードを引くことができる。(縛りカードの種類は指定できない)
2)縛りカードの効果は、縛りカードを引いたプレイヤーから発動し、一巡するまで効果を発揮する。
3)プレイヤーは、縛りカードの条件に合う県カードを強制的に出さなければいけない。条件に合うカードを持ってないプレイヤーはパスしなければいけない。
4)縛りカードの種類は次のとおり。
- 海無し県のみ出せる。(滋賀は海無し県)
- 東日本のみ出せる。(新潟、長野、静岡以東)
- 県庁所在地と都道府県名が違う県のみ出せる。(埼玉は違う県)
- 海あり県のみ出せる。
- 西日本のみ出せる。(福井、岐阜、愛知以西)
- 県庁所在地と都道府県名が同じ県のみ出せる。(東京は同じ県)
5)縛りカードは一度引くと、同じカードはもう使わない。
6)縛りカードの条件に該当する県が全て場に出ている場合は、効果無しとなり、次のプレイヤーが普通に出して良い。
西村「以上です。ちょっとややこしくなりますけど、このルールによって、序盤での駆け引きが増えるのではという目論見です」
林「これって、なにか見ていいですか?」
西村「どうぞ、地図帳とかを見ながらやってもらってかまわないです」
第2回戦、スタート都道府県は、岩手、山梨、兵庫。順番はほり>林>藤原>西村となった。
トップバッターのほりさんが、神奈川県を置いたあと、林さんが「あれ?」と言い出した。手札に、場に出ている県に隣接する県カードがないという。
序盤で手札が悪いと、こうなる可能性は十分ある。このゲーム、戦略性よりも運の要素が若干強めかもしれない。
しかしながら、林さんは山梨県に隣接する埼玉県を持っていたので、事なきを得た。
以降、ゲームは滞りなく進むものの、貴重なパス権を消費してまでカードを引く人はあまりいない。
3巡目に林さんが「いたずらに縛りカードを使ってみたい」ということで、「県庁所在地名と県名が違う県のみ出せるカード」が発動された。
林さんが愛媛(松山)、藤原くんが茨城(水戸)、西村が宮城(仙台)、ほりさんが香川(高松)と、なんとか全員が出すことができてセーフとなった。
縛りカードは出すタイミングがむつかしい。県の数が少なくなってから引けば、敵に強制的にパスをさせる確率が上がり、有利かもしれない。しかし、自分もカードの指示に合う県カードを場に出さなければいけない。ということは、手札のカードがまだそこそこあるときに使ったほうが良いようだ。
ゲーム後半、ぼくは置ける県が少なくなったこの状態から「縛りカード」を使ってみた。自分で言うのもなんだが、鬼畜の所業である。
出たカードは「海あり県のみ出せるカード」であった。現在、まだ埋まってない県が、福島、三重、滋賀、宮崎、佐賀、長崎で、
あまり意味がなかった気もするが、手札1枚の藤原くんがパスすることに。これで、藤原くんが滋賀県しか持ってないことがわかった。
藤原くんは、ひとつ前の番で青森が開いたのが嬉しく、うっかり北海道を置いてしまったため、この番で滋賀を出すことができなくなったのだ。
そして、西村が三重県を出して、上がりとなった。2連勝である。
自分で作ったゲームで人を集めて自分で勝つ。やっていることはジャイアンだと、古賀さんにたしなめられた。
さて、ほりさんの番。
ほり「これって長崎置けないですよね……ということは、(すでにパス権を2回使っていたため)ドボンです! 2回連続ビリだ……」
林「佐賀けっこうキーポイントになる県ですね」
古賀「佐賀が光ってますね、このゲーム」
ほり「佐賀は重要ですねー」
古賀「じゃあ、林さん出してください」
林「……佐賀」
西村「冷酷な殺し屋みたいだ」
ほりさんは、2回戦とも、林さんの佐賀県カードが致命傷となってドボンしてしまっている。恐るべし、佐賀……。
なかなかおもしろかった
結局、第2回戦は、1位西村、2位林、3位藤原、4位ほり……ということになった。
ほりさんのアドバイスによれば、縛りカードの使い方は、パス権をつかうのではなく、全員1回は使えることにしておき、カードの種類は早いものがちで種類を選べる……。という方がわかりやすいかもしれない。とのことだった。
県カードも、100円ショップの都道府県かるたを買ってきて、カードに自分で隣接県、県庁所在地、海のありなし、西日本、東日本などの情報を書き込んでしまってもいいかもしれない。
都道府県七並べは、ぼくがぼんやり思いついたゲームで、ルールも最初は手探り状態であった。しかし、なんどかやっていくうちにルールがだんだん固まりつつある。そしてなによりも意外とおもしろかった。
最初の作業っぽい時間でさえ、塗り絵みたいでいい。という意見さえあった。
いずれにせよ、このゲームはもうすこし、ブラッシュアップしていきたい。