型抜き道は奥が深い
こんなに練習しても、まだ居酒屋で勝てなかった。型抜き道は奥が深い。すでに多くの学びを得たが、まだまだ道半ばなのだろう。連載はこれで終わりですが引き続き型抜きを極めようと思います。ありがとうございました。
型抜き13種類すべての成功を当面の目標とし、型抜きに励む毎日。ここまで8種類成功させたが、いよいよ今回が連載最終回。果たして残り5種類を成功させ、居酒屋でのリベンジができるのか?
小出し記事「型抜きをズルせずマスターしたい!」
ライター:ほり
第一回:始まりは居酒屋での敗北だった
第二回:はじめの一歩
第三回:人生初の型抜き成功
第四回:かなり上達した
第五回:悟りの境地
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Follow @dailyportalzこの連載では居酒屋での型抜き成功を最終目標に定め、ひたすら型抜き修行に励んでいる。修行が終わった後は居酒屋でのリベンジマッチに進む予定だ。
ここまでのおさらいをしよう。
日本に存在する型抜きメーカーはハシモト1社のみ。Amazonではハシモトの型抜きの「易しいタイプ」と「難しいタイプ」が売られており、「難しいタイプ」はあまりにも非人道的なので「易しいタイプ」を練習してきた。
箱には13種類、計100枚の型抜きが入っており、13種類全種のコンプリートを目指してきた。ここまで8種類成功している。
ここで訂正。読者の方から、「風鈴ではなく、帆掛け船では?」と指摘をいただいた。たしかに。
実は、ハシモトの公式サイトには型の名前が載っておらず、今回の連載では私の独断と偏見で型の名前をつけていました。ごめんなさい!帆掛け船です。あー恥ずかしい恥ずかしい。
ちなみに、ハシモトの公式サイト、コンテンツが充実していてかなり面白いのでみんな見てください。
いよいよ残りは5種類。かかし、ひこうき、うさぎ、かさ、チューリップ。ただし、これまでの修行で頻繁に記録を取っていたこともあり、ノウハウがかなり蓄積されてきている。
型抜きノウハウ(ver.2)
あとはやるだけだ!
ではやります。まずはかかし。
まずは首回り以外を処理する。これは前回説明した「もろさ後半上昇理論」とは逆行するが、首があまりにも細いため、先に首周りを対処してしまうと後半他の箇所を削っているときに割れてしまう。
いよいよここから。首の左右の溝を何度もなぞることで深くすると……。
やった~!かかし、クリア。コツは、首回りをなぞって溝を深くすること。型抜きノウハウには「『溝を掘る』のではなく、『余白を削る』」と書いたが、これだけ細いと溝を掘る方が有効のようだ。
これであとは4種類。しかし、箱に入っていたこれらの型はすべて使い切ってしまったので、再度購入した。
ここで、読者コメントを参考にしたい。連載の第1回から今に至るまで、Twitterやはてなブックマークでこの記事に関して多くのコメントをいただいている。特に多かったのが水への言及だ。
「水で濡らすとやりやすい」
「水で濡らすのはズルだ」
「針の先をツバで濡らすとよい」
いろんな意見をいただいたが、とにかく、水で濡らすのは有効のようだ。実際、連載第3回でもウェットティッシュで濡らすことで成功している。しかし、水で濡らすのは諸刃の剣。濡らすと柔らかくなるので削りやすくなるが、その分、型本体も割れやすくなってしまう。
そのため、実は最近は濡らさずにやっていたのであった。
しかし、ここでとんでもない作戦を思いつく。
こうすることで、紙の乗っていない部分だけ水がかかり、柔らかくなる。ズルいかズルくないかでいうと、いよいよズルい気がする。居酒屋に霧吹きはない。もういい、ズルでもいいから成功させてください。(長くなるのでカットしましたが実はすでに何度もひこうきで失敗していて心が折れかけているのです。)
霧吹き作戦でひこうきに挑む。
霧吹き作戦大成功!やっぱりちょっとズルいぞ。しかも紙を切るのが割と面倒だ。
うさぎの難所は耳元である。鋭角に入り込んでおり、どうしても耳元で割れてしまう。これまで何度も苦しめられてきた。
ちなみにここからはカッティングマットの上で作業をしている。木製のテーブルの上で型抜きをすると針の穴が無数にできてしまうので。うちはもう手遅れですが、他の人は最初からカッティングマットの使用を強く推奨する。
というわけでうさぎもクリア。型抜きノウハウの「もろい箇所は『ちょい残し』で補強する」がうまくいった。
いよいよ残すところあと2種類だ。かさとチューリップ。そして、うさぎをクリアした後、2箱目に入っていたかさとチューリップは全部失敗したので、3箱目に突入している。
型ガチャ成功。どちらも8枚入っていた。実は、型の枚数はけっこうバラツキがある。いつからか、箱を開封して目当ての型を探すことを型ガチャと呼ぶようになっていた。
さて、かさといえばひらがなの「し」のような柄の部分。ここが細いので毎回折れてしまう。そして私の心も折れる。
「引退」の2文字が脳裏をよぎる。
何度も何度も失敗しているうちに、「次こそは絶対成功させてやるぞ」という気持ちが次第に薄れていっている自分に気づく。というか、おこがましくないだろうか?「成功させてやる」って。ここで、はっとした。
型を抜いてやるんじゃない。型を抜かせていただいているんだ。
そうだ。私に欠けていたのは謙虚さだ。「型抜きはメンタルのスポーツ」とあれだけ言っておきながら、全然メンタルをコントロールできていなかったのではないか。失敗するたびに悔しいという気持ちがあったし、何とかすれば必ず成功できると思っていた。
しかし、型抜きをコントロールできると思っていること自体が傲慢なのだ。 型の一枚一枚に個体差があり、割れ方も違う。コントロールできるわけがない。型抜き、それは他力本願の世界。型抜きの前に人類は皆無力なのだ。
とはいっても、型抜きマスターを目指す私はどうすればよいのだろうか。もう答えは出ている。一枚一枚、丁寧に型を抜かせていただく、ただそれだけだ。次の一枚では失敗するかもしれないが、いつかは成功するはずだ。あくまでも型抜きとの向き合い方が大事なのであって、結果はただの副産物である。
謎に宗教っぽさを出していたら普通にかさが成功した。やった~。
これで13種類中12種類成功。あとはチューリップのみ。ちなみに3箱目のチューリップは全滅したので4箱目になります。謙虚さとは。
ただ、本当にチューリップは難しい。13種類で一番難しいのではないだろうか。花の形も細い茎もすべてがやっかいだ。
ここである決断をした。この8枚でチューリップを成功できなかったら、あきらめよう。キリがない。
成功したら型抜きマスターの修行を終え、居酒屋でのリベンジマッチにのぞむ。失敗したら居酒屋にも行かず、ここで終わり。
残機は8枚。この8枚でダメなら私は型抜きマスターになれない。緊張感がある。
ちなみに、右上の画像は残機表示である。いまは1枚目に挑戦していて、まだ残り7枚が控えているので残機7となっている。緊張感を持たせる演出だ。
心の旅のBPMはちょうどいい。一拍ごとに溝の一部を針で一往復する。心の旅をリピートして5周目に差し掛かったその時……!
こうして、私は13種類すべての型を(ズルせず?)成功させたのであった。型抜きマスターといってもよい。
長い長い戦いが終わった。これまで、何度失敗して、破片を食べたことか。(型抜きは食べられます。) 疲れたなぁ。
そういえば、型抜きを食べる話について補足すると、失敗しても破片は食べない方がいいです。普通に美味しいので。どういうことかというと、「失敗する→食べる→美味しい→快感」という報酬系が脳に出来上がってしまい、無意識のうちに「失敗しても美味しいからいいや」と思うようになり、型抜きに集中できないのである。
こんなにも一つのことに向き合ったのはいつぶりだろうか。忘れないうちに、型ごとの攻略法と、型抜きノウハウを整理しておく。
こうしてみると、誰でも簡単にできそうな気がしてくる。でも現実は甘くないです。
ノウハウも更新しておく。
型抜きノウハウ(ver.3) (太字は更新箇所)
最後に、居酒屋でのリベンジマッチ。勝負は一発。さあどうなる。(新型コロナウイルスに十分配慮した居酒屋に行きました。)
知らない型が出てきた。せっかく13種類の型をコンプリートし、型ごとの攻略法までまとめたのに意味がない。
実は、ハシモトの公式サイトのカタヌキの型一覧には、「紙に包んだ業務用カタヌキの型は非公開です」と書かれており、嫌な予感はしていた。やはり、業務用の型には13種類以外の型もあるようだ。
いきなりプロの洗礼を受けたが、でも大丈夫。ここまでのノウハウをもってすれば必ず成功できるはず。作戦通り居酒屋のおしぼりで型の周りを湿らせてから始める。
負けました。リベンジマッチ、敗退です。型抜きはそんなに甘くない。いいわけをすると、
と愚痴は止まりませんが、負けは負けです。対戦ありがとうございました。
こんなに練習しても、まだ居酒屋で勝てなかった。型抜き道は奥が深い。すでに多くの学びを得たが、まだまだ道半ばなのだろう。連載はこれで終わりですが引き続き型抜きを極めようと思います。ありがとうございました。
小出し記事「型抜きをズルせずマスターしたい!」
ライター:ほり
第一回:始まりは居酒屋での敗北だった
第二回:はじめの一歩
第三回:人生初の型抜き成功
第四回:かなり上達した
第五回:悟りの境地
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