こんにちは、編集部 石川です。
当サイトで7月にヒットした記事がこちら。
サイコロを振り続けて文章を作る実験、またそれを自動実行するための装置づくりなど見どころの多い記事ですが、そのまえにモチーフになっている「無限の猿定理」という言葉がかっこよくて痺れました。
「猿がタイプライターの鍵盤をいつまでもランダムに叩きつづければ、シェイクスピアの作品を打ち出す」というものです。
この記事にちなんで、今回はライター&編集部のメンバーに「かっこいい科学用語」をきいてみました!
林雄司
ゼノンのパラドックスの1パターンで、
目的地につくにはその中間点を過ぎる必要があり、そうするとまた目的地との間に中間点が現れて、その中間点をすぎるとまた中間点が現れて、ずっと中間点をすぎるだけで永遠にゴールできない。
ってやつが好きです。
原稿が全然まとまらないとき、ゼノンのパラドクスみたいな気分になることがあります。
地主 恵亮
ベルクマンの法則が好きです。簡単に言えば恒温動物は同じ種でも寒い地域ほど体が大きくなるということでして、とても簡単にこの法則は体感できます!
本州にいるシカと北海道にいるシカではあきらかに体の大きさが違うんです!すぐに違いがわかるので好きな法則です!
クマもそうですね、北海道のクマは本州にいるクマよりあきらかに大きいです。自然界のクマは可能な限り出会いたくないですが、動物園では体感できます!
まいしろ
「テセウスの船」が好きです。
船のすべてのパーツを入れ替えた場合、それはもとの船と同じだと言えるのかという哲学の問いなんですけど、特に答え出てなくて投げっぱなしで終了している潔さがいいです。あと名前がかっこよすぎる。
いつか日常会話で「まるでテセウスの船ようだね...」とか遠い目して言いたいです(言ったことはない)
伊藤健史
ハリウッド俳優ケヴィン・ベーコンはあらゆるジャンルの数多くの映画に出演しており、「ハリウッドの全員が彼の共演者か、共演者の共演者」となるため、ケヴィン・ベーコンはハリウッドの中心(つまり世界の中心)と言われています。
そこでケヴィン・ベーコンと俳優たちの距離を現す指標として開発されたのがケヴィン。ベーコン指数です。
ケヴィン・ベーコンと共演した俳優に「1」、「1」の人物と共演した人物に「2」というように隔たりの指数(「ベーコン数」Bacon number と呼ばれる)を与えるもので、たとえば、日本では渡辺謙がベーコン数2となっています。
こちらのサイトでベーコン数の算出が可能です
JUNERAY
「メンガーのスポンジ」です。スポンジなんて日用品感あふれる名前がついているのに、穴をあけるたび表面積は無限に近づき、体積は0に収束していくというギリギリ分かりそうで分からないバランスが好きです。
正方形を分割して穴を開けて、それを繰り返し……という構造のため、Minecraftで再現している人がちらほらいるのも面白い。
フラクタル次元は2.72次元らしい。どゆこと?
唐沢むぎこ
「シェルピンスキーのギャスケット」がいい感じです。無数の正三角形からなるフラクタル図形で、形のと名前の過剰さがマッチしています。「シェルピンスキー」も「ギャスケット」も聞きなじみがなく、すぐ名前を忘れるのが玉にキズです。
あと、なんかよく分からないですが1.58次元図形らしいです。2.5次元俳優みたいでかっこいいですね。
石川大樹
文明の発展度合いを表す指標で、タイプI~タイプIIIの3段階があり、高度文明になるにつれ数字が増えていきます。
これ何がかっこいいかっていうと、我々の人類文明はタイプIにすら到達してないんですよ。自分たちを高度文明ととらえて上から目線で見てるんじゃなくて、SF的な宇宙文明を前提としてるんですね。ちなみにタイプIII文明の定義は「銀河全体の規模でエネルギーを制御できる」です。
さらにしばしば4段階以上に拡張されることがあり、例えばタイプΩがあります。もはや数字ですらない。「多元宇宙の進出から宇宙の創造へ至る」だそうです。
ネッシーあやこ
全般的にものの名前を覚えるのが苦手なので、こういう類のものも全然覚えておけないくちです。
でも、少し前に3つの点や線が逆三角形に配置されているのを見ると、顔だと認識してしまう現象にちゃんと名前があると知り、たいそう感動したので書かせてください。「シミュラクラ現象」っていうんですね。デイリーポータルの記事でも何度か使われているようです。
万物に命があったらおもしろいと願っているせいで、なんでも顔に見えがちなのかと思っていましたが、視覚に備わっている習性のようなものだと知って安心しました。今後はドヤ顔で、現象の名前を連呼していきたいです。でも、暗記しておける自信がありません。
小堺丸子
アフォーダンス理論(特にデザインにおけるアフォーダンス)が好きです。
人は経験則から、ドアノブぽいものが板についてたら押し引きできるドアだと認識するみたいなことです。
会社の各個室トイレの奥に、消臭剤、トイレットペーパーに吹きかけて除菌するやつ、臭い消しスプレーが並んでいるのですが、その下に紙があって、それぞれの形(消臭剤なら消臭剤の底に合った図形)が書かれていて、定位置がしめされています。ついちゃんとその形に起きたくなるのでああこういうのがアフォーダンスかあ、と感心しました。
しかもその図形のなかにニコちゃん顔が描かれてるので、持ち上げるたびにほっこりします。
りばすと
「チューリング・テスト」が大好きです。
ある人工知能が、人間と区別可能なものかどうか確かめるテストなのですが、方法が「壁の向こうに機械と人間を置き、質問に対するそれぞれの回答からどちらが人間でどちらが機械か当てる」というものなんです。なんというか、すごいアナログ……!
「人間と区別がつかないか」なので難しすぎる計算にすぐ答えを出してしまってもいけなかったりして、考え出すと奥深いのもポイントです。
松本圭司
超ヒモ理論が好きです。
分子、原子、陽子、電子、クォークとかなんだかかっこいい名前の粒子を細かく見ていくと最後はヒモ!
世界はヒモで出来てるって言われても意味わかんなくて良いし、立証出来なそうってのも良いし、全体的に全然分からなくて良い。
理屈は全然わからないのに、ヒモの部分だけ身近に感じられる可笑しさが好きです。写真はクライミングで使うヒモです。
安藤昌教
相対性理論の動いている物体は縮むという話が好きです。
飲料メーカーの広告提案に、リニアモーターカーは速いから車内で販売する缶はちょっと縮んでいるはず。いつか光速に近づいてもいいように缶をでかくしましょう、と書いて「説明が難しいので」と断られたことがあります。
「このままではゼノンのパラドクスが発生してしまう…!ここはシェルピンスキーのギャスケットで…いやしかしそれではシミュラクラ現象が抑えきれない…!」
意味を覚えると大変えですが、適当に口にするだけでも賢くなった気がします。では今月もデイリーポータルZをよろしくお願いします!
【投稿募集】
みなさまのお気に入りのかっこいい言葉も募集しております!→賢そう&かっこいい用語 投稿フォーム
「ゼノンのパラドックス」をはじめいろいろなパラドックスが紹介された本
※このリンクからお買い物していただくと運営費の支えになります!