高級魚「のどぐろ」(兵庫)
つぎは高級魚「のどぐろ」の缶詰である。
こののどぐろ缶は兵庫県産。兵庫には美味しい物がたくさんあるので勝手に期待しています。
こののどぐろ、煮込む前に一回あぶってあるぞ!
のどぐろ缶ののどぐろには、あぶった焦げ目がちゃんとついていた。そういうことを缶に詰める前にひとつひとつやっているのか。生産性どうなっているんだ。
でもそのおかげで
おなじみの言葉を失う瞬間がやってきたのだが、一拍おいたあと古賀さんから「キャア!」という悲鳴が聞こえた。
もうこの一缶で完成された料理なのである。食卓にこれが出されたら最初は驚くが、食べたら黙るか悲鳴を上げるかだと思う。そのくらい美味い。
ショウガが薄く香る醤油ベースの煮汁には、のどぐろのうまみと脂が溶けていて、この汁だけでご飯を食べたかった。
くじら(千葉)と熊(北海道)
次は味の濃そうな缶詰めを2種類。まずはくじらの大和煮である。
千葉の、特に外房では本当に魚が美味しくて、寿司だけ食べに千葉に行きたくなるくらいである。でもくじらも食べられていたなんて知らなかった。
くじら肉は子どものころに給食で出てきた気がするけど、僕がいま住んでいる神奈川だとあまり売られているのを見たことがなかった。
子どもの頃の記憶で、ちょっと癖がある硬い肉、くらいの印象しかなかったのだけれど、このくじら大和煮缶は、ショウガの効いたしっかりとした味付けで、一口目ではくさみも癖もまったく感じなかった。
……(もぐもぐ)。
いや待てよ、しっかりした歯ごたえの肉を噛み進めていくうちに、波間からひょこっとくじらが現れる瞬間がある。ほほー。
でも嫌な味ではない。小説「白鯨」というよりもラッセンの描くくじらのような、軽くポップな感じ。初心者にもおすすめ。
続いては、山からやってきたクマ肉の大和煮である。
北海道は冬に取材に行ったことがある。
いつどこからクマが出てきてもおかしくない雰囲気だったし、実際に毎日のように目撃情報が上がってきていた。
あの時感じた熊の気配と同じものをこの小さな缶詰からも感じられた。熊のオーラだろうか。失礼します!
熊肉はくじらの大和煮同様、ショウガの効いたしっかりした味付けだった。
クマ缶はくじら缶よりも獣臭さがしっかりと残っていた。しかしむしろこのくらいクセがある方が好き!という人もいるだろう。好き嫌いの範囲に収まるレベルだと思う。家畜化されていない、山に住む動物の味というか。
キノコとそばの缶詰(山形)
山の味つながりで、つぎは山形から、キノコの缶詰である。
この缶を見て思い出したのがライター小堺さんが取材してくれた山形の夕日。缶の色合いがこの時の夕焼けと似ていた。
キノコの缶詰は単独で濃い味付けではないので、うどんとかそばなんかにどっさり乗せると最高に美味しいと思う。
もちろんキノコのうま味が凝縮されているので、ちびちびとこれだけ食べてもずっといける。たまにピリッと唐辛子が効いているのがまたいい。
次も山形県から。酒田の名物むきそばの缶詰である。
パッケージからはまったく想像できないのだけれど、1缶で約5~6人前と書いてある。ほんとに?どんだけ凝縮されているのか。
開けるのが楽しみな缶詰めの一つだったのだけれど、プルトップではなく缶切り方式だった。この開け方も久しぶりでテンションが上がる。
山形のむきそばは衝撃的な見た目だった。
そばと書かれていたのでそばかと思っていたのだけれど、むきそばというのはそばの実をむいて殻を取って、そのまま茹でたものなのだとか。
今思えばパッケージの背景は砂浜ではなくそばの実である。
料理って進化していくと一周回ってシンプルになることがある。素材の味を楽しむ、というやつだ。
もしかしたらむきそばも、そばが極端に進化した結果なのかもしれない。
もしくは最初の段階で進化をやめたか。
むきそばはそばの味も香りも、歯ごたえさえも無に近い食べ物だった。よくいえば何にでも合う。