ローテクのオアシス
今回の会場は、DIYの祭典「Maker Faire Tokyo」の一角。イベントの雰囲気は
昨年のレポートを見るとわかっていただけるのではと思いますが、自作ガジェットあり、ロボあり、電子工作ありのハイテクノロジー空間である。
そこに突如現れる工作スペース
棚には電気関係なさそうな文具
箱に100均の雑貨がびっしり
そして手前のテーブルには土俵(という名目の板)
ここが今回の、戦場なのである。まだロボットが一体も出てきてないのにすでににじみ出るヘボさ。
Maker Faireという見渡す限りのハイテク砂漠に湧き出した、不器用のオアシス。それがヘボコンなのである。
現場でのカスタマイズが勝敗を分ける
今回のミニヘボコンの特徴は、その場でロボットの改造が可能なことだ。さきほどのラックに積まれているのはそのための資材である。
試合前のこの時間が最も真剣な表情(試合中はなんとなくみんなヘラヘラしてしまうため)
子供たちはさらに真剣(マジ)
大会の進行は、くじで対戦順決定→ロボットの改造→試合、の順で行われる。改造する時点で最初の対戦相手がわかっているのだ。つまり、相手のロボットの弱点を狙ったり、攻撃を防ぐような改造ができるということ。
ドリルで攻めてくるロボが相手なら(ドリラーイノグチ(えきどな・第2回))
巨大な楯で防ぐのはどうか(きらみん(おおかわゆいこ・まさし・第5回))
相手が女子高生だったとしたら(10話のアレ。(わわわQ・第3回))
甘いスイーツを内蔵しておびき寄せてはどうか(募集中(はむ&たこ・第4回))
上の例は実際の対戦順ではないが、なにしろこういった感じで戦略的に戦うことができるのだ。
すばらしいロボの数々
そんな改造タイムを経て、土俵に上がるロボットたち。戦いの様子は記事後半で見てみることとして、まずは印象に残ったロボットの一部をこちらでご紹介しよう。
ネタ系
技術的に凝るスキルのない我々。ならばネタに走る、というのはひとつの手だ。
素材にこだわったロボ(だんしゃく・第2回)
無印良品を意識したコンセプトロボ。自作の値札が高完成度だが、競技が相撲であることを考えると力を入れるポイントを間違えている。
上のロボット、6足歩行できててよくできたロボに見えるが、それはそういうタミヤのキットを使っているからである。
以下、よく動いているように見える部分はすべて、タミヤ製部品か、中に既製品のおもちゃが入っているかのどちらかなので、そういうつもりで読んでほしい。
ドローンします(おおかわえつし・まさし・第5回)
親子参加です。「ドローンのように飛ぶものを作りたい」という製作意図を、ヘリや飛行機のおもちゃを貼ることで表現。もちろん飛ばない。そして前面に「本日はこの辺でドローンします」。子供の不器用さと大人の駄洒落が悪魔合体した怪作。
モーターふぐ(ゆえ・第1回)
風船を(手動で)膨らませて相手を威嚇するだけのロボット。移動機能は持たない。(正確にいうと、中になんかギアボックスが入っていたけど前進できてなかった)
トーマス(闇属性)(コーセンセンコーカ・第4回)
小さな機関車トーマスをたくさん内臓していつつ、全体としても大きな機関車トーマスであるという哲学的な作品。あと動きがキモイ。
募集中(はむ&たこ・第4回)
先ほど紹介したスイーツロボ。外装にお菓子の箱を使ったことによりぐっとゴミっぽいビジュアルを実現。
中身のスイーツはよく見ると、ただのケーキではなくなんとラズベリーパイである。(無粋を承知で説明しますと、ラズベリーパイっていう小型コンピュータがDIY界で流行ってるんです)。既製品ではなく手作りしたところがウリ。
最後に紹介したラズベリーパイロボの作者2人は、先日の高専ロボコンにも出場し、一回戦負けしたそうである。
このエピソードからもわかるように、これらのネタ系ロボ、ただ「目立ちたい!」というお調子者精神だけで成り立っているわけではなく、その前段階で「技術では目立てないから…」というあきらめを経由していることも忘れないでほしい。
僕は常々、「ロボコンは工学、ヘボコンは人文学」と言っている。こういう人間の弱さがにじみ出てこその、ヘボコンなのである。
天然系
いっぽうで天真爛漫に己の技術力の低さを謳歌していたのが、この天然系のみなさん。
ペットポトル(みかん・第3回)
小学生の作品。ペットボトルにビニールテープで部品をベタベタ貼りまくるというストロングスタイルの工作。作業の雑さも含めて、ヘボとしては王道。ユーモアなのかただの誤字なのかスレスレの名前もよい
安全第一(こがお、ちゃせ、いおりん、しおりん・第4回)
大学生くらいの若者グループで参加。
女性1「(材料箱を見に行って)基板があったよ~」
女性2「すごい!ボンドで貼ろう!」(この間0.2秒で即答)、
そんな会話を聞いたあと、しばらくしてから再度見に行ったら……
ボンドが基盤の穴から派手にはみ出ていたので「最高の青春だ!」と思いました。
きらみん(おかわゆいこ・まさし・第5回)
今回は子供の出場者も多く、全6回中2回は過半数を占めた。子供の特徴は「とにかく盛る」。
このロボットも持ってきたときはプレーンなフォークリフトのキットだったのに、改造の時間めいっぱい使って盛り盛りに。おかげでなんだか妙なめでたさがでてきた。正面の一番目立つところに堂々と貼られた黒ガムテープも渋い
WaLL(しょうたろう・第5回)
これも子供が盛りまくった系のロボなんだけど、何がすごいって、ベースに使ったタミヤのキットの、説明書を外装に使っているところ。まさに「その発想はなかった」。
ピヨ志(いっへい・第5回)
これは大人の作品。むき出しのギアボックスに、テープで雑に固定されたアヒル3匹。丁寧に作ろうという意思が一切感じられないのがよい。
動きも、初期衝動としか言いようがない。
はじらい(くんちゃん・第4回)
上向きに貼ったセロハンテープが相手の機体に絡みつくという攻撃方法。そして移動はチョロQ的に後ろに引っ張って走らせる形式。この取り合わせが最悪で、車に触ろうとした時点で自分の腕にテープが絡みつく(そのくせ敵には絡みつかない)。詰めの甘さでは群を抜いていた。
今回は子供の参加が多かったことにより、これら素朴系のロボが量産された。とはいえ、いま挙げたロボット、半分は大人の作品であることにも注目してほしい。
不器用な大人たち、考えてみれば彼らは子供たちと同じ年の頃から今までずっと不器用だったわけだ。いわば不器用の大先輩。子供とはキャリアが違うのである。そのことに誇りを持ってほしいと思う。(ただしこの会場内でだけ)
よくできてる系
いっぽうでヘボコンなりによくできた機体を持ち込んだ人もいた。
ポールダンスロボ2(アニポールきょうこ・第6回)
ポールダンスをテーマにしたロボで、7月のヘボコンに出場したロボットの続編。人形が高速回転するネタ系かと思いきや、動かしてみるとすごい機能が
動画だとちょっと見にくいが、人形の台座の部分で火花が散っている。火打石が搭載されているのだ。これはすごい!すごいけどそれ相撲関係ないだろ
めざまし(たかやましろう・第4回)
ご覧のとおりの目覚まし時計。実戦では……
こうやって下向きに置いて戦う。ベルの回転パーツにおもりがついていて、目覚ましの設定時刻になるとおもりが振り回されてその反動で移動する。結果だけ見るとなんだかすごくよくできているのだが、「本当はパンチさせたかったんだけど動いちゃったので移動手段にしました」とのこと。
板キレ1号(knob.create・第2回)
一見ぬりかべ系の通せんぼロボに見えるのだが
なんと変形する。……のだが成功率が低く、正確には「運がよければ変形することもある」。(動画中では変形しなかったので手で押してる)
パシフィック・ゴム(チーム眼鏡・第6回)
脚が風船になっており、口で息を入れて膨らませることで一歩一歩進む、右足、左足、武器の3つの風船を備え、3人で協力して操縦。
揃いのユニフォームの完成度が高く、ここだけほんとのロボコンみたいでかっこよかった。(もはやロボットでなく衣装の話だが)
「動作はかっこいいが相撲に関係ない」「機能はすごいがちゃんと動いてない」「すごく工夫されてるように見えるが偶然の産物」など、いずれも何か重要な裏づけが足りていないロボットたちであった。
以上、少しのつもりが大量にご紹介してしまったが、これでもまだまだごく一部である。まだ登場していないロボットも含めて、このあとはいよいよ試合の様子を見てみよう。
名試合ピックアップ
各大会は8体のミニトーナメントで、全6回あわせると42試合。その中から、特に印象に残った試合をご紹介していこう。
第3回 2回戦
ロボ ジリーちゃん(リョー&マユ)
vs
いろいろ危ないボット(222)
ロボ ジリーちゃん
いろいろ危ないボット
3つも風船をつけたジリーちゃんに対して、危ないボットはハサミやボールペンなど、とがったものを何重にも搭載。
最悪の対戦カードだ。どう見てもジリーちゃん不利、万事休すといった感じ。そんな勝負の行方は動画でごらんいただきます。
じりじり迫ってくる危ないボット、ジリーちゃん逃げてー
ここでジリーちゃんが急突進!絶妙な位置関係でうまく危ないボットの刃を避けた!
その後ジリーちゃんは後退、障害物を失った危ないボットはそのまま場外へ
不規則な動きで撹乱し、危ないボットの刃物をかわしきったジリーちゃんが勝利。風船が割れなくてよかった!
しかし考えてみれば、ルールは相撲だし風船はただの飾りだしで、風船を割られても別に何のダメージもないのであった。
こうして勝敗と関係ないところで無駄に手に汗握る展開があるのも、ヘボコンならではであろう。
第2回 決勝
かめたろう2号(かめたろう)
vs
舞浜からの刺客(まっち)
かめたろう2号
舞浜からの刺客
つづいては第2回の決勝戦。かめたろう2号を操るかめたろうさんは、7月のヘボコンの優勝者。彼が重い機体で優勝を勝ち取ったことで、今回ルールに重量制限が導入されるきっかけとなった。今回は心を入れ替え、軽い機体の2号で参戦するも、重心の低さによる安定感は変わらず決勝進出。
そして対するはメルヘンをコンセプトとしたブルドーザータイプ。
前回優勝者はまた優勝してしまうのか。決勝まで勝ち進んだ舞浜からの刺客の活躍に、オーディエンスの注目が集まる。
試合が始まると同時に、土俵に星を降らせるセレモニーを執り行う舞浜からの刺客。
かめたろう2号を押し出したいが、間合いに入ると腕ですくいあげられて転倒してしまう!微妙な距離を保ちつつ攻撃のチャンスをうかがう
しかしかめたろう2号の腕が意外に少ししか上がらないことが判明!一気に突っ込み押し出しを狙う。
押しきれずそのままタイムアウトとなるも、舞浜からの刺客がそのまま判定勝ちとなった。
※タイムアウトになると、試合中にたくさん移動した方が判定勝ちというルールになっています。
星を置く謎の儀式と、意外に上がらない腕。決勝戦にいたってなお、双方にこれだけ見かけ倒し要素が登場するのか!と息を呑んだ。
ちなみにかめたろう2号、動画では見切れているが、自転車のブレーキハンドルを操作してすすむという新機軸の意欲作であった。そういった工夫が特に勝利につながらないのもヘボコンらしい。
第4回1回戦
クーちゃん初号機(ロボ部)
vs
マックラ○オン(ろーてんてい)
クーちゃん初号機
マックラ○オン
下の動画のサムネイルを見てほしい。この圧倒的な体格差。
そのうえコントロール性能も、左右に旋回可能なクーちゃん初号機に比べて、マックラ○オンは前進後退の2方向のみ。
しかも司会者がライオンの元ネタを知らなかったことで操縦者まで精神的ダメージを受けている。
圧倒的に不利な試合、マックラ○オンはどう戦い抜くのか!?
開始早々、馬力の差でいきなり土俵際に追い詰められるマックラ○オン
しかしその後、方向転換できないはずのマックラ○オンは、ケーブルを引っ張っての無理やりな操縦で、クーちゃん初号機のサイドへ抜けた!やった!
そしてそのまま土俵を横切って場外に出るマックラ○オン
逆境から一度ピンチに陥るも、うまく乗り切ったマックラ○オン。その時点でオーディエンスのハートはわしづかみだったわけだが、そのまま何のためらいもなく自滅。6大会中、最大のぬか喜びを味わわせてくれた試合であった。
ちなみにクーちゃん初号機のほうはこのあとも勝ち続け、第4回の優勝ロボに。必殺技としてちゃぶ台返しを温存していたようなのだが、いざ決勝で使おうとしたらうまく動かず、けっきょく馬力だけの力押しで勝利していた。優勝してもヘボマインドを忘れない名機であったといえよう。
リハーサル時に一度成功した様子
第1回1回戦
うなぎforever(ウナゴリラ)
vs
DXおともだちロボ(中西真央)
うなぎforever
DXおともだちロボ
見てのとおり、ネタ系対決である。だが、それだけではない。
うなぎforeverは七輪の重心が低く、安定感がある。いっぽうおともだちロボは、攻撃力の高いタミヤのボクシングロボを使用しつつ、弱点である足元をキャタピラでカバー。どちらもネタ系といえど侮れない性能を備えているのだ。
うなぎforeverは、うちわでうなぎ型レバーを扇いでコントロールする操縦法。技術力は低いが工夫とネタの練りこみはすごいぞ。
しかもここで隠し必殺技が炸裂。七輪の中からうなぎが登場!
面白いけどそれ飾りだろ、と思ったのもつかの間、七輪の前面とうなぎの頭のあいだにうまくおともだちロボをはめ、さすまたの要領で場外に押し出し!
必殺技が見かけ倒しに終わりがちなヘボコン。しかしこの試合に限っては、本当に必殺技として作用した稀有な試合であった。普通の意味で「名勝負」だったといえるだろう。(とはいえ意図的な戦術ではなく単なる偶然だったのではという気がしますが…)
第1回1回戦
モーターフグ(ゆえ)
vs
「クリスマスが今年もやってくる」(100-200)
モーターフグ
「クリスマスが今年もやってくる」
前ページでも紹介した、ギアボックス空回りタイプのモーターフグ。それと、電気を使わずに坂道を転がり落ちる勢いで突進する「クリスマスが今年もやってくる」の対決。
ちなみにこの坂道方式は別名「重力エネルギー方式」とも呼ばれ、前回のヘボコンで「最も技術力が低い人賞」に輝いたすずえりさんが採用していた、由緒ある機構である。
機体の重みをそのまま攻撃力に変えられるので、うまく使えば意外に強い。それを踏まえて、試合の様子をどうぞ。
坂道を一気に転げ落ち、突進をかけるはずのクリスマス…が、途中で止まった
坂をゆすって滑らせようとするも、完全に引っかかっている。さらに揺らす。動け!動け!
あっ……
……
坂を下りきることなく転倒負け!
戦う以前に土俵に乗る前から転倒してしまった。
2日間の日程で数多くの自滅が登場したが、中でももっともエレガントな自滅だったといえるだろう。会期中いちばんヘボかったロボットをひとつ挙げるとしたら、僕はこの「クリスマスが今年もやってくる」を推したい。
注目ロボ
ここからは、とくにいい戦いぶりを見せてくれた2体のロボットにフォーカスしてみよう。まずはミニヘボコンきっての名パイロットによる、この2戦。
第5回2回戦
名称不明(そうた)
vs
ワンワン号(こはる)
名称不明
ワンワン号
ワンワン号を操るこはるちゃんの戦いぶりが、神がかっていたのだ。子供とは思えない機転の利いた戦いを、まずは動画で見ていただこう。
試合開始と同時に横を向くワンワン号。オーディエンスからは笑いが漏れるが、そのまましばし相手の出方を待つ
しかし敵が攻めてこないと見るや、すぐに作戦変更。自分から突進
ただし敵のほうが動きは速い。突進を受け、また横を向くワンワン号。ここで両者、膠着状態に
いったん引いて再突進を仕掛けようとしたそうたくんのロボが、操作ミスにより場外!
ひとつひとつ、すべての行動が計算づくなのである。
まず最初に横を向いた理由。自分の足回りに馬力がないため、押し合いになったら負ける。だから横を向くことで車輪の向きを90度変え、ブレーキとして使ったのだ。
次に自分で攻めていったのは、時間切れになると移動距離で勝敗が決まるため、距離を稼ぐのが目的。
そのあと相手とぶつかった際も、また素早く横を向くことでブレーキをかけつつ正面からの押し合いを避けている。おかげで押し切られることなく、さいごには相手のミスを誘って勝った。
自分のロボットの性質、そしてヘボコンのルールを知り尽くした上で、さらに機転を利かせて確実に勝ちを取りにいっている。まさに名パイロット!
しかし、そのこはるちゃん、なんと次の決勝戦で負けてしまうのである。
第5回2回戦
そっくん零号機(ちばたくみ)
vs
ワンワン号(こはる)
そっくん零号機
そっくん零号機はブルドーザーをベースにしており馬力型。説明はおいといて、さっそく試合の様子を見てみよう。
試合開始と同時にそっくん零号機が突進。見た目は鈍重っぽいが意外に速いぞ!
ワンワン号、横を向いて防御体制に入ろうとするも、間に合わない!
押し切られて無理やり横向きにされてしまったワンワン号、開いた口が断末魔の雄たけびのごとくである
土俵際で転倒、試合開始からわずか4秒のことであった。
そっくん零号機の圧倒的なパワーを前に敗れたワンワン号。頭脳や機転では覆せない性能差もある。そんな厳しい現実を思い知らされた試合であった……。
(しかしその後、こはるちゃんにはその健闘をたたえてテクノ手芸部より審査員賞が送られました)
そして次はもうひとつのロボットの物語。主人公は、こちらのマシンだ。
第6回2回戦
ポールダンスロボ2(アニポールきょうこ)
vs
メトロノーム(すずえり)
ポールダンスロボ2
メトロノーム
今回の主役はこのポールダンスロボ2。最初のページでも紹介したように、人形が火花を散らしつつポールダンスしながら突進するロボだ。
対するは前回「最も技術力の低かった人」賞に選ばれたすずえりさん。今回は壊れたメトロノームで参戦。振り子が強すぎて、振れるたびに本体ごと動いてしまうのだ。
どちらも直進性能の低いこの戦い、混乱が予想された。
両者とも進路が安定せず、特にメトロノームは徐々に背中を見せ始める
それでもなんとかにじり寄り、ついに対峙する2体。脚と振り子で熾烈なチャンバラが展開される!
再び間合いを置く2体。ポールダンスロボ2は回転する人形の遠心力に振り回され、かなり足元が不安定、かつコントロールも効かない
そんなじゃじゃ馬を操り、なんとかメトロノームを押し出した!
試合中盤のチャンバラに沸いたこの試合だが、ここで注目しておきたいのは、ポールダンスロボ2の足元の不安定さ。回転する人形の揺れでうっかりすると転倒してしまうし。遠心力で本体まで回ってしまうのでコントロールも効かない。今回はかろうじて勝てたが、その実力がどうしても運に左右されるところのあるロボである。ましてや相手が足場の安定した、重いロボットだったとしたら……。
そんなポールダンスロボ2が迎えた、決勝戦の様子を見てみよう。
第6回決勝
ポールダンスロボ2(アニポールきょうこ)
vs
どすこい1号(仮)(みの)
どすこい1号(仮)
相手はティッシュケースを利用した、安定感のある機体。転倒しやすいポールダンスロボにとっては最悪の対戦相手ではないだろうか。強くぶつかったら負ける!誰もがそう思っていたことだろう。
それでも真正面からぶつかっていくポールダンスロボ2。
転倒する!と思いきや、なんとブルドーザーのブレードがどすこい1号をがっちりホールド!
重心の低い敵の機体を抱え込むことによって、足元を安定させ、さらにコントロールも確保!そのままキャタピラの馬力を生かして押す!
見事、押し出しにて勝利!
安定した敵と一体化することにより、転倒のリスクをなくし、しかもコントロールまで確保するとは。この勝負、奥が深すぎる!
……そもそも最初から人形を回さなければ最強だったのでは、という話もあるのだが、そうじゃないんだ。「よく動いてる既製品に不要な機能をつけて性能ダウンしたうえで勝つ」。この回りくどい勝ち方こそが、ヘボコンの美学なのである。
最終回の決勝戦らしい、予想外かつ感動的な一戦であった!
受賞ロボ発表
さいごに、全6回の優勝、そして審査員賞に輝いたロボをご紹介しよう。
各回、優勝はトーナメントで優勝したロボット。審査員賞は試合の結果に関わらず、各審査員が「よりヘボく」「より気に入った」ロボを選んでもらった。
紙皿のシールドは防御力が高いんだか弱いんだか微妙。しかし本体に馬力があるうえ相手のミスを誘うのもうまく、正攻法で優勝。
うちわで操作という独自性が際立っていた。今後のヘボコンの仮装大賞化に拍車をかけるのではと心配。
試合開始直後に星をまき、メルヘンの魔法の力で勝利(という設定)
審査員賞(審査員:デイリーポータルZウェブマスター 林雄司)
素材にこだわったロボ(だんしゃく)
値札がついてるところを評価されての入賞
風船ついてるけど飛ぶわけではない。ファンシーなビジュアルながらトリッキーな動きで敵を撹乱した。
存在感の強さで審査員賞に。「夏休みの宿題で作ったけどそのあと使い道がないので出ました」(本人コメント)
必殺ちゃぶ台返しは温存するだけ温存したものの、決勝では動作不良で披露できず、普通に馬力で押して優勝。
審査員賞(審査員:株式会社タミヤ 石崎隆行さん)
タコ山デラックス(すはる)
すぐもげると評判の回転触手。ボディを持ち上げたら普通のラジコンの車が出てきた
靴下を使ったサイケデリック・ヘビ型ロボ。相手パイロットの目をチカチカさせる効果も。
審査員賞(審査員:アーティスト テクノ手芸部)
ワンワン号(こはる)
天才パイロットが操る犬型ロボット。なんと奇しくもこちらも材料は靴下であった。
実はカメラ内蔵のバービー人形を使用しており試合の様子を録画可能。後で見せてもらったけど高速回転しているので何がなんだかでした。
審査員(審査員:パフォーマー 森翔太)
ジャイアントマーチ(デコビス)
試合開始するもロボが動かず敗戦、あとで電池を逆向きに入れていたことに気づいたところまでの一連の展開で受賞
まだまだやります
というわけで、いかがでしたでしょうか、ミニヘボコン第1回~第6回。今回もめちゃくちゃ楽しかったです。
実はこれをやる前までは、前回のヘボコンの成功はいい人材がたまたま集まっただけなのでは……、と思い2回目以降の開催を迷っていたのですが、今回で完全にわかりました。
人の数だけヘボがある。(技術力の高い人を除く)
普段脚光のあたらない人に無理やりスポットライトを当てていくべく、今後もヘボコンはどんどん開催していきたいと思います!
それでは、次回をお楽しみに。