「ハブ発祥の地」と呼ばれる無人島
朝一番の飛行機で奄美大島に着き、車で南西部へ向けて1時間半ほど走る。正午近くに着いたのは宇検村(うけんそん)の芦検(あしけん)漁港。
荷物を整理していると地元の参加メンバーがわらわらと集合し、船に荷物を積み込む。
船は軽快に走り出した。波は静かだが天気は不穏、快晴と思いきや、すぐ雨雲の下に入り激しい雨にさらされる。奄美に来たなと感じる。
我々が目指すのは枝手久島(えだてくじま)。
奄美大島の西部に食い込む焼内湾(やけうちわん)にふたをするように浮かんでいる無人島である。この島は奄美大島の「ハブ発祥の地」として島民に知られているのだ。
難破船からハブが逃げ出した
なんで発祥の地なんてことになったのかと経緯を調べたら、がっつり人為的であった。
枝手久島で逃げたハブが増えて奄美大島に渡り、全土に住み着いたということだ。もちろんこれは伝承であって生物学的な経緯とはぜんぜん違うけれど、ハブの文化誌において重要なルーツだし、ロマンがすさまじいじゃないですか。
探索隊が結成された!もちろん参加
奄美大島からの距離はそれほどでもないが、なんせ無人島なので定期船も就航しておらず、港も宿泊施設もない。
ずっと対岸から眺めているばかりだったが、今年の夏に出会った若きハブ研究家の星野蒼一郎さんにちょっとそんな話をしたら、「実は、枝手久島、行こうと思ってるんですよ......」ですって。まじですか。
「ハブ発祥の地っていうロマンはもちろんですけど、長い間人が入っていない島で、生物調査も詳しくされていないので大きい個体とかが見つかるかもしれないですよね」
それを聞いた私はただ懇願した。「私もまぜてください!」
そんなこんなでこの9月、星野さんに地元の有志を加えた探索が企画され、私も練馬から参加したのである。
ついに上陸!手みやげは東京ばな奈
「オニダルマオコゼ(猛毒魚)に刺されないようにしてくださいね」こわ!
釣谷さん、白石さん、高野さんは環境省の国立公園管理事務所に所属し、奄美大島の自然保護や調査、情報発信に従事している。(釣谷さんは2024年度で退官)
ハブはもちろん、奄美に生きる生物全般、環境全体に精通しており、探索する上でも無人島でサバイブする上でもこんなに心強いメンバーはいない。
知識もフィジカルも欠落している私がこのチームに貢献できることはなんだろうか。
高野さんはレンタルショップに予約して取りにいったら「ごめんテントなかったわ」と言われ替わりに無料でマットを貸してくれたそうだ。いい話なのかそれ。

