特集 2025年11月12日

「ハブ発祥の地」奄美の無人島でハブ探し

ハブ発祥の地、枝手久島(えだてくじま)に上陸!

奄美・沖縄諸島のハブのいる島を巡っている。2014年から初めて10年ほど、30島目にして奄美のハブ発祥の地とよばれる無人島、枝手久島に上陸した。

べらぼうなスキルを持つ奄美の友人たちと探索し、3匹のハブを見つけることができた。彼らは発祥の地に住まうハブとしての威厳を、とくにまとっていなかったのが良かった。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

前の記事:氷河期世代、氷河を見る。「立山氷河眺望ツアー」に参加した

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「ハブ発祥の地」と呼ばれる無人島


朝一番の飛行機で奄美大島に着き、車で南西部へ向けて1時間半ほど走る。正午近くに着いたのは宇検村(うけんそん)の芦検(あしけん)漁港。

空港から漁港へ直行。

荷物を整理していると地元の参加メンバーがわらわらと集合し、船に荷物を積み込む。

「船って車より燃費いいんですかね」「そんなわけないでしょう」

船は軽快に走り出した。波は静かだが天気は不穏、快晴と思いきや、すぐ雨雲の下に入り激しい雨にさらされる。奄美に来たなと感じる。

ちょっと雲が出てきましたね。
とか言ってたらあっという間にこれ。

 我々が目指すのは枝手久島(えだてくじま)。

奄美大島の西部に食い込む焼内湾(やけうちわん)にふたをするように浮かんでいる無人島である。この島は奄美大島の「ハブ発祥の地」として島民に知られているのだ。

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難破船からハブが逃げ出した

なんで発祥の地なんてことになったのかと経緯を調べたら、がっつり人為的であった。

※奄美伝統文化の変容過程 : 綜合研究 文化人類学的調査(高橋統一 編・国書刊行会・1983)より引用。なにげに壺のエピソードこわいな。

 枝手久島で逃げたハブが増えて奄美大島に渡り、全土に住み着いたということだ。もちろんこれは伝承であって生物学的な経緯とはぜんぜん違うけれど、ハブの文化誌において重要なルーツだし、ロマンがすさまじいじゃないですか。

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探索隊が結成された!もちろん参加

奄美大島からの距離はそれほどでもないが、なんせ無人島なので定期船も就航しておらず、港も宿泊施設もない。

行きたいなあ、と2020年に対岸から撮った枝手久島。
その時に見つけた良きたばこ看板(今はもうない)をしれっとお見せしたい。

ずっと対岸から眺めているばかりだったが、今年の夏に出会った若きハブ研究家の星野蒼一郎さんにちょっとそんな話をしたら、「実は、枝手久島、行こうと思ってるんですよ......」ですって。まじですか。

星野さんとは赤いカミキリムシ探しの取材で出会った。幼い頃にハブに魅せられたあげく、大学でヘビを研究し、奄美大島に移住したとんでもない人である。

「ハブ発祥の地っていうロマンはもちろんですけど、長い間人が入っていない島で、生物調査も詳しくされていないので大きい個体とかが見つかるかもしれないですよね」

 それを聞いた私はただ懇願した。「私もまぜてください!」

そんなこんなでこの9月、星野さんに地元の有志を加えた探索が企画され、私も練馬から参加したのである。

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ついに上陸!手みやげは東京ばな奈

港を出て30分ほどで枝手久島の岸辺が見えてくる。
遠浅なうえに潮位も低いので船は近寄れない。腰までつかりながら歩いて上陸。
「オニダルマオコゼ(猛毒魚)に刺されないようにしてくださいね」こわ!
船に乗らずSUPで参加した白石さん。これが荷物の運搬に大活躍だった。
上陸!今回の探検メンバー、(左より)星野さん、釣谷洋輔さん、白石大晴さん、高野光喜さん。

釣谷さん、白石さん、高野さんは環境省の国立公園管理事務所に所属し、奄美大島の自然保護や調査、情報発信に従事している。(釣谷さんは2024年度で退官)

ハブはもちろん、奄美に生きる生物全般、環境全体に精通しており、探索する上でも無人島でサバイブする上でもこんなに心強いメンバーはいない。

知識もフィジカルも欠落している私がこのチームに貢献できることはなんだろうか。

これしかない。無人島で東京ばな奈、見ぃつけたっ。なにげに好評だった。
テント設営、とはいえテント無しが多数派というワイルドな感じに。
​​高野さんはレンタルショップに予約して取りにいったら「ごめんテントなかったわ」と言われ替わりに無料でマットを貸してくれたそうだ。いい話なのかそれ。
「今夜のおかずが獲れました」島に着いて30分しないうちに釣谷さんがチヌを釣り上げた。はやっ!

⏩ 発祥のハブ発見!

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