結局枝手久島はハブどころだったのか?1回の調査だけでは何とも言えないが、道のない林の中、徒歩で動ける範囲で3匹見つけることができたのでハブの密度としてはなかなかではないか。
広い枝手久島の中で我々が探索できたのはごく一部、南部にそびえる標高300mの山などアプローチできなかったポイントはたくさんある。
いくらなんでも東京から着いてその足で無人島は疲れる、とか運営上の学びも活かしつつ、再訪したい。
「ところで、みなさんマイティですよね」(伊藤)
「そうですね」
奄美大島の山や森を歩くのに必須のアイテムがゴム長靴である。これは薮に潜むハブの攻撃から足元を守るためだ。
しかし、ハブの牙は鋭いうえに1.5cm~2.5cmもあり、生半可な生地では貫通してやられてしまう。そこでフィールドワーカーに愛用されているのが大同石油の「マイティブーツ」だ。
防弾チョッキなどにも使用されるケプラー繊維を使用した多層構造の生地は優れた耐貫通性を誇り、ハブのするどい牙から足を守る。
奄美でいろいろなガイドさんやハブ捕りと会ったが、マイティ一択と言ってもよいぐらい愛用されていたし、長靴のことを「マイティ」と呼んでいる人もいた。
そういえば北海道のサケ取材では漁業関係の方々が長靴のことを「ザクタス(弘進ゴム社製品)」と呼んでいたな。
「それ、めっちゃわかります!」札幌の大学を卒業して奄美に移住してきた高野さんにものすごく共感された。
話がそれて北海道まで行きそうになったが、次のハブが現れた。
「いました!」(星野さん)
1匹目の発見から30分ほどで2匹目のハブが現れた。
サイズは少し大きくなり、褐色の地色と背中に並ぶ名刀のつばのような模様。奄美大島で良く見かけるやつである。
「ふつうだ」「いいですね」「発祥って感じですね」
おそらくはじめて見たであろう人間たちからよくわからない感想を投げかけられて、ハブは枯木の枝の間をすいすい通りぬけていた。
ハブの食料問題のひとつの答えも見つかった。
昼に見回った沢から「グッフォン」という重々しい、おっさんの咳払いのような声が聞こえてきた。奄美諸島最大のカエル、オットンガエルである。
でかいオットンガエルがいるということは、このカエルを食べられるサイズのハブがいるんじゃね?、という期待が持てるのだ。
そして、近くには3匹目のハブがいらっしゃった。
体長は1.3mほどだろうか。 先に見た2匹よりサイズはさらに大きい。 こちらの動きに神経質に反応して攻撃姿勢を取ると、すぐに逃げ出した。さすがこの大きさになるまでサバイブしてきただけのことはある。
しつこく撮影していると(すいません)、嫌気がさしまくったハブは木に登り始めた。
幹にからみついて器用にのぼり、枝から枝へ、止まることなく高みを目指す。前の2ハブも地上の枯れ枝に乗っかったりしていたが、瑞々しく弾力のある生木の枝を渡るハブは、おお、枝にいるなあという感じだった。
「枝手久の枝にハブ」
発祥地のハブとかなんとか言ってきたが、私が本当に見たかったし、言いたかったのはこれなのではないか。
遠くへ、ここでないどこかへ。 ハブはあっという間に3mを超える高さまですり上がった。その姿を見送りながら、めっちゃ嫌われてんな我々はと思った。
結局枝手久島はハブどころだったのか?1回の調査だけでは何とも言えないが、道のない林の中、徒歩で動ける範囲で3匹見つけることができたのでハブの密度としてはなかなかではないか。
広い枝手久島の中で我々が探索できたのはごく一部、南部にそびえる標高300mの山などアプローチできなかったポイントはたくさんある。
いくらなんでも東京から着いてその足で無人島は疲れる、とか運営上の学びも活かしつつ、再訪したい。
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