教えたいけど教えたくない宿
奄美大島のほぼ中央に位置する名瀬地区は、奄美群島の行政や経済、文化の中心地である。
繁華街から少し離れた閑静な住宅街の一角に1軒の民宿がある。
のぼりや看板がなかったらふつうにいいお宅ですね、ハイビスカスがもうすぐ咲きますねと談笑しながら通り過ぎるぐらい環境に溶け込みきっている。
「 花海(かみ)house」といい、奄美大島出身の女将さんと大阪出身のご夫君がUターンで移住し2019年にオープンした。築50年以上の民家をリノベーションしているが、内外装ともに元の建屋が極力活かされており、ホテルでは味わえないような趣があふれている。
泊まる時は朝食付きがよい。基本メニューとなる奄美の代表的な郷土料理「鶏飯」のスープは鶏ガラを黒糖焼酎などで8時間煮込むという年末特番の忠臣蔵のような手間のかけよう。
コクがありながらもさっぱりした、朝食向けの鶏飯となっている。食堂では出会えない風味だ。
ここに帰るといつも凝視してしまうのが浴室のタイルである。
緑がかった地に整然と並ぶ花のような断面のようなかわいいパターン。このタイルを見ると脳裏にゴーヤの輪切りが浮かぶのでひそかにゴーヤタイルと呼んでいる。
この夏野菜タイルが私の心の滋養となり、暑い日も寒い日もフィールドワークへ向かう私の活力となってきた。たぶん。
何回かの奄美行を経てこの感じを本物のゴーヤで表現したくてたまらなくなったのだ。
はじめよう!手作りクッキー
で、どうしよう、どうするのか。炒めたゴーヤをグリーンのクッキングシートに乗せればそれっぽくなるんじゃないのと安易に考えたがまったくもって安易だった。
色もくすんでいるし、このペラペラな質感が似ても似つかない。
クッキングシートをくさしてしまったが悪いのは私だ。
というか無機物を生々しいゴーヤに置きかえるのだからやはり食えるものでやるのが筋だろう。沈思黙考の結果、クッキーを焼くことにした。四角いクッキーを焼いて、アイシング(砂糖のペースト)を塗ってタイルみたいにするのだ。
スベスベカニマンジュウやピュイ・ダムール、リクガメパンケーキと突発的に盛り上がったテンションで菓子作りをしてきたが、今回もそんな感じではじめてのアイシングクッキーにチャレンジだ。

