2005年から感じ続けた「飲んでどうする」
チョコレートブランドのゴディバが、チョコレートドリンク「ショコリキサー」を日本にぶっこんだのは2005年だそうだ。来年でショコリキサーは日本上陸20周年を迎える。
登場した頃、「ゴディバを飲んでどうすんだ⁉︎」と、鮮烈に思った記憶がある。
噛みたいでしょうがよ、ゴディバは。
噛んでさ、舐めたいでしょうがよ。
吸ってどうすんのよ。
けれどショコリキサーの勢いは止まるどころか加速を続け、いまや季節のメニューが登場すればコーヒーチェーンに並んで話題になるほどだ。
それだけ飲みたい圧、飲みたい勢力の動きは止められないということなんだろう。
食べられる部分があってほだされる
原宿に、下卑た顔をし背を丸め、あたりをうかがいやってきた。
この夏期間限定でオープンしたゴディバ ラボラトリー 原宿は平日の昼でも観光客で賑わう街のどまんなかにある。
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一般的な店舗にはない限定のショコリキサーの数々がラインナップされ、中には飲むチョコレートケーキもあるらしい。
その名も「The チョコレートケーキ ショコリキサー」。いよいよの商品だ。
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事前にうっかりきちんと調べてしまった結果、この「The チョコレートケーキ ショコリキサー」が1杯492 kcalあることを私はつかんだ。
400kcalを超えたらそれはもうご飯である。
ゴディバでケーキなのだから承知しているが、価格も1200円とハイテンションだ。
混み出す前に駆け込み、昼ごはん代わりに飲もうという目論見で昼ちょっと前に来たところ、スムーズに頼むことができた。
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登場した「The チョコレートケーキ ショコリキサー」は、思いのほか小さなカップに入っていた。私の胃の戦闘力は低い。ちょっとほっとする。
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ベースはミルクチョコレートカカオ50%というショコリキサー。カップ内にチョコレートで装飾がされ、そこにさらにチョコレートケーキがトッピングされている。
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なるほど、食べる部分もあるというか、ケーキは食べさせてくれるのか。虚勢が削がれほだされて食べたケーキのおいしさたるや。おうおう。
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髄を吸うようだ
そうして太いストローを指し、いよいよ飲む。吸うごとに、ぐっ、ぐっと、表面が下がっていく。液体ではなくクリームで覆われているため、私の吸引にともなって大地が下降する感じがある。
層が分かれているのか、もっとどろどろしているのかと思いきやさらっと液体に近い部分があって、かと思いきやもったり粘度の高いエリアもある。
これは、気軽に吸っているのではないなと感じさせられた。もっとこう、髄を吸うような行為だこれは。
「飲んでどうする」と、飲むことに対する本質的な私の疑い「それは意味があるのか」に対して、「ある」というアンサーを突きつけられたようでもあった。
飲むことにより、食べると等価の難しさというか、作業量、そしてそれにより生まれる喜びや可笑しみみたいなものを感じる。
私は飲むという行為をちょっと甘く見ていたんだと思う。
どしんとお腹に来て説得させられた。
ディーン&デルーカはティラミスを飲ます
案の定、ゴディバを飲んだ日は晩ご飯までおなかいっぱいになってしまい、出直して数日後。
食べられるのではなく飲まれることを選んだティラミスこと、ティラミスフラッペを飲みにカフェのあるディーン&デルーカへやってきた。季節のメニューとして大変な人気だと聞く。
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公式サイトによると、その詳細はこうだ。
チョコレートを絡めたコーヒーゼリーに、エスプレッソフラッペ、ふわふわのマスカルポーネクリームを重ね、フィンガービスケットを飾ったティラミスのフラッペ。
マスカルポーネ、ミルク、生クリームのまろやかさと、コーヒーのほろ苦さが互いを引き立てます。
飲み物を飲んで吸わせたい勢力のやり口として、ゼリーを吸わす、という手口がある。
ティラミスフラッペもコーヒーゼリーの層を組み入れているらしい。
隠し切れない、すてきだなという思い
ゴディバは平日の早い時間に訪れたこともあってまだ混み合う前だった。今日は休日の午後、店内は満席に近い。
レジに並んでいると、店員さんがオーダーを後ろに伝えるのが聞こえてきて、これが驚くほど、甘い飲み物を飲む人が多い。
おやつどきというのもあるけれど、本当に普通の文化なんだなとあらためて驚く。
お客さんの層が20代が中心だというのも大きいかもしれない。若い胃にはどんどんカロリーをくべないとみんなさっさと燃やしつくしてしまうだろうからな(これを書いている私もまだ45歳と若輩ではあるものの、体質もありカロリーがいかんともしがたく燃やしづらいです)。
やってきたティラミスフラッペは大変なかわいらしさであった。そう、ゴディバのときもそうだったけれど、飲む甘いもんは、なんだかずいぶんきれいで華やかだ。
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映え需要が叫ばれて久しい。ゴディバのチョコリキサーが右肩上がりに勢力を伸ばしたのも映えの力が大きいというのは通説だそうだ。
へ〜、そうなんですねえと、思ってぼんやり立っていたが、なるほど目の前に現れると「かわえ〜!」とは、なるのだった。
早く食べ終わりすぎるという恐ろしさ
こちらも表面がクリームで覆われており、吸うと大地が沈む。この手の飲み物にはこの大地の上昇下降に面白さと驚き、そして食べることに変わる肝があるように思う(違いますかね)。
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柔らかいゼリーとマスカルポーネのフラッペはもちろん、フィンガービスケットが溶け込んだクリーム部分も絶妙で味わいに貢献していた。
うめえうめえとどんどん飲んだ。
これはゴディバのときも感じたことだけれど、甘くておいしいものだから、ゆっくりしたカフェタイムには不向きなくらい吸う呼吸が止まらない。
わたしはせっかちだから、食べるのでなく飲むとなるといよいよ早い。
提供から下手すると5分くらいで吸い尽くした。この、手間のかからない飲みやすさ、摂取のしやすさは、私のようにゆっくりと味わえない者にとっては恐ろしい。
飲んでどうすんだ疑惑をかかえて現場に乗り込んだ。どうすんだとはもはや思わないくらいほだされた部分もありながら、あらためて新鮮に恐ろしさは携えた。
飲む界隈はこれからどこへ行くんだろう。私は見ている。どれだけそれが普通のことになっても、いつも珍しいものとして。
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