特集 2022年2月17日

伊東に移転した北京のガチ中華を食べる

伊東にいったら温泉、海鮮、ガチ中国料理

「伊東に行くならハトヤ電話は良い風呂」

ある年齢以上の人なら聞いたことがあるだろうCM。また関東で横浜のほうに向かう東海道線の行き先でたまにある伊東駅。

そんな温泉町として知られる伊東に北京から移転したガチ中華があると聞いた。そこはなかなか他にない本格派の店だった。

変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

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伊東への車窓がいい!
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伊東の駅がいい!

海が見える電車に乗り伊東の駅に着き、伊東駅のホームから改札を抜けて出た先に見えるのは提灯に土産屋に寿司屋。「旅情」が沸騰する景色としては完璧すぎる。

伊東は寿司屋が多く美味しいと評判だが、寿司屋の波をかき分け生活感のある商店街を歩くこと約10分、北京から移転した「チャイニーズバーシャラ」がある。

Twitterのプロフィールには「本場の中国家庭料理と美味しいお酒が楽しめるチャイニーズバーをオープン」と書いてある。食べれそうで食べれない、本場の中国家庭料理を食べに向かった。

片岡鶴太郎と子猫

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マスターの吉村さんと奥様の張さんとお子さん。

店に入るとマスターの吉村さんが猫と熱帯魚に世話をしていた。カウンターのバーがあり、その奥にはテーブル席で食べれる空間がある。

「どうぞどうぞ。いやあ、すみません。さっき片岡鶴太郎に声かけられて子猫の面倒を見ることになったんですよ」

噂の中国料理のマスターと会うや、一言目が片岡鶴太郎だ。どういうことだろう。

「妻に商店街に子猫が泣いてると言われて、行ってみると子猫が薬屋の前でプルプル震えてたんですよ。親猫の気配はあったんですけど、来なくてどうしたもんかなあと見ていたんです」

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保護された子猫。名前は小鶴。

「そしたら後ろから突然『このネコどうされます?』声かけられ振り返ってみるとなんと片岡鶴太郎さんがロケでいたんですよ! 子猫の名前は鶴太郎さんの縁で『小鶴』にしました」

日常に片岡鶴太郎が突然出てきたら僕も興奮する。片岡鶴太郎に会い、猫を家族にした日にに来てしまった。

ご主人は日本人で名前は吉村さん、奥様が中国人で名前は張さん、日中夫婦だ。吉村さん自身も中国で生活していたことがあり、北京で同じ名前のバー「シャラ」をやっていた。メニューのせいなのか、場の雰囲気が人気なのか、はたまた気さくな吉村さんのキャラクターなのか日本人中国人問わずたくさんのお客さんがやってきた。

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吉村さん「これは中華ベーコン『腊肉(ラーロウ)』。北京の店ではこれでペペロンチーノ作ってました!」

でも北京市内のあれやこれやの政策でその地域一帯の店がまるごと閉まることになり、日本の実家のある伊東で再スタートをきったという。政策トラップは未知の世界だ。

北京の人気店が伊東にオープン、なんか不思議な店のプロフィールだ。日中ともども呼び寄せるオーラがあるのか、取材したときもたまたま東京からやってきた中国人留学生グループがふらりと入ってきたと思えば、地元の日本人も入ってきた。あとは温泉宿で働く中国人がやってくるという。

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「北京風あさり炒め」に「張さんの麻婆豆腐」などなるほど納得。

メニューを見るに、食後にちょっと店に入って食べてお酒も飲める、そんな感じだ。

「これらは日本人のお客さんでも食べてもらえるようなメニューなんですが、ほかに裏メニューもあるんですよ!内モンゴルの家庭料理です。頼めば出しますよ!」

なるほど食事もがっつり食べられる。

それにしても内モンゴル!モンゴルというと草原が広がるイメージだ。内モンゴルのフルンボイルというところで「冬にはマイナス30度とかになる」そうだ。極寒である。

フルンボイルの中心がハイラルという場所であり、ハイラルのだだっぴろい草原で子連れで遊んでたそうだ。同名のハイラルという草原が舞台となる「ゼルダの伝説」ファンにはたまらない。

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ゲルもあり、ロシア国境近くには巨大マトリョーシカ像もあるが、だいたいこんな草原がずっと続くそうだ。中国のハイラル草原はゼルダの伝説のハイラル草原だった。
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ハイラル料理を作ってもらう

内モンゴルの料理はどんなのだろう。吉村さん夫妻にきくと「東北料理と同じ?」「そうですねー」と日本語中国語がごちゃまぜの会話でふたりは話をしている。

その東北料理というのは、中国の地図でいうと右上のほう、東北地方(遼寧省・吉林省・黒竜江省)のあたりの料理だ。

日本にいる中国人は東北地方出身の人が多いことから、最近日本のいろんなところで見るようになったガチ中華料理店の多くで実は食べられている。

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中華鍋+強火力=信頼の中国料理

そんな内モンゴルの、外向けの料理ではなく家庭料理を出してくれるというので厨房を見せてもらった。張さんは肉をとんとんとんと切り出し、中華鍋で炒めだす。

テレビ番組で見るようにキビキビ動いているわけではないけれど、僕が中国で見た家庭料理もそんな感じでゆるやかながら手際よく作られていた。そして日本でなかなか見られないような料理が次々に出てきた。

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「酸菜白肉」がどん!

「酸菜白肉」は、私が子供のころは冷蔵庫がなくて、白菜を漬けて蓄えておいて、冬にはそれをよく食べてたんです」

見ての通りの食べやすい味で食が進む!

「そうなんですよ、内モンゴルにいったときもこの味で。向こうの家庭料理はそんなにしょっぱ辛くないのです」とは吉村さん。

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「東北大拉皮」がどん!

「実家ではじゃがいもや、このじゃがいもから作った麺(粉条、拉皮)をたくさんつかってます」

ちょっと辛いくらいで食べやすくて、食が進む。そういえばこの麺はどこで買えるのだろう。中国の商店が伊東にあるんです?

「中国の店はないですが、業務スーパーで売ってます」

なるほど、業務スーパーは便利!

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「炒蕨菜」の炒めものがどん!

「蕨は春にでてきますが、これを摘んで、干して冬に食べるんです」

――生えてますね。日本でも無限に生えてるどくだみやミントを摘んで調理する人もいますもんね。なるほど!

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「小鶏燉蘑菇」をどん!
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ハイラル草原にはゼルダの伝説同様キノコが生えている

「実家では家にニワトリを飼ってるんです。秋にきのこを摘んで乾燥させて、冬にニワトリと一緒に調理して食べるんです。一般的には客人が来たときとか、春節の年越しで食べます」

おお、そんな料理までお店でふるまうとは!

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中華風麻辣金目鯛がドン!

「これは内モンゴル料理ではないのですが、地元で捕れた金目鯛を麻辣風味にしたてたものです」

伊東の海の幸と内陸の四川的な味のミックスまであった!


伊東の中国バーは人生の積み重ねでできていた

張さんが伊豆で麻辣金目鯛ミックスを作る背景に思いを馳せた。

伊東が実家の吉村さんが北京で活躍し、内モンゴルの張さんと出会った結果、これらの料理が温泉とのコンボで楽しめる。チャイニーズバーは人生の偶然が重なり合って誕生したものなのだ。

本場中華から、素材をアレンジして中国風を取り入れた料理まで、これでもかと用意されていた。なるほど日本人も中国人も来るわけだ。

あっさりして食べやすかったです!

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