「心を豊かにする」シリーズ
JTのコーポレートR&D組織 D-LABと「心の豊かさ」を感じる方法を考え・実践するシリーズ記事です。
第1回 どうやったら心が豊かになるのかをプレゼンしました第2回 手で食べる
第3回 鑑定しないお宝鑑定大会
第4回 鑑定しないお宝鑑定大会 後編
第5回 「お揃いの服を着る」に決定するまで~「心の豊かさ」を実現する企画プレゼン
第6回 お揃いの服を着れば仲良くなれるのか
目指せ!「心の豊かさ」
これはJT D-LABとの「心の豊かさ」を検証する実験のひとつである。ストレートな楽しさではなく、意外なところに「心の豊かさ」を感じる道があるのではないか。その意外のひとつが手食べである。(手で食べる以外の候補はプレゼン編をご覧ください)
左から楽しみ、緊張、不安、不安の表情がはっきり分かる。デイリーポータルZからは林、べつやく、石井、石川の4名が参加している。
今回は以下のメニューで手食べの可能性を探っていく。
サラダ
焼き魚(ほっけ)
角煮
刺身
豆腐
卯の花
鯖の味噌煮
パスタ
納豆
デザート
まずは乾杯
腕を曲げるとこぼれてしまうため、顔を近づけるしかない。手食べは独特の乾杯スタイルとなった。
ウェットティッシュの奪い合いになっていたことからも結果が予想できたが、感想はこのようなものだった。
・コップができた理由がわかる
・シュワシュワが気持ち悪い(ワインが飲めない人にはコーラを注ぎました)
飲み物に関しては意見が一致した。手は合わない。
普段と異なることをして、やっぱり普通がいいねというのは試みの意義を疑いたくなるが大事である。ほら、実験だから。
サラダ ◎
乾杯で落胆した我々だったが、サラダ×手食べでは瞠目した。
・葉っぱが新鮮かどうかが手だと分かる
・手でつかんだ時点から「食べる」が始まっている
・手で食べたほうが香りを感じる
シャキシャキ感が手でつかんだ時点で感じられる。手で持ったときに感じる「おいしそう」が口のなかで「おいしい」に変わるのはちょっとしたスパークだった。
ちなみに対比して箸で食べたときの感想は以下の通り。
・手の方が食べやすい
この時点で「手のほうが食べやすい」が出ている。早くも戻れない。
焼き魚(ほっけ)○
あえて骨の多い魚を選んだ。箸より手のほうが食べやすいだろうが、細かい骨が取れるか心配だ。
焼き魚も手だった。ペリペリペリと骨を剥がして、中のおいしいところを食べる。手で食べることを不自然に感じない。
・部位の問題もあるだろうけど、いつもよりもきれいに食べられる
・食べたあとのお皿もきれいでむしろお行儀が良くなった気がした
・もはや、なんでこれまで箸を使っていたんだろうと思う
角煮 ○
感想
・これはもう当然手ですね
・箸で食べる理由がわからない
感想がおもしろくなくなるぐらい、手で食べるものだった。次の三品は、刺身、豆腐、お漬物。手食べ和風セットだ。
刺身が大ヒット ◎
用意したお刺身はアジのたたきとマグロ、サーモンである。
アジのたたきがすごく美味しく感じる。たまたまアジがおいしかったということではないようだ。なぜなら対比実験の箸ではいつものたたきだったからだ。
手で食べた感想
・魚の脂が柔らかいことが分かる
・手の温度で魚の脂が溶けている
・食べるという行為が手で掴んだときから始まっている
・わさびがまろやかに感じる
箸で食べた感想
・あまり楽しくない
・脂を感じない
寿司職人は温度管理にこだわるらしいが、手で食べることで魚の脂がまろやかになっている。石井さんの知人の寿司職人は回転寿司の寿司が冷たいので握りなおして食べているという。そのエピソードは極端だとしても、刺身×手食べは大ヒットだった。
もう箸に戻れない。
大葉で巻く食べ方を発見したD-LAB武田さんに対して「頭良いなー」と絶賛の声が飛んだ。たぶん3000年ぐらい前もそんな会話があっただろう。
豆腐
・こんなにやわやわだったのか
・牡蠣みたい
・いつもより舌触りがいい
・箸といちばん味が違う気がする
豆腐は柔らかさを過剰に感じる食べものになった。生牡蠣をじゅるりと飲んだときの食感だ。そうか、生牡蠣もそういえば手だった。
お漬物に至っては、「これは手でしょ」「箸使っていたっけ」などといったコメントだったので割愛。
番狂わせ・卯の花 ◎
ここでD-LABの塩谷さんから手で食べたい料理の提案があった。
「私、嫌いな食べ物がないんです。唯一、嫌いでもないけど分からない食べものがおからで。それの印象が変わるのか持ってきました」
とのことだった。好きじゃない食べものの印象が変わるのだろうか。
「ぼそぼそ感が普段より少ない気がする」とのことだった。
確かに私が食べてみても、ふだん食べる卯の花よりもしっとりしている。
「でもこれ、高級スーパーで買ってきたから」
高級スーパーのせいなのか、それとも手のせいなのか。比較のために箸で食べてみて分かった。
卯の花は手食べだとおいしくなる。
・手で食べるとしっとりする
・箸だと口の中に残る
・手だとつかむときにレンコンなどの具が分かって期待感が高まる(箸だとブラックボックス)
無意識のあいだに卯の花を手で固めているのだろうか。手の脂が食感を変えている。
「箸だと卯の花はブラックボックス」という暗号のような響きも食べると納得できる。
手で食べることでいちばん心配していたのは、服や床が汚れることだった。だが、まったく服は汚れなかったし、床にこぼすこともなかった。
考えてみれば箸よりも手で直接つかむほうがコントロールできるので落とすことがない。
後半は鯖の味噌煮、パスタ、納豆、湯葉、デザートとアクセルを踏んでいきます。


