広告企画 2025年9月18日

手で食べる

寿司、ピザ、肉まん。

美味しいものに共通するのは「素手で食べる」ということである。もしかしたら美味しく感じる秘訣は食材ではなく、手のほうにあったのかもしれない。

「手で食べればなんでもおいしい」

このような仮説を立てて検証してみた。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:どうやったら心が豊かになるのかをプレゼンしました

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「心を豊かにする」シリーズ

JTのコーポレートR&D組織 D-LABと「心の豊かさ」を感じる方法を考え・実践するシリーズ記事です。

第1回 どうやったら心が豊かになるのかをプレゼンしました
第2回 手で食べる
第3回 鑑定しないお宝鑑定大会
第4回 鑑定しないお宝鑑定大会 後編
第5回 「お揃いの服を着る」に決定するまで~「心の豊かさ」を実現する企画プレゼン
第6回 お揃いの服を着れば仲良くなれるのか
 
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目指せ!「心の豊かさ」

これはJT D-LABとの「心の豊かさ」を検証する実験のひとつである。ストレートな楽しさではなく、意外なところに「心の豊かさ」を感じる道があるのではないか。その意外のひとつが手食べである。(手で食べる以外の候補はプレゼン編をご覧ください)

D-LABからは、左から関根さん、武田さん、塩谷さん、磯野さんが参加

左から楽しみ、緊張、不安、不安の表情がはっきり分かる。デイリーポータルZからは林、べつやく、石井、石川の4名が参加している。

今回は以下のメニューで手食べの可能性を探っていく。

乾杯(ワイン)
サラダ
焼き魚(ほっけ)
角煮
刺身
豆腐
卯の花
鯖の味噌煮
パスタ
納豆
デザート
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まずは乾杯 

乾杯は赤ワインを用意しました。スパークリングワインだと思ったら赤ワインでした
手酌ってこういうことでしたっけ?
乾杯!!

腕を曲げるとこぼれてしまうため、顔を近づけるしかない。手食べは独特の乾杯スタイルとなった。

無言でウェットティッシュに群がる人たち

ウェットティッシュの奪い合いになっていたことからも結果が予想できたが、感想はこのようなものだった。

感想
・コップができた理由がわかる
・シュワシュワが気持ち悪い(ワインが飲めない人にはコーラを注ぎました)

飲み物に関しては意見が一致した。手は合わない。
普段と異なることをして、やっぱり普通がいいねというのは試みの意義を疑いたくなるが大事である。ほら、実験だから。 

続いてはこのワンディッシュの手食べ御前をいただきます
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サラダ ◎

乾杯で落胆した我々だったが、サラダ×手食べでは瞠目した。

!!
感想
・葉っぱが新鮮かどうかが手だと分かる
・手でつかんだ時点から「食べる」が始まっている
・手で食べたほうが香りを感じる

シャキシャキ感が手でつかんだ時点で感じられる。手で持ったときに感じる「おいしそう」が口のなかで「おいしい」に変わるのはちょっとしたスパークだった。

ちなみに対比して箸で食べたときの感想は以下の通り。

・あまり感動がない
・手の方が食べやすい

この時点で「手のほうが食べやすい」が出ている。早くも戻れない。

「食べる」が手から始まっている
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焼き魚(ほっけ)○

あえて骨の多い魚を選んだ。箸より手のほうが食べやすいだろうが、細かい骨が取れるか心配だ。 

ペリッ(心配ご無用!)

焼き魚も手だった。ペリペリペリと骨を剥がして、中のおいしいところを食べる。手で食べることを不自然に感じない。

感想
・部位の問題もあるだろうけど、いつもよりもきれいに食べられる
・食べたあとのお皿もきれいでむしろお行儀が良くなった気がした
・もはや、なんでこれまで箸を使っていたんだろうと思う
自分史上最高にきれいに食べられて嬉しそうな私
焼き魚の骨と、残るは角煮
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角煮 ○

感想
・これはもう当然手ですね
・箸で食べる理由がわからない

感想がおもしろくなくなるぐらい、手で食べるものだった。次の三品は、刺身、豆腐、お漬物。手食べ和風セットだ。

居酒屋だったら980円ぐらいかな

刺身が大ヒット ◎

用意したお刺身はアジのたたきとマグロ、サーモンである。

……これは?!おいしいぞ?

アジのたたきがすごく美味しく感じる。たまたまアジがおいしかったということではないようだ。なぜなら対比実験の箸ではいつものたたきだったからだ。

手で食べた感想
・魚の脂が柔らかいことが分かる
・手の温度で魚の脂が溶けている
・食べるという行為が手で掴んだときから始まっている
・わさびがまろやかに感じる

箸で食べた感想
・あまり楽しくない
・脂を感じない

寿司職人は温度管理にこだわるらしいが、手で食べることで魚の脂がまろやかになっている。石井さんの知人の寿司職人は回転寿司の寿司が冷たいので握りなおして食べているという。そのエピソードは極端だとしても、刺身×手食べは大ヒットだった。
もう箸に戻れない。 

大葉の使い道も分かる

大葉で巻く食べ方を発見したD-LAB武田さんに対して「頭良いなー」と絶賛の声が飛んだ。たぶん3000年ぐらい前もそんな会話があっただろう。

豆腐

先陣を切って食べるチャレンジャーと見守る仲間、有史以来こういうシーンが繰り返されてきたのだろう。手食べだと​​​比喩がたいてい大昔になる。
豆腐
・こんなにやわやわだったのか
・牡蠣みたい
・いつもより舌触りがいい
・箸といちばん味が違う気がする

豆腐は柔らかさを過剰に感じる食べものになった。生牡蠣をじゅるりと飲んだときの食感だ。そうか、生牡蠣もそういえば手だった。

お漬物に至っては、「これは手でしょ」「箸使っていたっけ」などといったコメントだったので割愛。

番狂わせ・卯の花 ◎

ここでD-LABの塩谷さんから手で食べたい料理の提案があった。

それは、卯の花

「私、嫌いな食べ物がないんです。唯一、嫌いでもないけど分からない食べものがおからで。それの印象が変わるのか持ってきました」

とのことだった。好きじゃない食べものの印象が変わるのだろうか。 

あれ?おいしい?

「ぼそぼそ感が普段より少ない気がする」とのことだった。
確かに私が食べてみても、ふだん食べる卯の花よりもしっとりしている。
「でもこれ、高級スーパーで買ってきたから」
高級スーパーのせいなのか、それとも手のせいなのか。比較のために箸で食べてみて分かった。

箸だといつもの卯の花だ!!ぽそぽそだ!!

卯の花は手食べだとおいしくなる。

感想
・手で食べるとしっとりする
・箸だと口の中に残る
・手だとつかむときにレンコンなどの具が分かって期待感が高まる(箸だとブラックボックス)

無意識のあいだに卯の花を手で固めているのだろうか。手の脂が食感を変えている。
「箸だと卯の花はブラックボックス」という暗号のような響きも食べると納得できる。 

次の料理まではこの姿勢で手を休めるのがスタンダートとなった

手で食べることでいちばん心配していたのは、服や床が汚れることだった。だが、まったく服は汚れなかったし、床にこぼすこともなかった。
考えてみれば箸よりも手で直接つかむほうがコントロールできるので落とすことがない。

後半は鯖の味噌煮、パスタ、納豆、湯葉、デザートとアクセルを踏んでいきます。

⏩ プリンは手が冷たい

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