「傘」という漢字の略字がほぼ絵
私が見つけたおもしろい略字というのがこれだ。
京都市内のとある公共施設でこの「傘」を見つけて衝撃を受けたのである。「こんなんでいいのか!」と感動したのだ。
しかも帰ってから調べてみると、この「傘」は略字としてはそこそこメジャーな存在だというではないか。今まで知らずに生きてきたとは......。
きっと世の中にはまだまだ知らない略字があるにちがいない。そこで、私と編集部石川さんに前述の竹澤さん、さらにDPZで文字に関する企画といえばやはりこの人だろうというライター・西村さん(竹澤さんとつないでくれたのも西村さんである)を加えて、略字の勉強会というか、座談会のようなことをすることになったのだった。
こーだい:というのが今回の趣旨です。(リーンリーンリーン♪)
竹澤:よろしくお願いします!
石川:こーだいさんのとこ、めっちゃ虫が鳴いてますね。
こーだい:窓を開けてるんです。秋ですね。
竹澤:傘っていう字だと他にもバリエーションがいくつかありますね。
こーだい:こんなにあるんだ。
石川:なんか、省略が進むほどむしろわかりやすくなってません?こーだいさんが見つけてきた傘とか、漢字をまったく知らない国の人が見ても傘だとわかりそう。
こーだい:もとの「傘」なんか、一つの傘に4人も入れないだろってツッコミ入れたくなりますね。
竹澤:象形文字の最たるもんですね。ところで傘は訓読みが「かさ」で音読みは「サン」ですけど、じつは同じ意味の形声文字もあるんですよ。こんな字なんですけど......。
西村:おー、すごい。たしかにこれだと一目で「サン」って読むのがわかりますね。ただどういう経緯でこの形になったのかまったくわからない。
竹澤:そうなんです。糸へんに散だと「サン」という音はわかるけど、何を指しているのかわからない。それで、『傘』の字があとから作られたようなんです。
こーだい:略字のもとになった『傘』も、じつはわかりやすくするために作られたものだったのか。
竹澤:同じような経緯で出てきた字って結構あって、たとえば「寡」という漢字は訓読みで「すくない」「やもめ」、音読みで「か」と読みます。この「寡」の代わりになるのがこれです。
石川:一人だ。
こーだい:なんか中二病っぽいですね。
世の中のそこかしこに散らばる略字たち
西村:さっきの画像、もう一個略字がありますね。左の方の京都労働者総合会館の「者」が略字になってる。
こーだい:ほんとだ!縦棒とはらいが一体化してる!これは気付いてませんでした。
竹澤:略字って世の中のいろんなところにそしらぬ顔で隠れてますよね。
こーだい:ですね。今回の「傘」以外にも略字の写真撮ってた気がするので探してみたんですけど、2016年頃に熊本で見つけたこれとか面白いです。
こーだい:「軽」の車へんが省略されてるっていう。見つけたのはずいぶん前なんですけど、このときも驚いたのをよく覚えてます。「なんだこれ!?」って。
竹澤:やはり熊本ですか!これ、あの地域に独特の略字習慣なんです。
こーだい:熊本だけなんだ!たしかに、よそでは見たことないですね。
竹澤:ただ経済の「経」の略字で結果的に同じ形になってるやつもあって、こっちは地域性がないですね。
西村:それとは違うけど、「軽」の略字は青森でいくつか見ましたよ。
石川:ははあ、「輕」のくが3つ書いてあるところが点になってる。
竹澤:くが3つを略すのは、「巣」とかもそうですね。巣っていう字の上の点3つもくが略されたものです。この部分はとくに略されがちで、たぶん律儀に残ってるのは災害の「災」くらいじゃないでしょうか。
こーだい:たしかに、頸椎の「頸」も「頚」と書いてあることが多い気がします!しかし今ちゃんとした漢字だと思って使ってるものにも略字がかなり潜んでるんですね。
竹澤:そうなんです。略されたあとの字が定着してしまった結果、略字であると認識されていないのが多いんです。例えば丁寧という字も、昔は「丁」と「寧」の両方とも口へんをつけて書いてたんですよ。今はほとんど見なくなりました。
竹澤:以前「略字を使わずに丁寧に書きましょう」という文章を見たことがあって、その文章の中の「丁寧」がこの略字の丁寧。
西村:ははは、皮肉だなあ!