ラウンドアバウト見たい宣言
道の中央に明らかに異物感のあるオブジェクトが見える。近づくとその周囲を走る道はドーナッツのように円環になっていて、そこからいろんな方向に分岐している。傍らに青くて丸い永久機関のような矢印の看板が見えたらそこは環状の、信号のない交差点、ラウンドアバウトである。
海外では1960年代に開発され、実用化が進んでいるが、日本で運用が始まったのは2014年の9月とだいぶ最近のこと。でも丸い感じの交差点なんてもっと前からあっただろうに、となるが、従来より存在していた円形交差点、いわゆるロータリーの通行ルールを整備してラウンドアバウトとして運用するようになったケースが多い。
ロータリーでは環状の道路に侵入する側が優先だったが、改正道路交通法で規定され環道側が優先となった、つまり逆になったので、場所によっては混乱を避けるために力強くメッセージが発信されている。
初心者やペーパードライバーにとって恐怖の右折がなく安心して交差点を通行できたり、災害で信号がぶっ壊れても機能したり、ラウンドアバウトのメリットはいろいろあるが、特筆すべきはこの丸くて、中島にも環道にも何かがあってワクワクする感じだ。車ですっと通り抜けるだけではもったいない。ラウンドアバウトは歩いて眺めるものではないだろうか。
※ 中島:ランドアバウト中央の円形の土地、正式名称は「中央島」環道:中島のまわりの道
そういったわけで、私が住む東京とその近郊(神奈川・千葉・埼玉)16のラウンドアバウトをめぐってウォークスルーをキメてきた。
※7/10追記:公開時「17のラウンドアバウト」と記載していましたがそのうち1ヶ所(神奈川県藤沢市本町)がロータリー交差点でした。本文とマップを修正しています。ご指摘いただきありがとうございました。でも、いい感じのロータリーでしたよ。近くにおいしいパン屋さんもありました。
今回はなんと写真つきマップです。(参照:「日本のラウンドアバウトデータベース」(公財)国際交通安全学会研究調査プロジェクト https://rabmap.trpt.cst.nihon-u.ac.jp/Map)
真ん中が気になる
地図に貼り付けられた写真をなんとなく見比べていてもわかるが、ラウンドアバウトの顔となるのはやはりドーナッツでいう真ん中の穴の部分に備え付けられた中島である。
樹木からアート、鉄塔や電柱など多様なオブジェクトが設置され、エンジンをうならせて荒々しく走る車がそこに近づくと速度を落とし、おとなしく迂回してゆく様を眺めていると祭壇のような神々しさすら感じる。
交差点というだけでなく、近隣のランドマークとなっているようなところも多く、特に印象に残ったラウンドアバウトを真ん中にあるもの別に紹介したい。そんなんだったらロータリーでもいいんじゃねえのという気もするが、なんせきっかけがラウンドアバウトなのでその切り口で。
木々
JR姉ヶ崎駅からバスで10分ほど、閑静な住宅街の中心部に静かに佇むラウンドアバウト。中島の円周上に植えられたツツジはきちんと丸く刈り込まれており、ベアリングの玉のようでかわいい。
あの聖地
おなじく中島に木々を擁するが、東京は多摩桜ヶ丘のこちらはラウンドアバウト自体の規模も大きく、木々もより茂ってちょっとした庭園の趣である。
周りを散歩していたらお菓子屋さんの前に顔はめパネルが立てられていた。なんせ顔はめパネルなので顔がなく、なんのキャラか皆目わからなかった。
店内に入るとそこに飾られたポスターやグッズで理解できた。聖蹟桜ヶ丘周辺の多摩ニュータウンはジブリ作品「耳をすませば」の舞台のモデルとなっており、このロータリーも劇中に登場する「聖地」となっていたのだ。
なんでちょっと恥ずかしいのかわからないが私はあまりジブリ作品を見ていないので「ほほう」と新鮮に驚き、お菓子屋さんに「ラウンドアバウト目当てで来たら耳すま観たくなりました」と言ったら「みなさんはだいたい逆ですけどね」と言われた。さもありなん。