特集 2024年7月9日

その真ん中には何があるのか 東京近郊ラウンドアバウトめぐり

祭壇のような存在感を放つラウンドアバウトを見て回ります。

以前西千葉で環状の交差点、すなわちラウンドアバウトを見て心からいいと思った。

日常の中に溶け込んで非日常との境目みたいな絶景が存在している。そりゃ普通は真っ直ぐの道が交差するところが丸くなってるからで、他もあるんじゃないの、と思った私は東京および近郊のラウンドアバウトを訪ね歩いた。

丸い道路の真ん中には何かがあるのではないか。あったね。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

前の記事:与路島の山奥でとぐろを巻く三名様 〜ハブのいる島めぐり

> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

ラウンドアバウト見たい宣言

道の中央に明らかに異物感のあるオブジェクトが見える。近づくとその周囲を走る道はドーナッツのように円環になっていて、そこからいろんな方向に分岐している。傍らに青くて丸い永久機関のような矢印の看板が見えたらそこは環状の、信号のない交差点、ラウンドアバウトである。

001.jpg
東京都武蔵村山市「マイホームランド玉川上水」のラウンドアバウト。石畳の舗装がおしゃれ。
002.jpg
円形の道路に入って、時計回りにぐるっと回りながら目指す方向の道に抜けていく仕組みとなっている。

 海外では1960年代に開発され、実用化が進んでいるが、日本で運用が始まったのは2014年の9月とだいぶ最近のこと。でも丸い感じの交差点なんてもっと前からあっただろうに、となるが、従来より存在していた円形交差点、いわゆるロータリーの通行ルールを整備してラウンドアバウトとして運用するようになったケースが多い。

003.jpg
ロータリー(円形交差点)の看板に「ラウンドアバウト」と付記されているものもある(千葉県長生村)

ロータリーでは環状の道路に侵入する側が優先だったが、改正道路交通法で規定され環道側が優先となった、つまり逆になったので、場所によっては混乱を避けるために力強くメッセージが発信されている。

008.jpg
ゆずれ!(千葉県茂原市)環道側が優先となったが一時停止の義務はないので「ゆずれ」

初心者やペーパードライバーにとって恐怖の右折がなく安心して交差点を通行できたり、災害で信号がぶっ壊れても機能したり、ラウンドアバウトのメリットはいろいろあるが、特筆すべきはこの丸くて、中島にも環道にも何かがあってワクワクする感じだ。車ですっと通り抜けるだけではもったいない。ラウンドアバウトは歩いて眺めるものではないだろうか。
※ 中島:ランドアバウト中央の円形の土地、正式名称は「中央島」環道:中島のまわりの道

そういったわけで、私が住む東京とその近郊(神奈川・千葉・埼玉)16のラウンドアバウトをめぐってウォークスルーをキメてきた。
※7/10追記:公開時「17のラウンドアバウト」と記載していましたがそのうち1ヶ所(神奈川県藤沢市本町)がロータリー交差点でした。本文とマップを修正しています。ご指摘いただきありがとうございました。でも、いい感じのロータリーでしたよ。近くにおいしいパン屋さんもありました。

今回はなんと写真つきマップです。(参照:「日本のラウンドアバウトデータベース」(公財)国際交通安全学会研究調査プロジェクト https://rabmap.trpt.cst.nihon-u.ac.jp/Map

いったん広告です

真ん中が気になる

地図に貼り付けられた写真をなんとなく見比べていてもわかるが、ラウンドアバウトの顔となるのはやはりドーナッツでいう真ん中の穴の部分に備え付けられた中島である。

004.jpg
以前訪れた西千葉にはLOVEがあった。

樹木からアート、鉄塔や電柱など多様なオブジェクトが設置され、エンジンをうならせて荒々しく走る車がそこに近づくと速度を落とし、おとなしく迂回してゆく様を眺めていると祭壇のような神々しさすら感じる。
交差点というだけでなく、近隣のランドマークとなっているようなところも多く、特に印象に残ったラウンドアバウトを真ん中にあるもの別に紹介したい。そんなんだったらロータリーでもいいんじゃねえのという気もするが、なんせきっかけがラウンドアバウトなのでその切り口で。

いったん広告です

木々

005.jpg
千葉県市原市有秋台東団地

JR姉ヶ崎駅からバスで10分ほど、閑静な住宅街の中心部に静かに佇むラウンドアバウト。中島の円周上に植えられたツツジはきちんと丸く刈り込まれており、ベアリングの玉のようでかわいい。

006.jpg
ラウンドアバウト参りを誘うように侵入路にも街路樹が立ち並ぶ。
007.jpg
環道にはバス停があり、車を使わない人もここへ集まってくる。まさにランドマーク。
いったん広告です

あの聖地

おなじく中島に木々を擁するが、東京は多摩桜ヶ丘のこちらはラウンドアバウト自体の規模も大きく、木々もより茂ってちょっとした庭園の趣である。

009.jpg
京王線聖蹟桜ヶ丘駅から歩いて20分ほど。私はすぐ歩いてしまうがバスも通ってます。

周りを散歩していたらお菓子屋さんの前に顔はめパネルが立てられていた。なんせ顔はめパネルなので顔がなく、なんのキャラか皆目わからなかった。

010.jpg
わかる人は一瞬でわかるのでは。

店内に入るとそこに飾られたポスターやグッズで理解できた。聖蹟桜ヶ丘周辺の多摩ニュータウンはジブリ作品「耳をすませば」の舞台のモデルとなっており、このロータリーも劇中に登場する「聖地」となっていたのだ。

012.jpg
ラウンドアバウトではあるが侵入時の一時停止が義務付けられている。それにしても松が立派。

なんでちょっと恥ずかしいのかわからないが私はあまりジブリ作品を見ていないので「ほほう」と新鮮に驚き、お菓子屋さんに「ラウンドアバウト目当てで来たら耳すま観たくなりました」と言ったら「みなさんはだいたい逆ですけどね」と言われた。さもありなん。

011.jpg
ロータリークッキーをゲット!

⏩ 鉄塔があるラウンドアバウト

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ