特集 2023年10月23日

ナポリのジェノベーゼは本当に茶色いのかを確かめたい

これがナポリのジェノベーゼです。

数年前、サイゼリヤの期間限定メニューとして、「ナポリジェノベーゼ」という茶色いパスタが登場したのをご存知だろうか。

ジェノベーゼといえば、バジルペーストを絡めた緑色のものしか知らなかったので、とても衝撃的だったのを覚えている。

いつか本場のナポリでご当地ジェノベーゼを食べてみたいなとぼんやり憧れつつも、イタリアに行くことは生涯ないだろうと思っていたのだが、なんとその機会が訪れた。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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茶色いジェノベーゼは2019年の期間限定メニューだった

サイゼリヤで食べた茶色いジェノベーゼの写真を探して確認したところ、2019年3月の話だった。誰かのツイートで変わったジェノベーゼがあると知って、いそいそと食べに来た覚えがある。確か「サイゼリヤのメニューには、知る人ぞ知る本場の味がシレっと混ざっている」と話題になっていた頃だ。

メニュー表には、ジェノバの緑色をした「ペストジェノベーゼ」と、ナポリのマンマからだという茶色い「ナポリジェノベーゼ」の二種類が載っていた。

サイゼリヤのサイトを確認したら、当時のプレスリリースが残っていた(こちら)。

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ペストはすりつぶしたものという意味の調味料であり、ジェノバのペストにはバジリコ(バジル)が使われている。このペストジェノベーゼはリグーリア(ジェノバがある州)の代表的なパスタとのこと。ジャガイモの角切りとサヤインゲンが入っているようだ。
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タマネギと肉を長時間煮込んだソースのパスタがナポリジェノベーゼ。ナポリでジェノベーゼといったらコレで、マンマの味だそうですよ。
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サイゼリヤ的にはナポリ押しなのだろうか。muscolo di bueなので肉は牛筋のようだ。

ナポリにナポリタン(ケチャップ炒めスパゲティ)は存在しないそうだが、こんな隠し玉パスタがあったのか。

ジャガイモとサヤインゲンが入った緑のペストジェノベーゼも気になるが、ここはやっぱり茶色いナポリジェノベーゼを注文させてもらおう。

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これがナポリのジェノベーゼなのか。

どんな味だろうと食べてみると、タマネギの甘さがしっかりと引き出されていて、肉ジャガの残りをご飯に混ぜたみたいな(良い意味で)、すごく優しく身に染みた。これがナポリのマンマの味ですか。

このジェノベーゼは人気だったのか、この年の秋には期間限定ではなくグランドメニューとして、太くて穴の開いたパスタを使ったナポリジェノベーゼが登場したようだ(こちら)。

緑のジェノベーゼも食べてみた

2020年8月、またあのナポリジェノベーゼを食べようと思ったら、もうメニューからは消えていて、期間限定としてペストジェノベーゼだけが用意されていた。

これも気になっていたので、頼めるうちに食べようと注文をした。すべてのメニューは一期一会だ。

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やっぱりジャガイモとサヤインゲンが入っている。イタリアでもそうなのだろうか。
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写真よりもチーズたっぷりで登場。

緑色のペストジェノベーゼは、イメージ通りの味だった。チーズのコクとバジルの爽やかさがとてもよく合う。

これはこれでおいしいのだが、あの茶色いジェノベーゼはもうサイゼリヤで食べられないのだろうかと思いながら、黙ってフォークを口に運んだ。

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具がジャガイモとサヤインゲンというのがおもしろい。本場でもこうなのだろうか。

ちなみに2023年10月のサイゼリヤのメニューには、残念ながらジェノベーゼは茶色も緑も存在していないようだ。

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イタリアのナポリでジェノベーゼを探す

そして2023年の9月、なんやかんやの縁があって、私はナポリに来ることとなった。なにをしにイタリアへ行ったんだという話は長くなるので、それは別の記事で書く予定である。もし書かなかったら、会ったときにでも聞いてください。

ということで、ナポリといえばジェノベーゼ。同行者の一人である飴細工職人の吉原さんは、前職がイタリアンの料理人であり、ナポリを放浪していた時期もあるという頼もしい方だったので、ジェノベーゼが食べられそうなお店を探していただいた。

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ナポリはマラドーナ押しの街でした。

食事を一緒にしたメンバーは、飴細工職人の吉原さん、そのお弟子さん、チンドン屋さんのコンビ、餅つきの人、そして私(藁細工の人)。

この旅を通じて初めてお会いした方々と、私一人だったら絶対に入れないであろう路地裏のトラッテリア(食堂)の入り口をくぐる。生きているといろんなことがありますね。

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眼鏡の男性が吉原さん。ネットでジェノベーゼが食べられるであろう手ごろな店を探してくれた。

ジェノベーゼだけがなかった

店の雰囲気は最高だった。これが本場のサイゼリヤ(のエッセンスの一つ)なのかと、一歩目からすでに心が躍りまくっている。ナポリのジェノベーゼは、やっぱり茶色いのだろうか。やっぱり緑、いや意外と赤だったりして。

だがメニューの説明を受ける吉原さんの表情が暗い。なんでもメニューにジェノベーゼはあるのだが、今日はその用意がないとのことだった。

なるほど。個人経営の店だから、そんな日もありますよね。

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「ごめんなさい、ジェノベーゼだけができないって」と教えてくれた吉原さん。
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白ワインのデカンタ。サイゼリヤ感があって素敵。
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ジェノベーゼ、ありませんでした(左下が私)。
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ならばと魚介のパスタ(FRUTTI DI MARE)を頼んだら、「本場のパスタってこんなにおいしいの!」と驚くレベルの高さ。トマトと貝の味がものすごく濃く、その汁を吸った麺が最高。
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イカを揚げた名物料理(CALAMARI FRITTI)。貝殻が日本のホタテとは少し違う、「ヴィーナスの誕生」のあれ系で萌える。

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