別の店に行ってみよう
翌日、同じメンバーでナポリにある別の食堂を訪れた。
今度こそ茶色いジェノベーゼがあってくれ。
昨日の店もそうだったが、ここも地元の人しか来ないであろう地域密着型の定食屋。日替わりのメニューから、PRIMI PIATTI(パスタ類)、SECONDI PIATTI(メイン料理)、CONTORNI(付け合わせ)を一つずつ選ぶという方式だった。
日本でもたまにあるスタイルだが、自分ひとりで来ていたら、果たしてそのルールが理解できただろうか。セットで12ユーロだったかな。
入店した時間がラストオーダー間際で、メニューのいくつかは売り切れで消されていたが、MEZZANELLI ALLA GENOVESE が PRIMI PIATTI の一番上に書かれていた。MEZZANELLI はパスタの種類っぽいので、きっと待望のジェノベーゼだ。
さらに SECONDI PIATTI には CARNE ALLA GENOVESE(MAIALE) があった。直訳すると「ジェノベーゼ(豚)の肉」。せっかくなので、これも注文してみよう。
これがナポリのジェノベーゼだ
しばらくして、待望のジェノベーゼが運ばれてきた。ちゃんと茶色い。
日本であればマカロニと呼ばれるパスタの上に、濃い飴色のタマネギと煮込まれた肉。そしてすりおろしチーズがたっぷりと載っている。まるでグラタンを作る途中のようである。
しっかりと甘味が出るまで炒めたタマネギと豚肉をじっくり煮て、ちょっとの塩で味付けしたのではと推測される、シンプルかつ深い味わい。これはグラタンの途中経過というよりも、気合を入れて作る欧風カレーの序盤っぽい旨味の濃さだ。
あえてパスタソースの定番であるトマトやクリームを入れず、チーズだけで仕上げるという引き算の美学が生む独自性。この店ではママン(母)ではなく男性の料理人が作っているようだが、これがナポリの家庭の味なのだろう。
セコンドのジェノベーゼがすごかった
続いてやってきたのは、セコンド(メイン料理)に注文した CARNE ALLA GENOVESE。まさにジェノベーゼの肉である。
塊だからこそよくわかる、ホロッホロの煮込まれ具合。豚のカシラと呼ばれる部位だろうか。
これを一人で一皿全部食べることによって、味見ではなく食事として、ジェノベーゼを理解できるような気がした。
ナポリでジェノベーゼといえば、飴色に炒めたタマネギと塊肉を煮込んだ料理であり、それをパスタソースに使うだけでなく、肉料理としても楽しむのか。
私はプリモとセコンドの両方にジェノベーゼを注文したので、店の人から「ジェノベーゼ・ジャポネーゼ」と呼ばれていたかもしれない。