小出し記事 2020年7月13日

ショウリョウバッタの醤油入れを作る その1

  

バッタの季節がやってきた。

私は虫が好きな子供だったため、かつてはよくバッタを捕まえて遊んだものだ。とはいえバッタがとくに好きだったわけでもなく、

「カブトやクワガタは近所にいない。セミは採っても飼えない。バッタでも採るか」

と消去法で獲物にしていたわけである。バッタにすればいい迷惑だろう。

彼らは捕まると口から黒っぽい汁を吐き出す。ささやかな抵抗である。工作に落とし込めれば、無駄にバッタを捕まえた経験を有効活用できるんじゃなかろうか。作るのは、黒い液体つながりで醤油入れがいい。

編集部から あらすじ
編集部から連載企画を頼まれたライターこーだいは自らの経験をもとにバッタの形の醤油さしの製作に着手する。しかし「ショウリョウバッタは捕まえると黒い液体を出す」という部分に一般性はあるのだろうか。企画に理解を得るべくまずはそこから説明することにしたのだが……

変わった生き物や珍妙な風習など、気がついたら絶えてなくなってしまっていそうなものたちを愛す。アルコールより糖分が好き。

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> 個人サイト 海底クラブ

連載企画:小出し記事「ショウリョウバッタの醤油入れを作る」
ライター:こーだい

第一回:ショウリョウバッタは口から黒っぽい汁を出す
第二回:シリコンか粘土でいく
第三回:かたどり用の原型が良い感じすぎる
第四回:石粉粘土のショウリョウバッタ
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連載のはじまりは手探りのうちに

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季節感はたいせつ。

この記事は全5回の連載企画の初回である。つまり5回目の掲載日までに工作を何かしらの形にしないといけないのだが、実のところまだ製作に着手すらできていない。

なかなかのプレッシャーだ。読者にも、このヒリつくような感覚を味わってもらえたらと思う。

今回は「バッタが吐く黒っぽい汁」でピンとこない人のために現物を紹介しよう。

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バッタを見に雨上がりの河原へ

天気は激しい雨続きだが、晴れ間を見つけてバッタの好物のイネ科の植物が茂る河原にやってきた。

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と思ったら、一番当てにしていた河原は水没していた。「しょっぱなからこれかよ!」と曇天に向けて叫びたくなった。
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葉の上で休むアマガエルがいた。緑色だし跳ねるしで バッタに似ている。でも君じゃあないんだ。

 

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7月のショウリョウバッタはまだ小さい

水没していない場所を見つけてなんとか観察をはじめた。

工作のモデルにするバッタは、ショウリョウバッタだ。刀傷のようなシュッとした姿がかっこよくて、バッタのなかでは一番のお気に入り。

ショウリョウバッタは梅雨の頃に地中の卵から生まれ、秋になると産卵して死んでしまう。

今いるのは生まれたての子供なんである。

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まだ羽も生えていないお子ちゃま。
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とはいえ着実に成長しているようで、脱皮殻を発見。きれいに脱ぐもんだ。
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忍びよる手。

 

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「ふぎゃー!」と言ったりはしないが、じたばたともがくショウリョウバッタ。さあ、汁を出すんだ!

 

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しかし、なかなか汁を吐かない

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汁を吐かない。「そんなに落ち着いてて大丈夫なわけ?」と聞きたくなる。
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バッタって後ろ脚をもつとおとなしくなりますよね。こいつもなかなか汁を吐かない。

今年の春から夏にかけて、暇なときは河原で食べられる草を採って生活の足しにしていた。バッタとは、いわば同じ河原の草を食った仲なのである。

気分がのらないのかもしれないが、兄弟を助けるつもりで頑張っていただけないだろうか......。

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セリ(左)とクレソン(右)。河原の食える草はほかにもいろいろある。

指先でバッタをいじめて3分ほどたっただろうか。ようやく思いが通じたのか口元からじわっと茶色い球が湧いてきた。

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お見事!そしてこれが「黒っぽい汁」だ!

綱をわたりきった。

「よい工作を作ります......」

ひとしきり感謝したあと、野にお帰りいただくことに。恩人である。秋まで生きのびてもらえればと思う。

次回は材料をそろえて製作にかかります。

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醤油入れで思い浮かんだ図。はたして自作可能なんだろうか。

 

連載企画:小出し記事「ショウリョウバッタの醤油入れを作る」
ライター:こーだい

第一回:ショウリョウバッタは口から黒っぽい汁を出す
第二回:シリコンか粘土でいく
第三回:かたどり用の原型が良い感じすぎる
第四回:石粉粘土のショウリョウバッタ
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