特集 2021年6月21日

95%の人が、Aは赤色に見えると答えました。

文化で色がつくんだな

「ひらがな等の文字に色がついて見える」という方にお会いしたことがある。「共感覚」というものだそうだ。

他にも例えば、音に色を感じたり、味や匂いに形を感じたり…という方もいるらしい。共感覚とは、"ある1つの刺激に対して、通常の感覚だけでなく異なる種類の感覚も生じる現象を指すもの"とのことである。

自分にはない感覚だなーと思いながらも、でも、共感覚とは言わずともみんなの中にも文字に対する色のイメージってあるんじゃないだろうか、と考えた。

130名の方に協力いただき、アンケートを集計したところ興味深い結果になったので、編集部の林さんをお呼びして話をすることにした。
 

埼玉生まれ、神奈川育ち、東京在住。会社員。好きなキリンはアミメキリンです。右足ばかり靴のかかとがすり減ります。(インタビュー動画)

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共感覚、それは少し憧れる感覚

今回は数字の0~9、アルファベットのA~Gまでを対象に、文字についてまわる色のイメージがあるか、という旨のアンケートを実施した。

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こんな具合のアンケートです

まずは数字の結果から。先に集計結果を並べると以下の通り。

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ざっと見ただけでも数字ごとに色の傾向があって楽しい。1、赤いな〜

なぜこれらの数字はこの色のイメージが強いのだろうか、0から順番に掘り下げていこう。

数字の1〜5は、あるテレビ番組の影響が強いのでは

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※単位の記載を省きましたが、小数点第一位を四捨五入した%です。白が全体の34%

北向:0、白と透明で過半数を占めてますね、続けて25%が青系。
林:寒色だね。

その後ろが灰色・黒と続くのでほとんどが無彩色、という他の数字とはまったく異なる性質が見られた。0が白や透明である、というイメージはなんとなくわかる気がするなー。

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左、編集部の林さん。右が筆者の北向ハナウタでお送りします

0に負けじと極端な結果が現れたのが次の「1」だ。

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北向:圧倒的に赤が多いのがおもしろいですね。わかる気はする…
林:おれもゴレンジャーのイメージで赤は最初、というイメージがありますね。ももクロもきっとリーダーが赤だよね。
北向:そっか、そうですね。戦隊モノのイメージなんだ。

それにしても無数に色がある中で、過半数が1を赤だと感じた、という集計結果はとても興味深い。

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林:その次に多いの白と黒。0と1でモノクロのイメージなんだ。
北向:白と黒が目につくのは0と1だけですね。

数字の中で0をスタートとするか1をスタートとするか、という話なのだろうか。

アンケートでは「なぜこの文字がその色に見えるのか」という自由記述でのコメントも寄せてもらったのだけど、0に白をイメージするひとが多い中で、「1は始まりの感じなので白」と、1に無彩色のイメージを持つ方々も一定数いた。

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北向:そして2に多いのが青。
林:これはなんとなくわかるね。
北向:…でもけっこう分散されている感じもありますね。
林:もう黄色が出てきちゃうんだ。黄色かあ。
北向:黄色ってイメージないですね。
林:なんだろう、2で黄色…。

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北向:3が黄色。
林:1が赤で2が青、3が黃のイメージ…
北向:あか、あお、きいろ…あっ、チューリップの歌ですね。どの花見てもきれいだな。
林:ほんとだ、そういうのもあるのかな。
※チューリップの歌は「あか、しろ、きいろ」でした(2021/6/21 13:20追記)

多くの方の意見にあったのが、幼少期に見たおもちゃだったり数字表の並びがこの色のイメージと紐付いてるんじゃないか、というものだ。一種の刷り込みだろうか。

林:次に多い緑はなんだろう…
北向:このあたりから、3=3月とか、季節のイメージが乗ってくる傾向も見えました。
林:あー、春の明るくなってくる感じ。
北向:菜の花とか、草木が、みたいな。

林:もしかして、1月の赤って正月ですかね?
北向:なるほど!?言われてみると正月っぽいですね。赤、白、黒という並びもなんだか新年感があるような…

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1の配色がだんだん鶴のようにも見えてきた

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林:そう考えると4にピンクが多いのも納得感ありますね。
北向:これは桜のイメージが強そうです。
ピンクがここまで上位に来る数字って4だけなんですよね、他の数ではかなりピンクは少数派。

と、ここでゴレンジャーを改めて調べたところ、4人目が「モモレンジャー」であることが判明。アカレンジャー、アオレンジャー、キレンジャー、モモレンジャーの順とのことで、なんとここまで完全に数字のイメージと一致しているのだ。まじすか。

林:戦隊モノにみんなめちゃめちゃ引っ張られてるんだ!

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北向:5はかなり分かれてますね。
林:またトップに青が出てくるんだなー。
北向:なんだろう。

ちなみにゴレンジャーは5人目がミドレンジャー。ゴレンジャー神話ここに破れたり、である。

林:5の青はわからないなー。
北向:なんかピンとくるひとが読者にいればいいですね。
※ピンと来たひと教えてください

なお、今回のアンケートでは自由に色名を記入いただいた上で、集計のため一般的な名称にある程度まとめさせてもらった。

その中で「濃い青」「深緑」「濃いピンク」など”濃さ”を強調する回答が多かったのも5の特徴だ。5と濃さ。ここの関連性も掴めそうで掴めないなー。

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林:6の紫おもしろいですね。
北向:おもしろいですね~。6月のあじさい(のイメージ)なのかなあ。
林:あー、そうか。”人は色を挙げようとすると6番目に紫を出す”のかなと思いました。
北向:それもある気がしますね。

北向:青とか水色とかも含めて、梅雨のイメージかもという意見はありました。
林:雨のイメージかー。『パープル・レイン』ってプリンスの歌であったけど…
北向:プリンスは、でも梅雨は関係ないですからね。
林:ですよね。
北向:6月に雨のイメージがあるのは我々だけかも。

そう考えると、他の国の人達が数字にどんな色を思い浮かべるのかも気になる。まったく違うイメージになるのかもしれない。

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北向:7が黄色ですね。
林:また黄色になるんだ。黄色はちょくちょく上位に来るね。
北向:2、3、7あたりで強いですね。…逆に赤が強いのは1だけ。
他の数字ではほとんど赤が出てこないですね。

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改めて一覧

林:ホントだ。へー、すごいな。
北向:圧倒的に”赤は1のもの”という印象があるんですね。

北向:7に紫が多いのは謎ですけど。
林:梅雨が明けてないのかな。
北向:その次が黄緑…7って他の数字と色の傾向が違いますね。
林:黄緑ってパッと出てこないよね。夏の木の葉のイメージなのかな。

自由回答では7は”ラッキーセブン”のイメージが強い、というコメントが寄せられた。黄色の多さや、金色に見えるという意見や、今回は無効票にしたが”レインボー”なんかも見受けられた。7ってすごいテンション高いんだ。

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北向:で、8がオレンジ。
林:ここで一気に暑くなった感じですね。8月で7月よりもさらに温度が上がって。
でも赤は1のイメージだから、間を取ってオレンジ、みたいな。
北向:そっか、本来は赤のほうが猛暑のイメージですけどね。

北向:こうやって見ると、8には7を更に濃くした印象がありますね。

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並べて見比べるとおもしろい。同系色で7の黄色は8のオレンジに、7の黄緑は8の緑に置き換わっているのだ。「7と8はセット」かつ「7より8が強いぞ」という認識があるのかもしれない。

こうしてなんとなく傾向が見えてきた中でまたよくわからなくなったのが最後の9。

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北向:あ!お!?9で紫が返り咲きました。
林:9でまた紫なのか!
北向:こーれわかんないぞ。9に紫と黄色のイメージがあるんですね。
林:…その次が茶色かぁ…秋?
北向:あー、はいはい!そうしたらイチョウですかね、黄色。
でも紫がわからないですね。
林:ブドウかなあ。
北向:あー、秋の、ブドウ。ブドウ?

全体的には茶色、黒といった重たい色が多いなという印象で、やっぱり1桁の整数で一番大きいぞ、というイメージが見受けられた。

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各数字で多かった色を並べるとこんな具合。しっくりくるだろうか

▼0〜9の色を比べて見えてきたこと
・数字はその月のイメージが結びつく傾向がある
・ゴレンジャーの存在は想像以上に強い
・赤は1のイメージが強く、逆にそれ以外の数字では赤は想起せない

▼よくわからなかったこと
・2が青の次に黄色のイメージが強いこと
・5が青に見えること、また”濃く見える”ことが多かった理由
・9に紫、黄色のイメージが強いこと

ビリヤード好きは8が黒に見える

ここから自由回答を眺めていこう。いくつか根拠のヒントになりそうな意見も見られた。

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本当にみなさまご協力ありがとうございます

・ただの競馬好き
・8が黒なのはビリヤードの球かも

林:あー。ビリヤードの球を連想しましたって意見。競馬のジョッキーの色もあるんだね。
北向:あれって色が決められてるんですか。
林:枠で帽子の色が決まってるんですよね、ダービースタリオンで見たぞ。

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林:…並べてみるとそれに引っ張られている人はほとんどいないね。
北向:なるほど、と思いましたけど。

・偶数は暖かいイメージ 奇数はとんがってる
・偶数は暖色、奇数は寒色っぽい

偶数は暖色、奇数は寒色、というのはなんとなくわかる。わかるのだけど、今回相関があるわけじゃなく、むしろ1は赤、3は黄色、と奇数に暖色が続く。全体のイメージと個別のイメージに差が出るのもおもしろい。

他にもあがった意見は下記のとおり。みんないろんな場所に色の根拠があるのだな。

・誕生石のイメージ
・電子部品(抵抗)のカラーコード
・小学校の運動会での組とハチマキの色

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95%の人が、Aは赤色に見えると答えました

北向:…というのが数字だったんですけど、アルファベットもおもしろくて。

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アルファベット一覧。数字より色のイメージが統一されている?

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北向:Aのこれ、すごくないですか。
林:すごいね、95%が赤。全体的に数字より色が集中してるんだ。
北向:「Aka」のAから連想した、というコメントが。
林:「Red」じゃなくて。
北向:「Ao」でも良さそうなのにA=青にはならないんですね。なんでだろう。

数字の時も1の赤色のイメージが強かったけれど、その比ではないA=赤という圧倒的な支持だ。

これに関しては先行研究の論文があり、実は世界的にも「A=赤」というイメージが強いらしい。いわく「Apple」の「A」から赤を連想するんじゃないか、ということらしいのだけど、これだけ顕著な結果が出るのは興味深いなー。

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北向:Bはわかりやすく「Blue」の青。
林:「Aka」からいきなり英語になるんですね。
北向:緑も強いですけどねー、なんでなんだろう。

「Aka」「Blue」のように頭文字に印象が引っ張られることをプライミング効果(呼び水効果)と呼ぶらしい。へえー。

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BOØWYが『B・BLUE』を歌っていたけど、まあ関係ないだろうな

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北向:Cは黄色が多いですね。「ビタミンCのイメージ」とけっこうみんな結びついているみたいで。
林:ああそうか。
北向:C.C.レモンとかありますからね。
林:商品と結びついているのは多いかもね。

おもしろかったのが、数字の1・2・3もアルファベットのA・B・Cのいずれも赤・青・黃のイメージで並んでいるということ。自然とこの色の並びが収まりいいように感じるのだろうか。

ちなみにDは突然オレンジがトップに踊り出る。

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林:いきなりオレンジが出てくるんだ。
北向:ここも理由は不明ですね。
林:A、B、Dと暖色ばかりだ。

ほんとだ、アルファベットってあまり寒色系の印象がないかもしれない。

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北向:Eが緑というのはなんのイメージなんだろ。
林:………エコ!
北向:あぁ、なるほど、Eco!
林:エコ系のイベントとかだいたい緑色だもんね。
北向:納得。……あ、アース(地球)!
林:EarthもEだ。
北向:緑と青がEのイメージなの、見えてきましたね。

導いた答えが正解なのか、そもそも正解がある問いなのかもわからないが、ああでもないこうでもないと理由を探っていくのは楽しい。

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北向:ここで紫なんですよ、F。
林:いきなり紫が来るんだ。
北向:これがまたわかんなくて。わかんないんですけど、6番目なんですよ。
林:うん、…ああ!
北向:さっき数字のときに林さんが言っていた「6番目に思い浮かぶ色が紫」説がFでも適用されるんです。

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覚えてますか、さっき6のときに林さんが放った伏線を。おれは平静を装っていますが興奮していました

興奮する筆者はさておき、コメントでも「なぜかわからないがFは紫」という意見が多かった。

林:(コメントを眺めながら)これおもしろいですね、「Fは唇と歯で発音するから薄い色」。は~。
北向:エフ。
林:エフ。
北向:あー、なんかわかる気もするなー。Gとは音の響きが違いますね。

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北向:最後のG。Greenだけに緑が多いですが…
林:でもけっこうバラバラだね。
北向:4、5色で競ってますね。
林:Groundみたいな色が多い。
北向:ですね、茶色とか黒とか…他では全く見られない傾向がGにはあります。

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数字とアルファベットの色を並べてみるとこんな具合

▼A〜Gのアルファベットを比べて見えてきたこと
・アルファベットはBlueなど頭文字の印象に寄る(呼び水効果)
・とにかくAは赤のイメージが圧倒的に強い
・ビタミンCは黄色のイメージである

▼よくわからなかったこと
・アルファベットに暖色系のイメージがある理由
・Dがオレンジ色であること
・Fが紫であること

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国旗の話をしていて気づいたアルファベットにはゼロがない、ということ

北向:はじめに赤、青の2色が選ばれるの、色の代表、という気がします。
林:国旗も赤、青が多いですよね。
北向:多いです、赤か青のいずれかを使った旗がほとんど(筆者は国旗が好き)。
林:赤、青、黄を使った国旗とかあるんですか?
北向:ありますね、チャドとかルーマニアとか。
林:お~…今ちょっと意外なの出てきたな。
北向:そうですか??

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赤、青、黄色の国旗と言われて真っ先に思いつく国旗2選(チャドの方が少し青色が濃い)

北向:三色旗だと真ん中の色は黄色か白であることが基本的なルールだったりします(例外はあり)。
林:そうかフランスは、赤、青と白なのか。あ、イギリスもアメリカもその3色。
北向:ロシアもオランダも。
林:…そういえば、アルファベットのイメージには白がないんだ。
北向:あ、ホントだ!

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ホントだ、たしかに少ない

北向:色がついてまわるんだ。面白いですね、気づかなかった~。
林:アルファベットで白を連想するひとがいない。
北向:数字では0と1で白が多いですもんね。

アルファベットにはゼロ(白)の概念がない、ってことだ。

音に色が見えるひともいる

自由記述では「音階としてのアルファベット(C=ド、D=レなど)と色に関連があるかも」や「絶対音感ですが、音にも色があります。ド→黄色 レ→青 ミ→緑…」といった音と関連した意見が見られた。

林:音階というのはあるんだろうな~と思ったんですよね。全然自分ではわからないけど。
北向:おれも今回のアンケートでアルファベットを区切るならGまでだな、と思ったのはたぶん西洋音階に引っ張られてるんですよね。どうなんだろ、F(ファ)が紫というのはなんとなくわかる気もするけど…

コメントには想像以上に「昔からそう見えるので、そういうものだと思っていた。」「もともと色がついていた。」といった共感覚を持っているであろう方々からの意見が寄せられた。ああ、こうなると共感覚の方の話も直接聞いてみたくなる。
色と文字、興味は尽きない。


文化で文字に色がついた

他にも”教科にも色がついている”という意見が複数上がった。なんとなくわかる、国語が赤、数学が青、社会が緑…これは教科書の色に紐付いているんじゃないだろうか。

林さんが発した「文化で文字に色がつくんですね」という言葉が印象的だった。すべてを紐解くことはできなかったけれど、きっとそれぞれの文字と色に由来や意味があるのだろうと思う。

林:Dのオレンジが強いのは”デイリーポータルZ(Daily Portal Z)”のオレンジですかね。
北向:あー。
林:影響力のね、強さですね。

影響力の強いデイリーポータルZ、よろしくお願いします。

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ちなみに筆者はパワプロのせいでアルファベットがこの色に見えます
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赤色の多いこの街からは以上です

<参考文献>
横澤一彦. 色字共感覚の個人特異性と共通性. 認知神経科学, 2019,21(1) p. 32-38
長田典子. 色と共感覚. 日本色彩学会誌, 2019,43(2) p. 111-114

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