特集 2018年10月3日

インスタ映えの次は「ブレラン映え」だ!

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今や猫も杓子もインスタ映えだ。

よっぽどのものでもない限り、Instagramでフィルタを通せばアッという間にお洒落な写真に様変わり。どこかで「流されやがって」と囁かれていやしないかと怯えつつも、やはりついついやってしまう。

いいじゃん…だって、お洒落じゃん!自分にそう言い聞かせて震える指をフィルターに掛けようとしたそのとき、スマホいっぱいに現れた写真に衝撃を受けた。

な、なんだこれは!インスタ映え?いやちがう、これは…そう…あのブレードランナーのような世界観…「ブレラン映え」だ!
1984年大阪生まれ、2011年からベトナムなどの東南アジアをうろついています。今はタイ在住。ドリアンの造形が好きで、写真のように被ったり着たりしています。

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そもそも『ブレードランナー』ってなによ?

はい。ブレランとは映画『ブレードランナー』の(私の勝手な)略称です。1982年公開の作品で、近未来を退廃的に描いたその世界観は後世の映画・漫画・アニメなどのあらゆるSF作品に影響を与えたと言われ、一部では「SF映画の金字塔」との呼び声高し。

なんだよ~オタク話かよ~…と、言う前にちょっと待って!たぶん、見たことあるから!それくらい有名な世界観だから!「あれか~」ってなるはずだからこれを見て!
エブリワンセイッ、「あれか~」??(Googleの検索結果)
エブリワンセイッ、「あれか~」??(Googleの検索結果)
分かる?分かんない?まぁ、どちらでもいいか。どちらでもよくなってきた。なにはともあれ、「やたらネオンと機械だらけのガチャガチャしたくたびれた街」を舞台にした作品で、その世界観がSFフィクション界では下敷きになるほど有名だ!という訳なんですね。
そしてこれが、スマホに現れたという写真です!
そしてこれが、スマホに現れたという写真です!
まさしくブレードランナーの世界観。これをインスタ映えならぬ『ブレラン映え』と呼ばずして何と呼ぼう。というか、撮ってる本人もInstagramの投稿で「ブレードランナー風です」って言ってたし。しかもこの一枚ばかりでなく、
めちゃくちゃ撮ってる!
めちゃくちゃ撮ってる!
なんだろコレ、と気になったら聞けばいい。なにしろ友人だから。なんなら撮り方も教えてもらおう。
約束の日、あいにくの雨…。
約束の日、あいにくの雨…。

ブレラン映え、実はワールドワイドなジャンルだった。

友人に撮り方を教えてほしい旨を伝えると、時間は夜、場所はバンコクのヤワラーという中華街で、という指定を受ける。(筆者、友人ともにバンコク在住)その前に話を聞く時間がほしかったので、正確には夕方に合流した。
バンコク在住8年目の明石さん
バンコク在住8年目の明石さん
水嶋「雨になっちゃいましたね」
明石「いや、これでいいんですよ」

え、そうなの?これでいいの??…その答えについてはあとで判明するとして、まずは明石さんがブレラン映えにハマったきっかけについて聞いてみたい。
タイのお坊さんが写った巨大デジタルサイネージ。
タイのお坊さんが写った巨大デジタルサイネージ。
ブレードランナーにも登場するんですよ、こんな感じの。がっつりドット落ちしてるけど。
ブレードランナーにも登場するんですよ、こんな感じの。がっつりドット落ちしてるけど。
明石「これ、もともとはブレラン映えというか、『サイバーパンク』というジャンルなんです。ブレードランナーがそのパイオニアという訳ですが」
水嶋「あ、聞いたことあります!サイバーパンク」
明石「この世界観がもともと好きで、インスタにも『サイバーパンク(cyberpunk)』というハッシュタグを付けてアップされた写真が70万件以上あるんです」

あとで調べてみたところ、ブレラン映え以外にもイラストなどのいろんな写真や画像が出てくるが、それだけInstagramにの世界において「サイバーパンク」は市民権を確立しているようだ。
ブレラン映えると、バンコクの中華街の香港っぽさにも拍車が掛かる。
ブレラン映えると、バンコクの中華街の香港っぽさにも拍車が掛かる。
明石「世界各地にこれを撮っている人がいたけど、バンコクで有名な人は片手で数えるくらいしかいなかった。で、自分でもやってみたらうまくいったので、それからつづけている感じですね」
水嶋「へぇーーーー」

今までインスタと言えばよくもわるくも「女子まみれ」というイメージで、だからこそ冒頭で書いたような躊躇する気持ちもあったのだけど、サイバーパンクの世界観はどちらかといえば…いやいや!完全に、男子寄り。考えてみれば、そもそも写真主体のSNSにプロのカメラマンが集まることも当然なのかもしれない。

となると、世界標準ではサイバーパンク映え、「サイパン映え」と呼んだ方が言葉としては合っているのか。しかしこれだと青い海とヤシの木が脳裏に浮かんで、むしろインスタ映えに回帰してしまっている感じがあるので、ここはブレラン映えで通しておきたい。

サイバーパンクの聖地は香港と…実は、東京!

撮影本番は夜からということだが、ブレラン映えについて教えてもらいながら街を歩く。
中華街はあちこちに漢字が見られる
中華街はあちこちに漢字が見られる
よーく見ると日本語も。このアジア成分はブレラン映えにとって重要だ。
よーく見ると日本語も。このアジア成分はブレラン映えにとって重要だ。
バンコクの中心地は今でこそサイアムやアソークと呼ばれるエリアだが、とくに1999年にBTS(都市鉄道)ができる以前は中華街周辺。王宮も近いので納得だ(というより王宮が中心か)。現在、BTSは南東に延伸されつづけ、高層マンションがチェスのポーンさながら歩を進めるようにして、「市街地」は拡大の一途を辿っている。

中華街だから漢字の看板があることは当然だが、中心地の移動がたった20年前のことだと考えれば、今もなおここに日本語の看板が残っている、しかも古めの、という状況はものすごく納得できる。

明石「漢字がある方が、らしさが出るんですよ」
水嶋「ブレードランナー自体の舞台もそんな感じですもんね」
中華街の中心地に出た。
中華街の中心地に出た。
両側からせり出た漢字の看板たち!香港みたーい。
両側からせり出た漢字の看板たち!香港みたーい。
まだ夜ではないが、シャッターを切る明石さん。
まだ夜ではないが、シャッターを切る明石さん。
赤信号を気にしながらシューティング&アウェイ
赤信号を気にしながらシューティング&アウェイ
ちなみに、ブレードランナーの舞台のモデルとされた街は香港とも東京(とくに歌舞伎町)とも言われている。ブレラン映えを狙うフォトグラファーたちにとっても、そのふたつが聖地化しているそうだ。夜の歌舞伎町にいる外国人をつぶさに観察すれば、そんな人たちを見つけられるのかもしれない。見つけ方は知らない。
この天幕下とか、ブレラン映えませんか?
この天幕下とか、ブレラン映えませんか?
明石「いやー、蛍光灯はダメですね」
水嶋「ダメなんだ」
途中、通りすがりのトゥクトゥクがほんとうにしょうもない下ネタを言ってきた。
途中、通りすがりのトゥクトゥクがほんとうにしょうもない下ネタを言ってきた。
ベトナム・ホーチミンあるあるに「バイクタクシーがやたら話しかけてくる」というのがあるのだけど、バンコクのトゥクトゥクは「やたら下ネタを言ってくる」だろう(ホーチミンでもなくもないけど)。彼らの中では日本人男性グループを見ると「エロいことをしにやってきた小金持ち」と見る思考回路になっている。ただ、彼に関してはあまりに言葉がストレートすぎて笑ってしまった。「●●こ●●こ●●こ」って…。小学生でも言わんぞ。
そうして、
そうして、
夜になった。
夜になった。

そして、「ブレラン映え」の舞台は整った!

そして明石さんがいう撮影本番という、夜の時間帯。
おぉ!
おぉ!
水嶋「なんか…いい感じですね!」
明石「でしょ?雨上がりだと地面に光が反射して、いい感じになるんですよ!」
水嶋「え、じゃあ今って最高じゃないですか!」
明石「そうなんです、ベストコンディション!」

ここで今日イチ長い横文字が飛び出したあたり、明石さんの興奮ぶりが伝わってくる。
なにより、こんな楽しそうな大人の笑顔をそうそう見れるか!?
なにより、こんな楽しそうな大人の笑顔をそうそう見れるか!?
ここに来るまで降ったり止んだりしていた雨もピタリと止まった。明石さんって天候司ってるんですか?と聞きたくなるくらいのタイミングの良さだ(聞き返されそうだと思って聞かなかった)。そういえば、夜になって暗闇が強調され、改めて気づいたことがある。

水嶋「タイのタクシーってほんとにカラフルですよね」
明石「そう、それがまたブレラン映えにいいんです」
あー、そうかー。
あー、そうかー。
ブレラン映えの一例、手前の黄色いタクシーがアクセントになっている。
ブレラン映えの一例、手前の黄色いタクシーがアクセントになっている。
タイのタクシーは黄に青にピンクにオレンジととにかく色鮮やか。改めてブレラン映えの写真を見てみると、黒を基調に、ネオンに限らずいろんな原色が主張しているって感じ。そこに漢字が添えられて完成。なるほど、ブレラン映えが徐々に因数分解できてきた…。
そしてここからの明石さんの熱量がすごかった!
そしてここからの明石さんの熱量がすごかった!
明石「ブレラン映えで何が一番重要かっていうと、トゥクトゥクなんですよ」
水嶋「トゥクトゥク!あのエロオヤジ」
明石「ネオンをビカビカに光らせているので、めちゃくちゃ映えるんですね」
ほーう!確かにエグいくらいビカビカだ。
ほーう!確かにエグいくらいビカビカだ。
明石「じゃあちょっと僕撮るんで」
水嶋「はい」
「女の尻を追いかける」という表現があるが、
「女の尻を追いかける」という表現があるが、
今の明石さんの姿は、
今の明石さんの姿は、
「トゥクトゥクの尻を追いかける」という表現そのままだ。
「トゥクトゥクの尻を追いかける」という表現そのままだ。
このときに明石さんが撮った写真その1
このときに明石さんが撮った写真その1
このときに明石さんが撮った写真その2
このときに明石さんが撮った写真その2
でも確かに、街のネオンに殴り込りをかけるようにビカビカと光るトゥクトゥクのネオンもまた美しい。紫とかピンクとか、まるで夜のバンコクを象徴する怪しさ満点の配色だ。
新しいトゥクトゥクがやって来た!
新しいトゥクトゥクがやって来た!
撮ってみた!いい感じ。
撮ってみた!いい感じ。
真正面からもパシャー!
真正面からもパシャー!
ちょっと前に動いてパシャー!
ちょっと前に動いてパシャー!
…トゥクトゥクを撮るのもいいけど、今は明石さんを撮っている方がおもしろいのかもしれない。
明石さんの熱に当てられたのか、「そんなに楽しいなら私も…」と引き寄せられる観光客。
明石さんの熱に当てられたのか、「そんなに楽しいなら私も…」と引き寄せられる観光客。
一方で、当のトゥクトゥクドライバーがびっくりするほど無関心なのがおもしろくてしょうがない。きっと撮られ慣れているんだろうな。舞妓さんだ、トゥクトゥクは舞妓さん。
一方で、当のトゥクトゥクドライバーがびっくりするほど無関心なのがおもしろくてしょうがない。きっと撮られ慣れているんだろうな。舞妓さんだ、トゥクトゥクは舞妓さん。
被写体を変えたあとも、
被写体を変えたあとも、
明石さんの噛み付いたら離さない撮影スタイルと、
明石さんの噛み付いたら離さない撮影スタイルと、
その熱に当てられるように撮る人たちという構図がおもしろかった。
その熱に当てられるように撮る人たちという構図がおもしろかった。
なんとなく対峙しているふたり、能力バトル漫画のワンシーンにありそう。
なんとなく対峙しているふたり、能力バトル漫画のワンシーンにありそう。
このときに明石さんが撮った写真その1
このときに明石さんが撮った写真その1
このときに明石さんが撮った写真その2
このときに明石さんが撮った写真その2
以上!ブレラン映えを撮るコツをまとめるとこの通り。
■原色に近いネオンを取り入れる(白はNG)
■機械などいかにも無機質な物があるとよし
■漢字の看板などアジア要素を取り入れる
■木や葉などの自然物はNG
■雨上がりの反射を狙え
■トゥクトゥクは最高

それでも最後はレタッチ(画像補正)が決める

と、これで撮れるぜ!風なノリで書いておきながら、無理です。期待させたらすみません。ブレラン映えをブレラン映えたらしめる決め手は結局のところ「レタッチ(画像補正)」。インスタ映えもフィルターありきだし当然といえば当然か。カレーはいくら良い素材を使っても最後にルーを入れないと完成しないみたいなものです(違う気もする)。
明石さんのパソコンには、
明石さんのパソコンには、
「ブレードランナー」というプリセット(補正の適用ファイル)が。 よく見ると「トゥクトゥク」もいくつかある、どれだけトゥクトゥク好きなんだ。
「ブレードランナー」というプリセット(補正の適用ファイル)が。 よく見ると「トゥクトゥク」もいくつかある、どれだけトゥクトゥク好きなんだ。
レタッチの具体的な設定はちょっとマジなハウツーになってしまう(&私自身のボロが出る)ので割愛しますが、ブレラン映えする定番技法として「Pink & Blue」なるものや「Orange & Blue」なるものがあるので調べてみてください。「なんか最後に敷居高くなったな!」と思うことなかれ、今は無料でレタッチアプリ(代表的なものではAdobeのLightroomとか)も充実しているので、スマホひとつあれば撮影から補正までできるよ。
Lightroomアプリでの明石さんのレタッチ設定内容その1
Lightroomアプリでの明石さんのレタッチ設定内容その1
Lightroomアプリでの明石さんのレタッチ設定内容その2
Lightroomアプリでの明石さんのレタッチ設定内容その2
そうして前後でこうなるのです。
そうして前後でこうなるのです。

スマホを持って歌舞伎町で「ブレラン映え」よう

「(ベトナムの)ハノイで撮ってみたけど、サイバー成分が足らなくてぜんぜんブレラン映えしなかった」と、明石さん。確かに、あの街、中華っぽさは多少はあるけど、ネオンも少ないしメカメカしさに至っては絶望的だ。それならホーチミンの方がまだよさそう。

前半に書いた通り、ブレラン映えの聖地は東京(とくに歌舞伎町)ということなので、お近くの方はぜひ行ってみてはいかがでしょうか。今ならスマホで撮影からレタッチまで完結できる。今回のコツを押さえれば、ある程度のものはいけると思います。個人的にもこのレタッチは産業革命レベルの衝撃でした、ハマると記事をつくるのが遅くなるけど…。

取材協力:明石さん(Instagramアカウント
自分で撮った写真もブレラン映えに!(ちょっと品がない気もするけど…)
自分で撮った写真もブレラン映えに!(ちょっと品がない気もするけど…)
おっちゃんと犬ではどう頑張っても気持ち悪くなるだけでした。ネオンの大事さ、分かった。
おっちゃんと犬ではどう頑張っても気持ち悪くなるだけでした。ネオンの大事さ、分かった。
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