特集 2014年11月18日

雑草アズキのおしるこが別次元のうまさ

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アズキの祖先植物は「ヤブツルアズキ」といい、雑草として本州各地に生育している。

そして、秋にはごく小さな豆粒を実らせる。

今日はこのヤブツルアズキの豆を集めて、おしるこづくりに挑戦してみた。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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3年間、ヤブツルアズキを探し続けた

雑草野菜ハンターである僕は、アズキの祖先であるヤブツルアズキを、もう3年探し続けていた。
目印はこの黄色い花。おもに河原に生えるらしい。
目印はこの黄色い花。おもに河原に生えるらしい。
噂によると、関東にはあまり生えていないらしいのだ。
それでもあきらめず、茨城・千葉・東京と3都県のあちこちの河川敷を、車で自転車で徒歩で、探しに探しに、探し尽くした。


ツイッターの情報を頼りに、遠く印旛沼までも行ったが未発見。
ツイッターの情報を頼りに、遠く印旛沼までも行ったが未発見。
探索に費やした時間は100時間以上に及ぶだろう。
それでもヤブツルアズキは見つからなかった。

いいかげんあきらめて、「もう自分で育てるしかないか……」と思い、『農業生物資源研究所』の種子配布サービスで、タネを取り寄せることにした。

そしたら、申込み案内ページの「タネの情報」に、そのタネを採取したヤブツルアズキの生育場所の位置が、採取日とともにめっちゃ詳しく公開されていたのだ!
まじかよ! これまで、おれ何してたんだ!
まじかよ! これまで、おれ何してたんだ!
これまでの膨大な苦労は何だったのだろう。頭を地に垂れ、自分への呪いを吐くしかない心境である。

とにかく、ここまで情報が与えられて探せないのでは雑草野菜ハンターの名折れである。僕はすぐさまハサミを携えてその場所へと向かった。

ヤブツルアズキ、発見!

向かった先は、なんと我が家から自転車でも行けるつくば市内の某所。だらだらと近くまで走っていくと……
あ! そこのツルっぽい草の葉っぱ、かなり近い感じ!
あ! そこのツルっぽい草の葉っぱ、かなり近い感じ!
3年間、インターネットを通して脳裏に焼き付けたヤブツルアズキの姿である。見た瞬間にピンと来た。
近寄ってみると……
あった! ヤブツルアズキ、あったー!あったー!
あった! ヤブツルアズキ、あったー!あったー!
うれしい!うれしすぎる! ヤブツルアズキ、3年越しの探索の末にとうとう発見である。

思えば関東一円を数百km走り回り、一度はあきらめそうになったが、粘り強く探し続けて本当に良かった。(自宅から5kmの場所にあったのは少し悲しいが)
日当たりがいいところでは、熟し始めている実も有り
日当たりがいいところでは、熟し始めている実も有り
よし、それじゃああと2週間ぐらいしたらまとめて収穫かなー、とか、雑草野菜を相手にそんなのんきなことを考えている場合ではない。

コイツは栽培アズキと違い、熟すと自然に実がはじけて種が四方に飛散してしまうので、収穫のチャンスは一瞬なのだ!
実がはじけ飛んだあとのヤブツルアズキ。
実がはじけ飛んだあとのヤブツルアズキ。
そのため、このあと3週間にわたって週末ごとに生育地に通い続け、合計で大型レジ袋いっぱいの量を収穫した。
そのため、このあと3週間にわたって週末ごとに生育地に通い続け、合計で大型レジ袋いっぱいの量を収穫した。
そのため、このあと3週間にわたって週末ごとに生育地に通い続け、合計で大型レジ袋いっぱいの量を収穫した。
さあ、この豆粒は食えるのか、そしておしるこは作れるのか、雑草野菜の調理、開始します!
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爆散するヤブツルアズキの種

まずはこの黒いサヤから種を取るわけだが、切れ目が入るとすんごい勢いで種が四散するので、手で取るのはとても現実的ではない。
4倍ハイスピード撮影でご覧ください。
というわけで箱に入れ、熱くなる照明器具の上に置き、乾燥して自然にはじけるのを待つ。
「ししおどし」ぐらいのタイミングで「ばちん!」と響く秋の夜長。
「ししおどし」ぐらいのタイミングで「ばちん!」と響く秋の夜長。
このように楽々と収穫。縄文人に教えたい知恵。
このように楽々と収穫。縄文人に教えたい知恵。
どっさりとれた、ヤブツルアズキ、さっそくおしるこにしてみましょう

煮込みながら、ヤブツルアズキを解剖

おしるこのレシピ自体は簡単だ。アズキを茹でこぼしながら砂糖を入れて煮込み、最後にモチを乗せる。
なんか真っ黒。墨汁みたいなのできたらどうしよう。
なんか真っ黒。墨汁みたいなのできたらどうしよう。
煮込んでいる間に、ちょっとヤブツルアズキと栽培アズキを比較してみよう。
ヤブツルアズキの大きさはお米とあんまりかわらない。
ヤブツルアズキの大きさはお米とあんまりかわらない。
大きさはかなり違う。
『小豆』と書いてアズキだが、実際にヤブツルと比べると全然大きい。メタボリックな巨体である。
色は黒いが、たぶん濃いだけで、色素の種類は同じだと思う。
ちなみにサヤの違いはこんな感じ。右の栽培アズキが超大きい!
ちなみにサヤの違いはこんな感じ。右の栽培アズキが超大きい!
元が同じと信じられないほどのサイズの違い。

アズキの栽培は縄文時代にはすでに行われていたらしいが、何千年もかけて、祖先たちが品種改良してここまで大きくしてきたのだと思うと、本当に頭が下がる。

さて、ヤブツルしるこは煮上がっただろうか。
うわーーー! 雑草アズキ、びっくりするぐらいキレイに煮上がってる!
うわーーー! 雑草アズキ、びっくりするぐらいキレイに煮上がってる!
すっっげえ! すげえ!
全っ然ふつうに、ふっくらと煮上がってる!
色もいい感じのむらさき色!
香りも普通にアズキの香りで、雑草をうかがわせるワイルドさは一切なし!
こんなの、どう考えてもうまいパターンのやつじゃないか。さっそくモチを入れて食ってみる。
う……うっまい! これ、うっまいーーーー!!
う……うっまい! これ、うっまいーーーー!!
うまい、ヤブツルしるこ、超絶うまい!
もう、うまくて本当に驚く。
普通のおしること何の変わりも無い。
芳醇な豆の香り、ぷちぷちした皮の歯ごたえ、モチへの絡みつき。ヤブツルしるこ、シルコ100%の完全完璧なおしるこだ。
これまでの雑草野菜シリーズの「食えなくはない」という味とは別次元
これまでの雑草野菜シリーズの「食えなくはない」という味とは別次元
こんなにうまいものが雑草で生えているなんてすごい。もはや市販のアズキを買う理由が見当たらない。

そりゃ古代人も栽培しようと思うさ、驚きだよ、ヤブツルアズキ!

ヤブツルしるこ、超うまい

3年がかりで探し続けたヤブツルアズキだったが、その苦労に見合う美味しさで、本当にむくわれた気持である。パチンとはじけて飛ぶのもかわいい。
ただ、食べるにあたって注意がふたつ。

1.あまりに美味しいせいか、野生環境ではかなりの割合が虫食いに遭ってます。採集には注意して!

2.たまに、いくら煮ても全く火の通らない異様に頑丈な粒があります。あきらめましょう。


さあ、注意は以上です! みんなも縄文人気分で、秋は野生アズキ採集に向かおう!
累計5時間煮ても火が通らなかった3粒。頑丈。
累計5時間煮ても火が通らなかった3粒。頑丈。
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