特集 2014年10月21日

叔父の遺した海外コインに打ち震える

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むやみやたらに買いだめをする叔父のことは前に話した。(→この記事

そんな叔父の遺品の中で唯一まともと言える海外コインのコレクションが、長年の遺品整理の末にとうとう発見された。
その美しさは、目を見張るものだった。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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叔父の遺品のどうしようもなさ

叔父と祖母が亡くなり、子供の頃に住んでいた家に誰もいなくなった。誰が住む予定も無い。

あとはただ、遺品を整理するのみである。
70年分の歴史が詰まった押し入れ。
70年分の歴史が詰まった押し入れ。
しかし、叔父は本当に人生で花が咲かなかった男で、遺品はほとんどガラクタである。

最近、蔵書を整理したのだが、残した本の大半は「金持ちになる方法」か、中国と韓国の悪口の本だった。
この手の本が段ボール何十箱とある。
この手の本が段ボール何十箱とある。
僕はわかる。あの人は絶対読んでない。買って満足なのだ。
僕はわかる。あの人は絶対読んでない。買って満足なのだ。
この心のすり減る作業を僕が黙々とこなせたのも、ある一つの夢があったからである。それは叔父の海外コイン・コレクションを見つけることだった。

思い出の海外コイン・コレクション

小学生だった頃、僕は叔父の集めていた海外コインが大好きだった。
この白い紙製のケースが記憶のキーポイント
この白い紙製のケースが記憶のキーポイント
無職だった叔父がどう集めたのか、古いコインをアルバム一杯に持っていて、折りに触れては見せてもらっていた。

アルバムの中にあるコインの静かな錆びと輝きは、遠い世界からのメッセージのようでもあり、何時間でも眺めていた記憶がある。本当に大好きだった。

とうとう発見、叔父のコイン集!

というわけで万事に差し置いて探していたコインだが、これがいくら整理しても見つからない。

「生活に苦しくなって売っちゃったのかなあ」とあきらめていたのだが、このあいだ、奥の押入れの段ボールからとつぜん発見された。
うおお! この白い紙ケース! あのコインたちじゃないか!!
うおお! この白い紙ケース! あのコインたちじゃないか!!
25年ぶりの再会である。嬉しさのあまり、発見されてすぐの写真を忘れたが、まあこんな感じで突っ込まれていた。

ちょっと何枚か見てみよう。
チベットのコイン。仏教的な何かが刻まれている! かっこいい!
チベットのコイン。仏教的な何かが刻まれている! かっこいい!
西サモア。ドリアン的なフルーツが描いてある! かっこいい!
西サモア。ドリアン的なフルーツが描いてある! かっこいい!
かっこいい。とんでもなくかっこいい。

36歳の今、人生経験を積んで再会すると当時では気づかなかった魅力がつぎつぎと見つかる。

こんなにかっこよかったのか、海外コイン!
ざっと地域別に整理。だいたい300枚ぐらい。
ざっと地域別に整理。だいたい300枚ぐらい。
整理してみて気づいたのだが、紙ケースやビニールが痛んでいるものがかなりある。
ビニールが破れて飛び出しちゃった、スリランカのコイン。
ビニールが破れて飛び出しちゃった、スリランカのコイン。
叔父が興味を失ってから、もう何十年も放置されていたのだろうか。サビが進んだものも多い。
そこで僕は決意する。

「このコインを少年の頃に見た状態へ戻してあげよう」

こうして、コレクション復活への試みが始まった。
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はじめての紙ケース封入

というわけで、まずは紙ケースを注文する。
サイズは5種類。全種類注文した。
サイズは5種類。全種類注文した。
コイン収集界では基本のケースのようで、50枚入りを安く売っている。まずはこの5種のケースの中から、コインのサイズに合うケースを探す。
スリランカのコインにはNo.2がベストフィット
スリランカのコインにはNo.2がベストフィット
続いて二つに折りたたみ、周りをホッチキスで留める。
続いて二つに折りたたみ、周りをホッチキスで留める。
大切なものを丁寧に扱う作業が楽しい。

中でもホチキスするときの、外気から切り離して封じる感じが特にいい。子供の頃、マイ宝箱に光る石をそっとしまった瞬間のような、そんな嬉しさがある。
あとは余白に、コインの収集データを調べて書き込む。
あとは余白に、コインの収集データを調べて書き込む。
これで完成だ。1976年の2ルピー。
丸い7角形のデザインがかわいい。
これを専用のアルバムにしまっていく。

この地味くさい作業が始めると本当に楽しく、毎日仕事から帰ってからチビチビと作業を進め、1週間ほどでコレクションを昔の状態に戻すことができた。
天国の叔父さん、これ、めちゃくちゃ面白いですね。
天国の叔父さん、これ、めちゃくちゃ面白いですね。
5年にわたる夢が達成され、心の底から満足である。コレクションを手入れする楽しみを何十年ぶりかに味わうことができた。叔父さん、いいものをありがとう。

そこでせっかくなのでさらに4枚、特に心の震えたコインを紹介したいと思います。

特選海外コイン、4枚紹介!

西ドイツ、5マルク、1970年
西ドイツ、5マルク、1970年
ドイツのコインには全般的にワシが色んなデザインで描いてあるが、このワシは羽の広がりと口の開きが特にいい。
舌、にょろ~ん。
舌、にょろ~ん。
のどの奥から必要以上に突き出た舌と、つらそうな顔。
当サイトのライター、べつやくさんの描く絵にも少し似てる気がする。
ブータン、1/2ルピー、1835年
ブータン、1/2ルピー、1835年
コレクションの中でもずば抜けて古銭感があるこのコイン。さぞかし価値が高いのだろうと思わせて定価はたったの600円。発行枚数がかなり多いらしい。
ドラクエ2の紋章みたいなの彫ってあってかっこいいのに。
ドラクエ2の紋章みたいなの彫ってあってかっこいいのに。
もしかして価値上がってたりしないかな、とオークションサイトで調べたら、107円でどさどさ出回っていた。

インターネットは人から夢を奪う。
エジプト、20パラ、1862年
エジプト、20パラ、1862年
正体不明だが抽象的でかっこいい何かが描いてあるこのコインは、オスマン帝国下のエジプトで発行されたものらしい。一番下の模様が額面とのこと。
裏面も全く解読不能。
裏面も全く解読不能。
エジプトは発行されたコインの種類がやたら多く、カタログで500枚近く眺めてやっと正体を突き止めることができた。

その結果、撮影したこの向きが上下逆だったことが分かった。悔しいからもう、このまま載せる。
チベット、10スラン、1949年
チベット、10スラン、1949年
最後にもう一度チベットの登場だ。

チベットのコインは仏教文化の香り漂うデザインがめちゃくちゃかっこいい。中国の一部になった1950年から独自通貨が発行されていないのがもったいなさ過ぎる。
裏面も最高に密教的なデザイン!
裏面も最高に密教的なデザイン!
山脈と滝が生命力にあふれた曲線で描かれてるのも痺れるし、中央にいる炎のようなオーラをまとった神秘的な生物も、よく見るとちょっとマヌケでかわいい。

この一枚、コレクションの中で最高のお気に入りである。

叔父さん、しっかりと大切に手入れします

コインの正体が分からないときは『Colnect』という収集サイトで調べられるのだが、このサイトもめちゃくちゃ面白い。古今東西、モロッコからナチスドイツのコインまでびっちり収集してある。

しかもオークションサイトへと、そのままリンクが貼ってあるので、うっかり買いそうになる。

しかし、こんな面白いもの、うっかり足を踏み入れたら終わりなのが分かっているので、今はぐっと寸前で踏みとどまっている。
日本の500円記念硬貨コレクションあるよ!
日本の500円記念硬貨コレクションあるよ!
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