特集 2013年9月27日

あいかわらずなげかわしい「共食いキャラ」

そりゃ愁いを帯びた表情にもなろうというものだ
そりゃ愁いを帯びた表情にもなろうというものだ
「職業に貴賎はない」という言葉があるが、ほんとうだろうか。「共食いキャラ」見かけるたびにぼくは疑問に思う。

仲間を食えと誘う役目。時には自分で食べちゃったり、調理すらしたりもする。なげかわしい。

ブタの世界にSNSがあったら炎上間違いなしの職業「共食いキャラ」。改めてその実態に迫りたい。ああ、なげかわしい。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

前の記事:コインランドリーってなんかすてきじゃない?

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この世からかわいそうな共食いキャラがいなくなるまで!

「共食いキャラ」とは飲食店や肉屋の店頭で客引きをするブタやウシ、トリなどのこと。たとえばトンカツ屋でブタのコックさんが「おいしいよ!」とか言っていたりするあれだ。おいしいよ、じゃねえよ、と思う。

この「共食いキャラ」について、ぼくはこれまでDPZで何回か書いてきた。
長年の観察から、彼らも好きこのんで仲間を売っているのではない、とぼくは見ている。あれは人間にやらされているのだ。「いやなら、べつにやってもらわなくてもかまわないんだけど、その時は君も…な?わかるだろ?」とか言われてるに違いないのだ。なんという悲劇!許すまじ、人間。
どこかぎこちない笑顔に、仲間のダシが利いたラーメンを売ることへの躊躇が感じられる。と思う。
どこかぎこちない笑顔に、仲間のダシが利いたラーメンを売ることへの躊躇が感じられる。と思う。
もう真顔である。
もう真顔である。
酔いつぶれでもしなければやっていられない。
酔いつぶれでもしなければやっていられない。
こうやってこれまでことあるごとに「共食いキャラ」の記事を書き続けてきたのも、勢い余って本まで作ってしまったのも、すべてはこのような悲劇をなくすためである。これは社会運動なのだ。

しかしいつまでたっても世の中から共食いキャラがいなくならない。本も全然売れない。すべてはぼくの力不足ゆえである。なので、今回改めて訴えかけたい。こんなにゆかいな、じゃなかった、なげかわしいキャラがいるのだということを!
やぶれかぶれで踊り出す。でも真顔。そしてこの「ごさろ」という店名は近くに五差路という名の交差点があるからなのだが、その交差点なんと実際には六差路!
やぶれかぶれで踊り出す。でも真顔。そしてこの「ごさろ」という店名は近くに五差路という名の交差点があるからなのだが、その交差点なんと実際には六差路
看板だけではない。こうやってメニュー上でやらされたりもしているので気が抜けない。そしてやはり真顔で踊る。
看板だけではない。こうやってメニュー上でやらされたりもしているので気が抜けない。そしてやはり真顔で踊る。
重ねてメニュー上でブタ推し。「元気をとりもどすには最高の食材」とブタに言わしめる人間の所行。
重ねてメニュー上でブタ推し。「元気をとりもどすには最高の食材」とブタに言わしめる人間の所行。
こちらもメニューで。あきらめ顔。ああ。かわいそう…
こちらもメニューで。あきらめ顔。ああ。かわいそう…
これらの事例は、べつに共食いキャラを探し求めた結果ではない。とくに追い求めなくても、日本という国にはいたるところにこの職業に就いている動物がいて、気がつけばぼくのハードディスクはこれらでいっぱいなのだ。ああ、なげかわしい。

そして、上のキャラ群を見ていただければわかるように、やっぱりブタが「キング・オブ・共食い」なのだ。
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生まれ変わるときは、ブタになるのは避けたい

ウインク。もはや忸怩たる思いも感じられない。しかしぼくもきっと自分が助かるためなら、これぐらい言われるがままにやってしまうだろうな、と思う。誰が彼(彼女?)を責められよう。
ウインク。もはや忸怩たる思いも感じられない。しかしぼくもきっと自分が助かるためなら、これぐらい言われるがままにやってしまうだろうな、と思う。誰が彼(彼女?)を責められよう。
ほんとうにブタの共食いキャラは多い。人間の言うがままになりやすい性格なのか。そのへんは定かではないがキャラ映えしがちな容姿であることが災いしているのは間違いないと思う。

特徴的な鼻の造形、看板代わりにに最適な豊満なボディ。目を引くピンク色。キュートな尻尾。

人間は家畜としてブタを品種改良してきたが、同時にキャラとしても成熟させてきたのだとおもう。
ボディに店名や料理名を書かれてしまうのは共食いブタの宿命。かわいいかわいそう。
ボディに店名や料理名を書かれてしまうのは共食いブタの宿命。かわいいかわいそう。
たぶん勝手に書かれちゃったのではないかと思わせる表情。
たぶん勝手に書かれちゃったのではないかと思わせる表情。
看板ボディの発展形。「と」に無理がないか、とかそういうことではなく、かわいそう。
看板ボディの発展形。「と」に無理がないか、とかそういうことではなく、かわいそう。
もうあきらかに人間の悪のりである。そこにほんとうに
もうあきらかに人間の悪のりである。そこにほんとうに "LOVE" は存在するのか。
これを共食いキャラと見るべきかどうかは共食いキャラ界でも意見の分かれるところだが、ポイントは「鼻さえあればブタに見える」というブタのキャラ立ちしやすい体質であることを遺憾なく表現している点だ。というか今気がついたが、この店もしかしたらブタの料りだしていないかもしれない。なんでも共食いキャラに見がちなぼくの早合点か。そうであってほしい。
これを共食いキャラと見るべきかどうかは共食いキャラ界でも意見の分かれるところだが、ポイントは「鼻さえあればブタに見える」というブタのキャラ立ちしやすい体質であることを遺憾なく表現している点だ。というか今気がついたが、この店もしかしたらブタの料りだしていないかもしれない。なんでも共食いキャラに見がちなぼくの早合点か。そうであってほしい。
帽子をかぶってもなお歴然とブタ。隠しようのない特徴ある鼻がうらめしいことだろう。
帽子をかぶってもなお歴然とブタ。隠しようのない特徴ある鼻がうらめしいことだろう。
ふつうにスプーンでいいじゃないか。そこまでしてブタをフィーチャーしたいか、と人間のキャラへの欲深さを感じる事例。
ふつうにスプーンでいいじゃないか。そこまでしてブタをフィーチャーしたいか、と人間のキャラへの欲深さを感じる事例。
笑顔が痛々しい。
笑顔が痛々しい。
仲間の油分がたっぷりと入った缶から飛び出すブタ。なにを現しているのか。しかし、いくら見ても、その黒い瞳にはなんの表情も窺えない。人間の業の深さを突きつけられている気持ちになる。加熱しすぎると引火します。
仲間の油分がたっぷりと入った缶から飛び出すブタ。なにを現しているのか。しかし、いくら見ても、その黒い瞳にはなんの表情も窺えない。人間の業の深さを突きつけられている気持ちになる。加熱しすぎると引火します。
このように、ブタの悲劇は挙げていけばきりがない。ああ、なげかわしい。

しかしブタもいつまでもおとなしくしているばかりではない。時には抵抗したりもする。
前回紹介した</a>、まさかの他種族を道連れにする挙に出たブタ。
前回紹介した、まさかの他種族を道連れにする挙に出たブタ。
今回は、なんとトリまでもを道連れに。びっくりはこっちだよ。
今回は、なんとトリまでもを道連れに。びっくりはこっちだよ。
「びっくり」ってこっちのセリフだよ、と言いたくなる、その道連れにされたウシとトリの共食い動向も見ていただこう。ああ、なげかわしい。
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あいかわらず緊張感に欠けるウシ

ウシ側もびっくりしてました。
ウシ側もびっくりしてました。
全体的に言われるがままの感じがにじみ出て、かわいそうなブタだったが、一方ウシはと言えばなんだかのほほんとしている。
なんかコック長を背に乗せて楽しげにギャロップ。
なんかコック長を背に乗せて楽しげにギャロップ。
舌なめずりでウインク。あまつさえ、ほほまで赤らめて。だいじょうぶか、しっかりしろ。
舌なめずりでウインク。あまつさえ、ほほまで赤らめて。だいじょうぶか、しっかりしろ。
ブタと同じようにボディを看板にされてしまった例。でもなんか緊張感に欠けるんだよなー。
ブタと同じようにボディを看板にされてしまった例。でもなんか緊張感に欠けるんだよなー。
「まってるも~」とか言ってるし。
「まってるも~」とか言ってるし。
どうもブタに比べ、同情する気が失せる。共食いキャラの悲劇を広く世に訴えることを使命にしている身としてはお恥ずかしい限りだが。でもなあ、なんか、ウシなあ。

子を売る悲劇・トリ

3大共食いキャラの最後のひとつ、トリはどうか。
自分を美味しく食べるための薬味・ネギを背負わされる、というのがなんかすごくかわいそう。
自分を美味しく食べるための薬味・ネギを背負わされる、というのがなんかすごくかわいそう。
これは首を落とされた瞬間と見るべきか。たまにこういうリアリズム系共食いキャラがいるのも、トリの特徴である。
これは首を落とされた瞬間と見るべきか。たまにこういうリアリズム系共食いキャラがいるのも、トリの特徴である。
同情度合いでいうと、トリはブタとウシの間ぐらいに位置するのだが、特筆すべきかわいそうポイントがある。それはタマゴの存在である。
子を売るという最大の悲劇。一見おだやかに見えるその表情の奥に言いしれぬ悲しみを感じずにはおれない。
子を売るという最大の悲劇。一見おだやかに見えるその表情の奥に言いしれぬ悲しみを感じずにはおれない。
もうほんとなんかいたたまれない。
もうほんとなんかいたたまれない。
仲間を売るという行為の中でも、未成年を対象にしたものほど痛々しいものはない。

でもあれか、無精卵だからいいのか。いいのか?いいのかなあ、どうかなあ。
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ほ乳類以外はあまり悲劇的ではない。と思う

過日「すしやの『し』とうなぎやの『う』</a>」で見たうなぎのかたちをした「う」。これは実は共食いキャラなのではないかという懸念が。
過日「すしやの『し』とうなぎやの『う』」で見たうなぎのかたちをした「う」。これは実は共食いキャラなのではないかという懸念が。
これなんかはもう完全に共食いキャラだと思う。
これなんかはもう完全に共食いキャラだと思う。
前回紹介したが、実は日本で最も高い共食いキャラ出現頻度を誇るのはたこ焼き屋である。しかし、正直あんまりタコには同情できない。こんな差別はよくないとは思うのだが。すまん。誰に謝っているんだかよく分からんが、すまん。

その理由はやはり「進化系統的に人間に近いものにほど『共食い感』を感じる」というセオリーにあるだろう。無脊椎動物よりも脊椎動物、魚類よりもほ乳類、というわけだ。

そういう意味では上のようなウナギにはあまり共食い感を感じない。以下のようなものたちもそうだ。
コーヒー豆の共食いキャラとはめずらしい。しかし、あんまりかわいそうじゃない。コーヒー好きだし。いや、それを言ったら肉も好きだけどな。
コーヒー豆の共食いキャラとはめずらしい。しかし、あんまりかわいそうじゃない。コーヒー好きだし。いや、それを言ったら肉も好きだけどな。
もっとも人間から遠いものの代表だが、さすがにこうなるとかわいそう感がただよう。表情の問題か。というか、これほんとに客引きとして効果あるのか。
もっとも人間から遠いものの代表だが、さすがにこうなるとかわいそう感がただよう。表情の問題か。というか、これほんとに客引きとして効果あるのか。
これがほんとうに共食いキャラなのかどうかは難しいところだ。原料は鯛ではないのだから。かつて「およげ!たいやきくん」が受け入れられ流行したのも、ここらへんのあいまいさが功を奏してのことだったのではないかと思う。ほんとか。
これがほんとうに共食いキャラなのかどうかは難しいところだ。原料は鯛ではないのだから。かつて「およげ!たいやきくん」が受け入れられ流行したのも、ここらへんのあいまいさが功を奏してのことだったのではないかと思う。ほんとか。
館山駅前の鯨料理のお店にて。ほ乳類ではあるのだが、あまり共食い感がない不思議。愛護団体に怒られちゃうかしら。
館山駅前の鯨料理のお店にて。ほ乳類ではあるのだが、あまり共食い感がない不思議。愛護団体に怒られちゃうかしら。
このように、ひと口に「共食いキャラ」と言ってもその内情は様々である。 最後に「食べるわけではないけど、これも共食いキャラか…!しかももしかしたら今までの中で一番かわいそうかも!」という事例をご紹介して終わりにしよう。
かわいい!かわいそう!でもかわいい!でもかわいそう!
かわいい!かわいそう!でもかわいい!でもかわいそう!

見つけたら通報ください

なかば本気でこの世からなくなるまで、この共食いキャラ収集は続けようと思ってます。見つけたらご一報を。
共食いトリなのだかどうなのだかずっと悩んでいる事例。なんでも共食いキャラだと思いがちななぼく。
共食いトリなのだかどうなのだかずっと悩んでいる事例。なんでも共食いキャラだと思いがちななぼく。

【告知】 2013年10月6日「マッピングナイト5」やります

おかげさまで毎回大好評の「マッピングナイト」をひさしぶりにやります。5回目。いつもの話し出したら止まらないメンバーに加え、今回は「逃げ地図」の羽鳥達也さんも登壇!もちろんカルチャーカルチャーにて。来る2013年10月6日の18時からです。詳しくは→こちら

ぼくは先日記事にしてとても反響の大きかった「マンションポエム」についても話そうと思ってます。
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