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ちしきの金曜日
 
共食いキャラ・ブタさんスペシャル

仲間を食えと招くブタさん

  いぜん「共食いキャラクターを鑑賞する」という記事を書いたが、その第二弾をおとどけしたい。

 すでに「韓国編」もお届けしており、クラブ活動も行ったことからもうすうすお察しとは思うが、この共食いキャラ収集はぼくのライフワークになりつつある。気がつけばパソコンの中の写真フォルダは彼らで一杯だ。定期的にはき出さないとなんか呪われそうだ。

 今回はそのハードディスクいっぱいの共食いキャラコレクションの中から、ブタモチーフのものをご覧いただきたい。

 供養の意味も込めて、お付き合いください。

大山 顕



にっこり舌なめずり。目つきと体の描写にやや狂気が見え隠れするが、だいじょうぶか。

共食い界のキング・ブタさん

 共食いキャラとは食べ物やさんなどの店頭でお目にかかれる、キャラクター化された食材のこと。トンカツ屋のブタさんのコックなどが有名だ。

 自らを食べろ、と呼びかけなければならないつらい任務を担わされた哀れな彼ら。ぼくの長年の鑑賞経験からすると、その悲哀を最もよく表しているのはブタさんだ。ウシ、トリの共食いキャラも多数存在するが、ブタさんがいちばん哀れに見える。

 まずは破顔一笑、危機感の薄い共食いブタさんたちをごらんいただこう。


大喜びで調理する気まんまんのブタさん。迷いのない笑顔が、悲しい。

「ケミカルフリー」の呼び声も高く、万全の安心体制で自らを食せと言う、スーパー乳酸菌育ちのブタさん。キャップの初々しさが、悲しい。

もつ焼きやさんの看板の共食いキャラたち。ブタさんが大きくフィーチャーされている。マントと星は、食された後の昇天の表現か。

ウィンクだよ。しかもハチマキ。下駄履きでガッツポーズ。自らの三段バラを一人前950円で勧めているということが分かっているのだろうか。

こなれた案内手つきでビールをついで豚足を食えと勧めるブタさん。というか、コック帽からするに彼が仲間を調理しているのか。この裏切り者!しかも「コラーゲン駐豚地」というダジャレまで。迷いのない笑顔、許すまじ。

一方こちらは、あきらかに自らの状況が分かっていなそうなブタさん。こういうのが一番切ない。なんか可愛い描写だし。

こちらも何をやらされているのか分かっていなそうなブタさん。というか、焼き鳥の店じゃん!なんで豚?

ウインクで舌なめずり。育ちがいいとはとても思えない。というか、その舌はいったいどこから出ているのか。

どうだろうか。特に後半2つの純朴そうなブタさんなどは涙なしには鑑賞できない共食いっぷりだ。

おそらく、まさか自分や仲間を食わす店だとは思わずに客寄せをやらされているのだろう。「いいからいいから。表でお客さん呼んでくれればそれでいいから」とか言葉巧みに。「資格もいらない、簡単なお仕事です!」とかそういう募集だったか。

中にはコック帽で仲間を調理する裏切り者もいるが、全体的にブタさんはなんかかわいそうだ、といつも感じる。

一方、自らの境遇を悟ったかあきらめ顔のブタさんもいる。

 

とっちゃんぼうやっぽいブタさん、どことなくあきらめ顔。

あきらめ顔のブタさんたち

満面の笑みで危機感の薄いブタさんもいれば、「どうやらぼくは仲間を食えと言わされているらしい…」と感づいたか、妙に神妙な表情の共食いブタさんもいる。

できればこんな仕事は辞めたい。でもこの不況下ほかに雇ってくれそうなところもない。オレだって家族を養わなければならないし…といったところか。書いててほんと、切なくなってきた。

このあきらめ顔系ブタさんにこそ、共食い界におけるブタさんのかわいそうな感じがよく表れていると思う。心して鑑賞されたし。


「嗚呼…」という心の声が聞こえてくるようなあきらめ顔の共食いブタさん。がんばれ、と励ましてよいものかどうか。

あきらめ顔と通り越して、やさぐれの域に達しつつあるブタさん。精神状態が、描写のあやうさに表れているとみた。

ことさら「豚足」を赤文字で強調するお店のキャラは、あきらめ顔のこのブタさん。あまつさえ、蝶ネクタイ着用。この悲哀に満ちた表情はどうだ。

 なんか、しめっぽくなってしまった。すまん。

 気を取り直して、共食いキャラ収集をはじめたいと思っている方に、共食いブタさんが頻出するお店をお教えしよう。それは、ラーメン屋さんだ。


3Dで迫り来る、共食いブタ。こいつも裏切り者タイプか。腰を手に。憎たらしい!

トンコツラーメン屋に、共食いキャラあり。

 いつも思うんですが、ラーメンってなんで「道」になってしまうんでしょうか。店員さんが作務衣なんか着ちゃったりして、なんか気合いの入った大きい声出すし、「こだわり」を大事にするとか、なんか全体的にラーメン屋さんってほっとくと「ラーメン道」になる気がする。食としてそんなに歴史ないのに。ポスターとかでもハチマキして腕組みしている店主の写真とか多いし。黒バックに燃え上がる炎とか。

 話がそれたが、ラーメン屋さんには共食いブタさんがかなりの確率でいる。もちろん豚骨がウリのラーメン屋さんに限るが。

個人的には「ラーメン道」系のお店の店頭に共食いキャラがいたりすると複雑な気分になる。「道」のまえに、あのキャラをどうにかしろ、と。かわいそうじゃないか。

 


上の3D共食いブタさんの横には、ブタさんのぬいぐるみがぶらさがっていた。

暖簾にアップリケの共食いブタさん。手作りのようだが、作っている間に「よく考えたらこれ共食いじゃない?」って思わないのだろうか。

これは個人的にかなり気に入っている共食いブタ。これもコックさんらしいがあまり嫌な感じがしない。なぜならコックでありながら、自らどんぶりの中へ。いつでも食われる覚悟であることを示していると解したい。ただ、目を見るとあんまり何にも考えていない感じもする。

見どころはそればかりではない。じつは、このラーメン屋、ニンニクの共食いキャラもいるのだ。不敵な笑いのニンニク。ブタさんに比べ、みょうに垢抜けたタッチがあまり好きではない。

こちらは大阪で出会ったとあるラーメン屋さんの店内。壁一杯に大きなどんぶりに入ったラーメンと、そこから立ち上る謎の物体の絵が。

なんと、そのひとつひとつが、ブタ。こうまでして共食いキャラを表現したいその取り憑かれ方は何なのか。これで食欲が増すとお考えか。ともあれぼくの知る限り一店舗では最多の共食いブタ記録である。

次ページでは共食いキャラの名店3店舗をご紹介しよう。

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