特集 2017年10月19日

祭りの時に飾られるあの花は地域限定

あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。
あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。
祭りの時期、商店や民家の軒先に飾られるピンクの花。

静岡出身・静岡在住の筆者にとっては当たり前過ぎて関心を持つことすらなかったが、以前「さわやかのハンバーグを通っぽく食べる」という記事の取材で編集長の林さんが静岡に来た時物珍しそうに写真を撮っていて、初めて他地域にはないものだと知った。

なぜ我々はピンクの花を飾るのか?
飾っている家と飾っていない家の違いは?
そもそもこの花の名前は?

祭りの時期のみ現れるため一年待ち、今年、満を持して調査した。
1988年静岡生まれ・静岡在住。平日は制作会社勤務、休日は大体浜名湖にいる。
ダイエット目的でマラソンに挑戦するが、練習後温泉に入り、美味しいものをたらふく食べるというサイクルを繰り返しているため、半年で10kg近く太る。

前の記事:フォッサマグナが境目になる物事の多さよ


ピンクの花を見に行こう

冒頭で「なぜ我々はピンクの花を飾るのか?」などと書いたが、実はわたしが住んでいる地区には祭りがない。市民のほとんどが祭りに熱狂している中、スンと澄ましたように静かに日常生活を送っている。

本当はみんなのように祭りに参加したい。

祭りに参加して、缶チューハイ片手に仲間と肩を組んだウェイウェイ写真を撮り、facebookに上げていいねをもらいたい。

しかし、なぜか祭りがない。
理由はわからない。

母はわたしが小さい頃、坂が多い住宅街で、屋台が下り坂を転げ落ちた時ブレーキが利かず坂の下にある民家に突っ込むからだと言っていた。

わたしは今もそれを信じ、祭りのない切なさをそっと封じ込めている。

前置きが長くなったがつまり何が言いたいかというと、わたしの家にはあのピンクの花がない。存在自体は知っているが、どこでどう入手するのかもわからない。

そこでまず駅前商店街に繰り出し、改めてピンクの花の存在を確認することにした。

駅前商店街はピンクの花畑

ピンクの花は商店、民家、ジャンル問わず飾られているが、やはり商店に飾られている割合の方が多い。

各地域の屋台が集結する駅前商店街は、ピンクの花が飾られていない店の方が少ないと言ってもいいくらい、ピンクの花がそこら中に飾られている。
どこもかしこもピンクの花だらけ
どこもかしこもピンクの花だらけ
休業日の店にも飾られている
休業日の店にも飾られている
ファミリーマートにも
ファミリーマートにも
ミニストップにも
ミニストップにも
当たり前すぎて説明を忘れていたが、このピンクの花は実際の花ではない。

薄い和紙のようなもので作られた、紙製の花である。

くきに見立てた緑の部分は竹ひごでできていて、ひとつひとつ手作業で作られているようだ。

扇形に広げ軒先に飾るのが基本スタイルだが、スペースの都合上独自のアレンジを施し飾っている店もいくつか見受けられた。
スマートなまとめ型
スマートなまとめ型
メーターボックスを利用した並列型
メーターボックスを利用した並列型
秋風になびくのれん型
秋風になびくのれん型
割とガチな鉄アレイで固定してある突き出し型
割とガチな鉄アレイで固定してある突き出し型
庭の雰囲気を壊さず祭り感を醸し出すことができる、ガーデニング一体型
庭の雰囲気を壊さず祭り感を醸し出すことができる、ガーデニング一体型
ちょうちんとセットで飾られている例も多く見られた。
ちょうちんの台がピンクの花を飾る前提で作られている…
ちょうちんの台がピンクの花を飾る前提で作られている…
ピンクの花ばかり紹介しているが、通りではにぎやかなお囃子とともに屋台が引き回され、祭りの熱気が最高潮に達している。
あまり屋台に目を向けなかったのは祭りがある地区に嫉妬しているから…ではない、と言いたい
あまり屋台に目を向けなかったのは祭りがある地区に嫉妬しているから…ではない、と言いたい
祭り、みんな楽しそうだな
祭り、みんな楽しそうだな
はっ!!
はっ!!
ピンクの花、いっぱい!!
ピンクの花、いっぱい!!
屋台のうしろをくっついて歩く人が持ってる旗的なものにこれでもかというくらい刺さっていた(きっとこれを持ってる人はそこそこ偉い人だし役割の名前や物の名前もあるんだろうが、いかんせん祭りがないので知らない。そして嫉妬から聞けない)

この花はいったい何なの。
あまり大きな声で言えないが…

わたしも、ちょっと欲しい!!

詳しい人、見つかる

祭り期間中はみんな祭りに夢中で祭りがない地区に住むわたしは心の距離を感じるので、祭りが終わるのをじっと待ってある人にインタビューした。

掛川祭 どこ屋台」というサービス名で、祭り期間中各地区の屋台がどこにいるのか位置情報をマップに表示させ一般公開している、どこ屋台実行委員長の深田 博さんだ。
深田さんとピンクの花。本来は持って写真を撮るものではないが、無理やり持ってもらった
深田さんとピンクの花。本来は持って写真を撮るものではないが、無理やり持ってもらった
この人ならきっとピンクの花のこともよく知ってるはずだ。

さっきからピンクの花ピンクの花言っているが、そもそもこのピンクの花の名前は「軒花(のきばな)」というらしい。軒先に飾る花だから軒花。IQ低めのわたしにも優しいネーミングである。

祭り当日の飲食代などに使われる祭典費を払うと、この軒花がもらえるそうだ。しかも払う度もらえるので、毎年溜まる一方らしい(地区にもよるが、祭りの翌日会所に持っていくと回収してくれる地区もあるとのこと)

掛川市の場合は、近隣地区にある障がい者施設の皆さんが作って販売していると深田さんが教えてくれた。やはり手作りだったのね。

ところでこの軒花、東京出身・東京在住の林さんは知らなかったが(当時同行してくれたライターのきだてさんも知らないと言っていた)、静岡ないし特定の地域でしか飾られていないものなのか。

深田さんに聞いたら
「え、他の地域にはないの!?」(写真がなかったので先ほどの写真に集中線を付けたが、実際は軒花を持ってインタビューに答えていないしこんな笑顔で驚いてはいない)
「え、他の地域にはないの!?」(写真がなかったので先ほどの写真に集中線を付けたが、実際は軒花を持ってインタビューに答えていないしこんな笑顔で驚いてはいない)
深田さんも軒花の存在が当たり前すぎて地域限定だということを知らなかった。

出よう。静岡からいったん出よう。

祭りに詳しく屋台を追っかけている深田さんでさえ知らなかったのだ。ここは地元の人に聞くより静岡県外の人に聞いた方が早そうだ。
デイリーライターの皆さんに助けを求めた
デイリーライターの皆さんに助けを求めた
「見たことないです」の嵐
「見たことないです」の嵐
2~3人くらい「地元にあります」「見たことあります」という人が普通に出てくると思っていたが(根拠はないが、勝手に群馬あたりにはあると思っていた)静岡以外に軒花のある地域は見つからなかった。静岡ではこんなに飾られているのに。

今後県外で祭りに遭遇した際は、軒花の有無をチェックしたい。

そしてもしそこに軒花があったのなら、「このピンクの花………地域限定なんですって!!」とドラマに出てくる噂好きの主婦のように、地元の人に教えてあげたい。

祭りの後の軒花

インタビューした深田さんの事務所にまさに飾り終わった軒花が置いてあったので「これ、どうするんですか?」と聞いたら「捨てちゃう」とのこと。

もちろんもらって帰ってきた。
祭りは終わったので家の中にひっそり飾った。祭りに参加した気分になれて、ちょっと嬉しかった
祭りは終わったので家の中にひっそり飾った。祭りに参加した気分になれて、ちょっと嬉しかった
名前もわかったし、部屋に飾ることもできたし、割と満足。

でもやっぱり…ここまで来たら軒花がどの地域にあるのかもっと調べたい。

ということで、軒花のある地域、教えてください!

軒花のある地域にお住まいの方、これまで見たことのある方は地域名とともにハッシュタグ #軒花知ってる でツイートしてください。お待ちしております!
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