街角で見かけたザリガニの山
今年の春、オオサンショウウオを食べに四川省・成都に行ってきた。そのときのことはこの記事やこの記事に詳しい。
旅先ではオオサンショウウオを求めて方々を彷徨ったのだが、そのとき魚介類を売る店がひしめく市場ものぞいてみた。結果的にオオサンショウウオの姿はなかったけれど、そこで驚いたのが、我々日本人にも馴染み深いアメリカザリガニが食材としてたいそう盛んに商われていたのである。
この手の市場にくるといつも感じることだが、魚介も野菜も同じようなものを同じような値段で並べた店がひたすら続いていて店ごとの個性というものがほとんどない。ように見える。少なくとも一見さんの目線だとそう感じる。
では単純に立地の勝負で、入り口に近い店が一番繁盛しているのかというと、そうでもないようなのだ。買い物客が店や品物を選ぶ上で、何か我々には見えていない基準のようなものが働いているのだろうか?気になるところである。
内陸の都市・成都にあって、これだけ海産物が充実しているのは驚きだ。日本に例えるなら、長野のスーパーにウツボやウミブドウが並んでいる感じだろうか?中国人の食に対する熱いこだわりを感じる。
そう、アメリカザリガニ。子供の頃によく遊びで釣って、家に持ち帰って飼おうとして、死なせてとんでもない悪臭を放つ水槽を泣きながら掃除させられたあいつだ!
調べたところ、中国でもアメリカザリガニはもともと食べられていなかった、というか生息していなかったのだが、食用として持ち込まれたものがじわじわと普及して、2010年代からは「夏といえば辛く味付けしたアメリカザリガニでしょ!」と言わんばかりの熱いブームになっているのだという。
アメリカザリガニのひしめく金盥の前では、店主と思しき男性がスマホ片手に「どうです、このイキの良さ!」というようなことを言いながら動画を配信していた。アメリカザリガニが食材として売り物になるというだけでも驚きなのに、販売のためのネットを駆使した商戦に鎬が削られているのだ。
横では、まるまると太った食用蛙の一団が出荷の時を今か今かと待ちながら箱の中で喉を鳴らしていた。
私はたいへんに感心した。
かつて、日本にもアメリカザリガニや食用蛙が導入されたが、その持ち味をほとんど引き出されることがないまま、野外に放逐された彼らはやがて厄介な外来生物として憎まれ役の座に落ち着いてしまったのだった。ここ中国においても彼らは外来種ではあるけれど、少なくとも本来期待されていた役目を果たすべく表社会に活躍の場を与えられているのである。我々も見習うべきところは多かろう。
ザリガニ料理の"もと"を買って帰る
ザリガニ料理を食べてみたかったけれど、あいにく現地では他の物を食べるのに忙しかったので、クックドゥ的な"もと"を買って帰ることにした。
2.植物油に刻んだ生姜、ニンニク、ネギを入れて香が出るまで炒め、ザリガニと"もと"を入れてさらに炒める
3.酒を入れる.沸騰したら10〜15分くらいそのまま加熱して完成
一読して、大体こんな感じかな?と思っていた内容と、翻訳アプリに表示された内容がほぼ一致した。漢字がわかるって素晴らしい。
さて、調理の仕方がわかったところで、まずしなければならないことがある。食材となるアメリカザリガニを採取しに行くのだ。
池でアメリカザリガニを釣る
ザリガニ釣りはとても簡単だ。針も浮きも錘もいらない。こんなに簡単に釣れるのに、美食大国・中国で大ブームになるくらい美味いのだから、エビでタイを釣るどころの騒ぎではない。
ザリガニがスルメに食いついたところをすぐに釣り上げようとすると、驚いて離してしまうから、しばらく餌を食べさせていい感じに餌に対する執着心を抱かせてから引き上げるのがコツだそうである。
一匹目がかかった時は興奮して、波立つ水面に向けて一人「おお!」という叫び声を上げた。童心に戻るとはまさにこのことだ。我々は大人になったからと言って無理に複雑な娯楽にいそしんだりせず、ずっとザリガニだけ釣っていればよかったのである。そんなことを考えさせるくらい、餌にかかったザリガニを引き上げる時の射倖心の煽られっぷりは強烈だった。
こちらの感動に応えてか、それからさらに10分ほどたって、一際大きな引きが糸を持つ手に伝わってきた。強いというか、手が痛い。こんなに強い力で引いてくるとは、さぞかし大きなアメリカザリガニに違いない。ワクワクしながら糸を引く手に力を入れた。
アメリカザリガニにミシシッピアカミミガメ。この池も、ありふれた水場と同じく外来種だらけなのだった。複雑な気分で糸を上下にゆすってカメを払い落とした。
カメはここにいればまたスルメが食べられると学習したらしく、一旦は潜ったもののこまめに浮上してはいやらしい目つきでこちらの様子をチラチラと伺っていた。仕方がないから場所を変えることにした。
この時点で確保したアメリカザリガニは一匹。もう少しスピードアップしたいということで、ザリガニ密度の高そうな場所を選んで釣りを続けることにした。密度の高い場所を知るためには名人たちに教わるのが一番だ。ザリガニ採りの名人といえば、サギである。サギたちが張り込んでいる場所にお邪魔して糸を垂れさせてもらう。するとどうだろう。まさに入れ食いである。


