11年振りの石垣島
そもそもは西表島の友人に会いにいくという用事があり、それならば経由地である石垣島でもなにかしようと考えて、石垣島出身で京都にも拠点をもつライターの泡☆盛子さんに相談したところ、製麺ワークショップ(小麦粉から麺を作る会)をやらせてもらえることになった。
せっかく石垣島でやるのであれば、作るべきはやはり八重山そばだろう。11年前に当サイトのイベントで石垣島を訪れた際、『日本最南端の麺文化「八重山そば」』という記事を書いたが、そのネクストをやろうじゃないか。
そんな訳で石垣島に到着し、最初の食事はもちろん八重山そばだ。すっきりした鰹節と豚骨のスープ、断面の丸いストレートの茹で麺、具は細切りの豚肉とかまぼこと青ネギ。そうそう、こういう味だった。
南の島で食べる麺類はこうでなくちゃと指をパチンとさせたくなる味がした。
沖縄そばと八重山そばと宮古そばの違い
この記事を読む上の基礎知識として、沖縄そばと八重山そばと宮古そばの違いや共通点を書いておく。埼玉県民の私が書いているので本当に正しいのかは怪しいが。
まず麺だが、どのそばもかんすいの入った中華麺を製麺所で茹でて、油をまぶして冷ましたものが使われる。そばという名前だが粉は小麦粉100%で蕎麦粉は使われていない。中華そばとか汁そばと同じ文脈の「麺」という意味のそばなのだ。
麺の形状は、沖縄そばが太くて縮れた平麺、八重山そばが細いストレートの丸麺、宮古そばが細いストレートの平麺であることが多いが、あくまで傾向の範疇で絶対にそうという訳でもない。
麺はスーパーなどでダシ(スープ)と並んで売られており、家で作って食べることも多い。
ダシは豚骨と鰹節のあっさり味が定番。沖縄そばのほうが比較的濃厚で、ラーメンに近い味の店が多いように思う。
ローカルスーパーでもマックスバリュでも「ダシ骨」と書かれた豚骨のぶつ切りが売られているので、このスープを家で作る人も多いのだろう。
具は青ネギが共通で、肉は豚の三枚肉(皮付きバラ肉)、本ソーキ(骨が固いスペアリブ)、軟骨ソーキ(骨ごと食べられる柔らかいスペアリブ)、テビチ(豚足)、赤身肉など、店によって様々。
デフォルトは沖縄そばが三枚肉、八重山そばが細切り赤身肉、宮古そばが厚切り赤身肉のイメージ。どのそばもかまぼこ(揚げた魚のすり身)がよく乗っている。
長々と蘊蓄を書いてみたが、最近は各島同士や本土のラーメンとの融合が進んでいるようで定義することが難しくなっているようだ。茹で麺ではなく生麺を出す店もあるのだとか。
昔ながらを謳う店でもレシピは少しずつブラッシュアップされているだろうし、一般庶民が歴史を紡ぐ食文化は、きっとそういうものなのだろう。
製麺ワークショップのリハーサル
八重山そばを作る製麺ワークショップの会場は、石垣市公設市場という飲食店や土産物屋が入る建物の3階にある「あまくま座」。保育園跡地に昨年オープンした、映画×文化交流を目的としたコミュニティスペースとのこと。
石垣島に住む友人の泡さんが繋いでくれたのだが、映画上映をベースとしつつ、製麺ワークショップもやれば快楽亭ブラック師匠の高座もやるという、とても自由度の高い素敵な場所だった。
この場所で製麺ワークショップが行われるのはもちろん初めてなので、本番の前にリハーサルをして諸々のすり合わせを行う。
八重山そばの製麺部分はこちらが主導しつつ、スープや具に関しては泡さんが両親から受け継いだ作り方をベースとした。
「あまくま」は、沖縄の言葉で「あちらこちら」という意味だとか。このワークショップはまさにあまくまの文化交流。私にとっても学びが多い。
二人が用意してくれた食材や調理道具を使って、さぐりさぐり八重山そばを作っていく。本来は茹でた麺に油をまぶして冷ましたものを使うのだが、ワークショップでそれをやるのは大変過ぎるので生麺タイプとさせていただく。南の島で細かいことを気にしてはいけない。あまくま座スペシャルということで。
事前に家庭用製麺機を宅配便で送っておいたのだが、ほぼ鉄の塊なので検査時に怪しまれたのか、航空便ではなく船便になったことが来島直前に判明し(沖縄あるあるらしい)、急遽手荷物でパスタマシンを持ってきたのだが、こちらはオプションで購入した丸麺(スパゲティ)用の切り刃があるので、結果的に八重山そばっぽい形の麺を作ることができた。
三人で作った生麺タイプのオリジナル八重山そばは、麺がツルッツルでとてもおいしかった。スープはすっきりしつつも物足りなさがない。「これでいい、いや、これがいい」という味だ。
石垣島で八重山そばを作るという長年の野望が叶い、すっかり満足してしまったのだが、そういえばこれはまだリハーサルなのだった。

