特集 2026年3月3日

石垣島で八重山そば(沖縄そば)を小麦粉と豚骨から作るワークショップ

西表島でリュウキュウイノシシ(カマイ)をいただく

製麺ワークショップのリハーサルを無事に終えて西表島に渡ると、趣味で猟師をやっている友人がイノシシ猟に連れて行ってくれた。

西表島を含む南西諸島には、リュウキュウイノシシという本土のイノシシよりも小型の固有亜種がいるのだそうだ。この島での呼び方はカマイ。

イノシシ猟といっても犬や鉄砲を使うのではなく、けもの道に「くくり罠」を仕掛けて捕まえる方法で、事前にセットした場所を確認しに行く。

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素人目にはまったくわからないけもの道に仕掛けられた罠をチェックしていく。

カマイが一匹も捕れないことも多いそうだが、この日は中型のオスが罠に掛かっていた。友人達はそのカマイを手際よく仕留めると、車で作業小屋へと運び、なんやかんやしつつテキパキと解体して、無駄なく食べられるよう処理していく。

家でゴロゴロしていたら絶対に目にすることのできない景色の連続に背筋が伸びる。はるばる西表島まで来て本当に良かった。

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カマイは小型のイノシシなので、このサイズでも大人なのだそうだ。
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肉を取った後の骨は全部ぶつ切りにされる。これがダシ骨の原点なのだろう。
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内蔵は下茹でをしてしっかりと洗う。これを中身と呼ぶ。
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貴重な肉を食べさせてもらった。全体が赤身で肉質がとても柔らかく、皮付きのまま焼くとコリコリしてうまい。
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また別の日、宿泊先で出会った人から芸能発表会というイベントに誘われて訪れたら、テーブルの上に泡盛がデンと置かれていた。誘ってくれた方は出演者側なので客席側に知り合いが周りに誰もいない状況のためドキドキしたが、とても熱量の高い素晴らしい発表会だった。
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発表会で出していただいたカマイ汁。これが祭のときに食べる西表島の味なのかと感動。

なんで急にカマイことリュウキュウイノシシの話になったかというと、友人からこのときのダシ骨と中身をいただいたので、製麺ワークショップで振舞うことにしたのである。

ちなみに豚の中身を使った汁を中身汁、中身を使ったそばは中身そばと呼び、沖縄では昔から愛されている。

となれば作ってみたいじゃないですか、カマイの中身そば。おそらく一生に一度のチャンスに違いない。

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これは石垣島のキミ食堂で食べた中身そば。たくさんの干し椎茸と煮て、生姜を利かせるのがポイントらしい。大阪の西成などで食べられているホルモンうどんのルーツにようやくたどり着けた(こちらの記事)。

 

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カマイの中身そばを作ろう

カマイのダシ骨と中身をお土産に石垣島へと舞い戻り、製麺ワークショップの本番へと挑む。

私の都合で開催されたのが水曜日の昼間という、どう考えても人の集まりにくい日程だったが、佐藤さんと泡さんの尽力によって満席になったようだ。

製麺ワークショップの準備と並行して、本来の予定には一切ないカマイの中身そば作りに挑戦する。ずいぶんとコントロールしづらい人だなと思われただろうが、こんな奇行を笑って許してくれた二人には感謝しかない。

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平日の昼間、しかも離島での製麺ワークショップ開催という無茶。八重山そばなのに教えるのが埼玉県民だし。
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中身そばの麺は、かんすいではなく古式に則って木灰を使う。
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木杯のアルカリ成分が溶け出した上澄みで麺を打つと、うどんと中華麺の中間みたいに仕上がる。詳しくはこちら
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船便でようやく届いた家庭用製麺機で麺にする。
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カマイのダシ骨にショウガとヒバーチの葉を入れて煮る。泡さん曰く、ヒバーチの葉は臭み消しによく使うそうだ。長ネギの青い部分みたいである。
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翌日訪れた直売所にも商品こそなかったが「ピパーチの葉」というコーナーがあった。来島して最初に食べたジューシーのスパイス感はこれだったのかも。
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下茹で済みの中身も生姜とヒバーチの葉と泡盛を入れてさらに茹でこぼす。
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カマイのダシ骨のスープ、カマイの中身、干し椎茸とその戻し汁、鰹出汁、塩で仕上げていく。ここまですれば臭みはまったく感じられない。
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木灰で打った麺と合わせて、もしかしたら西表島や石垣島で大昔に食べられていたかもしれない原始的な八重山そば、カマイの中身そばが完成。実にヒバーチの葉が良い仕事をしてくれていて、ちょっとだけ香るスパイシーな風味が絶妙。

行き当たりばったりで作った割には、とても完成度の高い一杯になったのではないだろうか。自分の中に様々な知識や経験が積み重なったからこそ辿り着いた一期一会の味。

こういう再現性のまったくない料理が大好きだ。

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ちゃんとワークショップもやりました

ついついカマイの中身そば作りで盛り上がってしまったが、八重山そばを作るワークショップも無事に開催された。

参加者のほとんどが佐藤さんと泡さんの友人ということもあり、浮足立ちまくりの私の説明でもじっくりと聞いてもらえ、初めての製麺体験を楽しんでもらえたと思う。

麺作り、楽しいですよね!

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初めて見る家庭用製麺機に興味津々の人を眺めるためにワークショップを開催しているといっても過言ではない。
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ワークショップ用のスープは、カマイじゃなくて豚のダシ骨、三枚肉、赤身肉をたっぷりと使った。
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八重山そばにするなら三枚肉はなくてもいいんだけど、大きな肉は人を笑顔にする力がある。
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今回はかまぼこも三枚肉、細切りの赤身肉と一緒に甘じょっぱく煮た。
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ものすごいチームワークで作業が進み、予想よりも早い時間で製麺作業が終了した。
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各自が自分で食べる麺を打ち、その麺を茹で、スープの味を決めて、盛り付けをしていただく。この日のそばもうまかった。ダシに入れる肉が多かったのでちょっとラーメン寄りになったかな。
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金城製麺所の金城秀信さんとのトークショー

この日はワークショップの後に二部として、カマイの中身そばを参加者に試食してもらいつつ、すぐ近くにある金城製麺所の三代目である金城秀信さんとトークをさせていただいた。

ずっと気になっていた八重山そばの特徴や沖縄そばとの違いをじっくりと伺う。なぜ茹で麺が愛されているのか、あっさり味の八重山そばは紅生姜を入れると味が負けてしまうためピパーチがちょうど良いとか、ごはんを添えるなら白飯よりも味のついているジューシーが合うとか、とても勉強になる会だった。客を呼んでのイベントとしては、ちょっとマニアックすぎたかもしれないが。

ちなみに金城製麺所では、事前に予約をすると茹でる前の生麺も購入できるそうで、後日泡さんが購入してその味に感動したそうだ。

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11年前に八重山そばを調べたときに、お話を伺った金城さんと再びお会いできて感無量。
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金城製麺謹製の八重山そばを、汁なしの「からそば」で試食。麺の茹で時間が本当に一瞬で驚いた。
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皆様、ありがとうございました!

最後に余談。ワークショップの参加者に数年前まで東京に住んでいた方がいて、その人が石垣島に来る少し前に一度飲んだことがあるのだが、「今度、石垣島に引越すんです」という話をしたところ、「石垣島で八重山そばを作るワークショップをするのが夢なんですよ!」と私が熱く語ったそうだ。へー。

その話を聞くまですっかり失念していたが、そういえば確かに言った覚えがある。夢って叶うんですね。忘れていても。


石垣島での製麺ワークショップは大変おもしろく、石垣島も西表島もとても良いところだったので、早くも5月末(たぶん30日)に再びあまくま座にて第二回をやることになりそうです。みんな来てね。

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ということで製麺機は石垣島に置いていきます!
編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
埼玉出身の玉置さんが石垣で八重山そばのワークショップをする。
その設定のおかしさを忘れるほどの情報量でした。沖縄そばと八重山そばの違い、とれたばかりのイノシシで中身汁から大阪のホルモンうどんにつながること。ジューシーのスパイス感も伏線回収されています。
しかし「大きな肉は人を笑顔にする力がある」の肉がでかすぎます。(林)

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