12年前に沢登りについて書いたのだけど
2009年、当時連載記事を書いてた雑誌の編集者と彼のお友達の3人で沢登りに行った。これが僕の沢登りデビューだった。
寒い!怖い!でも楽しい!沢登り
この時に行ったのは丹沢の小川谷廊下。初級者向けの簡単な沢とされているがそこそこ滝があり、ちょっと『死ぬかも』と思ったりもした。
当時の僕は一応クライミングをやっていたものの、たまにインドアジムで登る程度だった。なので登攀(岩登り)要素がある登山を積極的にしていなかった。
また、他に沢登りをする人が周りにいなかったこともあって以降も沢登りはあまり行かなかった。
(※秋川シンナソー、谷川岳の幽ノ沢などに行った程度。沢は苦手なカエルがいることもあり避けていた)
11年後、ちょっとだけ沢登りをすることに
しばらくは沢登りをすることはなかったのだけど、去年(2020年)たまたま友人達と沢登りの機運が高まり、行くことになった。
昨シーズンは初心者向けの沢をいくつか登った。水根沢、シダクラ沢、軍刀利沢、三ツ峠四十八滝。どれも初級者向けの沢だけど、滝はそれなりにあった。
沢登りは落ちることが許されない
初級者向けの沢と言っても、落ちたら怪我をする可能性はあるので落ちることは許されない。
たまにロープを使うが、簡単な沢では多くの滝をフリーソロで登る(メンバーにクライミング未経験者がいればロープを頻繁に使うことになります)。
沢登りは詰めがしんどい
沢を一番上まで登った場合、最後は水が湧き出る場所(沢の源頭部)に行き着く。ゴールだ。
そこからどうやって下るのかと言うと、大抵は尾根まで登って登山道を降りてくる。沢は滝が多くて下降は危険だったり時間が掛かったりするからだ(ロープを使って沢を降りることもあります)。
この、尾根まで登る(詰める)のが大変だ。2009年の小川谷廊下は詰めが無かったので知らなかった(すぐに林道に出て歩いて帰れた)。
詰めでは、登山道ではないグズグズに柔らかい急斜面や笹藪、竹藪を登っていく。木や草にしがみつきながら、転がり落ちそうな急斜面を必死で登る。『詰め』はしんどい。
以上の様にいくつか沢を登ってみて思った。
「あぶねーし、しんどいな」
と。メンバーが全員クライミング経験者ならどうにかなるのだけど、クライミング経験がまったく無い人が多いとリスクが非常に高くなる。
(※メンバーが全員クライミング経験者なら、沢登りはとても楽しい遊びです)
もっと安全に、それでいて涼しく山で遊ぶ方法はないだろうか。そんなおり知ったのが『ウォーターウォーキング』だった。
ウォーターウォーキング
丹沢ネットワーク・編、白山書房発行の『ウォーターウォーキング』という本があり、現在はウォーターウォーキング3まで出ている。
本の中でウォーターウォーキングとは「涼しい水の中を歩き、危ない部分は避け、積極的に水と遊び楽しむこと」と書かれている。
掲載されているのは、東京を中心とした関東のウォーターウォーキングコースだ。
一般的な沢登りは沢の上流で、傾斜がきつく滝が豊富にある部分を登る。ウォーターウォーキングは滝が少ないほうがいいので、沢登りの対象となっている沢の少し下流がコースとなる場合が多い。
この本の情報を参考に、実際にウォーターウォーキングをしてきた。
ウォーターウォーキングを実践してきた
ある暑い7月の休日。電車とバスを乗り継いで奥多摩の沢へ。2日間で2つの沢を歩いてきて、楽しかった要素を書いていくこととします。
今回のコースはどちらも林道に沿った沢で、滝も特に少ないガチのウォーターウォーキングなコースだった。
林道がすぐ横にあるので、帰る時間になったらすぐ帰れるし、滝が難しいなと思ったら林道を使って飛ばすことも出来る。林道沿いの沢はウォーターウォーキングにピッタリだ。
装備は沢登りとあんまり変わらない
ウォーターウォーキングと言っても、一応は沢を歩くので沢登りの装備が必要だ。最低限、ヘルメットと沢靴はあったほうがよい。
この時はロープを使わなかったのでハーネスは要らないと言えば要らない。が、万が一もあるのでザックにはロープが入っているし、ハーネスも着けた。クライミングの道具も少しだけ持っている(カラビナとかロープを扱うための道具とか)。
沢用の靴はモンベルのサワーシューズがお手頃価格だ。それでも7000円くらいする。
もっと安く済ませたいならカインズのアクアシューズが激安(600円くらい)だが、くるぶしがむき出しで岩に当たるとメチャクチャ痛いなど、安い分リスクは高まる。
涼しい中、水と遊びながら歩いていく
入渓地点から沢に降りて、各種装備を着けたらあとは上流に向かって歩くだけ。この日の気温は30℃を越えていたが、沢は空気が冷たいし、足が水に浸かっているのでとても涼しい。時に、寒い。
ウォーターウォーキングのコースにはそんなに滝がない。特に、今回行った南秋川の矢沢中流と小坂志川中流は、ほとんど滝がない。あっても1m程度の滝が多いのでクライミング経験が無い人を連れて行っても怖くない。(とはいえ油断は禁物)
釣りをしてる人とは仲良くしましょう
ウォーターウォーキングや沢登りで注意すべきは、釣り師との関係。好戦的な釣り師と会うと揉めるので、出来るだけ穏便に会話しなくてはいけない。釣り師は、人が水に入ったら何日も魚が釣れなくなると思っているので(実際にどうなのかは知らない)、沢を歩く人間を警戒している。
前方に釣り師がいたら追いつかないようにゆっくり歩くとか、休憩して先に行ってもらうとか、釣りの邪魔をしないようにしたい。
一度釣りをするために準備をしているおじさんと遭った。「どうしたら釣りの邪魔になりませんか?」と聞いたら「俺が先に上流に行ってるから!」と元気に言って林道を急ぎ足で歩いて上流に向かってくれた。僕らはゆっくり沢を歩いたので追いつくことはなく、衝突することなくその日の行程を終えられた。いい人で良かった。
山では挨拶と会話が大事だ。すでに相手が怒っていたら喧嘩するか引くかしかないのだけど、今どき喧嘩はしたくないので引くのが無難。
とにかく気持ちいい
沢登りと比べると、とにかくリスクが少ないのがいい(無いわけではないけど)。沢登りではガイドブックや地図(トポ)で概要は分かっていても、初めての沢ではどんな滝が出てくるのかと緊張する。
しかしウォーターウォーキングではそういう緊張感が少ない。登れなそうな滝が出てきたらエスケープしてしまえばいいし、そもそも大きな滝が少ないからだ。
単に、冷たくて透明な水が気持ちいい。
釜の水中は絶景
小滝の下の深くなっている部分(釜)などにゴーグルを付けて潜ってみるのもよい。泡と小魚が水流で踊るさまを観察できる。
水は限りなく透明に近いブルー。水面近くに細かい泡、水底を小魚がチラチラ泳いでいる。いつまでも見ていたい光景だけど、息をしないと死ぬ。
動画も撮ったので、音に注意してご覧ください。
主にアブラハヤやヤマメが見られた。サイズはあまり大きくないが、可愛くて見ていて飽きない。
それでも、たまには滝があるので登る
ウォーターウォーキングの沢と言っても滝が全く無いわけではない。2,3m程度の滝はたまに出てくる。登るのが難しければ林道に出るなどして飛ばしてしまえばいいが、登ったほうが楽しいので積極的に登った。
この滝は小さいけど、手がかりが小さくて少ないのでやや難しかった。下の滝は、高さはあるけど手がかり足がかりが豊富にあるので簡単。落ちたら怪我をするけど普通は落ちない。
深い部分は水に入って歩いてもいいし、両岸の岩に張り付いて("へつる"と言う)濡れないように進んでもいい。どう遊ぶかは自由だ。
堰堤(コンクリの人工滝)などがあって先に進めない時は、林道に上がって先に進む。林道沿いのウォーターウォーキングコースはエスケープが簡単なのがいい。
沢から上がると真夏の直射日光が暑い。早く沢に戻りたいので、降りられそうな場所を探す。
沢に戻ったらまた小滝を越えたり。
釜のある滝で水遊びをしたりしながらゴールを目指してゆっくり登っていく。
沢登りコースの入口がゴール
初心者向けのウォーターウォーキングコースは『中流』なので上流の手前でコースが終わる。もちろん、メンバーや希望、到達時間によっては更に上流へ入ってもいい。
ただし、そこからは『沢登り』になるので難度はグッと上がる。今回はここまでとした。
こういうところは沢登りの入渓地点になっているので、脱渓もしやすい。
装備を外して普通の靴に履き替えたら林道を歩いて帰る。沢の水で冷えた体に、夏の空気がむしろ心地良い。
(※心地いいのは10分くらいで、しばらくするとまた沢に入りたくなるがキリが無いので我慢して歩く)
沢登りだと道なき斜面を詰めて、帰りも登山道ではないバリエーションルートを下ったりする。それと比べると、ウォーターウォーキングは行きも帰りも楽でよい。
沢登りも楽しいけど、ウォーターウォーキングだってバカにできないくらい楽しい遊びでした。
激推しはしないけど、遊びの一つとして
緩いと言っても沢に入ればそこそこのリスクがある。知っておくべき知識も多い。
増水していたら中止するし、途中で大雨が降ってきたり水が濁ってきたら沢から出たほうがいい。虫刺され、動物、道迷い、滝や斜面からの転落、溺れるなど様々なリスクがある。
滝は少ないので沢登りよりはだいぶ敷居が低いけど、行くなら沢登り経験者と一緒がよいでしょう。
ウォーターウォーキングの本にはけっこう滝がある沢登りのコースもたくさん載っている。最初は簡単な沢でウォーターウォーキングをして、徐々にレベルアップしていったらいいんじゃないかと思います。